年明けは忙しくて、中々執筆する時間が取れませんでした。
お気に入り、感想、評価など、いつもありがとうございます!
これらこそが僕の励みであり、原動力。
ではどうぞ。
「良かったのか?」
観光客、会社員……多くの人が行き交う空港で、黒色のウィッグを身に付けたC.C.はルルーシュに問う。
「何がだ?」
「分かりきったことを聞くな、アルカの事だ。一人でキョウトに向かわせるなんて……。」
ルルーシュの顔が曇る。
「……一人ではない、カレンも一緒だ。それにキョウトからのアルカ本人の指名だからな、無視も出来ない。」
この場に居るのはルルーシュとC.C.の二人だけ。現在、アルカは黒の騎士団の使者としてカレンと共に、キョウトに向かっている。
「それに……。」
「……?」
「ああいう事が合ったからこそ、俺達以外の人間とも関わるべきだと判断した。これは兄としてな。」
ルルーシュが言うのはマオの一件の事である。
アルカのトラウマを掘り起こし、彼女の心を傷付けた一連の事件。
「……そうか。」
C.C.はそれ以降、アルカに関することを口にしなかった。心配してた彼女だが、ルルーシュの言葉を聞き、落ち着くところに落ち着いたのだろう。
「……良いのか? 私が使者で。」
「へりくだれば舐められる。そういう相手だろ? 中華連邦は。」
黒の騎士団、ゼロの目的はブリタニアという国の崩壊。いずれ来る戦いに備え、国外にも協力者を増やしておく必要がある。C.C.の中華連邦行きはその第一歩だ。
「自信が無いな、私はお前と違って謙虚なのだから。」
「その調子でやってくれ。」
「お前の望み通り動いてやるよ。そうだな、報酬はアルカの一日だ。」
「………アルカの活動に支障が出ない範囲で頼む。どうしてか知らないが、お前と過ごした後、疲れた顔している事があるからな。」
「さぁ、どうだかな?」
C.C.は意地悪く、笑みを作った。
そんな2人の会話を、声を少し離れたとこから聞いている人物が居た。
「へぇ、そりゃ都合いいや。」
◇◇◇
くしゅん、と車内に小さなくしゃみが響いた。
「風邪?」
「何処かで誰かが、噂しているのかも……」
キョウトの本拠地へと向かう車の中。
目隠しをされた2人の少女が口を開く。秘密結社であるキョウトの場所が公にされないようにと使いが施したものだ。
「相変わらず、秘密主義なのね。」
「不自由をお掛けして、申し訳ございません。」
カレンの言葉に、運転手の男は抑揚無く応じる。
「まぁ言っても仕方無いよ、カレン。キョウトも危ない橋を渡っているんだから。」
「ええ、分かってるわよ。ちょっと意地悪言ってみたくなっただけ。」
富士鉱山の麓から乗車して20分ほど、そろそろ着くころだろうか。
「えーっと、アルカを呼んだのは皇神楽耶様、だっけ?」
「うん、そう。キョウト六家の盟主。日本における貴い血。そして…」
「アルカの腹違いの姉……、ね。」
「そう、だね。」
アルカが日本人とブリタニアのハーフであることは、黒の騎士団内において有名な話だ。
桐原が提示した黒の騎士団への支援の条件は、アルカが皇家の血を引いていると公表すること。ゼロへ向けられる不信の解消、日本人達からの支持、ブリタニア人である彼女が組織に身を置く理由付け。様々な角度から見てもその方が良いとゼロも判断し、公表するに至った。
公表した時の黒の騎士団内には激震が走った。暇さえあればアルカに質問攻め、接し方もよそよそしくなり、一部の団員はアルカを姫と担ぎ始める始末。
そんなアルカの様子を不憫に思ったのか、はたまた一緒に居る時間を邪魔されたく無かったのか。C.C.がいつもよりも感情の籠っていない声で冷たく一言。騒ぐ団員達を鎮めた。
一部からの敬愛の眼差しは消えないものの、組織は落ち着きを取り戻した。
「見せたいものがあるって聞いてるけど…。それだけじゃ無いよね…、きっと。」
「会うの、恐い?」
「恐いというか……、実感が湧かない。会ったことも無い異国の人が血の繋がった姉なんて……。私には兄上と姉上も居るのに。」
「ルルーシュとナナリーねぇ…。あの2人も知らなかったんだ?」
「うん、そうみたい。……母上は謎の多い人だったから。今は聞くことも出来ないけど。」
「はぁ……、あんたも難儀ねぇ……。」
ふと、車の動きが止まる。着いたようだ。
「お待たせいたしました。どうぞ、こちらに。」
目隠しが外され、目に光が入ってくる。
「………姉…か。」
アルカは本国で共に過ごした義姉達の事を思い返す。
比較的友好だったコーネリア、ユーフェミア、マリーベル、ライラ。
私達を目の敵にしていたカリーヌ、ギネヴィアを始めとするその他大勢。
今から会うであろう皇神楽耶は、果たしてどちら側に人間か。
そう考えると少し、自身の足が竦むのが分かった。
(……カレンの言う通り、怖いのかも。)
口には出さない、けど。
カレンに縋る様に彼女の手を握り、アルカは男の後ろに付いていった。
◇◇◇
「へぇ、似合うもんじゃない。流石皇家の次女。」
「まぁ、まぁまぁ! お似合いですわ!」
カレンと神楽耶が感嘆の声を上げる。
彼女達の目の前には顔を赤くして、その両手を下腹部辺りに添えて、モジモジしている着物姿のアルカ。
「ねぇ…、からかってる?」
「え、何でよ? 本当に似合ってるわよ。」
「そ、そう……。」
何処か歯切れの悪いアルカ。
そんな2人の会話を横で聞いている神楽耶は、悪戯を成功した子どもの様に笑みを作る。
遡る事、30分前。
アルカとカレンが案内された和室には着物を身に纏った少女、皇神楽耶が静かに佇んでいた。
癖のない真っ直ぐな黒髪、スザクと同じ緑色の瞳。大和撫子を体現した様な少女だ。
まだ年端もいかない少女とは言え名家の当主である神楽耶を前に、2人も自然と背筋が伸びた。
そんな2人を見て笑みを深くした神楽耶は、開口一番に「まずはおめかしをしましょう!」と言い放った。
そして今に至る。
(な、何で私だけ………、しかも。)
今まで縁が無かった、日本の古くから伝わる正装である着物。慣れない文化を前にアルカはたじろいでいた。
しかも――――。
「な、何で下着を…、身に着けちゃ、ダメ、なの……?」
「えぇ!? アルカ、貴女何も着てないの!?」
顔を真っ赤にしながら、コクンと小さくアルカは頷いた。
「あら、昔の日本では着物の下には、身に着けなかったのですよ? 今まで日本の文化に触れてこなかった妹に、肌で文化を感じて欲しかったんですけど……」
「なるほど、文字通り、肌でね。」
「カレン、黙って!」
変わらず顔を赤く染めながら、睨みつけるアルカ。非常に嗜虐心を擽る光景である。
やばい、何かに目覚めそう。とカレンは思った。
「まぁ現代では、普通に下着を身に着けますけどね。着物専用のもありますし。」
「は?」
思わずアルカの口から漏れ出る。
「じゃあ何で……?」
「ちょっとした悪戯ですわ! 固い顔していらしたので!」
神楽耶の顔に満開の笑みが咲く。
ダメだこの人、早くどうにかしないと。アルカは内心、呟いた。
「さて……、場も和みましたし、本題に入りましょうか。」
何処がだ。
「カレンさん、申し訳ありませんが席を外していただけますでしょうか?」
「ええ、分かりました。では、また後ほど。」
カレンは再び表情を引き締め、部屋を後にしようとする。
「アルカ、今度はあまり待ちぼうけさせないでね。」
カレンはそう言い残し、この場を去った。
部屋に一瞬の静寂が生まれる。
なんと声を掛ければいいか、アルカの頭はそれでいっぱいだった。
「……似てませんわね、私達。」
そんなアルカを見かねてか、神楽耶の方から口を開いた。
「…ええ、血は繋がっている筈なのに。」
アルカも神楽耶の言葉に応じ、重い口を開く。
髪の色も異なれば、目の色も異なる。
顔立ちに関してもそれぞれが属していた国の特徴が顕著に出ており、とても姉妹とは思えない。
「ブリタニアは科学技術において、世界一と聞きます。遺伝子操作もお手の物かもしれませんね。」
「…まぁあの国ならあり得ますね。仮にもブリタニア皇族として育てるつもりだった様ですから。純粋なブリタニア人に見える様に、手を加えていても不思議じゃありません。」
「それでも、私達は姉妹なのですね。」
「…………」
肯定の言葉は出なかった。
血の情報だけで考えるのなら、彼女は確かに姉なのだろう。しかし、つい最近まで名前どころか存在すら知らなかった。そんな人をいきなり姉と呼ぶのは抵抗がある。
「………あの、神楽耶様。」
「敬称は不要ですわ。それと敬語も。姉妹なんですから、お姉ちゃんと呼んでくれても良いんですよ?」
「……えっと…」
戸惑うアルカを神楽耶は温かい目で見つめる。子を見守る母の様に。妹の面倒を見る姉の様に。
「アルカ、私は貴女という妹が居ると知って嬉しいんですよ?」
「……え?」
「戦後、父と母は死に、血縁者で生存している者は枢木スザクただ一人。しかしそんな彼は自らブリタニアに飼われる事を望み、日本を裏切った。私は文字通り、天涯孤独だったのです。そんな折に貴女が現れた。」
神楽耶はアルカの頬に両手を添え、彼女の瞳を見つめる。
「半分とは言え、血が繋がっている正真正銘の妹。そして志を共にする同志。これが嬉しくない訳無いでしょう? 貴女はゼロ様と同様、私にとっての希望…光ですわ。」
神楽耶の目を見つめていたアルカは、静かに目を閉じる。
先程まで身構えていた自分が馬鹿らしく思えてきた。
彼女が言っている事は本心だろう。その緑色の瞳に一つの曇りも無く、純粋に出会いを喜んでくれているのを感じる。
神楽耶が姉だという実感は今一まだ湧かないが、彼女の好意も無下には出来ない。
「……わか、った…。すぐには無理、だけど。……頑張りま、頑張る…。お姉……か、神楽耶………。」
神楽耶との距離感を掴めていないのか、上手く言葉が紡げないアルカを彼女は嬉しそうに見つめる。
視線をずらし、頬を赤く染めながら言葉をたどたどしく紡ぐ彼女が非常に愛らしい。
(お姉ちゃん、もしくはお姉様と呼んで欲しかったところですが、呼び捨てというのも生意気な妹みたいで良いですわね。)
想像よりも可愛らしい反応を示した異母妹に、神楽耶の心は温かな気持ちで満たされた。
◇◇◇
着物から着替え、黒の騎士団の制服を身に纏ったアルカは、カレンと共に長い廊下を進む。
「神楽耶様とは仲良く出来た?」
KMFの格納庫へ続く廊下を歩きながら、カレンはアルカに優しく問いかける。
「うん…。ぼちぼち?」
「そっか。まぁ、急な出来事で戸惑うのも無理ないけど、ちょっとずつ慣れていきなさいね?」
そう言いながら、カレンはアルカの頭を撫でる。
「……また、子ども扱いして………。」
「アルカの頭、撫でやすいんだもん。」
会話に花を咲かせつつも、2人は足を止める事無く歩み続ける。
アルカがキョウトに呼ばれたもう一つの理由。神楽耶の言う「見せたいもの」を見に行く為だ。その神楽耶は一足先に目的の場所へと向かった。
「見せたいもの」の内容は聞いていないが、指定された場所から推測するにKMFだろう。
「それにしても、アルカ専用のKMF、か。」
カレンは何処か複雑そうに、呟く。
「……? 不満?」
「不満というか、心配。戦力として頼りになるのは理解しているけど。それでも、まだ幼い貴女が前線に出るなんて。」
「……………」
「今更っていうのは分かっているわ。それでも……。……ねぇアルカ、戦場は私やゼロに任せて、貴女はバックアップでも……。」
身近な人を、友人を失いたくない。手を汚して欲しくない。というカレンの想いがひしひしと伝わってくる。
シャーリーの件が合ったからだろうか。それとも自身の兄の事を思い出してからだろうか。
いや、その両方だろう。
そんなカレンに対して、アルカは安心させるように微笑みかける。
「カレン、前にも言ったでしょ? 私は死なないよ。」
ああ、その顔だ。彼女は決まってこういう時、儚く微笑む。触れれば消えてしまいそうな。誰にも別れを告げずに去ってしまいそうな。そんな顔。
(だから私は貴女が心配なのよ。)
・
・
・
キョウト KMF格納庫
「あー! やっときましたわ!」
神楽耶の少女らしい高い声が、格納庫内に響く。
「もう、遅いですよ! 2人とも!」
「ご、ごめん……、着物を脱ぐのに手間取っちゃって。」
神楽耶を見上げながら、アルカは呟く。
「あら、私とした事が! アルカが初めて着物を着た事、忘れてましたわ! あまりにも似合っていらしたので…」
ごめんなさいね、と神楽耶はアルカを撫でる。
何でこんなに子ども扱いされるんだろうか、と内心でアルカはため息を付いた。
「えっと、神楽耶様。これが……」
場の空気を変える様に、カレンが目の前の鋼鉄の巨人を見つめ、呟く。
そこには全身を深い青色でカラーリングされたKMFが居た。
5~6mほどはあるだろうか、一般的なKMFと比べると等身が高い。目を引くのは燕尾服の様に腰に装着されているバインダーと、額から伸びる一本の角。バインダーを支える為か、脚部はがっしりとしている。下半身がしっかりしている分、上半身が華奢であり、何処か女性的な印象を受ける。
「ええ、紅蓮と同じ、第七世代相当KMF『
KMFのイメージもそれぞれのイメージで……
描ければ一番良かったんですけど、あいにく私にはそんな画力はありませんので……
非力な作者を許してくれ……