今回のお話、いつもに増して変な所多いかもしれません。
許してください、なんでもしますから。
では、どうぞ。
「キョウトからのラブレター、見た?」
『ああ、さっき扇から受け取ったよ。』
黒の騎士団がアジトとして使っているトレーラー。その2Fにあるゼロの私室に、アルカは居た。
部屋にあるベッドにうつ伏せになりながら本を読んでいる。彼女はこうしてゼロの私室で過ごしている事が多い。他のメンバーはゼロの部屋に入り浸るアルカに不思議そうな目を向けている。それに対して彼女は一言、「作戦会議!」と言って言いくるめているのだから、彼女の組織内における信頼は相当なものだ。そんなアルカを横目に、ゼロは自身の仮面に手を伸ばし、それを外した。
「日本解放戦線、見捨てた甲斐があったね。」
「ああ、これでキョウトも黒の騎士団に支援するしか道が無い。後は主導権をこちらが握ることが出来れば条件はクリアだ。」
彼女は横にしていた身体を起こし、椅子に座るルルーシュの方へ身体を向ける。
「日本解放戦線の…えっと、片瀬?はどうするの?どさくさに紛れて逃げたんでしょ?」
「何、今は放っておくさ。使い道が無い事も無いしな。」
「コーネリアに対する囮とか?」
「まぁ、そんな所だ。」
ふと、部屋に扉をノックする音が響く。
「誰だ。」
「私です。あの、さっきは出過ぎた事を言って、すみませんでした。」
「…カレン、君も私の素顔が知りたいか?」
「………、いいえ、失礼します。」
カレンの足音が遠ざかる。2人の短い会話を黙って聞いていたアルカは、彼女の足音が聞こえなくなったタイミングで口を開いた。
「信用を完全に得るのは、難しいね。」
「ああ。玉城を中心に、未だにゼロに対する不信感を感じる。このままではコーネリアと戦うどころじゃない。早急に改善する必要がある。」
「ふふ、その為のキョウトでしょ?」
「ふ、勿論それだけでは無いがな。ただまぁ、キョウトの代表からゼロが認められれば、あいつらの不信感も払拭されるだろう。」
ルルーシュは手に持っている資料に目を落とす。そこにはある老人の名前と写真、大まかな経歴が記載されている。
キョウト六家、桐原泰三。そこにはそう、記されてあった。
◇◇◇
日本――エリア11におけるサクラダイト採掘量は世界一。そしてその殆どは富士鉱山から取れるという。日本がエリア11として支配下に置かれてからというもの、サクラダイト採掘施設として、その姿の半分は機械に覆われている。かつての日本の象徴は、ブリタニア帝国の養分となっているのだ。
そんな富士鉱山に、黒の騎士団は居た。
「醜かろう?」
老人の声が響く。年老いているものの、何処か覇気を感じる圧の強い声。
声のする方へ、皆が一斉に目を向ける。そこには駕籠があった。幕が下りており、中に居る人物の顔を見えない。近代的な施設の中にある物としては、余りにも異質だ。
「かつて山紫水明、水清く豊かな霊峰として名を馳せた富士の山も、今は帝国に屈しなすがままに凌辱され続ける、我ら日本の姿そのもの。」
よく舌が回る老人だ。とアルカは思った。
(この状況を望んだのは自分達であろうに。)
キョウト――表向きにはNACというブリタニア内政省の管理下にある団体。早々に国を見捨て、ブリタニアに媚び諂い、自分たちの権力だけを保持しようとした売国奴の集まり。というのがアルカのキョウトに対する評価だ。
「顔を見せぬ非礼を詫びよう。が、ゼロ。それはお主も同じこと。」
「……………」
ゼロは喋らない。
「ワシは見極めなければならない、お主が何者なのかを。その素顔、見せてもらうぞ。」
黒の騎士団を囲む様に、複数の無頼が現れる。それぞれが持っているライフルをゼロに向け、停止した。
「お待ちください!」
カレンがゼロを庇う様に、両手を広げ、老人に主張する。彼が居なければ勝てなかった。と。
そんな彼女の主張を、老人は一蹴し、扇にゼロの仮面を取るように命じる。
「すまない、ゼロ。でも俺も信じたいんだ、お前を。だから信じさせてくれ。」
扇が仮面に手を掛け、外す。仮面の下から現れた姿は―――
「お、女!?」
「そんな……」
緑色の髪をした少女、C.C.。
「違うわ!この人はゼロじゃない!私は見た、この人とアルカとゼロが一緒に居るのを!」
「そこな女、誠か。」
「ああ。」
いつもと変わらず、無機質な声で彼女は呟く。
「しかもお主、日本人じゃないな?」
「イエスだ、キョウトの代表。桐原泰三。」
「貴様!」
その名を彼女が口にした途端、SPの表情が変わり、懐から銃を取り出す。
あーあ、これじゃ正解ですって言ってるようなものじゃん、とアルカは呆れた顔で
『アルカ、頼む。』
ゼロの声がコックピット内に響く。頃合いだ。
「うん、任せて。」
突如、黒の騎士団を囲んでいた無頼の一機が、目の前の無頼2機に対し、スラッシュハーケンを飛ばす。突然の事に反応出来なかった無頼は、その手に持つライフルを地に落とす。今度は横にいる無頼に対して、スタントンファーを振り下ろす。上からの圧力に無頼はバランスを崩し、膝を突く。
そして、桐原泰三に対して、ライフルを向けた。
『ぬるいな。それにやり方も、考え方も古い。』
機械交じりの声が、闇から響く。闇の中から仮面の男、ゼロが現れた。
『だから、あなた方は勝てないのだ!』
「ゼロ……?それにこの無頼の動きは…アルカ……?」
カレンは唖然とした表情で呟く。
『桐原泰三。サクラダイト採掘業務を一手に担う、桐原産業の創設者にして、枢木政権の陰の立役者――――。』
ゼロは桐原泰三に関する情報を口にしながら、彼にゆっくり近づいていく。
「………キョウトの妖怪、か。」
そんなゼロの言葉を聞きながら、アルカは無頼のコックピット内で、いつか見た夢の事を思い出していた。
『貴方のお察しの通りだ、私は日本人ではない!』
カレンを始めとする黒の騎士団のメンバーが、あまりの驚きに声を上げる。
「日本人ならざるお主が、何故戦う?何を望んでおる?」
「ブリタニアの崩壊を。ふ、貴方が相手で良かった。」
言葉と同時にゼロは仮面に手を掛け、素顔を晒した。
「っ!お主……」
「お久しぶりです、桐原公。」
◇◇◇
無頼のコックピット内でアルカは操縦桿から手を離し、身体から力を抜く。桐原泰三がゼロの話を聞く気になったからだ。
「…あとは、兄上次第、か。まぁ大丈夫だろうけど。」
ルルーシュと桐原泰三が顔を合わせるのは、これが初めてではない。7年前の夏、ルルーシュとナナリーが日本に送られた際に会っているのだ。そこに会話は無かったものの、ルルーシュの素性を知っているのなら、仮面を被り、ブリタニアに反逆する理由にも合点がいくだろう。あとはこの場で桐原本人から認めて貰えれば、ゼロに対する不信感も緩和するはずだ。
無頼のハッチを開け、コックピットから出る。
「やっぱり!アルカ!!」
「やっほ。」
カレンの反応に対し、アルカの返事は場違いな程軽い。
「なんだぁ?お前、今日は休みっつってなかったか?」
「ああ、すみません、黙ってて。私は私で、仕事があったんです。」
「でも…、私達くらいには、話してくれても……」
玉城、カレンがアルカに言い寄る。
「おい、そう虐めてやるな。こいつもゼロに頼まれてやっただけなのだから。」
初対面とは思えない口調で、ゼロの姿をしたC.C.はアルカの肩を抱く。
「ちょっとあんた、アルカに馴れ馴れしくない?」
「馴れ馴れしいも何も。お前よりもアルカとは長い付き合いだぞ」
「カレン、この人はね……」
そういえばC.C.と再会出来た事、話してなかった。と思い、アルカは口を開こうとすると
「アルカ、こっちに来てくれ。」
桐原泰三と話している筈のゼロ=ルルーシュに呼ばれ、意識をそちらへ向ける。
(………?私が桐原と話す事なんて……)
頭に疑問を浮かべながら、アルカはルルーシュの元へ足を運ぶ。
「……お主が、アルカか。」
「……はい、初めまして、桐原泰三様。アルカ・アングレカム…いや、アルカ・ヴィ・ブリタニアと申します。先ほどの非礼、この場を借りてお詫び致します。」
元来の育ちの良さからか、大人顔向けの礼儀で、その形の良い頭を下げる。
そのアルカの仕草を桐原は何処か懐かしむ様な目で見ている。
「……かかっ、よい。顔を上げよ。」
「さぁ、話してもらいましょうか、桐原公。何故彼女を知っているか。」
「私を、知っている……?」
彼を見つめるルルーシュの目は敵意に満ちている。
返答次第では、この場で殺してしまうのでは、と思う程に。
「……まだこの国が日本として、世界に誇る経済大国としてあった頃、ブリタニアから取引を持ち掛けられての。」
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皇歴 2003年 日本
ブリタニアとの戦争が起きる7年前。
サクラダイトの利権を巡り、当時からブリタニアと日本の間では小さい争いが絶えなかった。何がきっかけに戦争になるか分からなかったこの時代。日本政府は戦争を回避する為、日夜対応に追われていた。
当時はまだ一議員だった枢木ゲンブもその1人。キョウト六家の出身である彼を、桐原は陰ながら支援する事で、自身も間接的に政治に関わっていた。
そんな時だった、ブリタニアから取引を持ち掛けられたのは。
キョウト六家の当時の当主、皇
ブリタニアが何故、皇との子を欲するか、結局桐原は理解することが出来なかった。
しかし意図はどうあれ、見返りは彼にとって魅力的だった。
政府は超大国であるブリタニアとの戦争を回避しようとしていたが、桐原からすれば無駄な行いに見えた。なぜなら遠くない未来、必ずブリタニアとは戦争になる、それが桐原の考えだったからだ。そもそもブリタニア側がそういう姿勢なのだ。戦争をする口実を探す様に、ブリタニアは日本に対して動いていた。
勝てば、日本は世界有数の大国として発展する、負けてもある程度の自治を認められる、それに加えて。
(日本が属領となった場合、皇族に身を置く"皇"の子供がブリタニア崩壊への足掛かりとなる。)
ブリタニアの顔とも言える皇族の中に、ナンバーズの血を引く子供がいると知られたら、国の根幹を揺るがす大きな爆弾となる。その爆弾を、ブリタニアは自ら抱え込むと言ってきているのだ。
(負けた時の保険として、取引に応じるのも一興かの。)
そして桐原は、皇造の種――つまりは精子を冷凍保存してブリタニアに提供した。
◇◇◇
「そしてその2年後、子が誕生したと、ブリタニアから連絡があった。」
「……その子供が…私………?」
アルカの目が大きく見開かれる。いや、彼女だけではない。彼女の隣に居るルルーシュも、同じ様に驚愕を露わにしている。
「まさか庶民の出である、マリアンヌ王妃が子を成すとは思っていなかったがの。皇族の血を引く王妃が産むとばかり思っていたが……。」
「じゃあ…アルカは、皇族ですらない………」
「血だけで見れば、そうなるの。シャルル・ジ・ブリタニアの子では無いのだから。」
一見すると、ブリタニア側に得が無いこの取引。
桐原が言う様にアルカの存在はつけ入る隙となる。
(日本人とのハーフ…。皇族の血すら引いていない。だから母上はアルカを騎士の道へ……、しかし、そこまでするなら、そもそも何故産んだ?)
答えは出ない。
(皇族の血を引かない子供、しかも当時は違うとはいえ、ナンバーズの血を持つ子供を皇族に迎え入れるメリットが、母上がアルカを産んだメリットが、当時のブリタニアに合ったということになる)
だが、そうだとしたら、何故アルカは切り捨てられた?
母上が死んだからか?
日本が属領になったからか?
ルルーシュの意識は、浮かび上がる疑問に向く。だから気が付く事が出来なかった。隣に居る妹、アルカの様子に。
「そう……ですか。母上の私に対する態度、ようやく合点がいきました」
穏やかに笑みを作り、彼女は言葉を続ける。
「でも新たに確かめたい事も出来ました。母上の事、ブリタニアの真意、もっと調べないと。ね、兄上。」
至っていつもの調子で、兄に妹は話しかける。
「ん?あ、ああ、そうだな…。」
「本当に私がキョウト六家の血を引くのなら、黒の騎士団への支援を惜しまないでしょう?」
「ああ、そのつもりだ。お前達はブリタニアの偽り無き敵。扇らにもワシから伝えよう。」
「それは良かった。」
振る舞いはいつもの彼女。しかし、何かが違う。
「正し、条件がある。黒の騎士団のメンバーとして活動をしている間は皇と名乗れ。」
「……日本人達の象徴になれ、と?」
「ゼロと2人でな。顔を晒せぬゼロだけでは、民衆の不信も募るじゃろう。ゼロに足りぬ部分をその血で補うのじゃ。皇の血縁者が協力していると知れば、支持する声もより増えるじゃろう」
「……良かった。ここでキョウト六家に身を置けとか言ってきたら、どうしようと思っていました。…うん、まぁ。それくらいなら良いでしょう。」
普段のルルーシュなら気づいただろう、彼女の笑顔が作られたものであると。その瞳の奥に、悲しみの色を宿していると。
◇◇◇
トウキョウ租界
昼間の晴天が嘘のように、激しい雨が降っている。
雨が降っている所為か、いつもより人通りが少ない繁華街。傘もささずに1人の少女が歩いていた。
その綺麗な髪を雨で濡らし、アメジスト色の瞳は、何処か虚ろで危うい。
(皇……、枢木宗家にあたる家。日本における古くからの名家……か)
当時の大人たちの都合で、私は生まれた。
母上が何故、私を産んだのか。何故私を皇族として育てたのか。それは分からない。
だが少なくとも、何かしらの利益があって産んだのだろう。そうでもない限り、私を産む利点が無い。
(ふふ、まるで物みたい)
思わず自身を嘲笑する。
実の妹だと思っていた私が、種違いと知って、兄上はどう思っただろうか。姉上はどう思うだろうか。
母上は何を思いながら、私を育てたのだろうか。
私の誕生は、誰かに望まれたものであったのか。
「……私が生まれた理由ってなんだろう?」
少女の呟きは、雨の音によってかき消された。
ルルーシュはKMFの操縦は特別上手い訳じゃないからね、より確実な方を選びそう、ということで。アルカを無頼に乗せました。
今回の話の影響で、stage.5の内容を一部変更いたします。
本当は、変更してから今回を投稿するべきだったのですが、時間かかりそうだったので先にこっちを……
ご容赦ください。
皇造は名前だけのオリキャラですね、もう多分出てこないです。
皇家が枢木宗家というのも独自設定です。
原作では親戚としか言っていないので詳しい関係は分かりませんが、この作品では宗家と分家という設定で行きたいと思います。
ご了承ください。