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「咲世子さん、お兄様とアルカの朝食は要らないわ。」
盲目の少女、ナナリー・ランペルージは、篠崎咲世子にそう呟いた。
「今日から3日ほど、旅行ですって。」
「そうですか、最近良くお出かけになりますね。恋人とか?」
咲世子は気づかない、ナナリーの顔が曇っていることを。
「そう…ですね……」
兄と妹は気づかない、自分達の選択した行動が、どれだけ彼女を悲しませる事になるかを。
(2人して私を置いて出掛ける事が多くなった…、寂しいです。お兄様、アルカ……)
◇◇◇
ナリタ連山、山頂近くの山小屋。
『落ち着け、話をしに来ただけだ。』
仮面の男、ゼロはその仮面を外し、告げる。
「お前たちは無視するだけでいい。全ての異常を。」
その言葉を聞いた兵士達は、囲碁を打ち始める。
言葉通り、ゼロを無視して。
「ゼロ、扇さん達に合図送った…よ……」
髪を黒に染めた少女。アルカがゼロに続いて山小屋へと入る。
ゼロに任されていた事を、終えたらしい。
「ああ、ありがとう。…?……どうかしたか?」
段々と小さくなった声に思わず、ゼロは、いやルルーシュは顔をしかめる。
彼女の視線は、先ほどギアスを使った兵士達に注がれている。
「その兵士達なら心配するな。異常を無視しろ、とギアスを掛けた。」
「……うん、分かってる………」
安心させようと声を掛けたが、彼女の様子が戻ることは無い。
「…もし、無理をしているのなら、その。安全な場所で待機も………」
「あ、ううん。KMFに乗るのが怖い訳じゃないんだ。私から戦闘に参加するって無理に言ったんだし。ただ……」
「ただ……?」
少女は何処か、自身を嘲笑する様に、しかし悲しそうに
「昔の事を思い出しただけ」
と呟いた。
――――時を同じくして、ナリタ連山の山道。
多数の無頼とトラック、そして深紅のKMFが、山頂に向け、移動している。
『ゼロとアルカのやつ。何で無頼の無線を使わないんだ?』
『それより、ハイキングってどういうつもりかしら?』
『軍事教練だろ?』
仲間達の疑問が飛び交う中、一人黙々と作業を続ける少女。
深紅のKMF、紅蓮弐式のコックピットの中でマニュアルと睨めっこしている紅月カレン。彼女は仲間達の疑問に対する回答を持ち合わせているが、会話に混じる気配は無い。
(これから、ブリタニアとの激しい戦闘になる。そして……)
カレンは操縦桿に括り付けた、交通安全のお守りに視線を移す。
(今度はアルカも戦闘に参加する。頑張らないと。)
彼女の顔に決意が宿る。
テロリストとして、初めて戦場に出る友人、アルカ・アングレカムの事を想って。
アルカとカレンは、戦闘訓練からKMFのシミュレーターまで共にした仲でもある。彼女の優秀さは、カレンも良く知っている。
が、それとこれとは話が別だ。
(私がエースパイロット……、私が一番の戦力……)
友達に対する想いと、力を持つ者の責任が彼女の背中に圧し掛かる。
◇◇◇
アルカの様子がおかしい、とルルーシュは思った。
少なくとも、扇達への合図を頼むまでは普通だった筈だ。
(そうなると、やはりギアスに掛かった兵士達……)
と、そこまで考え、ルルーシュは思考を止めた。
外に見知った人物。それでいてこの場に居る筈の無い人物が居たからだ。彼女が居るというのにも関わらず、アルカは変わらず、囲碁を打ち続ける兵士達を見ている。
「アルカ、外は寒いから、ここで待っていろ。」
妹にそう声をかけ、ルルーシュは外に居る少女、C.C.の元へ向かった。
「C.C.、何をしている?こんな所で。」
ルルーシュの言葉に反応し、C.C.は振り向く。
「守ってやるって言っただろ?」
「保護者面をして………俺を守る暇があるなら、アルカを………」
「ルルーシュ、お前は何故、ルルーシュなんだ?」
言葉のキャッチボール位はしてくれ、と内心でルルーシュは毒づいた。
「哲学を語っている余裕は無い。」
C.C.はルルーシュの言葉を気にも留めず、続ける。
「家の名はランペルージに変えた。だが、ルルーシュという個人は残した。甘さだな。過去を捨てきれない」
「だからってC.C.はやりすぎだろ、人の名前じゃない。それにアルカはどうなんだ。お前が名を与えたのだろう?」
再びC.C.はルルーシュの方へ振り向く。彼女のその顔には、寂しさと優しさが入り混じった、そんな表情が浮かんでいる。
「それは、私の甘さだ。あいつじゃない。私が甘かったから、弱かったから。あいつはこれからも苦しむ。」
「どういう意味だ。」
彼女の意味深な発言に、ルルーシュは眉間に皺を寄せる。
「……いずれ話すさ、その時がきたら、な。」
「…C.C.……どうして、ここに………」
山小屋から、我を取り戻したらしいアルカが出てきた。
「なに、お前らを守ろうと思ってな。それより、……大丈夫か?」
「あ、うん。もう、平気…」
心配して駆け寄ったC.C.と、落ち着きを幾分か取り戻した妹。その2人の様子を見て、ルルーシュは思う。
(C.C.のアルカに対する執着は何だ?ただの契約関係…には見えないが)
ただの契約関係だとしたら、あそこまで距離を詰めないだろう。俺とC.C.の様に。あくまでビジネスライク、利害が一致しているから共にいるだけだ。
しかし、アルカは…
と、ここまで考えて、ルルーシュは思考を止める。そろそろ、扇達が到着する頃合いだ。
「C.C.、そろそろ黒の騎士団が到着する。お前は安全な場所に……」
「ああ、わかっているよ。」
そう言い残し、C.C.はこの場から去った。
ルルーシュは外していた仮面を付け直す。
『アルカ、やれそうか?』
「………ええ。」
麓ではブリタニア軍のKMFにトレーラー。空には輸送機。
戦争が始まる。
◇◇◇
無頼のコックピットの中で、ゼロの声が響く。
『良し、全ての準備は整った!黒の騎士団、総員出撃準備!!』
操縦桿を握る手に力が入る。
『これより、黒の騎士団は、山頂よりブリタニア軍に対して、奇襲を敢行する。私の指示に従い、第3ポイントに向け、一気に駆け下りろ。』
「……久々だ………覚悟してよ、ブリタニア……!!」
普段は精工な人形の様に整った顔をしたアルカだが、今はその顔に好戦的な笑みを浮かべている。
『作戦目的はブリタニア第2皇女、コーネリアの確保にある。突入ルートを切り開くのは、紅蓮弐式だ。』
カレンが乗る、紅蓮弐式。それがこの作戦の要であり、主力。
紅蓮弐式は、地面に刺さる貫通電極にその右手を添える。
貫通電極……
紅蓮の輻射波動で発生する熱エネルギーを、地下水に送り込むものだ。
そして内部で水蒸気爆発を起こさせ、人為的に土砂崩れを起こす。
『――出力確認、輻射波動機構、涯際状態維持―――。』
紅蓮の右手に付いている輻射波動機構に熱を帯びていく。
『―鎧袖伝達』
その後、紅蓮を中心に激しい光が発生した。
しばらくして、激しい地響きと共に、巨大な山崩れが起きる。
(ふふ、思い通りに事が運ぶのは心地良い)
これでゼロの想定通り、コーネリアの部隊は孤立。敵軍に対して多大な損害を与えた事となる。
ああ、ついでに。日本解放戦線ももう終わりかな。
後はカレンを中心に、残存戦力を排除。コーネリアを確保すればいい。
「……さぁ、作戦開始だ。」
私はKMFを走らせた。
◇◇◇
冗談じゃない、とキューエル・ソレイシィは思った。
皇族を死守するという、ジェレミア・ゴットバルトの意志の感銘を受け、純血派に入った。そこまではいい。そのジェレミアの所為で純血派の信頼は失墜した。それも別に良い。ジェレミアを切り捨て、名誉を挽回すればいいだけだ。
しかし、しかしだ。クロヴィス殿下の仇であるゼロを目の前にして。しかも、旧世代のKMFに乗ったイレヴン如きに。何故、手も足も出ない。
「な、なんだ……こいつは………」
全ての攻撃が、ギリギリで躱される。いなされる。
すり抜けているのではないか、と錯覚してしまうくらいギリギリで。
スラッシュハーケンも、ライフルも、スタントンファーも全ての武装が当たらない。
「馬鹿な………」
イレヴンが乗るKMFは代4世代KMFである、グラスゴーが元となっていると聞く。
私が乗るのは第5世代KMF、サザーランド。スペックでは圧倒している、筈なのに。
いつの間にか、眼前に、黒の騎士団のKMFが。その手に持つライフルを、こちらに突き付けている。
「この…亡霊がぁぁぁ!!!」
純血派次席、キューエル・ソレイシィは、その短い生涯に幕を閉じた
「…亡霊…か………」
あながち間違いではないか。
実際に、アルカ・ヴィ・ブリタニアは死んでいるのだから。
「………っ。旧世代のKMFじゃこんなものか。」
コックピットに付いているモニターに目をやる。KMFの異常を知らせる警告が出ている。腕の部分や脚の部分に、耐久以上の負荷がかかってしまったらしい。
「…だけど、まだ動く。」
『アルカ、大丈夫?』
カレンが無線を用い、アルカの様子を聞く。
「うん、大丈夫だよ。見てたでしょ?私の操縦。ちゃんと出来るんだから」
『…ふふ、はいはい……』
戦場に似合わない、少女の可憐な声が、お互いのコックピットに響く。
「カレンも、紅蓮での初戦お疲れ様。ちゃんと輻射波動も使えて何より」
『お陰様でね、ありがとう』
『2人とも、次のポイントまで移動するぞ』
ゼロが通信に割って入る。
先程まで話していた2人は目つきを鋭くし、彼に了承の意を伝えた。
「完全に使い潰すまで、付き合ってもらうから……」
静かになったコックピット内で1人、アルカは呟いた。
◇◇◇
「………………」
無頼の四肢が、悲鳴を上げる。
コックピット内には、先ほどよりもけたたましい警告音。
少女は、モニターにちらりと目をやったが、気にする様子は無い。
『イレヴン風情がぁぁぁ!!』
目の前のサザーランドが、声を上げ、前進する。
「遅い。」
突っ込んでくるサザーランドの頭に目掛け、スラッシュハーケンを飛ばす。それによって、怯んだサザーランドのコックピットに目掛け、スタントンファーを突き刺す。パイロットを失ったサザーランドは、完全に沈黙し、激しい音を立て、爆発した。
「…これで、5機目……、流石にきついな………」
額に汗を流し、アルカは呟く。
アルカが乗るのは第四世代KMFグラスゴーが元となっている無頼。基本的な性能は、グラスゴーと変わらない。それに対して、現在のブリタニアの主力は第五世代KMFであるサザーランド。グラスゴーの戦闘データを元に改良されたものだ。並のパイロットであれば、正面からの戦闘では勝ち目が無い。彼女は、そんな機体性能の差を技量で埋めているのだ。しかし、無茶な戦闘を繰り返し行った事で、アルカの乗る無頼は限界が来てしまったようだ。
彼女に与えられた任務は、孤立したコーネリアに付いていた護衛の掃討。近くに居た残存戦力は、今ので最後の様だ。一緒に付いていた仲間はやられてしまい、一人になってしまったが、何とか役目を果たせた。
ふぅ……と、彼女の口から安堵の溜息が出る。
「そろそろ、あっちも終わったかな…?」
そうこうしていると、コックピット内に、ゼロの声が響く。
『これ以上は消耗戦になる、撤退だ!!』
「……そっか。コーネリアはまた別の機会だね。」
再び操縦桿に手を添え、無頼を走らせる。
「脱出地点は…ポイント4、このまま真っ直ぐか。」
今の無頼が出せる最大の速度で所定の地点まで移動する。
しばらく、KMFを走らせていた彼女だが、急にその動きを止め、目的地とは少しずれた方向へ、視線を映す。
「…………兄上…?」
◇◇◇
なんだこれは………
ルルーシュを守ろうと、白いKMF―ランスロットの前に立ちふさがったC.C.。
その彼女に触れた途端、ルルーシュの意識は、現実から引き離された。
前とは……違う……?
C.C.と契約した時と感覚は似ているが、目に見える光景が決定的に違う。
「や、やめろ…」
額にギアスの模様が浮き出ているシスター。教会に石を投げつける人々。枢木神社。城。
「私に…入ってくるな……!」
胸の傷を眺め、悲しげな表情を浮かべたC.C.。絶え間なく聞こえる人々の悲鳴。
「どうして、私が………」
母の後ろに隠れ、不安そうな表情のアルカ。スザクの父である枢木ゲンブ。
様々な光景が、ルルーシュの脳内に直接、送り込まれてくる。
『俺はああするしか、なかったんだ!!』
少年の悲痛な叫びが。
『私の願いは、人を歪める…』
絶望した少女の呟きが。ルルーシュの脳内に響く。
醜い、と繰り返し呟きながら、人を殺める少女。
頭を抱え、言葉にならない声で、叫ぶ少年。
その2人と視線が交わった所で、ルルーシュの意識は現実へと引き戻された。
『何なんだ、今のは!』
「馬鹿!今のうちに逃げろ!!」
その言葉にハッと目の前のKMFに、ルルーシュは意識を向ける。
ランスロットは暴走状態。その手に持っている武器、ヴァリスをあちらこちらに乱射している。その弾丸が当たったことにより、破壊された岩や木の破片が、辺りに飛び散っている。
「――――っ!!」
『C.C.!』
そして、その破片が彼女の胸に、深く突き刺さる。
彼女の端正な顔が歪む。額からは汗を流し、破片が突き刺さった場所からは夥しい量の血が出ている。
「早く……逃げろ…!」
ルルーシュが行動を決めかねていたその時、一機の無頼がこの場に現れた。激しい戦闘をした為か、機体の所々から煙が立っている。
『C.C.!ゼロ!』
(アルカか……!!)
無頼を駆る少女、アルカは周囲の状況を確認した後、目の前のランスロットのヴァリスに向かって、スラッシュハーケンを放つ。それによってランスロットの手からヴァリスが離れ、銃弾による破壊は止んだ。その隙に、無頼を前進させ、C.C.とルルーシュを回収。速度をさらに上げ、ランスロットから遠ざかる。
『アルカ、何故ここが………』
無頼の手に乗るゼロが、驚きを隠せない様子で、アルカに問いかける。
『何となくここにいる気がしたの!取り敢えず安全な所まで連れて行くから、話は後で!』
逃げ切るまで機体が壊れない事を祈りながら、アルカは無頼を走らせた。
Q.アルカ強すぎない?
A.強い少女、皆好きでしょ。僕は大好き。