コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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いつも感想等、ありがとうございます!


一期の終わりが見えてきたぜ……


stage23 主と従者

 アルカとユーフェミアの規則正しい寝息を聞きながら、ルルーシュは一人考える。

 

「あの頃のままで居られたら、どんなに良かったでしょう。」

 

 ユーフェミアが眠りに落ちる前、口にしていた言葉だ。

 彼女の言葉に対する返事をルルーシュとアルカは持ち合わせていなかった。

 

 ルルーシュは考える。

 あの頃のままで居られたら、どんなに幸せだっただろう。

 母が生存し、ナナリーは自身の足で、目で世界に触れ、アルカと生き別れる事など無かった。

 しかし、

 

「そんなものは偽りだ。」

 

 仮に皇族に身を置いたままだったらどうなっていただろう。

 アルカの出生を知る事も無い。

 皇帝(あの男)に与えられ、生かされる日々。

 今の世界の光景を、知る事すら無かっただろう。

 

「………」

 

 ルルーシュは立ち上がり、寝ているアルカの傍に寄る。

 ユーフェミアの腕に抱かれて眠る彼女の顔は安らかで、この世の穢れを知らない様にすら見える。

 

「俺は……」

 

 アルカの形の良い頭に手を伸ばし、そのまま髪を撫でる。

 髪はまるで砂の様にルルーシュの指の間をすり抜けていく。

 

「俺自身が生き抜くためにも……」

 

 止まる訳にはいかない。

 

 

◇◇◇

 

 神根島 遺跡

 

 

「思考エレベーターねぇ……。」

 

 気の抜けた男の声が、遺跡内に反響する。

 

「考古学は得意じゃないんですが……。 特に超とか付きそうなものは…。」

 

 声の主は特派所長、ロイド・アスプルンド。

 彼は目の前の、扉にも見える遺跡を見上げながら呟く。

 誰がどう聞いても、彼が面倒臭がっているのが分かる様な声音だ。

 

「貴様! 無礼であろう!」

 

 そんな彼の態度を、バトレー・アスプリウスは咎めた。

 この男は存外、皇族に対する忠誠心が高く、クロヴィスが死んだことで尽くしきれなかった忠義を、今は別の皇族へと注いでいる。

 それは――。

 

「そんなに嫌がらないでくれよ、父君もこの手のモノにご執心らしくてね。 そうなんだろ? バトレー。」

 

 常に穏やかな笑みを浮かべ、ロイドの様な変わり者に対しても常に礼節を持って振る舞う好漢。

 神聖ブリタニア帝国第2皇子にして帝国宰相、シュナイゼル・エル・ブリタニア。

 現状、最もブリタニア皇帝に近いと言われている男が今、エリア11へと来ている。

 

「はい、同様のモノが世界の数か所で見つかっており、私が発見したここを除き、全てが天領とされております。 これは推測ですが、各国に対しての侵攻計画はこれらのポイントに沿って行われているものかと……。」

 

 クロヴィス死後、バトレーを通して知った。

 彼が熱心に行っていた研究を。シャルル・ジ・ブリタニアが固執しているものを。

 シュナイゼルは興味があった。彼らが執着している古代文明に。これが果たして、世界にとって合理的なのか。

 

「んで~、そんなオカルトのデータ解析に、ガウェインのドルイドシステムを使うんですか? まだ未調整の試作機を。」

 

 3人の視線の先は一機のKMFに注がれた。

 

 第六世代KMF「ガウェイン」。

 通常のKMFの1.5倍程の高さがある大型KMF。

 ロイドが開発した電子解析システム、「ドルイドシステム」を搭載しており、情報戦に特化した機体。

 

 そのシステムが反応を示したのだ、遺跡にある、何かを。

 

「その為に君を呼んだんだよ。」

 

 シュナイゼルは柔和な笑みを再び浮かべる。

 

「あはぁ~。」

 

 合点がいったのか、ロイドの気の抜けた声が遺跡に響いた。

 

 

◇◇◇

 

 神根島 山頂

 

 

「この辺りだと思うんだが……」

 

 昨晩、ルルーシュが見たという人工光。

 ルルーシュ、アルカ、ユーフェミアの3人は、光の元とと思われる神根島の山頂へと辿り着いた。

 

「人の気配が全くしないけど、本当に見たの? 寝ぼけてたんじゃなくて?」

 

 アルカが揶揄う様に口を開く。

 確かにアルカの言う通り、人の気配は無く、光の発生源であろう機械も無い。

 

「まさか、流石にこんな状況で見間違えないよ。 俺はアルカほど眠気に忠実な訳でも無いしな。」

「もしかして、さっきの事言ってる……?」

 

 アルカの言葉に、ルルーシュもすかさず意地悪く反応する。

 朝に弱い彼女は、先ほどまで思考がまともに動いて無く、ユーフェミアとルルーシュの手を焼かせていたのだ。

 

 そんな2人のやり取りを少し後ろから見ていたユーフェミアは微笑む。

 

(懐かしいわね。)

 

 この二人は昔も良く、お互いに冗談を言って揶揄い合っていた。

 ナナリーに対する接し方とはまた違うが、これもこの兄妹なりの絆なのだろう。

 ユーフェミアからしてみたら、2人の対等な兄妹関係に、昔は憧れを抱いていた。

 

「………ねぇ、」

 

 突如、後ろから聞こえたユーフェミアの声に、2人は会話を止め、振り向く。

 

「捜索隊が居たら、この時間も終わりなの?」

「…ユフィ姉………。」

 

 2人の光景を、昔の記憶と照らし合わせている内に、ユーフェミアは耐え難い寂寥感に襲われた。

 

「……仕方ないさ。」

 

 ユーフェミアは顔に影を落とす。

 寂しくて仕方無い、そんな顔をしている。

 

「まぁ、兄上と一緒じゃ食事すらまともに取れないもんね。」

「そういうことだ。 悔しいが、この役目は本来の騎士に譲るとしよう。」

「……ふふっ。」

 

 2人のやり取りに思わず笑みがこぼれる。

 気を使ってくれたんだろう、我儘な私に。

 

「そういえば、どうして彼を騎士に? 名誉ブリタニア人だろう?」

「それは……。」

 

 ユーフェミアが言葉を紡ごうとしたその時、進行方向から物音がした。

 

「!」

 

 会話を中断し、3人は草陰と隠れる。

 すかさずルルーシュとアルカは懐から仮面を取り出し、それを身に着ける。

 それはこの穏やかな時間が終わる合図とも言えた。

 

 外の様子を伺っていると、物音の主が姿を現した。

 白いパイロットスーツを身に包んだスザクと腕を拘束されたカレン。

 

(何故あの2人が?)

 

 ルルーシュは知らない、カレンが自身の元に駆け付け、巻き込まれた事を。

 

「スザク!」

 

 自身の騎士の無事に感情が高ぶったのか、ユーフェミアは飛び出す。

 

「ユーフェミア様!?」

 

 特派と安全な場所に居る筈のユーフェミアがどうしてここに。

 そんな疑問がスザクの脳裏に浮かぶが、それを解決する答えは持ち合わせておらず、また時間も無かった。

 

『動くな。』

 

 ゼロが現れたからだ。ユーフェミアに銃を突き付けて。

 その横には見覚えのない仮面の少女が一人。

 

(誰だ、あの子は?)

 

 初めて見る子だ。軍の情報にも上がっていない。

 体つきと身長から少女と推測出来るが、それ以外の事は全く分からない。

 唯一上げるとするならば、その着ているパイロットスーツのデザインがカレンと一致している事から、黒の騎士団員という事くらいか。

 

「ゼロ! それに貴女も!」

 

 カレンは嬉しそうに声を上げる。

 

『そこに居る私の部下を返してもらおう。 人質交換だ。』

 

 ゼロの言葉により、スザクの思考は現実に引き戻される。

 

「ゼロ、お前はまた!」

 

 込み上げてきた怒りを抑えられず、スザクは声を上げる。

 信用出来ない、そう彼の顔が語っている。

 最もこの場において不利なのはスザクであるから、当然の反応と言える。

 

『私達にとって、この皇女殿下は用済み。 手っ取り早く済ませる為にも交渉に応じて下さい。』

 

 仮面の少女が沈黙を破り、口を開いた。

 

『そういう事だ、さぁ彼女を渡せ、枢木スザク。』

「くっ……。」

 

 ゼロ達の言葉を信じるか、信じないか。

 スザクの心に迷いが生まれる。

 だから気づくことが出来なかった、自身の後ろでカレンが拘束を解き、自らに襲い掛かろうとしていた事を。

 

「おやめなさい!」

 

 ユーフェミアの声も虚しく、スザクはカレンに羽交い絞めされてしまう。

 

「黙ってろ! お人形の皇女様が! 1人じゃ何も出来ないくせに!」

 

 お人形の皇女様、お飾りの副総督。

 ユーフェミアが陰で言われている事だ。

 勿論、ユーフェミアにもその自覚はあるし、言われているのも知っている。

 しかし、だからこそ。ルルーシュとアルカに譲れないモノがある様に、彼女にもそれはある。

 元々負けず嫌いのユーフェミア、カレンの物言いにヒートアップしてしまった。

 

「なっ! 構いません、スザク! 私の事は気にせず戦いなさい!」

『皇女殿下!』

(あー、もう滅茶苦茶だ……。)

 

 どうしてこうなってしまったんだろう、とアルカは思った。

 スザクに伝えた様に、今更ユーフェミアに何かする気はさらさら無いし、この場から穏便に去れればそれで良かった。ルルーシュも同じ考えだ。

 しかし事態は2人の望んでいない方向へとこじれていく。

 

「今なら…!」

 

 一瞬の隙をついてスザクはカレンの拘束を振りほどいた。

 いくらカレンと言えど、男性のスザクの力には敵わない。

 

 持ち前の身体能力を発揮し、スザクは一瞬で距離を詰める。

 迫るスザクから逃げる様に、ゼロとアルカはユーフェミアから離れ、カレンの元へ寄った。

 

『この石頭が!』

 

 ゼロが苛立ちの声を上げたその瞬間、事態は急変した。

 地面が赤く光出したのだ。

 

『何!?』

 

 視線を下へと向ける。

 そこには模様が浮かんでいた。大空へと羽ばたく鳥の様な模様。アルカとルルーシュに宿るギアスの模様。

 

『これは……』

 

 アルカはC.C.の言葉を思い出す。

 

(ギアスの遺跡………?)

 

 ギアスを発動している時と同じ感覚に襲われながら、アルカは自身の動悸が早くなっている事に気付いた。

 

(なん、だこれ……)

 

 気持ち悪い。

 思わず自身の胸の中央を抑える。

 全身から汗が吹き出し、脚が震える。

 とうとう自立するのが困難になり、アルカはその場にしゃがみ込む。

 

『! おい!』

 

 アルカの異変に気付いたゼロは、彼女に手を伸ばす。

 が、その瞬間。

 激しい音と共に、床が沈んでいった。

 

 

 同時刻  神根島 遺跡

 

「な、なにこれ……」

 

 彼を知るものが聞けば驚くだろう。

 それほどまでにロイドは困惑していた。

 突如、ドルイドシステムが解析しきれない程のデータが激しい振動と共に流れ込んできたのだ。

 モニターから目を放し、遺跡を見る。

 掘られた模様に合わせ、赤く光っていた。

 中央から各方向に伸びた線はまるで血液の様にも、植物の根の様にも見える。

 

「お下がりください! 我が君!」

 

 シュナイゼルの身を案じたバトレーが声を上げる、がシュナイゼは声が聞こえていないのか遺跡を見つめたまま立ち尽くしている。

 

 そして、遺跡の支柱が崩れ、天井の一部が崩落した。

 その天井の崩落と共現れたのは。

 

「枢木少佐! それと、まさか……ゼロ!」

 

 そこに居たのはスザク、ユーフェミア、ゼロ、カレン、アルカ。

 ブリタニア軍はゼロに対し、銃口を向ける。が

 

「バカ者! ユーフェミア様もおられる! 確保だ!確保しろ!!」

 

 意外にもそれを制止したのはバトレーだった。

 兵は銃を下げ、5人が居る遺跡の祭壇へと駆け寄る。

 

「ゼロ! あそこにナイトメアが!」

『よし! あれを使うぞ!』

 

 カレンが指さした方向には、黒い鎧の鋼鉄の巨人。

 

『おい、行くぞ!』

 

 座り込んでいるアルカに声を掛け、手を引こうとするがアルカは動かない。

 まるで人形の様に力が入っておらず、心ここにあらずと言った様子だ。

 心配したカレンも、アルカの元へと駆け寄る。

 

『おい、どうした!?』

「どうしたのよ!?」

 

 アルカと同じ状況の人物がもう1人。

 

「スザク? スザク! どうしました!?」

 

 2人は焦点が合わない目で、遺跡を見上げていた。

 

 

◇◇◇

 

(なに、これ)

 

 自身の目の前に広がるのは無機質な星の様な物。

 前にもこの光景を見たことがあるような気がするが、今のアルカには思い出せない

 一つ一つの光景に感想を抱いている暇は無く、刻一刻と目まぐるしく変化していく。

 同じ顔をした無数の少女達、人々の悲鳴、図書館の様な場所。

 

 次々と情報が頭へと流れ込んできて、頭が割れそうだ。

 

(これは…、ここ?)

 

 突如、目の前に広がる視界が見覚えのある場所へと変化した。

 奥にはギアスの模様が描かれた扉の様な遺跡。

 その祭壇で踊る、巫女の様な服を着た黒髪の少女。

 祭壇の前で膝を付き、静かに祈る無数の人々。

 

 少女の服は少し胸元が緩く作られているようで、時折胸元の様子が伺える。

 彼女の胸元には自身も深く関わっている力の象徴。ギアスのマークが刻まれていた。

 

 黒髪の少女が踊り終えたその時、一人の少年が祭壇へと上がってきた。

 軽い癖のついた茶髪の少年。腰には刀が携えてある。

 少女の前に立った少年はしばらく少女を見つめていたが、覚悟を決めた様な顔付きで、片膝を付き、頭を下げた。

 

 これに似ている光景を知っている。そうだ、騎士の叙任式だ。

 

 朦朧とした意識の中で、アルカはそう思った。

 

 ふと、全ての光景が消え去り、アルカの周りには何もない白い空間が広がった。

 色も無い、モノクロの世界。

 

「は?」

 

 思わずアルカの口から声が漏れる。

 その目は驚愕のあまり見開かれ、震えている。

 

 そこには少年が居た。

 先ほどの光景と同じように膝を付いて。

 日本人にしては珍しい色素の薄いくせの付いた髪。

 優しい緑色の瞳。

 枢木スザク。

 

 先ほどの光景の2人と寸分違わない位置に、恰好で、アルカとスザクは居た。

 

 

◇◇◇

 

「……!! い、今の、は…。」

 

 アルカの意識が現実に引き戻される。

 耳に入るのはゼロとカレンの声、それに大勢の兵隊の足音。

 

『おい、立てるか!?』

 

 まだ覚醒しきっていないのか、ゼロの声に対し反応を示さない。

 

 遺跡から目を放し、ゆっくりとスザクとユーフェミアが居る方向へと向ける。

 

「君は……。」

 

 スザクが驚いた様子でこちらを見つめていた。

 仮面越しの筈なのに彼と目が合った、そんな気がした。

 

「ゼロ! そろそろ!」

 

 兵士の足止めをしていたカレンが声を上げる。

 アルカは力なく座り込んだままで、動けそうに無い。

 

『カレン! 彼女を頼む! あのナイトメアで脱出する!』

「はい!」

 

 カレンは向かってくる兵士に向かって目眩ましのフラッシュを焚き、アルカを横抱きにする。

 

「ホント、世話が焼けるんだから!」

 

 カレンは力強く駆けだした。

 

『ありがたい! 無人の上に、起動もしているとは!』

「ゼロ!」

 

 アルカを抱いたカレンが、コックピットまで登ってきた。

 

『ありがとう、カレン。 彼女を後ろの席に。』

 

 2人乗りのKMFという前代未聞の仕様に戸惑いつつも、アルカを後部座席に座らせる。

 変わらずぐったりとしていて、生気を感じられない。

 

 素早く発進準備を整え、ゼロはコックピットを閉める。

 操縦桿を握り、前進させようとしたその時、ある男の存在に気が付いた。

 

(シュナイゼル!!)

 

 ルルーシュが唯一勝てなかった兄。

 母の死の真相近いであろう人物。

 

(ええい、今は!)

 

 目的を見失うな、自身にそう言い聞かせ、ルルーシュはガウェインを動かす。

 複数のKMFに追われるものの、アヴァロンと同じくフロートユニットを搭載したガウェインを追える筈も無く、ゼロを乗せたブリタニアの新兵器は空へと消えた。

 

 ・

 ・

 ・

 

「スザク、すまない…」

 

 追手を振り切り、黒の騎士団との合流地点へ向かっている最中、ルルーシュは自分がスザクにした事を振り返る。

 式根島の砂漠地帯でランスロットのコックピット内に捕らわれていたあの時。

 自らの命を犠牲にしようとしたスザクにルルーシュは生きろとギアスを掛けた

 自身が助かりたかったからじゃない、純粋な彼の願いだった。親友に死んでほしくないというありふれた願い。

 

 しかし、その願いが、親友を苦しめる呪いになる事を、ルルーシュはまだ知る由も無かった。

 

 

◇◇◇

 

「おい、どういうつもりだ。」

 

 その声は酷く不機嫌だった。

 

「だからまだ早いと言っただろう!」

 

「それをお前のくだらん悪戯で、あいつは……!!」

 

 それは何時になく感情的だった。

 

「そんなことは知らん。 それはお前達の事情だろう!」

 

「ああ、もういい! 兎に角、アルカの事は手出し無用だ! 私に任せてくれ!!」

 

 ひとしきり話終えたのか、彼女はため息を付きその場に座り込む。

 

「…アルカ………」

 

 その呟きにどんな思いが詰められているか、それは本人にもよく分からなかった。

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