コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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また更新に間が空いてしまった……
感想ありがとうございます!全部目を通しております。
やっぱりこういう形で皆様の反応を見れるのは嬉しいですね!

ではどうぞ。


stage17 無窮

「無窮………」

 

 青色の巨人を見上げながら、アルカはその名を噛みしめる様に口にする。

 

「……コックピット部分、やけに小さいですね………」

 

 カレンも同じ様に見上げながら、呟く。

 

「そりゃそうよぉ。パイロットの子の身体に合わせて調整したんだからぁ。」

 

 間延びした女性の声が格納庫内に響く。

 声の主の方へ、アルカとカレンは顔を向ける。

 そこには白衣に身に包んだ褐色肌の女性が居た。その手にキセルを持ち、額にはチャクラの化粧。

 

「貴女は?」

 

 アルカの疑問に神楽耶が応じる。仰々しく手を広げ、口を開いた。

 

「この方こそ、紅蓮二式、無窮の生みの親! 名を……」

「ラクシャータ・チャウラーよ。よろしくぅ。」

 

 2人の言葉にアルカとカレンは驚きの表情を浮かべる。

 

「貴女が、紅蓮の開発者……?」

「そういうアンタが、パイロットの紅月カレンちゃんかしらぁ。輻射波動は気に入ってくれたかしら?」

「え、ええ! それはもう……!」

 

 カレンは顔を輝かせながら、激しく頷く。

 

「そっちの子がアルカちゃんね。ふぅん、貰っていたデータ通り、本当に小さいわねぇ。」

「あ、はい。皇アルカと申します。えーっと、データ通りというのは?」

「事前にキョウト経由でゼロからのオーダーが合ったのよぉ。無窮をワンオフ機として使いたいって。その時にパイロット、つまり貴女の身長体重を教えて貰ったって訳。」

 

 第七世代相当KMF『無窮』はラクシャータが過去に開発したものだという。性能がピーキー過ぎて乗り手が見つからず眠っていた無窮をゼロが嗅ぎ付け、アルカの為に調整させたらしい。

 

(……兄上、勝手に私の身体の情報流したな………。)

 

 そういえばナリタでの戦いの前後位に、健康診断書を見せてくれって頼まれたな、とアルカは思い出した。

 

「最初に聞いた時は耳を疑ったけどぉ、あの無頼の戦闘データを見せられちゃね。納得せざる終えなかったわぁ。私としても無窮のデータが取れる良い機会だったからね、急ピッチで調整したわぁ。」

「そ、それはありがとうございます……」

 

 アルカは深々と頭を下げる。

 

「いいのよぉ。ふぅん、それにしてもあんな化け物じみたデータを叩き出だすパイロットが、こんな可愛い顔した子達だったなんて……。ゼロも中々、隅に置けないねぇ。」

「えぇ! ゼ、ゼロと私はそんな………」

 

 カレンは顔を赤く染めながら、否定する。

 満更でもなさそうだな、とアルカは思った。

 

「…えっと、無窮の腰回りに付いているバインダーの様な物は何ですか?」

「ああ、あれね。見ての通りバインダーよぉ。中に太刀とかマシンガン等の武装が入っているわぁ。紅蓮の輻射波動の様な特殊武装は無い機体だからねぇ、その分手数は多いわよぉ。」

 

 ラクシャータ曰く、腰のバインダーも脚部の外郭も後付けしたオプションパーツだという。戦況に応じて武装と換装を切り替えながら戦うKMF、それが無窮だ。

 

「だから、無頼の時にみたいな戦い方してるとぉ。ゼロを泣かせることになるわよぉ。主に費用の面で。」

「あはは…、気をつけます……。」

 

 ワンオフ機と言うだけあって、修繕費も無頼の比にならないだろう。

 気を付けないと………。

 

「ラクシャータ博士は黒の騎士団の専属メカニックとして、加わってくれるそうですわ! 良かったですね、アルカ!」

 

 神楽耶の言葉に、アルカとカレンは、目をぱちくりとさせる。

 

「協力、してくれるんですか?」

「そのつもりよぉ。ゼロに付いていった方が面白そうだしぃ? 紅蓮と無窮のデータも取れるし、良い事尽くめなのよぉ。」

「ふふ、それは頼もしいです。よろしくお願いします。」

「よろしくぅ。良いデータ、期待してるわよぉ。」

 

 じゃあ、早速。とラクシャータは呟き、アルカは首を傾げる。

 

「今からみっちり、戦闘シミュレーションをやってもらうからぁ。」

「……へっ? 今からですか? でも、もう日も傾きかけてますよ? 今からやるんじゃ、租界に帰るのも遅くな……。」

「問題ありませんわ! 泊っていかれるのでしょう?」

 

 神楽耶がその顔に満面の笑みを咲かせ、声を上げる。

 

「ゼロから無窮の最終調整はしっかりする様に言われていてねぇ。設備が整ってるキョウトでやった方が楽だし。パイロットのデータを取りながら調整した方が確実だし。」

 

 ラクシャータはゼロからの要望を思い出す。

 それはもう、耳にタコが出来るんじゃないかという位、無窮の調整を行う様にと言われた。

 

(そんなにこの子が大事なのねぇ。どういう関係何だか……。まぁ、どうでもいいけど。)

 

 ゼロの正体が気にならない、と言えば嘘になるが、ラクシャータからすればそんな事は二の次だ。

 彼女にとって大事なことは、自分が手掛けたKMFがどの様な働きをするか。その一点に尽きる。

 ゼロとアルカの関係を詮索するのを止め、意識を現実に戻す。

 

「カレンは? カレンは知っていたの?」

「知っていたし、ちゃんと話したわよ。その時のアルカ、緊張からなのか上の空だったけどね。」

 

 神楽耶との会合を意識するあまり、聞き漏らしていたらしい。

 

「まぁ、そういう事だから。よろしくぅ。」

「……仕方ないか…。」

 

 折角姉上と久しぶりにゆっくり過ごせると思ったのに……。内心溜息を付き、アルカは無窮のコックピットへ向かう。

 

「さぁ、見せてもらうわよぉ、アルカちゃん。その腕前を。」

 

 

◇◇◇

 

「疲れた……」

 

 無窮の横に座り込み、その額から汗を流すアルカ。

 汗によって濡れた髪が肌に纏わりついており、幼いながらも色香が漂う。

 

「二時間乗りっぱなしだったもんね、お疲れ様。」

 

 そう言いながらカレンは、座り込んでいるアルカに水を差し出す。

 

「ありがとう……、まさかあそこまでキツイなんて……」

 

 差し出された水を手に取り、喉を鳴らしながら飲み干す。

 

「あそこまでいくと、ただの悪ノリね……。」

 

 アルカの操縦技術が想定以上だったのか、後半のラクシャータは新しい玩具を見つけた子どもの様に、目を輝かせていた。シミュレーターの難易度をどんどん上げていき、しまいには数十機のKMFを同時に相手をさせられていた。

 

「あ、そうそう。ご飯前にお風呂にしましょう。って神楽耶様が。」

「確かにご飯前に汗を流したいかも。入ってこようかな。」

 

 疲労が溜まった身体に鞭を打ち、アルカは立ち上がる。

 

「一個下の階の大浴場だってさ。行きましょうか。」

 

 アルカの手を取り、カレンは足を進めようとする。が

 

「アルカ?」

 

 アルカは一向に足を進めようとしない。

 

「大浴場って、つまり、皆で一緒に入るタイプの、お風呂だよ、ね……」

「………? ええ、神楽耶様が3人で一緒に入りましょう!って。」

「カレンと、神楽耶と……入る………。べ、別々とか、出来ないかな…」

 

 何故かアルカの歯切れが悪い。何か入りたくない理由でもあるのだろうか。

 

「え、何? もしかしてアレ?」

「まだ来たことも無いです!」

「そうは見えないけど、太って恥ずかしい、とか?」

「体系の変化はありません!」

「自分の身体の発育の事、気にしてる? そんなに心配しなくても、ちゃんと成長するわよ。」

「そんな心配もしてないです!」

 

 思いつく限りの一緒に入りたくない理由を言ってみたが、どれも違う様だ。

 

「じゃあ何がそんなに嫌なのよ……」

 

 カレンが呆れ顔でアルカを見つめる。

 

「え、えーっと…、それは………」

「ほらほら、行くわよ! 汗流さないと、気持ち悪いでしょう?」

 

 カレンはアルカの背中を押し、大浴場へ強引に連れて行った。

 

 ・

 ・

 ・

 

「もう、遅いですよ! 私ずっとこの格好で待っていたんですから!」

 

 バスタオルを身体に巻いた神楽耶が頬を膨らまし、アルカをジト目で見つめる。

 

「ああ、すみません。何故かこの子、一緒に入るのを渋り始めて……」

「あらあら、なんと可愛らしい。そんなに恥ずかしがること、無いんですよ? 姉妹なんですから!」

 

 得意げな顔をしながら、神楽耶はその慎ましい胸を張る。

 

「いや…恥ずかしいという訳じゃ、ないんだけど……」

 

 じゃあ、問題無いですね、と神楽耶は意地悪い顔を作り、怪しい手つきでアルカに忍び寄る。

 

「な、何……? そのいやらしい手つき………」

「も、ち、ろ、ん。その服を脱がすんですわ…、これからお風呂に入るんですから………。」

「い、いや……2人が入った後に、自分で脱ぐから………。」

 

 忍び寄る神楽耶と全く同じ歩幅で、アルカは後退する。

 

「ふふ、そんな寂しい事、言わないでくださいな……。カレンさん。」

「ごめん、アルカ。いい加減覚悟決めて? 私も早く入りたいし。」

 

 アルカの後ろに立っていたカレンが、彼女の身体を拘束する。

 

「カレン……! う、裏切り者!」

「さぁ、アルカ。お姉ちゃんに見せて下さいな。その陶器の様な白い柔肌を……。さぁさぁ。」

 

 神楽耶はアルカが着ている服に手を掛ける。

 

「た、助けて……、し、しーt………」

 

 良いではないかー!っと神楽耶の楽しそうな声と、アルカの助けを求める声が脱衣場内に木霊する。

 

「あら?」

 

 アルカの肌を守る最後の布が取り払われたその時、神楽耶が疑問を口にした。

 

「虫刺され? アルカの身体のあちこちに赤い跡が………」

 

 肩、胸、背中、お腹。視線を下に向ければ、腰、太もも辺りにも。身体のあちこちに赤い跡があった。

 肌が白い分、とても目立っている。

 

「虫刺されって………、あー……………。」

 

 神楽耶の言葉に反応したカレンが、アルカの身体をまじまじと眺める。

 

「……あまり、見ないで……、その、恥ずかしいから………。」

 

 頬を赤く染めながら、近くにあったタオルを手元に手繰り寄せ、その小さい身体を覆い隠す。

 

「アルカ、折角綺麗な身体なのですから、虫刺されといえど、放置してはいけませんよ? あとで塗り薬、差し上げますね!」

「………あ、ありが…とう………」

 

 

◇◇◇

 

「疲れた、本当に疲れた。」

 

 神楽耶に借りた寝間着に着替えたアルカは疲れた顔を隠そうともせず、布団の上で呟く。

 

「そうね……、私も神楽耶様のエネルギーに押されっぱなしだったわ……」

 

 同じ様にカレンも疲労を顔に浮かべながら呟く。

 妹であるアルカに会えたことが嬉しいのか、神楽耶の口は開いたままだった。

 普段の学園生活の話から、アルカとカレンの子ども時代、恋愛話。常に質問攻めで振り回されっぱなしだった。

 

「そういえば、神楽耶様は気づいてない様だったから聞かなかったけど、あんたの身体のマーク、誰が付けたのよ?」

「え、その話蒸し返す?」

「仕方無いじゃない、あんなの見せつけられちゃ。んで、誰よ、あそこまで貴女に執着している男は?」

「え、えーっと……カレンの知っている人……ていうか、男…じゃないというか。」

 

 アルカの言葉を聞き、カレンの顔が固まる。

 何言っているんだ、この子は。そんな言葉が表情から読み取れる。

 

「え、え? じゃあ、男じゃないって事は女? マジで?」

 

 思考をフル回転させる。

 私が知っている知っている人で、女性………。アルカの傍に居る女性………。

 生徒会メンバー、ナナリー、黒の騎士団の女性陣……。

 ううん、どれも違う。彼女達に対するアルカの態度は普通だった。

 

「………あ、C.C.………?」

 

 アルカにとっての恩人。幼い頃からの付き合い。そして、ことある事にアルカに対してスキンシップを取るあの態度。

 

……あ、…うん………。そ、そうデス……。」

 

 あの誰に対しても媚びない高圧的な態度。

 感情を表に出さない人形の様な見た目。

 そんな彼女が………?

 

「え、えぇ!? 嘘! 彼女が!? ちょっと、どういう事!? 一体いつか…」

「もう話おしまい!! 明日もあるんだから、寝よ!!」

「…あ、ちょっと!」

 

 布団を被り、アルカは横になる。

 それっきり彼女は口を開かなかった。

 

「……もう、絶対いつか、聞き出してやるんだからね!」

 

 ・

 ・

 ・

 

 翌日 キョウト KMF格納庫

 

『いーい? アルカちゃん。今回のシミュレーションの結果が、無窮にそのまま反映させられるわ。』

 

 一般的なKMFよりも小さいコックピット内で、ラクシャータの声が響く。

 

『昨日は無窮の慣れてもらうために、雑魚を沢山倒して貰ったけどぉ。今日の相手に対して無双出来るとは思わないでねぇ。』

 

 眼前に仮想の戦場と一機のKMFが映し出される。

 現状、唯一の純日本製KMF。黒の騎士団のエース。

 

「紅蓮、二式。」

『アルカ、手加減は無しだから。』

 

 アルカの顔に好戦的な表情が浮かぶ。

 

「…上等……!」

 

 

◇◇◇

 

 時を同じくしてアッシュフォード学園。

 

「放せよ! この父親殺しが!!」

「っ!!」

 

 神楽耶と同じ緑色の瞳が大きく見開かれる。

 

「お前は7年前に実の父親を殺している。ふん、徹底抗戦を唱えていた父親を止めれば戦争は終わる? 子どもの発想だねぇ。実際はただの人殺し。」

 

 死の淵から蘇った男、マオの言葉がスザクの心を切り刻む。

 

「違う! 僕は…、俺は!!」

 

 そうしなければ、ルルーシュとナナリーの身が危なかった!

 そうしなければ、あの男が支配者になっていた!

 スザクの頭に過去の光景がフラッシュバックする。

 

「よかったねぁ、バレなくて。周りの大人達がみ~んなで嘘をついたお陰さ。」

 

 傍に居るルルーシュが口を開く。

 

「それじゃあ、枢木首相が自決することで軍部をいさめたって……」

「大嘘だよ、何もかも。」

「仕方が無かった! そうしなければ、日本は……君たちは…!」

「今更後付けの理屈かい? この死にたがりが……!」

 

 何時もの朗らかな表情は無く、恐怖に怯える子どもの様に、スザクは顔を歪める。

 

「人を救いたいってぇ? 救われたいのは自分の心だろ? それに殉じて死にたいんだよねぇ? だから何時も、自分を死に追い込む!」

 

 シンジュク事変、ホテルジャック、ナリタ。彼はいつも自分から、危険に飛び込んでいった。

 

「う、…うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

 スザクは悲痛な叫びを上げ、膝から崩れ落ちる。

 

「お前の正義は歪んでいるんだよ! は、血は争えないねぇ、君はアルカによく……うッ」

「……?」

 

 急に言葉を切り、頭を抱え始めたマオの様子にルルーシュは訝しげな視線を投げる。

 

「……ああ…、五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い、五月蠅いんだよ!! 頭の中の声が、彼女の声が!!」

「アルカの、ギアスか……」

 

 アルカが掛けた「関わるな」という願いが彼を蝕んでいるのだろう。

 

「彼女の事を考える度に、頭に響くんだ……、余計な声を増やしやがって……。」

 

 フラフラと覚束ない足取りで、マオは講堂の出口へと向かう。

 

「おい、待て……!」

 

 その時、講堂の扉が開いた。マオが開けたのではない。

 

「マオ……」

 

 スーツに身を包んだC.C.だ。

 

「ああ……C.C.……。迎えに来てくれたんだね………。さぁ、一緒に……っ」

 

 子どもの様な笑顔を浮かべながら、C.C.を抱きしめようとするマオ。

 そんなマオに対し、彼女は彼の手を振り払い、懐から銃を取り出す。

 

「マオ、さよならだ。」 

 

 銃口を彼の首筋に当て、引き金を引く。

 

「……がっ…」

 

 その両目に宿っていたギアスの模様は消え、マオは静かに崩れ落ちた。

 倒れた彼を見下ろし、C.C.は呟く。

 

「マオ。Cの世界であっても。お前とは金輪際、関わる事は無いだろう。」

 

 マオから視線を外し、空を仰ぐ。

 

「願い、か。」

 

 彼女の呟きは誰にも聞かれる事無く、虚空へと消えていった。




アルカとカレンがキョウトに行っている裏で、マオとルルーシュの戦いが起きています。
展開は原作通り、特に違いはありません。

あと、ラクシャータとの合流の仕方が原作と違います。
些細な違いですが。
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