コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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いつも誤字報告など、ありがとうございます。

最近ロスカラをやり直しています。何あの神ゲー。
R2はよ。


stage11 名前

 ナリタ連山の麓にある洞窟。3人はそこへ逃げ込み、カレンの到着を待っている。

 無頼が完全に壊れる前に、カレンへ救難信号を発信出来たのは僥倖だったと言える。

 

「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね……」

 

 痛みで顔を歪めるC.C.に、優しくアルカは語りかける。

 その細い指を彼女の血で赤く染めながら、慣れた手つきで破片を摘出する。

 

「アルカ、俺はあとどのくらい後ろを向いていればいい?」

「もう少し待っててね。もう終わるから」

 

 C.C.を治療しようと、彼女の服を脱がそうとしたアルカに「見ないで。」と強く言われてしまったルルーシュは、現在、アルカとC.C.に背中を向け座っている。

 彼女の不死身の身体の事が気になり、傷口を撮影したり、血液を摂取したかったが、無理そうだ。

 

「…うん、良し終わった。兄上、マント貸して。C.C.に掛けるから」

「ああ。もう、いいか?」

「うん、いいよ。こっち向いて」

 

 破片が身体から取り除かれた為か、C.C.の顔は先程よりも穏やかになっていた。彼女の身体にはゼロのマントが掛けられている。そんな彼女の頭を自身の膝に乗せ、アルカは慈しむ様に頭を撫でている。

 

「……随分早いな、慣れているのか?」

「うん、自分達でやるしかなかったから」

 

 ああ、そうだった。とルルーシュは思い出す。

 アルカはつい1年くらい前までは、逃亡生活をしていたのだった。当然、病院など通える筈も無い。

 

「ごめんね、無頼、壊しちゃって。」

「ん、ああ。良いって。お前が無事ならKMFくらい安いもんだ。」

 

 アルカが乗っていた無頼は、ここに到着する少し前に動かなくなってしまった。無理な戦闘で限界を迎えていた無頼を、さらに酷使したのだ。壊れてしまうのも仕方が無い。

 

「無頼は乗りにくいか?」

「うん…。戦えない事は無いけど。思ったように動いてくれないかな。」

「…カレンの様に、専用機を用意した方が良いかもな。」

「まぁ、余裕があったら、お願いしようかな。」

 

 無頼の性能が、アルカの技量に見合っていないのはルルーシュも分かっていた。しかし、戦力に限りがある現状では、彼女に見合うKMFを用意できず、無頼に乗って貰っていた。

 

(戦場に送り出すようなことは、兄としてしたくないが)

 

 ゼロとして考えると、彼女の技量は無視できない程大きい。戦闘の度に使い潰されるのもコストがかかり過ぎるし、長時間の戦闘も考慮すると新型を用意した方が良さそうだ。

 

「う…あ……」

「C.C.?」

 

 ふと、洞窟内に彼女のか細い声が響き渡る。アルカは優しく彼女の名を呼ぶ。

 

「―――――。」

 

 彼女の声が木霊する。

 

「あっ……」

「……C.C.………」

 

 人の名前だった。至って普通の人の名前。

 

「やっと呼んでくれたね…。私の名前……。」

 

 そう呟くC.C.は、いつもの淡々とした声では無く。見た目相応の、少女の声だった。

 

「……昔の夢を見ているの?C.C.…。」

 

 アルカは再び慈しむ様に、彼女の頭を撫で始める。

 

「……………」

 

 聞きたいことは山ほどある。アルカに対しても、C.C.に対しても。

 だが、普段とは違い弱々しいC.C.と、それを優しい目で見守るアルカ。そんな2人を見て、ルルーシュはどうしても聞く気分にはなれなかった。

 

 ・

 ・

 ・

 

 眠っていたC.C.が目を覚まし、アルカの膝から顔を上げる。

 

「アルカに感謝しろよ。お前の応急処置をしたんだ。」

「C.C.…大丈夫……?」

 

 心配そうな顔をして、アルカはC.C.の顔を覗き込む。そんな彼女に対し、優しい微笑みを浮かべるC.C.。

 

「…全く、またお前は……。私には必要無い事、知っているだろう?」

「でも、痛みは感じるでしょ?どうせ治るから、って考えないで。」

 

 呆れ口調とは裏腹に、C.C.の声は何処か優しい。

 

「………なぁC.C.…――――というのは、お前の名か?」

「……お前、何処でそれを………」

 

 いつもの調子を取り戻し、C.C.は目を鋭くする。その様子からルルーシュの憶測は確信へと変わった。

 

「C.C.…それは……」

「ふ――、やはりな。寝ているお前が口にしていたよ。良い名前じゃないか。C.C.よりずっと人間らしい。」

「馬鹿馬鹿しい、私に人間らしさなど……どうせ私は…私には………。今更名前なんて…名前、なんか………」

 

 段々と声を小さくし、その目に涙を浮かべるC.C.。そんな彼女をアルカは、後ろから抱きしめ、耳元で囁く。

 

「……私は、好きだよ。C.C.の名前も。貴女の事、全部好き。だから、自分自身を嫌いにならないで。」

 

 その彼女の声に応える様に、C.C.はアルカの手に、自身の手を重ねる。

 

(ああ、こいつはいつも、私に優しい言葉を投げかける…。私の心にするりと入ってくる…。だから私は、お前を手放せない……)

 

 アルカの言葉は私を蝕む毒だな、とC.C.は考えた。

 その光景を見ていたルルーシュは、意を決した様に口を開く。

 

「……良い機会だから、言っておく。その…さっきは助かった―――」

 

 ルルーシュの感謝の言葉に、2人の少女は眼を向ける。C.C.は驚きを隠せない様子で、アルカは少し呆れ顔で。

 

「……兄上、ぶっきらぼう過ぎじゃない………?」

 

 そんな彼女の言葉に「そうかな」と微笑みかけ、ルルーシュは続ける。

 

「今までも、それからギアスの事も。だから…………、ありがとう。」

「……感謝されたのは、2回目だよ………。だが、初めての時とは程遠いな、何より温かみが無い………、本当にアルカの兄か?」

「多分、兄上なりの精一杯かと……昔から素直じゃないから…」

 

 ああ、わかっているよ。っとその顔に笑みを浮かべ、C.C.は呟く。

 

「では、お礼を貰おうか。もう一度名前を呼べ、今度は心を込めて、な。」

「仕方ないな。―――――」

 

 C.C.は目を閉じ、その言葉を噛みしめる様に静かに聞いている。アルカは2人のそんな光景を、微笑ましそうに見守っている。

 

「ダメだな、発音も違うし、やっぱり温かみが無い。アルカにでも教えて貰うんだな。」

「ふん、我儘なやつだな。」

「……なぁ、アルカ。私の名前を呼んでくれ。お前の声は心地が良い。」

 

 C.C.はアルカの頬に手を添え、顔を近づける。遠くから見れば口づけをしている様に見えるくらいの距離だ。

 「おい、近いぞ」とルルーシュ(シスコン)の声が響く。

 

「うん…。――あ。」

 

 アルカが口を開こうとしたその時、洞窟の外からKMFの機械音が聞こえてた。恐らくカレンが到着したのだろう。ルルーシュは仮面を付け直し、何処か良い雰囲気の2人に話しかける。

 

『お迎えが来たようだな。』

「ああ、残念だ。全く、タイミングが悪い。」

「まぁ、いつでも言ってあげるから。今は我慢、ね?」

 

 拗ねた様に呟いたC.C.にアルカは優しく語り掛ける。いつもとは逆の光景だな、とルルーシュは胸の内で呟いた。

 

「うん、それもそうだな。今夜にでも、ベッドの中で囁いてもらうとしよう。甘く優しくな。」

『「……えっ?」』

 

 アルカは顔を真っ赤にして、ルルーシュは顔を唖然とさせて、2人の気の抜けた声が洞窟内に木霊した。

 

 

◇◇◇

 

「結局、ゼロは捕まらないままか。」

 

 ブリタニア軍が所有する指揮用陸戦艇、通称「G1-ベース」。多数のKMFを搭載出来るほどの広さを持つこの移動要塞で、2人の男女が歩いている。

 1人はブリタニア帝国第2皇女「コーネリア・リ・ブリタニア」。

 その数歩後ろに、彼女の騎士「ギルバード・G・P・ギルフォード」。

 れっきとしたブリタニア軍人である2人は、ナリタでの戦いについて話している。

 

「日本解放戦線が防衛ラインを押し上げているので、その中に紛れたのかと。」

「好かんな。常に何かを盾にして身を守る。」

 

 質実剛健を体現したような彼女には、ゼロのやり方はやはり気にくわないらしい。

 

「それで?報告に合った、亡霊というのは?」

「あらゆる攻撃をギリギリで躱し、こちらのサザーランドを一方的に破壊した無頼が居たと、脱出した兵士から報告を受けています。」

「…第4世代相当のKMFでサザーランドを……。あの赤いやつと言い、一枚看板では無いらしい。」

 

 コーネリアの顔が曇る。エリア11に蔓延るテロ組織を根絶し、綺麗にした状態で妹であるユーフェミアに渡そうと考えている彼女だが、手をこまねいているのは明らかだ。他でもない、ゼロと黒の騎士団に対して。

 

「あと、これは別件ですが………」

「……まだ、何かあるのか?」

 

 ナリタ連山での敗北に、黒の騎士団の想定以上の戦力。問題は山積みだというのに、とコーネリアは頭を抱えた。

 

「…エリア14の反乱を鎮め、本国に戻ったナイトオブナイン…。彼女が近いうちにエリア11を視察に来る、と本国から連絡が来ております。」

「エニアグラム卿が…?」

 

 彼女の事を頭に浮かべ、コーネリアはため息を付いた。

 

 ・

 ・

 ・

 

 ブリタニア帝国首都、帝都ペンドラゴンの空港で、1人の女性が豪快にくしゃみをした。

 眉の上で切りそろえられた前髪、短い後ろ髪をした、銀髪の女性。

 

「しっかし、本国は寒いなぁ!風邪でも引いたかな?」

 

 アッハッハッハ、と言葉とは裏腹に、気にも留めてない様子で彼女は、ノネット・エニアグラムは笑う。そんな彼女の後ろで金髪の女性は呆れた様な表情で、その光景を見つめている。

 

(絶対、そんな事無い……!)

 

 金髪の女性、モニカ・クルシェフスキーは内心で強く思った。

 

「エニアグラム卿…。何も、民間の航空を使わなくても…」

「卿はよせ、モニカ。今は軍務では無い。ノネットさんと呼べ」

 

 ブリタニア帝国においての皇帝直属の最高戦力、「ナイトオブラウンズ」。そこに身を置いている彼女達だが、今は制服では無く私服。つまりはプライベートだ。

 

「まぁエリア11の視察は表向きには軍務だが…。殿下が心配でな、様子を見に行くだけだ。実際は旅行みたいなものよ。皇帝陛下も存外、話が分かるお方よなぁ!」

「そうだとしても、民間の空港じゃなくても良いじゃないですか。仮にも貴族なんですし……」

「まぁ、そう固い事言うな!息抜きだよ、私だってたまにはゆっくりしたいんだ。」

 

 再び豪快に笑い、モニカの肩を叩く。

 

「そんな心配するな!ラウンズの制服も、事務仕事で使う資料も、軍用機で先に送ってある。機密が漏れる事は無いよ。」

 

 そういうことじゃありません!という言葉をモニカは呑み込んだ。彼女の意志が固いことはモニカも知っている。いくら言っても聞かないだろう。とモニカは諦めた。

 

「珍しく戦闘以外のエリア移動だ。お土産でも買ってこよう。ジノとアーニャに何が良いか聞いておいてくれ。」

「……はぁ…わかりました…。………エリア11は反ブリタニア運動が特に盛んだと聞きます。くれぐれも気を付けて下さいね。」

 

先ほどまで愉快そうに笑っていた彼女の顔が、たちまち好戦的な顔へと変わる。

 

「ふ……、誰に言っている。」

 

 

◇◇◇

 

クラブハウス アルカの自室

 

 皆が寝静まった深夜。

 2人の少女の囁き声が、部屋の中にで微かに響く。

 部屋は暗く、ぼんやりと影しか見えないが、人の身体の分だけ盛り上がった布団がモソモソと動いているのが確認できる。

 

「……んぁ…っ、はっ………し、しーつー………」

 

 酸素を求め、呼吸が荒くなっている少女の声。頭が上手く働かないのか、言葉も何処かたどたどしい。

 

「おい、そっちじゃない。もう一つの方だ。」

 

 そんな少女に対し、無慈悲に魔女は告げる。しかし、声音は楽しんでいる様だ。

 

「――――っ!」

 

 影が少し大きく揺れた。

 

「さぁ、名前を呼べ。甘く、私を求めながら、な。」

「……う…ん、あっ………んんっ………」

 

 言葉にならない声を出しながら、少女は自身の上に乗る魔女の首に、腕を回し、引き寄せる。そして彼女の耳元で

 

「…―――――」

 

 人の名を口にした。

 

「うん、やはり良いな。お前は。」

 

 満足したのだろうか、柔らかな笑みを彼女は浮かべる。が

 

「…だが、ダメだな。もう一度だ。」

 

 意地の悪い笑みを浮かべ、自身の親指を少女の唇に這わせる。一通り感触を楽しんだのか、指を離し、今度はその唇に深く、口付けをする。

 

「ん―――――、…はぁっ…、あぁ、…は、はな…し……が、んっ、ち、ちが………」

「今更何を言う、満更でもない癖に。」

「―っ!!」

 

 先ほどよりも大きく、影が揺れた。

 まだまだ日は昇りそうに無い。

 

 ・

 ・

 ・

 

 余談だが、翌日、少女はお昼過ぎに起きる事となる。

 そんな彼女の第一声は

 

「腰が痛い」

 

 それを聞いた少女の兄と姉は

 

「「ん?」」

 

 と不思議そうに、首をかしげていた。

 




最後のは、本編の大筋とは関係の無いおまけです。
後悔はしていない。

ノネットさんのとこで区切ろうとは最初から思っていたのですが、文字数にすると少々少なく感じて寂しくなったので書き足しました。

ノネット・エニアグラムというキャラは、もともとはゲームオリジナルキャラですので、知らない方は調べてみるか、ロスカラをやってみてね(布教)
ちなみにライ君は出す気無いので、あしからず。

出すと、主人公喰われてしまうので……
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