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返信してないのも何個かありますが、全部目を通しています!
「やっ、と……、み、見つけ、たぁ…!」
声の主の方へ、少女は顔を向ける。そのアメジスト色の目は赤く充血しており、涙を浮かべている。
「…お兄ちゃん……」
兄と呼ばれた少年は、泣き腫らしている少女の隣に座る。
「随分、探したんだぞ…。ここは広いんだから、あまり遠くに行かないでくれよ……。」
幼いアルカとルルーシュだ。
まだ2人がブリタニア本国で暮らしていた頃。2人が住むアリエスの離宮での出来事。
「……ごめん…」
アルカの顔は曇ったままだ。
「母上の訓練が厳しかったのか?」
アルカは首を横に振る。
「カリーヌ姉様が…」
「……またあいつか。」
今度はルルーシュの顔が曇る。
カリーヌ・ネ・ブリタニア。ルルーシュにとっての腹違いの妹で、ナナリーとアルカにとっての異母姉。ルルーシュ達、ヴィ家を毛嫌いし、顔を合わせれば罵詈雑言を投げかけてくる帝国の第5皇女。
「一人だけ騎士を目指しているのはおかしい、兄上と姉上の本当の妹じゃないんじゃないの?って言われた。」
「…………」
カリーヌは短絡的で幼稚な性格だ。そんな彼女の悪口など、普段のアルカなら何処吹く風と聞き流しそうだが、とルルーシュは思った。
しかし、当時のルルーシュは気づかなかった。この弱肉強食の環境で、彼女がどれ程、ルルーシュとナナリーの実妹である事を誇らしく想っているか。それがどれだけ彼女の支えになっているかを。
「私は、2人の妹だから、頑張れて、いるのに…」
思い出してか、再びアルカはその目に涙を浮かべる。
「……アルカ、誰に何を言われても気にしちゃダメだ。」
ルルーシュはアルカの頭に手を乗せる。
「また同じ様な事を言われたら、思い出すんだ。僕達と一緒に過ごしてきた日々を。」
アルカは静かに、ルルーシュの話を聞いている。
「どんなに否定されようと、アルカが僕達の妹として過ごしてきた日々は変わらない。
たとえ何が起きても、僕達の妹はアルカだけだよ。」
充血した目を見開き、兄を見つめるアルカ。
「さぁ、帰ろう? 母上とナナリーも待っている」
ルルーシュは立ち上がり、自身の妹に手を差し伸べる。
そんな兄を見てアルカは、さっきまで曇っていた顔に笑顔を浮かべ、差し伸べられた手を掴む。
「うん、お兄ちゃん」
◇◇◇
シャーリーのお父さんが亡くなった。他でもない、
ナリタでの戦いで起こした、土石流に巻き込まれたようだった。
「その…ごめんなさい、シャーリー……」
「なんでカレンが謝るのよ……」
カレンの謝罪に対して、シャーリーが努めて明るく応じる。
誰もがその彼女の姿を見て思っただろう。無理をしていると。
シャーリーの言葉に、カレンは何も返すことは出来なかった。それもそうだ。私達がやりました、などと言える筈もないのだから。彼女の謝罪は無意識から出たものだろう。カレンは優しいから。
「…………」
兄上は俯いたまま、シャーリーに目を合わせようともしない。自身のその命令で、作戦で殺してしまった結果を受け止めきれないのだろう。
2人とも自責の念で押しつぶされてしまいそうな顔をしている。
それに対して、私は。
(この結果を、すんなりと受け止めてしまっている自分がいる)
勿論、悲しくない訳じゃない。巻き込んでしまった事に対するショックもある。しかし、2人ほど自責の念に駆られない。
皇族を追われたあの日から、何かを犠牲にしながら生きてきた。そうしなければ生きていけなかった。
そして、それは今も変わらない。その犠牲が友人の父親に代わっただけ。
ここまで考えて、自身を嘲笑する。
(……いや、自分の事で手一杯なだけか)
ダラダラとそれらしい理由を並べたが、結局は私が不器用なだけだ。
自身の出生を知ってから、兄上と姉上と種違いと知ってから、私の頭はそれでいっぱいだった。
そこに飛び込んできた友人の父親の死。そっちに意識を向けられる程、心に容量が無かった。
「卑怯だ!」
スザクが声を上げる。
「黒の騎士団は…ゼロのやり方は卑怯だ!
自分で仕掛けるのでも無く、ただ人の尻馬に乗って、事態をかき回しては審判者を気取って勝ち誇る!
あれじゃ、何も変えられない…
間違ったやり方で手に入れた結果に、意味なんて無いのに……!」
スザクの言葉に、兄上とカレンは肩を震わす。
場が静寂に包まれる。
誰も彼の言葉に、反論する事が出来なかった。
「さ、私達はこの辺りでお暇しましょうか。」
場の空気を変える様に、ミレイさんがいつもの調子で言った。
正直、こういう場での彼女は心強い。
兄上とシャーリーを残し、私達はその場を後にする。
その間、誰も口を開くことはなかった。
◇◇◇
『ねぇ、アルカ。私達のしている事は、正しいのかな……』
「………シャーリーのお父さんの事?」
『うん……』
クラブハウスの自室でC.C.と過ごしている時、カレンから電話がかかってきた。
「…何が正しいかは、結果が出るまで分からないよ。だから私達は、自分達の行いを信じて進むしかない。」
『分かっているけど…。でも……』
「犠牲が出る。だから足を止めるの? そうじゃない、払った犠牲を無駄にしない為、前に進み続けるの。どれだけ恨まれようと、成し遂げなければただの人殺しで終わってしまう。」
そんな私とカレンの会話を、C.C.は私の膝の上に頭を乗せて、静かに聞いている。
『アルカは、強いのね。』
「……強い、強いか。違うよカレン、弱いの。だからそうやって割り切らないと前に進めない。」
『アルカ……』
「ごめんね。今日の作戦、不参加で。」
『いや、いいのよ。調子悪いんでしょう? それに新型が来るまで、戦線に参加させるのは危ないってゼロも言っていたし。ゆっくり休んで。』
「うん、ありがとう。気を付けてね。」
カレンとの電話を終え、ケータイを放り投げる。
「今日は、片瀬とか言う男の救出作戦、だったか?」
私の膝に頭を乗せるC.C.が、口を開く。
「表向きには、ね。キョウトからの要請もあるし、団員達の声も上がっている。流石に無視するとゼロのようやく出来た信頼も揺らいでしまう。」
「だから、救出するふりをして、囮として見捨てると。正義の味方とは思えないな。」
「既に死に体とは言え、日本解放戦線の象徴である片瀬が生き残っているとなると、黒の騎士団への支持も支援も、二分化されてしまうから。」
「………まぁ、良かったよ。あそこであいつが足を止めなくて。」
C.C.が落ち込む兄上の背中を押してくれたらしい。と言っても、殆ど悪口だったみたいだけど。
「それにしても、解せんな。こんな状態のアルカを放置し、別の女に気を向けるなんて。」
「あはは…。まぁ兄上とシャーリー、仲が良いから……。それに今日、休ませてくれたし。」
「私が言っているのは、あの男は言葉が足りん、という事だ。」
自身の出生を知ってから、今日まで。兄上と碌に話をしていない。
桐原との会合があったその日のうちに、シャーリーの父の死を知ったんだ、無理もない。
「……アルカ、無理するなよ。あまり抱え込み過ぎると、お前が壊れてしまう。」
C.C.の綺麗な手がアルカの頬に添えられる。
「ただでさえ、抱え込んでいるんだ。ルルーシュくらいになら、話してみてもいいとは思うが。」
その言葉に対し、アルカはその瞳を大きく震わせた。何かに怯えている、そんな風に見える。
「……無理にとは言わないが、心に留めておけ」
C.C.はアルカの膝から頭を下ろし、自身の横の空いているスペースをポンポンと叩いた。寝ろ、という事だろう。
アルカはそれに応じ、C.C.の横に寝ころぶ。
「まだ寝るには早……うわぁ!?」
アルカの言葉を遮り、C.C.はアルカを抱きしめ、自身の胸の中へ引きずり込む。アルカを抱き枕にしている構図だ。
「いいから寝るぞ。寝れば幾分か、気分転換にもなるだろう。」
彼女の強引な物言いに、思わず苦笑する。
が、その強引さが心地良い。
アルカはそう考えつつ、静かに目を閉じた。
・
・
・
皆が寝静まった深夜、扉の開閉音でアルカとC.C.は目を覚ました。ルルーシュが帰ってきたのだ。
「おかえり…兄上」
「随分と遅かったじゃないか。首尾はどうだったんだ?」
「あ、ああ…。ただいま……」
姉上は寝ているし、明日は学校が休み。久しぶりに兄上と話せる時間が出来るかもしれない。
寝る前のC.C.の言葉を思い出し、意を決して口を開こうとする。
「あのね、兄上……」
「顔を見られた可能性が高い。」
「何?」「え?」
私の言葉を遮り、兄上が衝撃的な事実を口にした。
「持っていた銃が無くなっていた。俺が気絶している間に誰かが持ち去ったんだ。現場に血痕が残っていた。」
「という事は、少なくとも2人に……?」
「ああ、撃った奴と撃たれた奴、2人居る筈だ。」
「現場には誰が?」
「日本解放戦線の生き残りとブリタニア、それに黒の騎士団。前者2つの可能性は低い、俺がこうして無事なのだから。」
「黒の騎士団の方は?」
「無い…とは言い切れないが、少なくとも扇達は何時もと変わらなかった。」
「他に手掛かりは?」
私の言葉に兄上は顔を曇らせた。
「……あの戦場で、シャーリーを見た気がする。」
「ああ、お前とキスした女か」
今まで沈黙を守っていたC.C.が口を開く。
「っ………、しつこいな!」
苛立ちを隠すことなく、兄上は声を上げる。
「確認しただけだ、色ガキめ。しかしだとすると、私達が当面探るべきは…」
まだ私は、兄上と話せそうにない。
◇◇◇
アッシュフォード学園 学生寮 シャーリーの部屋
「どうして私が、他人の下着を漁らねばならんのだ。この貸しは高いぞ。」
色とりどりの下着が入ったタンスの中を漁りながら、C.C.は文句を口にする。
「分かっている。……アルカ、女性がモノを隠す時は、一般的に何処に隠す?」
シャーリーと一番歳の近いアルカは感性も似ているだろうと考え、ルルーシュは聞く。
「えぇ? そんなの分からない……。うーん、ベッドの下?」
「エロ本か。」
「え? そういう本ってベッドの下に隠すの?」
「男は大抵そうだ。試しにルルーシュのベッドの下でも漁ってみたらどうだ?」
「あるわけないだろう。そんなもの。」
アルカとC.C.の会話をBGMに、ルルーシュは時折口を挟みながら室内を物色する。
「日記も14日までしか書いてないし……」
シャーリーの日記のページを目に通しながら、アルカは呟く。
「…彼女のお父さんが亡くなった日だな……。あっ」
完全には振り切れていないのだろう、動揺からルルーシュが手に持っていた箱が零れ落ちた。
「これは……」
「兄上の写真…?」
その箱の中にはルルーシュの写真がいくつも入っていた。
「いじらしいじゃないか、容疑者にしては」
「本当に兄上の事、好きなんだね…」
「………っ」
ルルーシュは表情を曇らせたまま、机の上に置いてある本を手に取る。電車の時刻表だ。あるページに付箋が貼ってあり、そのページをルルーシュは開く。
「…ナリタ……?」
◇◇◇
ナリタ 慰霊碑の前
(ルル、どうしてこんな事を……)
ゼロの正体を知ってしまった。ヴィレッタという軍人にそそのかされ、ルルーシュの後を尾行した日の夜の出来事だ。
「さぁ? どうしてだろうねぇ。」
ふと、声が聞こえた。人を小馬鹿にした様な、男の声。
「立派な慰霊碑だね、シャーリー・フェネットさん。」
振り向いた先には、長身の男が居た。その目をサングラスで覆い、リズムを取るように一定の間隔で手を叩いている男が。
(え、誰?)
シャーリーは何も言葉を発していないのにも関わらず、男は続ける。
「酷い男だね、ルルーシュは。」
「どうして、ルルの事を……。」
怖い、とシャーリーは思った。全てを見透かしている様に語るこの男が。
「騙していたんだろう? ホントはゼロなのに。」
「誰なの、あなた……?」
新しい玩具を見つけた子供の様に、男は語る。
「彼は君のお父さんを殺す命令を出したその口で、君の唇を奪ったんだよ?
許せないよねぇ?」
彼女は思わず後ずさる。
「罰を受けなくてはいけない、彼も。君も。」
「私も……?」
男の口が愉快そうに歪む。
「全部知っているよぉ、あの夜の事はね。」
ゼロの正体を、ルルーシュの顔を見たブリタニア軍人「ヴィレッタ・ヌゥ」を撃った時の光景が、彼女の頭の中に蘇る。
「君も殺人者、ゼロと同罪だね。」
シャーリーの顔がみるみる歪んでいく。
男はそんな彼女をたたみかける。
「その上、父親の死と引き換えに対価まで得て。」
耳を塞ぎ、崩れ落ちるシャーリー。聞きたくない、私の心を覗かないで。そんな気持ちが頭を支配する。
人を導く教祖の様に、男は語る。
「罪を償い、心を解き放たないと、君もルルーシュもあまりに可哀そうだよ。」
男のサングラスの奥にある瞳には、アルカとルルーシュと同じ模様が浮かんでいた。
総集編では大幅カット、劇場版ではそもそも存在が消されたマオ君。
コードギアスという物語全体で見れば、確かにそんな詳しく描写する必要無いですが、C.C.と依存しあっている主人公が居る関係上、彼を出さないと!という使命感に駆られました。
百合の間に挟まろうとする男 VS 絶対百合少女 VS ダークライ
お楽しみください。