コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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話を進めようと思っていたのに、進まなかった()



stage22 神が根付く島

 

 神根島 海岸

 

 

「……最悪。」

 

 最後に憶えているのは降り注ぐ赤黒い閃光。

 それと、母に手を引かれていた幼い自分。

 

「母上の夢見た時って大体良い事無い……。」

 

 海水に浸っていた身体を起こし、何故か一緒に流れ着いていた仮面を手に、波が届かない場所へと歩を進める。

 

「あー、びしょびしょだ。」

 

 海水で身体は濡れ、砂が肌とスーツの間に入り込み不快感を覚える。

 

「何処かで水浴びしないと…、さて。」

 

 改めて辺りを見渡す。

 人工物は一切確認出来ず、人気も無い。

 

「……んー。 気温、湿度から考えるに、式根島の近くって考えていいのかな?」

 

 作戦開始前に確認した地図を思い出す。

 確か式根島の少し外れに、小さな島があった気がする。

 

「取り敢えず、安全の確保。 2人の捜索はその後にしよう。」

 

 浜辺を歩きながら、ふと考える。

 自分でも驚く程、落ち着いている、と。

 傍から見たら誰もが思うだろう。兄と友人の事が心配なんじゃないか、って。

 兄上とカレンの事は勿論心配だ。

 しかし、どうしてかは分からないが、彼らが生きている確信がある。生きてこの島に流れ着いている。何となく、そう感じるのだ。

 

(流れ着いた、か。)

 

 自分が海岸に倒れていたからそう思ったが、果たして本当に流れ着いたのだろうか。

 コックピットに居た筈の自分が何故、生身で居る?

 本当に流れ着いたのだとしたら、内地にいた筈の自分達はどうやって海まで飛ばされた?

 

(……ギアスに関わる遺跡ねぇ。)

 

 作戦前にC.C.が言っていた事を思い出す。

 不可解な事が多い今回の件、どうしてもギアスの関与を疑ってしまう。

 

「転移…って考えた方が自然? それだとしたら一体誰が――――。」

「あら、貴女は……」

 

 考え事をしながら歩いていたアルカは目の前から来る少女に気付かなかった。

 同じように海水に濡れ、砂にまみれたドレスに身を包んだピンク色の髪の少女。

 

「ア、ルカ……?」

「ユフィ姉……!」

 

 母が殺されたあの日から、一度も会う事の無かった義姉。

 嫌われていた私達と親しく接してくれた優しい義姉。

 自らを人質として買って出たあの時、私の頭を撫でてくれた義姉。

 そんな彼女が今、私の目の前に居た。

 

「…………」

 

 アルカは気まずそうに視線を逸らす。

 昔の彼女だったら、駆け寄って抱き着いていたかもしれない。しかし、今の彼女はブリタニアに対するテロリスト。言わば敵。

 

「やっぱり、生きていたのね! よかった……。」

 

 しばらく目を丸くして驚いていたのも一瞬の事、すぐに優しい顔でアルカに微笑み、抱きしめる。

 

「ちょ……、んっ………。」

 

 久しぶりの義姉の抱擁に思わず小さい声を上げる。

 零距離で感じる義姉の体温に、息遣いに、わずかに抱いていた警戒心を解いていくアルカ。

 

(感の良い彼女の事だ。 私が今、何をしているかも粗方分かっているだろう。 いつまでもこうしている訳にもいかない。)

 

 ユーフェミアに包まれながら、アルカは考える。

 

(………だけど、あとちょっと。 もう少しだけ。)

 

 アルカは静かに目を閉じ、ユーフェミアの背中へ自身の手を回した。

 

 

◇◇◇

 

「ッ……」

 

 思わずこの状況に舌打ちが出てしまう。

 

(扇達と連絡を取るのは難しいな。 しかし、一般人を装ってブリタニア軍に助けを求めようにも……)

 

 気づけば流れ着いていた別の島。

 しかし、手元には通信機は無く、団員すら見えない。

 

(ん?)

 

 ふと、視線を感じ思考を止め、その方向へ眼を向ける。

 そこには2人の少女が佇んでいた。

 1人はエリア11の副総督、ユーフェミア。もう1人は自身の実妹、アルカ。

 

「ゼロ………。」

 

 ユーフェミアは驚いた様子も無く、静かにその名を口にする。

 

「これはこれは、ユーフェミア皇女殿下。こんなところでお会いするとは。』

 

 懐から銃を取り出し、その銃口をユーフェミアへと向ける。

 

『……隣に居る少女は私の大切な部下でしてね。 こちらに引き渡してくれると、ありがたいんですが。』

 

 ユーフェミアは何も答えず、静かにゼロを見上げる。彼女の横に居るアルカはユーフェミアを取り押さえようともせず、何処か諦めた様な表情を浮かべている。

 しばらくゼロとユーフェミアの間に無言のにらみ合いが続いていたが、ユーフェミアが口を開き、沈黙を破った。

 

「…ルルーシュ。」

『!!』

「ルルーシュなのでしょう? 誰にも言っていません。 本当です。」

 

 仮面の下のルルーシュの顔には驚愕の色が浮かんでいる。

 

「だから、私を撃つ前に、せめて……」

 

 顔を見せて下さい。ユーフェミアはそう告げた。

 見たいのだ、成長したルルーシュを。幼い頃に生き別れた異母兄を。

 

『…………』

 

 ユーフェミアの願いに対し、返事は無かった。

 ただ、静かに、ゼロ=ルルーシュは自身の仮面に手を伸ばす。

 わずかな機械音と共に、ゼロの仮面は外され、ルルーシュの顔が晒された。

 

「あ……」

 

 ユーフェミアは思わず声を漏らす。

 記憶に残っているルルーシュよりも背が高く、髪が長く、目つきが悪い。

 それも当然だ。何せ7年も経っているのだから。

 しかし、優しい彼の面影が、その綺麗なアメジスト色の瞳が、昔と変わらず、ユーフェミアは瞳に涙を貯める。

 

「ルルーシュ……」

 

 ・

 ・

 ・

 

 海岸沿いにある波が届かない程の大きな岩の上で、3人は休んでいた。

 アルカとユーフェミアの服を乾かす必要があったからだ。

 岩盤にパイロットスーツとドレスを広げ、岩を背もたれに、アルカとユーフェミアは深く腰掛けている。

 無論、2人に替えの服など無く、裸だ。

 そこで妹達を心配したルルーシュ(シスコン)は自身のマントをユーフェミアに掛け、彼女の脚の間にアルカを座らせた。

 それが現状、彼が思いついた身体を冷やさない方法だったのだ。

 ユーフェミアも彼の意図を汲み取ったのか、アルカを後ろから抱きしめ、マントで覆っている。

 肌の触れ合いが恥ずかしいのか、アルカは顔を赤くし、モジモジと落ち着かない様子だ。

 

 

 閑話休題

 

 

 一先ず、妹達の身を優先したルルーシュだが、彼の頭の中には一つの疑問でいっぱいだった。

 それは――――。

 

「いつから気付いていた?」

 

 ふと、ルルーシュが口を開いた。

 ユーフェミアに名前を言われたその時から、本来だったら真っ先に聞くべきだった質問。

 

「ホテルジャックの時……」

「そうか…。 あの時は思わず言い過ぎたよ。」

 

 クロヴィスを殺した理由を聞かれた時、ゼロはブリタニア皇帝の子どもだからと口にした。

 それではまるで、皇帝自身に恨みがあるような口振りじゃない。

 

 ユーフェミアはあの時から、ゼロに対する見方が変わった。

 

「でも確信したのは今さっき。」

「……私が居たから?」

 

 静かに話を聞いていたアルカが口を開いた。

 声は淡々としているが、その顔には少し陰りが見える。

 負い目を感じているのだ、自身の所為で兄の正体がバレたのではないか、と。

 

「それも勿論あるけど、ルルーシュの言動かな。 真っ先にアルカを引き渡す様に言ってくるんだもん。 それに銃を向けるだけで撃つ気配しなかったし。」

「………甘いな、俺も。」

 

 妹に対して甘いのは昔からじゃない、ユーフェミアは内心そう思ったが、口にはしなかった。

 

「でも、そうしたら何でコウ姉様に相談しなかったの?」

「お姉様は私の言う事なんか信じないわ。 それに、それ以上に悲しくて……。」

 

 ユーフェミアは皇族の中でも珍しく、異母兄弟とも親しく接していた。

 元来、争いごとに向いていない性格もあって、身内同士の殺し合いは見てられないのだろう。

 

「1つだけ教えてくれ、君は母が殺された事件について何か……。」

「ごめんなさい。 でも、お姉様は色々調べているみたい。」

「そうか。」

 

 マリアンヌの所へ通い、稽古に明け暮れていたあの時のコーネリアの光景がルルーシュの脳裏に浮かぶ。

 

(そういえば、アルカの面倒も良く見ていてくれたな。)

「私も一つ聞いても良い? 貴方は、ゼロ? それとも―――。」

 

 少し声音を震わせながら、ユーフェミアは問う。

 敵か、そうでは無いか。

 

「ルルーシュだよ。 ああ、今ここに居るのは君の知っているルルーシュだ、ユフィ。」

 

 ここで初めて、ルルーシュはユフィと呼んだ。

 この言葉の意味を受け取ったのか、ユーフェミアは再び涙を浮かべる。

 

「アルカもそれでいいな?」

「私は最初からそのつもりだったよ。」

「ふっ、そうか…付き合わせて悪かったな。」

 

 穏やかに笑みを浮かべ、ルルーシュは呟く。

 緊迫した空気が解かれ、和始めたその時、乾いた音が響いた。

 良くある空腹を知らせる音だ。

 

「あ…。 安心したらお腹が空いちゃいました!」

 

 頬を赤らめユーフェミアは素直に告げる。

 そんなユーフェミアの光景に対し、懐かしさを覚えながらルルーシュは彼女の要望に応える為、準備を始めた。

 

 

◇◇◇

 

「えぇっと……。」

 

 苦笑を通り越して、顔が引き攣ってしまっているアルカ。

 食料確保の為、森へと繰り出した3人。

 ルルーシュが野生動物の足跡や糞を見つけた事から、今3人の居る道が通り道という事を確信。

 そこに罠を置き、動物を捕獲しする。という作戦を立てたまでは良かったのだが………。

 

「はぁ、はぁ…くっ………。」

「本当に大丈夫?」

 

 目の前には息を切らし、今にも倒れそうになっている(ルルーシュ)と、それを心配そうに見ている(ユーフェミア)

 

 この光景が生まれる僅か数分前。

 罠の為の穴を掘ろうとアルカとユーフェミアが意気込んでた所に、太い木の棒を持ったルルーシュがストップを掛けた。

 ここは俺に任せろ。そう言わんばかりの雰囲気でルルーシュは木の棒を地面に突き付け穴を掘り始める。

 何度もアルカやユフィが手伝うと言ったが、ルルーシュはそれを拒み、そして今に至る。

 

「あー…、兄上。 私変わるよ?」

「いや……、お前も、慣れ、ないこの状況で、つ、疲れて、いるだろう……、そんな妹に、肉体労働を、……させる訳にはっ。」

 

 ルルーシュの額には滝の様な汗が浮かんでいる。

 

「え~っと……」

 

 ユーフェミアとアルカは視線が交差し、意志を汲み取ったのか、2人は小さく頷いた。

 

「じゃあ、私とユフィ姉で果物とかお水、取って来るね~。」

「あ、ああ……、気を付けるんだぞ………。」

「「は~い。」」

 

 2人は笑みを浮かべながら、その場を後にした。

 

 ・

 ・

 ・

 

「変わらないわね、ルルーシュ。 強気でプライドが高くて、貴女の前では弱みを見せようともしない。」

「こっちは無理してるの分かってるんだけどね。 まぁでも、そこが兄上の良い所だし、私はそんな兄上が好き。」

 

 ルルーシュから少し離れた場所で、ユーフェミアとアルカは果物を採取しながら会話に花を咲かせる。

 時折2人が呟く、「これって食べれるのかな?」という言葉が不安をそそる。

 

「でもいくらユフィ姉の前だからって、恰好付け過ぎだと思う。 いつもだったら少しは頼ってくれるのにさ。」

 

 少し不満なのか、どこかいじけた様にアルカは語る。 

 

「あら、そうなの? 昔のルルーシュは一から十まで貴女達の事やっていたのに。」

「あはは…。 まぁ、色々とありまして……。」

 

 C.C.にからかわれるからね……。

 この件に関しての口喧嘩はもう何度も見てきた。

 大体C.C.がのらりくらり躱して圧勝だったけど……。

 

「ふふ、思ったよりも元気に過ごしていて良かったぁ……。あ、そうそう、ずっと聞きたかったんですけど。」

「?」

「学校生活はどう?」

 

 学校生活――、聞かれて思い浮かぶのは、生徒会の面々と過ごす日々。姉上とのんびり過ごす放課後。C.C.と夜のプールに忍込み……。

 

(いや、最後のはちょっと違うか……。)

 

 兎も角、思い返してみると、楽しい出来事ばっかりで満ち足りた気分になる。

 

「……楽しいよ、恐いくらい。」

「…そう。」

 

 ユーフェミアの顔を見ると、口は笑みを作っているものの、視線は下がり、何処か寂しそうな印象を受ける。

 そこでアルカは納得した。

 

(羨ましいんだろうな。)

 

 ユーフェミア・リ・ブリタニアという少女は学校に通ったことが無い。

 それもその筈、皇族は学校には通わず、宮廷内で学びを修めるのが基本。

 例外はあるものの、16歳という、まだまだ遊び足りない時期に副総督に任命された彼女にとって、学校という環境は特別なものに見えているのだろう。

 

「……行きたいね、学校。 私、ユフィ姉と同じ学校に行ってみたい。」

「アルカ?」

 

 これは決して慰めからでは無く、本心から出た言葉だ。

 

「一緒に授業受けて、放課後は一緒に美味しい物食べに行って。」

 

 アルカはユーフェミアに目を合わせる。

 

「……平和な世界になったらしたいね。」

「………」

 

 彼女は静かにアルカの言葉を聞いている。

 

「それに、兄上との仲も進展するしね。」

「……………はい?」

「そうしたら私、兄上とユフィ姉の事、全力で応援するから!」

「…………………え? 何を言って……。」

 

 折角、人が真剣に話を聞いていたのに、なんて冗談を飛ばしてくるんだこの子は。そんな声がユーフェミアの顔から読み取れる。

 

「え? 私てっきり兄上の事まだ好きなのかと…。 ほら、前にルルーシュのお嫁さんになる!って言っていたし………。」

 

 確かユーフェミアがルルーシュ達の所へ泊りに行った日。

 ナナリーとユーフェミアがどちらがルルーシュのお嫁さんになるか喧嘩をし始め、面白半分でアルカも参戦してきた昔の出来事。

 

「そ、そんな昔の事! というか私の事を棚に上げて! 貴女とナナリーだって言っていましたからね!!」

「あの頃は私も姉上も子どもだったから……。 でも大丈夫! 今なら純粋に2人の事祝える!」

「わ、私だって子どもでしたよ! それに今は他の人が……!」

 

 無邪気な子ども時代の話を改めて聞くと羞恥心に襲われる。それは皇族であろうと変わらない。

 アルカが揶揄う様に言ってくるものだから、ユーフェミアはヒートアップし、思わず口を滑らしてしまった。

 

「え、他の人? 誰? 皇族の人? 軍の人? 私の知っている人?」

 

 アルカのお花畑(脳内)には、何人かの顔が浮かぶ。

 ダールトン、ギルフォード、ビスマルク、シュナイゼルetc……。

 

「教えません! ほら、ルルーシュの所へ戻りますよ!」

 

 両手に果物を抱え、ユーフェミアは走り出す。

 

「あー! 逃げた! ねーねーだーーれーー。 おーしーえーてー!」

 

 ユーフェミアを追ってアルカも走り出す。

 

 一時的に彼女達を取り巻くしがらみから解放されたこの場で、アルカはこんな時間がずっと続けば良いのにと、と考えた。

 




アニメのルルーシュとユフィ、スザクとカレンがそれぞれサバイバル生活繰り広げてるシーンが大好き侍。
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