コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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stage29 去った者、残った者

 

 アルカが凶弾に撃たれる数分前。

 

 記念式典の舞台裏で待機させていたC.C.と合流し、ガウェインに乗り込んだルルーシュは、忌々し気に舌打ちをしながら仮面を取る。

 

「驚いたぞ、まさかここまでするとは。」

「俺じゃない…。」

「何?」

 

 予想をしていなかった返答に、前席に控えているC.C.はルルーシュの方へ視線を向ける。

 そこには左目を赤黒く染めたルルーシュ。

 

「そうか、やはり……。」

「俺はギアスをかけていない。いや、かけたつもりは無かった。…分かっていて契約した、これがやばい力だって。なのに!!!」

 

 自身への怒りか、ギアスへの憎悪か。

 ルルーシュは声を荒げる。

 

「…アルカのギアスは………。」

「あいつのギアスはお前のより強制力が無い。アルカも言っていただろう?命令に上書きは出来ない。」

「そうではなく!アルカは俺の様に暴走しないだろうな!?」

 

 C.C.は静かに目を伏せ、口を開く。

 

「確かにあいつはお前より契約期間は長いが、お前ほど高い頻度で使っていない。…後は、あいつの意思次第としか………。」

「……そうか。」

 

 C.C.に言いたいことがまだあったルルーシュだが、言葉を飲み込み、会場へと目を向ける。

 

「おい、それよりどう治めるつもりだ?この状況を。」

「こうなったらユーフェミアを最大限利用するしかない。……それが、せめてもの…。」

 

 ルルーシュはその目に涙を貯める。

 彼女と手を取り合う未来を選択した筈だった。

 アルカとナナリーが、ユーフェミア、スザクが、皆が幸せに過ごせる世界を共に作ろうと。

 しかし、そんな未来を自身に提示してくれた心優しき少女を今から殺さなければならない。自らの野望の為、踏み台にしなければならない。

 そんな事実がルルーシュに心を締め付ける。

 

「黒の騎士団、総員に告げる!ユーフェミアは敵となった!行政特区日本は、我々をおびき出す卑劣な罠だったのだ!自在戦闘装甲機部隊は式典会場に突入せよ!ブリタニア軍を壊滅し、日本人を救い出すのだ!」

 

 ゼロの声に、ある者は怒りに震え、ある者は絶望し、ある者は涙を流した。

 それぞれの感情に違いはあるが、この場に居る全員が同じ想いを抱いていた。

 

 ブリタニアが憎い、と。

 

「必ず、必ずユーフェミアを……。」

 

 ルルーシュの瞳に溜まっていた涙が、彼の頬を濡らす。

 

「見つけ出して殺せ!!」

 

 

◇◇◇

 

「アルカ!良かった、無事だっ、た……?」

 

 ゼロの指示で式典会場に突入したカレンは、真っ先にアルカを探した。

 一人先行して突入した大切な友人。

 いくら操縦の腕前が良かろうと、いくら無窮のスペックが高かろうと、心配だったのだ。

 式典会場の丁度真ん中辺りで、無窮を見つけたカレンは安堵の溜息を吐くものの、すぐさま異変に気付く。

 

「……ハッチが開いている?」

 

 そう、コックピピットのハッチが開いているのだ。

 この地獄の様な会場のど真ん中で、今もブリタニアの兵士が闊歩するこの場所で。

 

 先ほどの安堵とは打って変わり、カレンの中に焦りが生じる。

 慌てて紅蓮を前進させ、無窮の元へ向かう。

 遠目では見えなかったが、近づくにつれ、無窮の足元に広がる光景が見えてきた。

 夥しい程の死体と血、その中に紛れる様に、一人の少女が横たわっていた。

 その淡いミルク色の髪を、身に纏うパイロットスーツを血に染めたカレンも良く知る人物。

 

「そんな、嘘、でしょ……?アルカ!!」

 

 カレンは紅蓮のハッチを開け、飛び降りる。

 着地時の衝撃に、膝を付きそうになるも、彼女はそのまま足を走らせ、アルカの元へと向かう。

 自身が汚れてしまうのにも関わらず、血だまりに沈む彼女の身体を抱る。

 血を吸ったパイロットスーツと力の抜けたアルカの身体の重さに驚きつつも、彼女は必死に呼びかける。

 

「アルカ!アルカってば!!」

 

 そうこうしている内にもアルカのお腹からは血が流れ出ており、血だまりを広げていく。

 

「ねぇ、返事しなさいよ……。貴女言っていたじゃない…、死なないって……。悪い冗談やめてよね………。」

 

 カレンの大きな瞳に涙が浮かぶ。

 頬を伝って零れ落ち、アルカの顔を濡らす。

 

 カレンの嘆きなど届く筈も無く、無情にもアルカの容体は悪化していく。

 唇は青く染まっていき、陶器の様に白い肌は、さらに色を失っていく。

 

「こ、このままじゃ……。」

 

 アルカの命が亡くなってしまう。

 彼女の存在が、無に、零になってしまう。

 

「…そうだ、ゼロ……」

 

 カレンは懐から通信機を取り出し、一縷の望みをかけてゼロへ繋ぐ。

 

 不可能を可能にしてきた奇跡の男。

 日本の、自分達の希望。

 

 その彼ならアルカを助ける事が出来るかもしれない。

 

「お願い…、助けて、ゼロ!!」

 

 ・

 ・

 ・

 

 同時刻、上空。

 

 ブリタニア軍の最新空港艦、アヴァロンから発進したランスロットを最大速度でスザクは式典会場へと向かわせる。

 フロートユニットにより、空中での活動を可能にしたこの機体は、ユーフェミアを助けるべく、空を切る。

 

「絶対に、ユフィを救い出す!」

 

 自身の主であり、恋人でもあるユーフェミアを救い出す。今のスザクにはそれ以外の考えは無かった。

 だから、向かっている途中で目撃した、友人の妹すらも見殺しにしようとした。してしまった。

 

「あれは……!」

 

 ランスロットが二つの熱源反応を捕らえた。その傍には赤と青の二機のKMF。

 この距離でも様子がハッキリと分かった。

 少女が二人、一人は全身を赤く染めながら倒れ、もう一人はその少女を支えている。

 

「カレンと、まさか……!!」

 

 ルルーシュに似て勝気な性格を持ちながらも、ナナリーに似て人の心に敏感な優しき少女。

「アルカ……!!()()()()、君は…!」

 

 神根島の遺跡での出来事を思い出す。

 あまりにも不可思議で、常識に当てはまらない光景だった為、何かの間違いだと自分の中では片付けたものの、ずっと心の中にしこりを残したままだった。

 

「…撃たれたのか?いや、しかし………。」

 

 素人目から見てもアルカの状況は酷いものだった。

 今すぐ処置をしければ助からないだろう。

 ―――――しかし。

 

 彼女の事だ、黒の騎士団の参加も覚悟を決めての事だろう。

 こうなる未来が起きる可能性が存在するのを知りながら、彼女はその道を選んだんだろう。

 

 正義何て結局は、その人次第何だから。自身の正義に準じればいいと思うよ。

 

 いつの日か、彼女に言われた言葉を思い出す。

 自分の正義と彼女の正義が、進むべき道が交わらなかっただけの事。

 今の自分は軍人だ、ユーフェミアの騎士だ。

 目的を見失うな。

 

 スザクは自身にそう言い聞かせる。

 

 生徒会に皆は悲しむだろう、ルルーシュやナナリーだって…。

 でも。

 

(……ルルーシュ………。)

 

 スザクは覚悟を決めた。

 アルカを見捨て、ユーフェミアを救う覚悟を。

 

(すまない、これも一つの結果だ、()()…。)

 

 スザクは目線を逸らし、ランスロットを場外へと向かわせた。

 

 

◇◇◇

 

 式典会場の外に居る日本人を虐殺する為、場外へ出ていたユーフェミアと対峙するルルーシュ。

 ユーフェミアとの睨み合いが続く中、カレンから通信が入り、その内容に驚愕する。

 

『…何?アルカが!?』

 

 アルカが撃たれ、今にも死にそうだ。

 半狂乱になったカレンが息を切らしながらそう言った。

 

「どう?一緒に行政特区日本を……。あら?日本……?」

 

 自身が口にした日本という言葉に違和感を覚え、首を傾げるユーフェミアをゼロ=ルルーシュは見つめる。

 

(アルカは…、あいつは…!ユーフェミアを止めようとして…!)

 

 自身の妹の事だ、彼女の性格、行動原理は全て分かる。

 

(そして、この状況を作り出したのは……。)

 

 自身のギアス。

 

『C.C.!!』

 

 後ろに待機するガウェインに乗っているC.C.に呼び掛ける。

 確信があったのだ、彼女ならアルカの状況が分かるだろうと。

 

『ああ…!分かっている!()()()()()()()()!』

 

 普段はこんな事無いんだが…、とC.C.は珍しく焦った表情を浮かべながら呟く。

 

『あいつは死んではいない!カレンが傍に居るんだろう!?すぐにラクシャータの元へ連れて行けば助かる!あいつらに任せてお前はユーフェミアに集中しろ!』

 

 今すぐにでも駆け付けたい。

 ルルーシュもC.C.も同じ想いを抱いている。

 しかし、ルルーシュにはゼロとしての立場が、C.C.にはこの場に居るもう1人の契約者を守る必要がある。

 

 動揺を必死に抑えながら、ルルーシュはユーフェミアに銃口を向ける。

 

「ルルーシュ、聞いているの?一緒に行政特区を……。」

『…ああ、出来ればそうしたかったよ。………君と共に…!!』

 

 全てがスローモーションに見えた。

 響く銃声も、重力に従って倒れていくユーフェミアも。

 

(どうして…、ルルーシュ……?)

 

 そうユーフェミアの口が動いた。しかし、音としてルルーシュに届くことは無かった。

 

(さようなら、ユフィ…。多分、初恋だった。)

 

 こうしてまた一人、ルルーシュは肉親をその手で殺めた。

 

 

 

 「ユフィ、良かった……!」

 

 ゼロと対峙するユーフェミアを見付け、彼女の無事に安堵の表情を浮かべたスザクだったが、残酷なこの世界はそんな彼を裏切り続ける。

 

「そんな…!ユフィっ!!!!」

 

 自身の主が、恋人が、ゼロの凶弾によって倒れていく。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 絶叫しながらランスロットを彼女の元へと向かわせる。

 存在に気付いたガウェインや、周りの無頼が迎撃しようとランスロットに対し攻撃を加えるが、ブレイズルミナスを展開させ、無理矢理攻撃を流す。

 

「邪魔をするなぁ!!!!!」

 

 武器も使わず、ランスロットの拳をガウェインに叩きつける。

 金属がひしゃげる音と共に、右手が潰れていくが、そんなものは些細な問題だった。

 そのままガウェインを退き、残った左手でユーフェミアを拾って、この場を離脱する。

 

「早く、早くしないと……!」

 

 ユーフェミアの容体が悪化しない様に気を使いながら、急ぎアヴァロンへ向かう。

 ブリタニアの技術力なら、助かるかもしれない。

 

 アヴァロンへ着艦したスザクはユーフェミアを横抱きにして艦内の医務室に向かう。

 ユーフェミアの胸の中央からは、とめどなく血が流れ、スザクの着る白い正装やアヴァロンの廊下を汚す。

 

 その光景を見たロイドとセシルは驚愕した。

 自分たちの想定以上にスザクは取り乱し、ユーフェミアの容体が悪かったからだ。

 

「お願いします…!ユフィを、ユフィを助けて下さい!!!」

 

 スザクの悲痛な叫びが艦内に木霊した。

 

 ・

 ・

 ・

 

 紅蓮の腕の中で、今もうずくまるアルカを横抱きにして、カレンは走る。

 

 ラクシャータ・チャウラー。

 黒の騎士団専属の科学者。

 ゼロは言っていた、彼女は医療技術の面でも優秀であり、彼女に任せればこの子は助かるだろう、と。

 

「ラクシャータさん!!」

 

 黒の騎士団のトレーラーで待機しているという彼女の元へとたどり着いたカレンは声を荒げる。

 ソファで寝そべっていたラクシャータと、彼女と話していたディートハルトがカレンの方へ視線を向ける。

 

「ん~?あら、カレンちゃん。ブリタニア軍の制圧は終わったのかし、ら……。」

「これは、皇、様……?一体……。」

 

 何時もの妖艶な笑みと、薄暗い笑みを浮かべていた二人だったが、アルカを目にした途端に、表情をこわばらせる。

 

「この子を…、アルカを助けて下さい!!」

 

 

◇◇◇

 

「コーネリア様への報告は、私が……。」

「政庁までは?」

「…持ちそうにありません………。」

 

 アヴァロン内に設けられた医務室から出てきた医師達は、暗い顔を見合わせながら、今後の対応について話し合う。

 内容は言うまでもない、ユーフェミアの事だ。

 

 医務室の椅子に座り、首を垂れていたスザクは顔を上げる。

 さっきまで決して開くことの無かった瞳が開いていたからだ。

 ユーフェミアはスザクと話したいのか、口を動かす。しかし、医療用のカプセルがその声を遮断して、言葉はスザクに届かない。

 

 見かねたセシルがそっと、カプセルの蓋を開け、そのままロイドと共に退出した。

 今のユーフェミアは何とか意識を取り戻したものの、その命は死へと向かっている。せめてもの優しさだろう。最後にスザクが彼女と会話出来る様に。

 

「……ユフィ、教えて欲しい。君はどうして…あんな命令を?」

「…命令……?なんの、こと……?そんなことより、スザクは、日本人でしたよね……?」

「え、ああ……。」

 

 ユーフェミアの瞳が赤く染まる。

 ギアスだ。ルルーシュが意図せずかけてしまった絶対順守の力。

 しかし、

 

「うっ、…違う……、だめ、そんなこと……考えちゃ、いけないっ…!」

 

 ユーフェミアの心拍数が上がっていくのが心電図から確認できる。

 日本人を殺せという命令と、それを否定する彼女の意志が、ユーフェミアの中でせめぎ合う。次第に彼女の脳内から殺害の衝動が消え失せていく。彼女の意志が強かったのか、それとも彼女の身体がもう実行出来ない状況なのか、それは分からない。

 

「…スザク……。式典は…日本は、どうなった、かしら……?」

「ユフィ…、憶えていないのかい…?」

「日本人の皆さんは、喜んで…くれた……?」

 

 スザクの瞳が大きく開かれる。

 彼女はこの状態になっても、日本人の、皆の幸せを願っている。自身の命の灯が、消えてしまいそうになっているのに。

 

「……ユフィ…、行政特区は………。」

 

 その場に居ないスザクでも、容易に想像ができる。

 彼女の願いとは裏腹に、日本人達の間には怒りが、恨みが、憎しみが、渦巻いているだろう。今回の一件で、日本とブリタニアの間には深い溝が出来てしまった。もう誰にも止めることは出来ないだろう。この先に待っているのは戦争だ。

 しかし、とスザクは考える。

 それをこの少女に伝えるのか、死を目前にした、心優しき少女に。

 

「私は、うまく出来た……?」

「大成功だよ……!皆、とても、喜んでいたよ……!」

 

 スザクは初めてユーフェミアに対して嘘を付いた。彼女を安心させる為の、優しい嘘。

 

「…よかったぁ……!」

 

 ユーフェミアは目を細め、安堵の表情を浮かべる。しかし、その表情とは裏腹に、段々と手足の感覚が失っていき、身体も冷えていく。

 

「…おかしいな、貴方の顔、……見えない………。」

「ユフィ……!」

 

 震える手をスザクに伸ばし、彼はそれを受け止める。

 本来温かい筈の彼の手も、ユーフェミアは感じる事が出来なかった。

 

「学校、行ってね。私は…、途中……辞めちゃった、から……。」

「ユフィ…、今からでも行けるよ…。そうだ!一緒にアッシュフォード学園へ行こう!楽しい生徒会があるんだ、君と……!」

「………私の分、までね……。」

 

 ユーフェミアと、生徒会の皆と、ルルーシュ達と。人種や立場を全て取っ払い、皆で平和に過ごせたら、どんなに良かっただろう。

 しかし、それはもう、叶わない。

 

 ユフィの手が死体の様に冷たくなっていく、白い肌が青ざめていく、その手から力が抜けていく。

 大好きな人が、自分に生きる意味を与えてくれた少女が、自身の手の中で緩やかに死んでいく。

 

「…ユフィ、ダメだ……!」

「…スザク、貴方に……あえ、て…よかっ………。」

 

 最後まで言葉を告げる事無く、ユーフェミアは息を引き取った。

 

「あああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 その部屋に残ったのは、少年の絶望だけだった。

 

 

◇◇◇

 

「取り敢えず、一命は取り留めたわぁ。ただしばらくは活動もNG。生きているのが不思議な位なんだからぁ。」

 

 医務室から出てきたラクシャータはカレンとC.C.にそう告げた。

 

「よかったぁ……!!」

 

 カレンは腰が抜けたのか、その場でしゃがみ込み、安堵の息をつく。

 対するC.C.は何も言わずに、焦りの表情を浮かべながら、医務室で眠るアルカの元へ駆け寄る。

 

「ちょっと、C.C.!」

「顔見る位なら大丈夫よぉ、でも程々にねぇ。」

 

 キセルで手遊びしながら、アルカの元へと向かったC.C.を見送る。

 

「…彼女、本当にアルカちゃんの事、大事なのねぇ。あんなに焦った顔、初めて見たわぁ。」

「アルカが小さい頃から、一緒に居たらしいです。」

「ふぅん。……それにしても、アルカちゃんの生命力の高さには驚かされたわぁ。普通なら死んでても可笑しくないのにぃ。」

 

 カレンはラクシャータの言葉を聞き、出会った当初の事を思い出した。

 

「昔から傷の治りが早い、とは言っていたましたけど。」

「うーん、傷の治りが早いというか……。少しずつ巻き戻っている様な感じなのよねぇ。」

 

 まぁ、生きているのなら何でもいいけど。と一人呟き、ラクシャータはこの場を後にした。

 

 ・

 ・

 ・

 

「アルカ……。」

 

 汗で額に張り付いた彼女の髪をC.C.はかき分ける。

 

「私は分からなくなってしまったよ、自らの願いが。」

 

 C.C.は自嘲するような笑みを浮かべ、アルカの額を優しく撫でる。

 

「…なぁ、お前はどうしたいんだ?」

 

 その問いに答えるものはこの場には居なかった。

 

 

◇◇◇

 

 ユーフェミアを許すな、ブリタニアに死を。

 

 彼女を、ブリタニアを、世界を憎む日本人達の怨嗟の声が、そして英雄を称賛する声が会場を満たす。

 その日本人達の前に、1人の男が立った。

 

『日本人よ!ブリタニアに虐げられた全ての民よ!私は待っていた!ブリタニアの不正を影から正しつつ、彼らが自らを省みる時が来るのを。』

 

 全世界に訴える、ブリタニアの非道を、自分達の正義を。

 

『しかし…、私達の期待は裏切られた。虐殺という蛮行で!』

 

 ゼロに合わせて、日本人達の憎しみの声が増す。

 

『そう!ユーフェミアこそブリタニア偽善の象徴!国家という体裁を取り繕った人殺しだ!!』

 

 もう戻れない。凶弾に撃たれたアルカの為にも、自身によって穢れたユーフェミアの為にも、ここで死んでいった日本人達の為にも。

 

『私は今ここに、ブリタニアからの独立を宣言する。だがそれは、かつての日本の復活を意味しない。歴史の針を戻す愚を、私は犯さない!』

 

 今のゼロ=ルルーシュの胸の中にあるものは哀しみのみ。

 

『我らがこれから作る新しい日本は、あらゆる人種、歴史、主義を受け入れる広さと、強者が弱者を虐げない、享受を持つ国家だ!!』

 

 だから、せめて哀しみとともに。ルルーシュは高らかに宣言する。

 

『その名は、合衆国日本!!』

 

 人々のゼロを支持する歓声が、彼を求める声が、会場を震わせた。

 

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