コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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お久しぶりです!
大分間が空いてしまいました、すみません。

ちょくちょく時間を見つけて書き続けていたものが書きあがったので投稿致します。
更新は不定期になりますが、あまり間を空けない様に頑張りますので、何卒よろしくお願いいたします。


stage19 ノネット・エニアグラム

「……っ!!」

 

 顔をしかめ、思わず舌打ちをする。

 

「改良機とは言え、グロースターでここまで…。これがナイトオブラウンズ……!」

 

 ()()()ハッキリと分かる。強い。

 第七世代相当のスペックを持つ、無窮。ブリタニア軍のランスロットとも渡り合えるであろう数少ない機体。本来であれば第五世代であるグロースターでここまで苦戦はしない筈だが。

 

『ハッ! 私を前にしてここまで戦えた相手は、エリア11でお前が()()()()()!!』

「そりゃ、どうも……!!」

 

 突っ込んできたグロースターのランスを右手に持つ太刀で受け流し、もう片方の手に持つ太刀で反撃に出る。

 

『だが、甘いな』

 

 しかし、その反撃はグロースターの鋼鉄の身体を切断すること無く、空を切った。

 ノネット・エニアグラムと会敵してからというもの、ずっとこの調子だ。無窮の攻撃はグロースターを捉える事は出来ず、グロースターの攻撃は無窮を貫く事は叶わない。まさに一進一退の攻防。

 

(…決めきれない……! スペックではこちらが圧倒しているのに!!)

 

 グロースターのスラッシュハーケンを躱しながら、アルカは思考を巡らせる。

 

(ゼロ達がチョウフ基地に入ってから、もう随分と経った。ブリタニアからの援軍も考えると、私に残された時間は少ない。)

 

 目の前のグロースターに目を向ける。

 その紫の装甲に包まれた機体の所々から、攻撃を与えていないのにも関わらず、黒煙が立ち込めている。

 

(私の役目はあくまでも足止め。目的を見失うな、アルカ・アングレカム。)

 

 気づかないうちに生まれていた闘争心を抑え、頭を冷やす。

 

(今の()()()()()()は、ナリタでの私と同じ状況。いくらパイロットの質が良かろうと、機体がそれに追いつかない。それなら、私が取るべき選択は…)

 

 ナリタ戦で乗っていた無頼の状態を思い出す。

 負荷が特に掛かった箇所。

 最初に動かなくなった箇所。

 

 状況を分析していると、コックピット内にゼロ=ルルーシュの声が響いた。

 

『……アルカ…、目的は完了した。撤退だ………』

「……? 分かった。」

 

 何時もとは違う覇気の無いルルーシュの言葉に疑問を覚えつつも、意識をグロースターに戻す。

 

「楽しんでいるとこ悪いけど、ここらで退散させてもらいますよ、っと。」

 

 届くことの無い独り言を呟き、アルカは操縦桿を強く握る。

 そしてグロースター目掛け、無窮を前進させる。

 

『ここまでやってなお、正面から来るか! 舐められたものだな!!』

 

 無窮を迎え撃つ為、グロースターはランスを構える。

 

(やはり甘い。逸る気持ちを抑えきれず、最後は正面突破。声から推測するに、まだ若いのだろう。)

 

 まぁ、戦場に立った以上、歳は関係無いがな。とノネットは口角を上げながら呟く。

 

(機体の動きも悪くなってきた。相手には悪いが、ここで私も決めさせてもらう。)

 

 狙うはコックピット。

 KMFを確実に無力化するのに一番手っ取り早い手段だ。

 アルカもそれを理解しているのか、右手に持つ太刀をグロースターのコックピットの位置に構える。

 

(破壊は出来なくても、せめて無力化を……!)

 

 互いの機体が交わるその直前、手に持つ太刀をグロースターの頭に目掛け、無窮は投擲した。

 

「っ! この距離で!! 自ら優位を放棄するか!」

 

 今ランスで太刀を弾いてしまえば、相手を仕留める事は叶わない。そう考えたノネットはすかさず回避行動を取るが、急な操縦に機体が追い付かず、思った様に動かない。

 放たれた太刀はそのままグロースターの頭を吹き飛ばす。

 

「……っクソ!」

「思った通り! そろそろ機体が限界でしょう!!」

 

 一瞬機体が揺らぐも、即座に立てなおし、構え直す。

 それに対しアルカは、無窮の右半身の外部装甲をパージ。機体を軽くし、さらに速度を上げる。

 

「メインカメラは潰されてしまったが、この距離だ! 私が外す訳が無いだろう!」

 

 変わらず正面から来る無窮に、ランスを突き刺す。

 金属が拉げる音がし、何度も味わった敵を貫く感覚を機体越しに感じた。が

 

「……っ! 外したか!!」

 

 貫いたのはコックピットでは無く、無窮の右半身。腕を吹き飛ばし、コックピットをかすめたが、アルカには届かない。

 

「私の本命はこっち!!」

 

 すかさずバインダーから太刀を取り出し、グロースターの脚部を切断する。

 グロースターはそのままバランスを崩し、地に伏した。

 脱出機能が作動する様子は無い。

 

「……ナイトオブナイン…、ノネット…エニアグラム……」

『アルカちゃん、ブリタニアからの援軍のご到着よぉ。早く撤退しなさいな。』

 

 タイミングを図ったように、ラクシャータから再度撤退するようにとの指示が下る。

 

「…………わかりました。皇アルカ、帰投します。」

 

 帝国最強の騎士の一角を仕留めるチャンスではあったが、欲を出して援軍に追いつかれても意味が無い。と思考を切り替え、無窮を脱出ポイントに向け、走らせる。

 

 

「はっはーん、なるほど。外部装甲だったのか。目測が狂ってしまったな。」

 

 コックピットから出たノネットは、去っていく無窮を見据える。

 その無窮の姿は最初に見た時よりも、右半身がスリムになっていた。頭を潰した時、パージしたのだろう。

 

「それにあのパイロット、貫かれる直前で軌道を変えたな?」

 

 機体の面積が減ったところで攻撃を外すほど、ノネットは甘くない。

 目測のほんの少しのズレと、アルカによる咄嗟の軌道変更。

 その二つの小さい要素が合わさった事により、彼女はノネットを出し抜く事が出来た。

 

「あれだけのKMFを問題無く扱える操縦技術。とっさの判断の良さ。目先の利益に捕らわれない冷静さ。いやぁ、敵にしておくには勿体無いな。」

 

 しかし、とノネットは手を顎に添え、考え込む。

 

「閃光を彷彿とさせる、そんな戦い方だったな……」

 

 ・

 ・

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黒の騎士団 トレーラー ゼロの自室

 

「そんな……、スザクが…。スザクが白兜の、パイロット………」

 

 焦点が定まらない目でルルーシュは呟く。

 

「兄上……」

 

 そんなルルーシュの手を握りながら、アルカは心配そうな表情を浮かべ、彼に寄り添う。

 

「ふん、思ったより重症だな。」

「C.C.。」

 

 そんな中、C.C.がいつもと変わらない無感動な表情で部屋に入ってきた。

 

「今回の作戦も、スザクへのアピールのつもりだったんだ……」

 

 枢木スザクにとって、藤堂鏡志郎という男は親であり、兄の様な存在だったという。

 そんな藤堂を慕っていたのをルルーシュも知っていた。そこで大々的に彼を救うことで、スザクのゼロに対する認識を変え、味方に引き入れる。そういった狙いも今回の作戦にあった。

 その話を聞いたC.C.は呆れた表情で「殊勝なことだ。その行動力を少しでも女に向ければ、卒業できるだろうに。」と言い放っていた。

 

「ナナリーの事を守って欲しかった。あいつの居場所はあそこでは無い……」

「…おい、またお前は………」

「C.C.。大丈夫だよ。」

 

 ルルーシュの背中を彼女のなりに押そうとしたのだろう。C.C.は口を開こうとしたもの、アルカがそれを静止した。

 俯いているルルーシュの顔に両手を添え、自身に向かせる。

 

「兄上。彼を仲間に引き入れたいなら、いい方法があるよ。ただし、これがラストチャンス。」

「…ギアス以外でか?」

「えぇ。まだ切ってない手札が一枚あるでしょう?」

 

 

◇◇◇

 

「申し訳ありません、殿下。私とした事がしくじりました。」

 

 トウキョウ租界に佇むブリタニア政庁。その一室でノネットはコーネリアに報告を行っていた。先日のチョウフ基地の件の事だ。

 

『いえ、確かに藤堂を奪還されたのは痛いですが……。租界を空けてしまった私の落ち度でもあります。今考えるべきは今後の対策でしょう。』

「そう言って頂けると助かります。」

『黒の騎士団の新型が6機…、頭が痛い話だ。』

 

 珍しく顔を曇らせたままコーネリアは頭を抑える。士官学校時代の先輩であるノネットを前にしているからだろうか。普段の彼女ほどの力強さは感じられない。

 

「基地に突入してきた白いやつが4機、藤堂が乗り込んだ黒い機体。それに私が交戦した青い一本角…ですね。解析によると白いやつの性能はグロースター以上、黒いやつと一本角の性能はランスロットと同等、第七世代相当だとか。」

『何より問題なのはそれを乗りこなす人材を奴らが確保していたという事実。はぁ…、戦闘データが取れただけでも儲けものか。』

「そうですね、今回の規模の小さい戦闘で新型を引きずり出せたのは不幸中の幸いと言えます。それと、一本角との戦闘データを解析に掛けたのですが、以前ナリタに現れたという亡霊のデータと一致します。同一人物と見て間違い無いかと。」

 

 ノネットは考え込む様な素振りを見せたが、それも一瞬の事。何かを決意した様に顔を引き締め、口を開く。

 

「今はまだ及びませんが、あの一本角のパイロットはラウンズ相当のパイロットのなる可能性が高いです。ジノやアーニャに見られた傾向が出ておりました。そしてこれは所感ですが…」

『?』

「閃光…、かつての彼女に通ずるモノが見受けられました。それこそ成長した()()()を見ている様な。探りを入れてみる価値はあるかと。」

 

 

◇◇◇

 

「あらノネット、珍しいわね。」

 

 淡いミルク色の髪をした少女、アルカの手を引きながら、マリアンヌは優雅に笑みを作り来客に話しかける。

 

「ご機嫌麗しゅう、マリアンヌ殿下。それにアルカ皇女殿下。いやぁ、休暇を頂きましてね。コーネリア殿下が良くこちらにいらっしゃると聞いて足を運んだ次第です。」

「あら、私達はついで、って事?」

 

 頬を膨らまし、マリアンヌはノネットに問いかける。

 勿論ノネットにそんなつもりは無いし、マリアンヌもそんな事は分かり切っている。

 マリアンヌの常套手段だ。人をからかう為、わざと意地悪な言い方を取る。悪戯好きな彼女の性格がよく表れている。

 これで相手がコーネリアやジェレミアであれば、真に受けて面白いのだが。

 

「はは、まさか。アルカ様に会いに来たんですよ。」

 

 膝を折り、アルカに視線を合わす。マリアンヌの服を掴み、後ろに隠れている者の、聞こえるか聞こえないかくらいの大きさで「こんにちは」と呟いている。

 

「それじゃ、私がついでってこと?」

「おっと、失言でしたかな。」

 

 ノネットがアルカの元に訪れる様になったきっかけは、コーネリアだ。

 コーネリアの先輩であるノネットは、彼女から良くマリアンヌやアルカの話を聞いていた。マリアンヌから訓練を受ける傍らで、アルカの面倒を良く見ていたという。

 異母兄弟に対しても情が深いコーネリアだが、その中でも群を抜いてアルカの事を気に掛けていた。

 単純に憧れ(マリアンヌ)の娘だからか、KMFを駆る騎士として育てられているからか。おそらくは両方だろう。

 アルカが幼いながらも人並外れた才能を持っている事はノネットも聞いていたし、ここまで話を聞かされると他人事の様にも思えなくなる。

 結果、コーネリアに付き添う形で訪れ、それ以後はマリアンヌに代わって訓練をしたり、教鞭を振るったりしている。

 

「その後の首尾は如何ですか? アルカ様。」

「……えっと、剣術で、クロヴィス兄様に勝ったり、ユフィ姉様にテストの点数で勝ったり、しま、した。」

「おお、それは頼もしい。私も鼻が高いですよ。」

 

 ノネットは笑みを作り、アルカの頭にポンッと手を乗せる。

 

「私としては、まだまだだけどねぇ。せめて優等生(シュナイゼル)には勝ってもらわないと。」 

「それは手厳しい。」

 

 ノネットは苦笑する。

 マリアンヌのそういう所が苦手だった。

 アルカに対して少し厳しすぎる。将来的には戦場に出る訳なのだから、力が入ってしまうのも多少は仕方が無い事だが、それを差し引いても過剰なのだ。まだ5歳にもなってない娘に、皇族きっての切れ者と名高いシュナイゼルに勝て、など普通は言わないだろう。ルルーシュ様やナナリー様に対する態度を知っている分、余計にそう思う。まぁその分、周りがアルカに対して優しくするから、アルカ自身は健やかに育っているので何も言えないが。

 

「…今日は、訓練、見てくれるの?」

 

 思考に更けていたノネットの意識は、アルカの声で現実に引き戻される。

 

「ええ、そのつもりですよ。そうですね、今日はKMFの動かし方についてレクチャーしましょう。」

「あら、それは助かるわ。お願いしてもよろしくて? 今日はナナリー達の勉強を見ないとなの。」

「はい、お任せください殿下。さぁ、行きましょうか、アルカ様。」

 

 差し伸べられた手をアルカは掴む。

 

「…行って、まいります。母上。」

「ええ、頑張ってね。」

 

 ノネットに連れられアルカはその場を後にする。

 その後はコーネリアも合流し、3人で日が傾くまで一緒に過ごした。

 

 ・

 ・

 ・

 

「また、夢…。最近、多いな。」

 

 重たい瞼を開け、身体を起こす。

 カーテンの隙間から、自然の光が入ってきている。どうやらまだお昼らしい。

 

「完全に寝過ごしちゃった。」

 

 今日は平日。その事から言わなくても今置かれている状況が分かる。

 特に焦る様子も無く、アルカは再び身体を横にさせ、隣に居るC.C.に抱き着く。

 

(今の夢は、本国に居た頃の…、でも………)

「学校は良いのか?」

 

 ふと、上からC.C.の声が聞こえた。起きていたみたいだ。

 

「うん、良い。身体が怠い、重い、動かない。誰かさんの所為で。」

「ふ、それならマッサージでもしてやろうか? きっと気持ちいいぞ。」

 

 C.C.は妖艶な笑みを作り、アルカの太ももに手を這わせる。少し擽ったくて、アルカの小さい身体が少し跳ねた。

 

「…今日どころか明日も動けなくなりそうだから、遠慮しておく……。」

 

 それは残念だ。とC.C.は這わせていた手をアルカの背中に回す。

 

「……夢を、よく見るのか?」

「…? 最近、多い、かな。」

「……そうか。まぁ、お前は一度眠ると長いからな。その分、見てしまうんだろうな。」

 

 睡眠が長いのも、夢を見るのも昔からの事なのに、C.C.は時々こうやって聞いてくる。いつもの事なのに、まるで心配するかの様に。

 

「…禅定って知っているか?」

「仏教のやつ? 心を静めて無色界に到達するって言う……」

 

 無色界――、欲望も物質的条件も超越し、ただ精神作用にのみ住む世界…って前に何処かで学んだ気がする。

 

「ああ、それだ。まぁ私から言わせてみればただの通信手段だな。」

 

 普段から脈絡無く、意味深な言葉を言う事が多いC.C.だが、今日のはホントに話が掴めない。

 

「通信手段? 無色界との?」

「ああ。通信手段という意味では睡眠も同じ意味だな。」

「それじゃあ、私達は寝ている間に何処かと通信しているってこと?」

「私はそう考えている。お前は以前に枢木スザクの記憶を夢で見たと言ったな。つまりは……。」

 

 そう語るC.C.。普段と変わらない口調に声音。直に来る彼女の体温も何時もと変わらない筈、なのに少し怖い。

 

「…っ。」

 

 淡々と語っていたC.C.は言葉を区切る。

 

「いや、何でもない。昔本で読んだ内容を最近見かけてな。久しぶりにアルカに話を、と思ったんだが。あまり好きではなかったか。」

「あ、ううん。そんな事無いよ。内容が難しくて、ね。今寝起きで頭が働いて無いから…。」

 

 しばらく2人の間に沈黙が訪れる。

 

「…やっぱりマッサージ、施してやろう。」

 

 そう言ってC.C.は身体を起こし、私の上へと乗る。

 

「え!?、い、いや……。今日一日大人しくしてれば大丈夫……。」

「そんな寂しい事を言うな。 これでも腕には自信があるんだ。 色々とほぐしてやろう」

 

 まだ日も落ちていない平日の午後。

 少女のくぐもった声が部屋に木霊した。




ノネットさんがマリアンヌと絡みがあったのかは分からなかったので、勝手に作りました。
こうやってちょくちょく、この小説独自の設定を盛り込んでいます。
ご了承ください。
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