コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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stage34 そして、終幕へ

「そうか…、お前がゼロか……。」

 

 朦朧とする意識の中、コーネリアは呟く。

 彼女に対峙するのは、仮面を外し、自らの左目を押さえたルルーシュ。

 隠されてない方の目から注がれる視線は、最早肉親に向ける様なものでは無かった。

 

「そうなると、仮面の少女は……。エニアグラム卿の言う事は…当たっていたな……。妹達の為にこんな事を…?」

「そうです。私は今の世界を破壊し、新しい時代を創る。」

 

 ルルーシュは極めて機械的に、感情を表に一切出さず、答える。

 

「そんな世迷言の為に殺したのか…!?クロヴィスを…、ユフィまで!」

「………。」

 

 ルルーシュは何も答えない。

 それだけで十分にコーネリアは理解した。

 もう、道が交わる事は無い、と。

 

「どうやら、これ以上の会話に、意味は無い様だな……。」

 

 そういうコーネリアの表情は、何処か悲し気にも感じる。

 

「そうですね。…ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが問いに答えよ。」

 

 左目から手を離し、コーネリアの瞳を見つめる。

 ルルーシュから放たれたギアスは、コーネリアの脳内を蝕み、支配した。

 

 ・

 ・

 ・

 

「……っ、はっ、きっつ…。」

 

 朦朧する意識の中、アルカは政庁の屋上へと辿り着いた。

 ノネットとの戦闘による負荷が、今になって身体に現れており、ルルーシュと合流するのに時間が掛かってしまった。

 

 屋上には満身創痍のコーネリアと苛立ちを隠せない様子のルルーシュ。

 仮面を外し、素顔を晒していものの、アルカが来たと知り、再び仮面を身に着けた。

 ギアスを掛けないようにする為だろう。

 しかし、分かっていても、兄の素顔を見れないことに、アルカは寂しさを覚えた。

 

「兄、上…、大丈夫……?」 

 

 そうルルーシュに問いかけながら、アルカはコックピットからゆっくりとした動作で降りる。

 

 その姿にルルーシュは怪訝な表情を浮かべた。

 何せ、腹部を血に染めながら、今にも倒れそうな足取りで近づいてくるのだから無理も無い。

 

『おい、アルカ!』

 

 ゼロ=ルルーシュはすぐさま駆け寄り、アルカを支える。

 耳元で聞こえる息遣いも荒く、体温も高い。

 相当無茶をしたのだろう。

 

 兄の心配も余所に、アルカは言葉を紡ぐ。

 

「コウ姉様は、なんて…?聞いたのでしょう……?」

『お前…、そんな状態で…!後でいくらでも話すから……!』

 

 ルルーシュの言葉に、アルカは首を横に振った。

 

「…だ、めっ。今、聞きたい……。傷は、大丈夫。放っておけば、どうにか……。」

『………っ。コーネリアは何も知らなかった。首謀者も、お前の出生についても……!』

 

 ルルーシュは語る、新たに得た情報は、マリアンヌの指示で警備を下げたという事と、シュナイゼルが皇帝に指示され遺体を運び出した、と。

 

「……そ、っか。やっぱり、シュナイゼルか、皇帝本人じゃないと、知らないのかも、ね…。」

『おい、そんな事より、早く…。ええい、一先ずラクシャータの元へ………。』

 

 その時、珍しく焦った様子のC.C.が、ガウェインから2人へ声をかけた。

 

『おい、戻ってこい!』

『分かっている!そろそろ政庁の守備隊が…。それにアルカも放っておく訳には……。』

『違う!ナナリーが攫われた!』

 

 その一言に、アルカとルルーシュは怪訝な表情を浮かべる。

 

『私には分かる!お前達の生きる目的なのだろう!今は神根島に向かっている!』

「神根、島……。」

 

 明らかにギアスに関係があると思われる遺跡、そしてC.C.の分かるという言葉。

 それがより、C.C.の言っている事が真実だということが、嫌でも分かる。

 

「…行こう、兄上。行くしか、ないよ…。」

『しかし、お前、傷が……。』

『アルカも連れて行け!ここに置いていった方が危険だろう!』

 

 忌々し気な表情を浮かべ、アルカと共にガウェインに乗ろうとする――が、それは叶わなかった。

 激しい揺れと共に、政庁の屋上庭園は崩壊し、その下から新たな障害が顔を覗かせたからだ。

 

「きゃっ!」

 

 政庁全体に響く振動にアルカはバランスを崩し、ルルーシュの傍を離れ、倒れ伏す。

 

『オォォォルハイル、ブリタァァァニア!!!』

 

 それは巨大な円状の兵器だった。

 四肢の概念は存在せず、あるのは五基の巨大なスラッシュハーケン。

 それを操るのは―――。

 

『おや?貴方様は、ゼロ!!何たる僥倖!宿命!数奇!!!!』

 

 その男は狂った様に言葉を紡いだ。

 その言葉の選択はとても正気の者の言葉は思えない程、支離滅裂で、狂気的だった。

 

『まさか、オレンジか!?』

 

 その単語に、オレンジ――、ジェレミア・ゴッドバルトは身体を震わせ、怒りを露わにする。

 

『オ、オオオ、オオオオ…、お願いです。死んでいただけますか?』

 

 ジェレミアの怒りを体現するかの様に、その円状の兵器は自らを回転させながら、ガウェインへと迫る。

 

『あいつを叩いてアルカの安全を確保する!!』

「分かっている!!」

 

 正面から突っ込んでくるジェレミアを、ハドロン砲で迎え撃とうとするが、速度はあちらの方が上。

 反応しきれず、ガウェインはそのまま、上空へと押し出された。

 

『ゼロ、私は、帝国臣民の敵を排除せよ。ならばこそ、オールハイルブリタニア!!』

『ええい、邪魔をするな!!』

 

 ・

 ・

 ・

 

「…う……、今のは…。」

 

 倒れた衝撃で少しばかり意識が飛んでいたらしい。

 アルカはゆっくりと立ち上がり、空を見上げる。

 

「確か、ナイトギガフォートレス……。」

 

 嚮団に居た頃、何処かで資料を見た気がする。

 操縦を生体電気で行う、機動兵器。

 

「…早く、加勢しない、と。」

 

 自身の身体に鞭を打ち、無窮へと向かう。

 コックピットの席に座り、起動させると、丁度ルルーシュからの通信が入ってきた。

 

『アルカ、無事か!?今そっちに向かっている!大人しく…。』

「ナイト…、さっきの、機体は?」

『ん?ああ、ジェレミアなら撒いた。それよりも――。』

「なら、先に向かって、神根島に……、後から、私も行くから。」

『何…?』

「今から、こっちに戻ってちゃ……、時間、かかっちゃうよ。……大丈夫、今の私でも、移動位は、出来るから。」

『…………。』

 

 時間にして一瞬の間。

 しかしアルカにとっては、長い時間が経ったような、そんな気がした。

 

『――――分かった。』

「ふふ、ありがとう……。」

 

 結局、ルルーシュはアルカの提案を受け入れた。渋々と言った様子ではあったが。

 アルカが頑固な事を理解しているのか、はたまたC.C.に何か言われたのか。

 それをアルカは知る由も無い。

 それでも、自然と感謝の言葉が零れた。

 妹の我儘を聞いてくれた兄に対しての。

 

 アルカのお礼を皮切りに、通信は切れ、コックピット内に沈黙が訪れる。

 

「…今から行くよ、姉上………。」

 

 理から外れた二人の兄妹が、今、神が根付く島へと向かう。

 

 

◇◇◇

 

 アルカが去った数刻後、崩壊した政庁の屋上に、1人の青年が降り立った。

 純白のパイロットスーツ、日本人にしては色素の薄い髪、緑色の瞳。

 枢木スザクだ。

 

 先程とは打って変わり、その顔から怒りは幾分か削ぎ落され、何時もの彼が垣間見える。

 

 それもその筈、今の彼は様々な人の想いを背負って、この戦場に立っている。

 怒りのままに、その力を振るっていた時とは、違う。

 ロイドやセシルに助けられ、生徒会のメンバーに背中を押され。

 独り善がりの戦いでは無くなったのだ。

 そして、彼をこの場に呼び出した人物も、また――――。

 

「せ、戦況は、我が軍に有利だ……。」

 

 コーネリアは息を切らしながら、そう告げる。

 確かに彼女の言う通りだろう。

 司令塔であるゼロはこの場から離脱し、黒の騎士団の主力である藤堂達は、政庁の防衛装置に手間取っている。

 他のエリアからの増援も間もなく到着する事を考慮すると、ブリタニアは戦線を維持し続ければ勝てる状態だ。

 

「いいか…、私の負傷は、極力伏せろ…、動揺する……。ギルフォードや、グラストンナイツが……。」

 

 コーネリアに対する忠誠心の高さ。

 どの戦場に置いても、有利に働いていたが、それはコーネリアが居るからこそ成り立つ事。

 彼女が満身創痍だと知れば、その動揺は軍全体に侵食し、付け入る隙を産んでしまうだろう。

 

「しかし、お前にだけは……。」

 

 それでもそんな状況で、日本人である―――、いや、ユーフェミアの騎士であるスザクに伝えたかったこと。

 

「神根島…、そこに、ゼロが……。」

「っ!」

「それ以外は…、ダメだ、思い出せない……。」

 

 一時的な記憶の欠落。

 枢木スザクは、この現象を知っている。

 

「…ギアス……。」

 

 聞きなれない単語に、コーネリアは一瞬疑問を浮かべたが、再びスザクを見つめ、口を開く。

 

「お前は、ユフィの騎士なのだろう?ならば、行ってユフィの汚名をすすぐのだ。」

 

 彼女は信じている。自身の妹を。

 ギアスという超常の力の存在を知らないながらも、愚直に。

 

「…貴公に、略式ではあるが、ブリタニアの騎士侯位を授ける…。これで名実共に、お前は騎士だ…!」

 

 ユーフェミアの汚名をすすぐ為か、弟と妹の行動を止める為か、それとも本当に彼を認めたか。

 彼女の真意はスザクには知る由も無いし、今後も知る事は無いだろう。

 しかし、スザクにはその言葉だけで十分だった。

 

「行け、枢木スザクよ……!」

「……Yes,Your Highness!」

 

 スザクは、また一人分の想いを背負った。

 

 

◇◇◇

 

 黒の騎士団は混乱の渦に落とされていた。

 

「ゼロ、私はどうすれば……。」

 

 赤いKMFを駆る少女も、その1人。

 

 副指令の扇が凶弾に撃たれ、重傷。

 後方のG-1ベースの医務室で、治療中だった筈のアルカの行方が不明。

 そして、ゼロの戦線離脱。

 

 度重なるイレギュラーと司令塔の不在により、黒の騎士団の指揮系統は崩れ、徐々にブリタニアに押されていた。

 

「アルカもアルカよ…、どうして戦場になんか……。」

 

 アルカについて分かっているのは、無窮に乗って戦場に飛び出した事のみ。

 G-1ベースに居た神楽耶や南達も、行った場所までは知らない様だった。

 

 憧れの対象、旧知の仲間、友人。

 今まで彼女を支え、共に歩んできた3人が、一度に離れた事により、カレンはどうしようもない孤独感と焦燥に駆られていた。

 

 そんな中、彼女のコックピットに男の声が響く。

 

『カ、カレン……。』

「扇さん!?大丈夫なんですか!」

 

 息も絶え絶えで、今にも意識を落としてしまう様な、そんな弱々しい声。

 

『ああ……、それより、カレン……。ゼロを、追え……。』

「あっ……。」

『彼の行動には、意味が、ある筈……。おそらく、アルカも…、彼と……。』

 

 言われなくても追いたいのは山々だ。

 しかし、その2人の行き先が、カレンには思いつかない。

 

「でも、どうやって探せば!」

『そろそろ、見えるだろう……。』

 

 扇の言葉に疑問を持ったカレンだが、その疑問はすぐに解消された。

 上空の熱源を捉えたのだ。

 そこには、トウキョウ租界を離れていく白い騎士。

 

「あれは…、ランスロット…?あいつがここを離れる理由なんて……。」

 

 カレンは知っている。

 ゼロと枢木スザクの確執を。

 スザクのゼロに対する強烈な憎しみを。

 

『ラクシャータが、中に、発信機……。』

「分かりました。」

 

 余程無理していたのだろう。

 先程よりも息が荒く、苦しそうだ。

 

「補給部隊、接収した空輸機を私に回せ!最優先だ!!」

 

 

 舞台袖に控えていた少女が、壇上へと続く階段に足を掛ける。

 




一期は次の話か、その次で終わります。
そのまま二期に突入するか、間に小話を挟むかは検討中です。

もし、こういうの見たいとかありましたら、感想とかで言って頂けると幸いです!
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