コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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第2期
TURN1 偽りの世界


「ルルーシュ…、いえ、ゼロは明日、租界外縁部にあるバベルタワーへと向かいます。」

 

 

 少女の声が木霊する。

 

 

「目的は上層部に位置するカジノ。ゼロが機密情報局に監視下にある事から、ブリタニア軍との戦闘も考えられます。」

 

 

 少女は極めて機械的に、淡々と言葉を紡ぐ。

 

 

「作戦内容に変更はありません。カレンはカジノの従業員として潜入。ゼロと接触し次第、彼を監視役の弟から遠ざけて下さい。場合によっては、殺害しても構いません。」

 

「ええ。」

 

「卜部さん率いる人型自在戦闘装甲機部隊は飛行船から強襲。ブリタニア軍を掃討した後、所定の箇所に爆弾を取り付けて下さい。」

 

「ああ。」

 

 

 少女の声に、二人は力強頷いた。

 

 

「紅蓮の引き渡しは地下一階の搬入口で行います。人払いは済ませておきました。担当の者は、所定の時間にカレンに引き渡す様に。」

 

「「承知!」」

 

 

 カレンと卜部の後ろに控える団員達も、皆一様に頷いた。

 

 

「ゼロを奪還後、所定のルートを通って中華連邦総領事館へ。そちらの方も事前に話は通してあります。高亥(ガオハイ)という男に取り次げば、匿ってもらえるでしょう。」

 

 

 少女は目の前に居る団員達、一人一人に目を配る。

 

 

「私達の用いる全戦力を投入します。失敗は許されません。……明日の、飛燕四号作戦をもって、黒の騎士団は完全に復活する。」

 

 

 皆同じ顔をしていた。

 覚悟を決めた、戦士の顔だった。

 その仲間達の顔を見て、少女、アルカは僅かに微笑む。

 

 

「……命を懸けなさい!私達は黒の騎士団!力ある者に抗い続ける反逆者!!」

 

 

 少女の号令が、空間を震わす。

 

 

「私が、私達が…、この世界を破壊する!!」

 

 

 魔神が目覚めるその時まで、もう少し。

 

 

◇◇◇

 

 ゼロによる反逆――――、ブラックリベリオンからもうすぐ一年。

 黒の騎士団により破壊された街並みも今では元通り。

 一年前の出来事とは思えない程、エリア11はすっかり落ち着いた。

 

 そう、あの大規模な反乱も、超大国ブリタニアにとってすれば、些細なものだった。

 何も変わらない。

 ブリタニアという国も、世界も、何もかも。

 強いてあげるとするならば、エリア11におけるイレブンの扱い位だろうか。

 以前から酷かったが、今はより、見るに堪えない。

 イレヴンの公開処刑の中継なんて日常茶飯事。

 名誉ブリタニア人ですら、ゴミ同然の扱いを受けている。

 

 まぁ、それも当然の帰結だ。

 日本は二度敗北した。力が無かったから。

 ただ、それだけ。

 

 

「……ゼロ、馬鹿な男だ。」

 

 

 サイドカーに乗り、その黒い髪を靡かせながら、ルルーシュ・ランペルージは呟いた。

 その呟きは、隣でバイクを運転する弟、ロロ・ランペルージには聞こえなかっただろう。

 

 二人が向かうのはトウキョウ租界外縁部に位置する複合商業施設、バベルタワー。

 道楽好きの新総督、カラレスが作ったトウキョウ租界における新たな名物だ。

 

 二人はバベルタワーに続く道を真っ直ぐ進み、地下駐車場へと向かう。

 

 

「本当に行くのか?送ってくれるだけで良かったのに。今日のは非合法だし……。」

 

 

 サイドカーを降りたルルーシュは、困ったような表情を浮かべる。

 

 

「兄さんが心配だから、一緒に行くよ。」

 

 

 それに応じるのは弟のロロ。

 

 

「それにしてもどうして?兄さん、お金が欲しい訳では無いでしょう?」

 

 

 二人の生活は裕福、とまではいかないが、貧乏でもない。

 非合法カジノに興じる程、生活が苦しいという訳ではない。

 にも関わらず、ルルーシュはこの場へと足を運んだ。

 

 

「決まってる。もっと強いやつと戦いたいからさ。」

 

 

 そう言いながら歩を進めた兄に対し、呆れた様な表情を浮かべながら、ロロはその後ろに追従した。

 

 ルルーシュは刺激を求めていた。

 何も今の生活が嫌い、という訳では無い。

 学園の生徒からは慕われているし、弟だって一緒に居る。

 それでも、ルルーシュは何処か、苛立ちを覚えていた。

 

 

(何かが足りない。)

 

 

 自分自身でも分からない心にかかる靄。

 それを晴らす方法を見つける為、ルルーシュはカジノへと足を踏み入れる。

 

 煌びやかな内装。

 上品な恰好に身を包んだ大人達が、各々が思う様に遊んでいる、至って普通のカジノ。

 ――――ただ一点を除いては。

 

 

『さぁ、本日注目の兄弟対決!生き残るのは兄か、弟か。』

 

 

 カジノフロアの中央に位置する吹き抜け、そこにルルーシュは足を運んだ。

 見下ろすとそこには闘技場の様な施設。

 そこで涙を流しながら殺し合うイレブンの兄弟。

 

 

「兄さん、帰ろう?やっぱりここは……。」

 

 

 怯えたようなロロの言葉に、ルルーシュは諦めた様な笑みを浮かべた。

 

 

「良いじゃないか、分かりやすくて。」

 

 

 その笑みには、微塵も楽しんでいる様子など伺えなかった。

 ただ、ただあるのは諦め。

 何処までも乾いた笑みだった。

 

 

「見ろよ、笑って遊ぶのは俺達ブリタニア人。笑われて働くのが、イレブン。見ないふりをしたって、結局は――――。」

 

 

 何も変わらない。

 

 

「だからって……!」

 

「分かってる。でも事実だろ。イレブンは二度負けたんだ。」

 

 

 詰まらそうに言葉を紡ぎながら、ルルーシュはその場を離れ、奥へと進む。

 

 

「枢木首相とゼロの時、力が無い癖に反乱なんか―――、あっ。」

 

 

 ルルーシュの言葉はそれ以上、紡がれる事は無かった。

 進んだ先で、酒を運んでいたバニーガールとぶつかってしまったからだ。

 衝撃から、そのバニーガールのバランスは崩れ、持っていた酒が、ルルーシュの制服へと降りかかる。

 

 

「ああっ!申し訳ありません!」

 

 

 バニーガールは必死の様子で謝罪を繰り返しながら跪き、ルルーシュの制服をナフキンで拭う。

 日本人離れした赤毛を持っているが、こうしてブリタニア人であるルルーシュに対して媚び諂う様子から、彼女はイレヴンの出だという事が分かる。

 

 

「いや、いいって……。」

 

「私はイレヴン、貴方はブリタニアの学生さんですから……。」

 

 

 彼女の言う事は正しい。

 少なくともこのエリア11において、日本人である以上、ブリタニアに頭を下げ続けない限り、まともに生きていけないのだから。

 

 そんな彼女の様子を見て、ルルーシュは不快そうに顔をしかめながら、膝を折り、視線を合わせる。

 

 

「なら尚更だ。嫌いなんだ、立場を振りかざすのは。」

 

「…でも、力の無いの人間は我慢しなくちゃいけないんです。…例え、相手が間違っていても………。」

 

 

 彼女の言葉に、ますますルルーシュの表情は険しいものとなっていく。

 

 

「君達の価値観を、俺に押し付けないでほしいな。」

 

「も、申し訳ございません…。」

 

 

 彼女―――、紅月カレンは謝罪を述べながら、ルルーシュへと手を伸ばす。

 その指先にはコイン程の大きさの発信機。

 周りに居る従業員も、客も、ロロも、当の本人のルルーシュすらも、カレンの持つ発信機には気付かなかった。

 その発信機が、ルルーシュの着る制服に付くまで数cmという所で、第三者の介入が入った。

 

 

「顔を見せてくれないかぁ、んん?」

 

 

 顎髭を蓄え、下劣な視線を隠そうともしない、恰幅の良い男。

 通称、黒のキング。

 ブリタニアにおいて名の知れたチェスプレイヤーであると同時に、マフィアのボス。

 

 そんな男が、後ろからカレンの髪を無造作に掴み、品定めをするかのように、彼女を吟味していた。

 

 

「ふぅん、良い商品だ。」

 

 

 そう満足そうに呟く彼の後ろには、同じ様に目を付けられたであろうイレヴンの少女達、彼のSP、彼に媚び諂うカジノのオーナーが居た。

 この世界、特に裏社会においては、良く見る光景だた。

 力有る者が、力無き者を虐げる。

 これが今の世界のルールであり、真理だった。

 

 ルルーシュは目の前でそんな光景を目撃し、不快感を露わにする。

 

 

「私は…、売り物じゃない!」

 

「売り物だよ。勝ち取らない者に、権利など無い。力無き自らの生まれを悔やみたまえ。」

 

 

 黒のキングに異を唱える者は居なかった。

 周りでこの光景を見ている客も、従業員も。

 皆が見て見ぬふりをしていた、皆が、他人事の様に振る舞った。

 ただ一人、この少年を除いて。

 

 

「傲慢だな。」

 

 

 ルルーシュの一言がホール内に木霊した。

 

 

「自分は食べる側に居るつもりか。」

 

「……学生君、これが大人の世界だよ。」

 

 

 相も変わらず、ルルーシュの表情は、声は穏やかだった。

 この場に居る()()を除いて、彼の本心は誰にも分からないだろう。

 ルルーシュの瞳の奥には、確かに怒りが宿っていた。

 

 

「どちらが食べる側か、取り敢えずこれでハッキリさせよう。」

 

 

 そう言うと、ルルーシュは自身が持つアタッシュケースを開く。

 入っていたのはチェス盤と駒。

 

 

「………へぇ……。」

 

 

 その光景を少し離れた所から眺めていた少女は、嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 

◇◇◇

 

 

「チェックメイト。」

 

 

 ルルーシュの静かな声が、ホールに響く。

 彼の駒達が、相手のキングを捉えた。

 どの駒を動かしても、キングを逃がそうとも、黒のキングは包囲網を突破出来ない。

 誰がどう見ても、ルルーシュの完勝だった。

 

 

「バ、馬鹿な……。」

 

「食べられるのは、そちらでしたね。」

 

 

 この結末に、試合を見守っていたギャラリー達からも動揺の声が上がる。

 ギャラリー達の誰もが、黒のキングの勝利を確信していた。

 ただ一人を除いて。

 

 

「………。」

 

 

 この場に似つかわしくない、まだ幼い少女だった。

 歳は10を超えたばかりか。

 整った顔立ちに染み一つ無い白い肌。

 精巧に造られた人形の様にも見える。

 普段は下ろしているであろう髪を纏め、チャイナドレスを身に纏った、そんな少女。

 

 少女――――、アルカは何処か嬉しそうな笑みを浮かべながら、自身の持つ携帯に目を落とす。

 その画面に映されていたのは。彼女の居る、バベルタワーを中心にした地図。

 その地図上に、バベルタワーに重なる様に点滅するポインタを確認し、アルカはカレンの方へ視線を向ける。

 

 

(……そろそろ、か………。)

 

 

 アルカの視線に気づいたカレンは、彼女の視線に対し、頷きを返す。

 

 丁度会場は、黒のキングのいちゃもんによって、騒ぎが起きていた。

 薄汚い大人、と抗議するルルーシュを、黒のキングのSPが取り押さえている。

 

 駆け付けたい衝動に駆られるも、アルカはそれを抑え、騒ぎに紛れてこの場を後にする。

 

 

『アルカ、何時でも行けるぞ。』

 

 

 耳に着けているインカムから、C.C.の声が響く。

 彼女の言葉に笑みを深めたアルカは、愉快そうに声に応じた。

 

 

「ええ、始めよう……。魔王の復活を。」

 

 

 アルカの声に応じる様に、バベルタワーは激しい揺れに襲われ、人々の悲鳴に包まれる。

 そんな中、彼女はまるで舞踏会へと向かう童話のお姫様の様な軽やかな足取りで、その歩を進めた。

 




R2の始まりです!!

たまーに番外編を更新しながら、本編を進めていきます。
よろしくお願いいたします。
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