いつもありがとうございます。
一時期ランキングの上の方に居て、嬉しくてにちゃにちゃしてました。
最近ギアスの小説増えましたね、うれちい。
では、どうぞ。
「……ここだと思ったんだがな。」
ナリタ連山の麓に建てられた記念碑。その前に3人は居た。
記念碑にはナリタでのブリタニアと黒の騎士団の戦いに巻き込まれ、亡くなった人々の名前が刻まれている。ユーフェミアが急いでこの記念碑を作らせたのは有名な話だ。
「手分けして探すしかないな。」
いつもとは違い、ゴシック調の服を身に着けたC.C.がいつもの様に無感動な声で提案した。
「じゃあ、3人で手分けを……」
「いや、二手だ。アルカは俺と一緒だ。」
「何を言う。アルカは私と行動する、お前が一人だ。」
「……何だと?」
「…はぁ………」
2人の言い合いに、アルカは思わずため息を付く。
「あの、私を1人にするっていう選択は……」
「無い。」「無いな。」
アルカの第三の提案は、全く同じタイミングで一蹴された。
「お前は追われているだろう、そんなやつとアルカを一緒に……。周りにはまだ軍も居るんだぞ!」
ルルーシュの言う通り、周りには軍から派遣された兵士やKMFが復旧作業を行っている。
「何度も言わせるな、追われているのは一部だけ。こんな所に派遣されるような軍人が、私達の事を知っている筈がない。」
「そうだとしても………!」
「それとも自分の妹に、痴話喧嘩を晒すつもりか? よく考えるんだな、ルルーシュ。正体がバレたのはお前だけ、そんな状態でアルカと共に女に会ってみろ。こいつまでバレてしまう。」
「…………っ」
C.C.はアルカの肩に手を回し、自身の身体に引き寄せる。
「なに、心配するな。こいつを危険に合わせるような事はしないさ。」
そう言ってC.C.は、アルカの手を引きその場を去った。
「…もしかして、気を使ってくれた?」
C.C.の顔を見上げ、アルカは呟く。
「……今の状態では、ルルーシュと一緒に行動するのは気が重いだろう?」
「…………」
何も言い返さない代わりに、アルカはC.C.の手を強く握り返した。
◇◇◇
「じゃあ、高いところからでも見渡せばぁ?」
馬鹿にしたような口調で、目の前のバイク跨る男は言う。
ルルーシュの女を見ていないか、聞いただけでこの態度。話にならん。
「分かったもういい。アルカ、行くぞ。」
「………」
「…? アルカ?」
アルカからの返事が無かった事を不思議に思い、彼女へ眼を向ける。
視線は一点に注がれていた、横を通り過ぎる登山鉄道に。
「あれ、兄上? …あと1人は……誰?」
登山鉄道の車内に、見知った顔が一つ。ルルーシュだ。
その前を歩く長身の白髪の男。瞳をサングラスで覆い、口元は愉快そうに笑みを浮かべている。
「……あっ…………」
心臓の鼓動が早くなる。動揺でその目が大きく見開かれる。
「まさか、マオ?」
「…マオ?」
聞き覚えの無い名前に、アルカは首を傾げた。
「なぁ、もう行っていいかな?」
蚊帳の外だった男が痺れを切らして、話しかける。
「おい、そのバイクを貸せ」
「C.C.?」
「はぁ?嫌に決まってんだろ………」
突然のC.C.の横暴な物言いに、男は反論する。が、彼女の纏う雰囲気がそれをねじ伏せる。
(兄上と口喧嘩している時とは、比べ物にならないくらいの威圧感だ……)
態度を変える様子無く、C.C.は詰め寄る。その黄金の目は酷く冷たい印象を受ける。
「これが最後だ。いいから、寄越せ。」
・
・
・
山頂に続く山道を、2人乗りのバイクが疾走する。
「C.C.どうしたの? そんなに焦って?」
バイクの後ろの席に跨り、その腕をC.C.のお腹に回すアルカが問う。
「ルルーシュと一緒に居た男に、憶えがあってな……!」
マオの事を思い出し、ハンドルを握る手に力が入る。
「それってギアス能力者?」
「ああ……!ルルーシュにとっての天敵だ…!」
その言葉を聞き、アルカの腕にも力が入る。
アルカを連れて行くという選択は失敗だったと言える。
C.C.はこの時失念していた。マオがC.C.に向ける異常な執着を。後ろに座る少女に、危険が及ぶ可能性が高い事を。
◇◇◇
ルルーシュのチェスの腕前はプロも顔負けだ。今まで、一人にしか負けた事無いし、チェスの代打ちでお金を稼いだこともあった。そんなルルーシュが。
(馬鹿な…この俺が完全に読み負けるなんて………!)
全ての策が悉く潰される。達人同士の接戦では無い。まるで手玉に取られている様に、一方的にルルーシュが負けている。唯一彼を負かした男、シュナイゼルとのチェスだってここまで一方的な展開にならなかった。
(何者だこの男……?)
「聞いて無いの? C.C.に。」
「っ!!」
C.C.の名を聞き、いくつかの可能性が浮かぶ。
「流石だねぇ。僕の正体について一瞬で14の可能性を考え付くなんて。」
こちらの調子を崩すように、一定のリズムでマオは手を叩く。
「しかも、その内の一つは大正解。」
マオはサングラスをずらす。その現れた両目は赤黒く、幾何学めいた模様が浮かんでいる。
「ギアス能力者!!」
すかさずルルーシュはギアスを掛けようとするが、その前に彼はサングラスを元に戻した。
「おっと、君のギアスは相手の目を直接見なければ使えない。そういうルールも全部分かっちゃうんだよねぇ。」
「思考を読んだ!?」
「そういうギアスなんだよ、僕のは。」
思考を読むギアス、不味いな。とルルーシュは考えた。
(俺のギアスも、アルカのギアスも発動条件は同じ。掛ける前に対策されてしまう……)
ルルーシュの頭で考える癖は強みと言えるが、思考を読むことが出来るマオの前では弱点となる。
「ん、アルカ……? 他にも能力者が居るのかい?」
「………っ!」
思わず舌打ちをする、この男の前では何もかも見透かされてしまう。
電車が大きく揺れ、その動きを止める。
山頂の駅に着いたようだ。
「んまぁ、いいや。僕が用あるのは君。さぁ、罰ゲームを始めようか。」
窓の先には銃を構えたシャーリー。マオに対して向けているのではない、ルルーシュに向けている。
「シャーリー……!!」
・
・
・
「なんだよ、折角ドラマチックにしてあげたのに。」
シャーリーのトラウマを利用して、ルルーシュを殺害しようとしたマオだが、それは失敗に終わった。
ゼロに対する憎しみとルルーシュに対する恋慕がごちゃ混ぜになった事で、まともな思考が出来なくなり、彼女の手綱を握ることが出来なくなった為だ。
「まぁ、いいや。つまらないけど、2人まとめて……」
マオは電車の中に置いてある銃を取りに、中へと入る。その瞬間、列車のドアが閉まり、動き始めた。
「……! 誰だ!? 僕が気づかないなんて……! まさか!」
視線の先にはC.C.が居た。マオの方へ銃口を向けて、悲しそうな表情で彼を見つめている。
「やっぱり! 君なんだね! C.C.……!」
マオは子供の様な無邪気な笑顔で、彼女を見つめる。がそれも一瞬の事。彼の視線は別の者に注がれた。
銃を持っていない方のC.C.の手を掴み、嫌悪感を含んだ目で彼を見つめる少女、アルカに。
(C.C.、アルカ……!!)
ルルーシュの心の声が、頭に響く。
「ああ、そうか。君が。」
口元を歪めて、マオは呟く。その目に狂気を宿らせて。
「君が本当の、泥棒ネコか。」
嫉妬の感情に支配されているマオはこの時、大きな見落としをしている事に、気づく事が出来なかった。
◇◇◇
ナリタからトウキョウ租界へ向かう電車の中。
「まず確認したい。お前は敵か? 味方か?」
シャーリーの記憶をギアスで消したルルーシュは、C.C.に問う。
「何を今更。」
いつもの調子で彼女は答える。しかし、その端正な顔は愁いを帯びている。
「あのマオという男は、他人の考えを読み取るギアスを持っている。それでいいのか?」
「そうだ、ギアスの発現の仕方は人によって異なる。マオの場合は、集中すれば最大500m先の思考を読むことが出来る。その気になれば深層意識まで読み取れる。頭で戦うタイプのお前には最悪の敵だよ。」
「深層意識……、トラウマとかも…?」
アルカが少し怯えた様に、C.C.に聞く。
「………ああ。」
「……まぁ、想像はしていたがな。俺達以外にもギアスを使えるやつが居るってことは。あいつもお前と契約したのか?」
「15年前に。アルカと出会う前の事だ。」
「はん、大先輩って訳だ。」
15年前……、C.C.が本国に来る前の事だろうか、とアルカは考えた。
「私より前の契約者……」
少し、心がざわつく。
「で? その大先輩は俺達の敵か?」
「マオの目的は私だ。敵と言っても命を狙ったりは……」
そこまで言って、C.C.はハッとした顔でアルカの方へ向く。
「………C.C.?」
ルルーシュはイラつきからか、そんなC.C.の様子に気付かない。
「あいつの能力条件は?」
「……ああ。マオのギアスは強い。お前らの様に回数制限も、目を見るとかの制約も一切無い。」
ギアスの効力の強さは、素質によって決まる。素質が低ければ様々な制約を課されるし、そもそも発現しない場合もあるという。素質だけで言えば、ルルーシュやアルカよりも高い。
「ふん……、素質、か。そういう意味ではアルカの素質は俺より低いという事か。」
アルカ本人から聞いた、彼女のギアス能力を思い出す。同系統の能力ならば、より限定的な能力を持つアルカの方が素質は低い。
ルルーシュはそこで安堵した。力が限定的な分、彼女とギアスの関わりが薄くなると考えたからだ。
(出来る事なら、アルカには普通の道を歩んでほしいからな……)
目の前に座る妹へ、目を向ける。
俯いている為、表情は見えない。
「…ふん、そうだな………」
俺の呟きに対し、C.C.は何処か歯切れ悪く答える。
「…話を戻そう。弱点は無いのか?」
マオのギアス能力は分かった。確かに厄介だが、付け入る隙は必ずある筈だ。
「…強いてあげれば、マオは能力をオフに出来ない。常に周囲の心の声が聞こえてしまう。本人が望もうと、望むまいと。」
◇◇◇
ルルーシュの弱点であるナナリーとアルカ。
深層意識をマオに知られたことから、ルルーシュはクラブハウスに身を置き、2人を守っていた。
「最近はお兄様とアルカが家に居てくれるので嬉しいです!」
ナナリーはその顔に笑顔を咲かせながら言う。
「私も。久しぶりに姉上と一緒に過ごせて嬉しいよ。」
同じ様に、アルカも笑顔で応じる。しかし、その笑顔は何処かぎこちない。
自身が半分しか血が繋がっていない事を気にしている為だろう。
ナナリーに対しても、まだ話せていないようだった。
「アルカは昔から、すぐ何処かに行ってしまいますから。口にはして無かったけど、心配してたんですよ?」
「え? そんなにフラフラしてたっけ?」
「はい、まるでネコみたいに。お兄様とよく、離宮内を探し回ったんですから。」
ルルーシュ達が住むクラブハウス内のリビングで、姉妹は思い出話に花を咲かせる。
その一方で、彼女たちの兄、ルルーシュは――――
「確かにアルカ達を守ることは必要だが、待っているだけでは……」
「黒の騎士団に捜させている。」
自室でC.C.と作戦を練っていた。いや、作戦会議というよりは言い合いに近い。
「ゲットーではなく、このトウキョウ租界に居たらどうする? 時間の無駄遣いだ。」
黒の騎士団は現在、エリア11で一番の反抗勢力と言える。
組織が大きくなった事で、そこに集まる情報、人、金も増えた。
しかし、あくまでも黒の騎士団は非名誉ブリタニア人の集まり。租界内までは、まだまだその力は及ばない。
「そんなことより私を使え。マオの目的は私だ、私が……」
彼女を知る者が見れば、同じ様に考えただろう。
珍しく焦っている、と。
「……なぁ、ギアスを使い続けると、俺やアルカもああなるのか?」
ギアスの制御が効かなくなり、常に発動しているマオ。
「それとも、お前との契約を果たせなかったから。ああなったのか?」
ギアスを使った行きつく先が、あの状態ならば………
ルルーシュの心に焦りが生じる。
「…使ううちにギアスはその力を増していく。克服できない者は、自らの力に飲み込まれていく。」
ルルーシュの顔に怒りの表情が浮かぶ。
「それを知ってて契約を持ち掛けたのか! 俺にも、マオにも、アルカにも……!」
「………そうだ。」
「契約の内容は?」
「………」
C.C.は何も答えない。
「お前は卑劣だ!」
ルルーシュの罵倒にC.C.は少し、悲しそうな表情を浮かべる。
「捨てる時になぜ始末しなかった? 力を奪うなり、命を奪うなり。その中途半端の所為で、シャーリーは!!」
ルルーシュは激しく彼女を責め立てる。無理も無い。彼女が過去に抱えた負債が、脅威として身の回りの者を傷つけているのだから。
「マオの事に関しては、別行動を取るべきだろうな。」
彼女はそう言って、ルルーシュの部屋から出ようとする。
「今日からしばらく、隣の棟に移る。心配するな、アルカは連れて行かない。私の傍に居ると、狙われる可能性が高いからな。」
「隣? 生徒会や文化部の部室が……」
「そんなものは知らん。後処理はお前がやれ。」
そう言い残し、彼女は部屋から去った。
「あ、C.C.……」
部屋を出ると、そこには不安そうな表情を浮かべたアルカが居た。人の感情に機敏な彼女の事だ、C.C.の今の表情を読み取ったんだろう。
「…アルカ、すまない。しばらくは別行動だ。」
先ほどのルルーシュとの会話とは打って変わり、優しい声音で語り掛ける。
「お前を守る為なんだ、分かってくれ。」
穏やかな表情を浮かべ、C.C.はアルカの頬に手を沿える。
「………うん。」
暗い表情のまま、彼女は小さく肯定した。
「……すまないな。」
そう言葉を残し、C.C.はこの場を後にする。
「………マオ。過去の契約者。」
1人残された廊下で、アルカは静かに呟く。
「私は彼を、認めない。」
そう呟いたアルカの瞳には、激しい怒りが宿っていた。
◇◇◇
「探しているのはリフレインの売人じゃない! マオという東洋人だと言っただろ!」
C.C.の脚が、目の前の男の喉に突き刺さる。
「租界で東洋人って言ったら、あとは下働きしかいねぇよ! 警察にでも行けって!」
喉を潰されている男は、顔に苦悶の表情を浮かべながら答える。
マオを探す為、租界内で情報を集めているC.C.。
彼女の声音は珍しく感情的で、顔には焦りの表情が浮かんでいる。
「警察は嫌いだ!」
苛立ちからか、脚により力が入る。
「じゃあ、黒の騎士団にでも頼みな…、裏ルートなら、今はあそこが一番強い!」
そこが役立たずだから、こうして探しているんだろう。とC.C.は思った。
「どいつもこいつも、同じ答えを……!!」
「当たり前だろ……!」
これ以上この男から有益な事は聞けそうにない。そう考えたC.C.は男を解放し、この場を去る。
「……どこに居るんだ、マオ。私はもう、お前とは……!」
C.C.の思考を焦りが支配する。
このままでは、ルルーシュがゼロとして活動できなくなる。
このままでは、アルカに身の危険が及んでしまう。
(マオとアルカを会わせてしまったのは失敗だった…! 早く見つけなければ、あいつの矛先がアルカへ向かってしまう……!)
初めて、私を受け入れてくれた。
初めて、私に感謝をしてくれた。
初めて、私自身を見てくれた。
モノクロだった私の世界に、色を付けてくれた大切な存在。
アルカアルカアルカアルカアルカアルカアルカアルカアルカアルカアルカアルカ――――。
私の可愛いアルカ。
「必ず私が、マオを始末する……」
彼女の黄金の瞳は、何処までも冷ややかだった。
小さい事ですが、マオの年齢が原作とは違います。
理由は主に主人公の所為です。
次回
C.C.と一緒に居る自分が大好きな男
VS
C.C.の事が大好きな少女
VS
ダークライ