コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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お待たせしました。
色々やってたら遅くなってしましました。
失踪はしてません。完結までちゃんとやるつもりです。
何なら次回作の構想頭で練っております。()


TURN3 世界は再び動き出す

 歳を感じさせない威厳に満ちた男の前に、ルルーシュは引きずり出された。

 自身の髪を乱暴に掴み、床に押さえつけているのは親友であった筈の青年、枢木スザク。

 その光景を男は、まるで演劇を眺める観客の様に笑みを浮かべていた。

 

 

「……元第17皇位継承者、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア………。久しいな、我が息子よ。」

 

「……っ! 貴様ぁ………!」

 

 

 憎き相手であるブリタニア皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアを前に、ルルーシュは射殺さんばかりの鋭い視線で彼を視界に入れようとする、が。

 

 

「ギアスは使わせない。」

 

 

 枢木スザクにそれを阻まれてしまう。

 ギアスは封じられ、身体も拘束されてしまっている現状、ルルーシュに出来る事はされるがままに、床に這いつくばる事だけだった。

 

 そんなルルーシュの頭を床に押さえつけながら、スザクは静かに口を開く。

 

 

「恐れながら申し上げます。……陛下、自分を帝国最強の12騎士、ナイトオブラウンズにお加えください。」

 

「ゼロを捕らえた褒美をよこせと?」

 

 

 スザクの進言に、ルルーシュは思わず目を見開き、彼を見つめる。

 

 

「お前……!!」

 

「言った筈だよ、ルルーシュ。俺は、中からこの世界を変えると。」

 

「友達を売って出世するのか!?」

 

「そうだ。」

 

 

 ルルーシュの問い掛けにスザクは酷く冷たく、淡々と言葉を紡ぐ。

 

 変わった。

 以前の彼には陽だまりの様な温かみが、温和な雰囲気があった。

 目的の為に努力はすれど、人他者を犠牲にする様な真似はしなかった。

 

 そんな彼を見つめながら、ルルーシュは自虐的に僅かに笑みを浮かべる。

 いや、変えたのは俺か、と。

 

 

「…良かろう、今の答え気に入った。」

 

 

 愉快そうにシャルルは笑みを浮かべながら、玉座から立ち上がり、ルルーシュの元へと歩を進める。

 

 

「では、ナイトオブラウンズに命じる。ゼロの左目をふさげ。」

 

「……イエス、ユア・マジェスティ。」

 

 

 スザクは床に押さえつけていたルルーシュの顔を無造作に持ち上げ、左目を塞ぐ。

 

 

「皇子でありながら反旗を翻した不肖の息子……。だが、まだ使い道はある。」

 

 

 そう口にしながら、ゆっくりと近づいてくるブリタニア皇帝を、ルルーシュは見据える。

 血の繋がりを嫌でも実感させられる、ルルーシュと同じアメジスト色の瞳。その瞳が徐々に赤黒く、変化していった。

 

 

「…な、何!?」

 

 

 その瞳を、ルルーシュは知っている。

 人の理から外れた超常の力。

 ギアス。

 

 

「記憶を書き換える。ゼロである事、マリアンヌの事。ナナリーとアルカの事。全てを忘れ、ただ人となるがよい。」

 

「やめろ!!!! また俺から奪うつもりか!? 母さんを……、あいつらの事まで!!!!!!!」

 

 

 ルルーシュの戦う理由であり、生きる目的。それが今、奪われようとしていた。

 しかし、必死に抵抗するルルーシュを、彼の親友であった筈のスザクが押さえつける。

 

 

「シャルル・ジ・ブリタニアが刻む…。新たなる偽りの記憶を……。」

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 ルルーシュの記憶が、一つ一つ砕かれていく。

 マリアンヌが、ナナリーが、アルカが、ゼロとしての己が。ルルーシュの中で崩れ落ち、そして全てが書き換えられた。

 

 

 

 

「C.C.……。」

 

 

 記憶と共にブリタニアに対する怒りが、皇帝に対する憎しみが、ルルーシュの心にふつふつと湧いてくる。

 

 不機嫌な様子を隠そうともせず、低い声でC.C.に問い詰める。

 

 

「私では無い、あの男にギアスを与えたのは。」

 

 

 彼女の我関せずという様な口振りに、ルルーシュは顔を顰める。

 

 

(この女……、最初から知っていたな………。)

 

 

 何処までも秘密主義な彼女に対し、一言言ってやりたい気分だが、状況が状況だ。アルカもこの場に居る。文句は後からでも良いだろう。

 

 

「……ふん。ナナリーは何処にいる?」

 

「探してはいるんだけど、難航中…。黒の騎士団が壊滅状態じゃあ……、ね?」

 

 

 形の良い眉を下げながら、アルカが小さく呟く。

 

 

「そう責めてやるな。こいつが居なければこうして戦力さえまともに残らなかったんだ。この一年、アルカは良くやっていたよ。」

 

「いや、そういう意味で言ったんじゃ……。」

 

 

 C.C.はアルカを庇う様に言葉を紡ぎながら、腰に手を回し、自身の胸に彼女を寄せながら、頭を撫でる。

 

 

「いや、あの……、C.C.………。兄上の前で……、恥ずかしいよ…。」

 

「良いじゃないか、減る訳でもあるまいし。」

 

 

 そんな二人の様子に呆れた表情を浮かべ、ルルーシュは頭を抱える。

 

 

「…お前らなぁ…………。」

 

 

 

 

「弾けろブリタニアぁ!!!」

 

 

 カレンの言葉と同時に紅蓮の右腕が熱を帯び、掴んでいるサザーランドへと伝播する。

 内側から膨れ上がり、次第に元の形状を保てなくなったサザーランドは、激しい音を立てて爆発した。

 

 その様子をモニタールームから見ていたルルーシュは、口角を僅かに上げる。

 

 

「よくやったQ1。次は21階へ向かえ。P4は階段を封鎖しろ。R5は――――。」

 

 

 この感じだ、自分が求めていたのは。

 自分の思い通りに事が進み、バベルタワーに蔓延るブリタニア軍が順調に数を減らしていく。

 

 

「―――順調だな。流石と言うべきか。」

 

 

 刻一刻と変わる戦局に目を配りながら、ルルーシュは感嘆の声を漏らす。 

 

 指揮系統がアルカからルルーシュへと引き渡され、作戦の目的が奪還から脱出へ変わった現在。

 適度に張り詰めていた緊張感も身体から抜け、不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

「脱出ルートはアルカが事前に用意していたポイントを使えば良い。戦力も物資も十分。欲を言えば無窮が欲しかったという点くらいか。」

 

 

 今回の作戦に無窮は無い。

 機体の大きさ自体が一般的なKMFの規格を超えていて、屋内戦闘に向いていないからだ。

 そんなアルカは今、C.C.と共に狭い無頼のコックピットの中に居る。

 

 

「俺に指揮を任せなくても良かったんじゃないか?」

 

『相変わらず意地悪……。私は事前の段取りと準備をしただけ。実際の戦場で全体に指揮出せる程、戦略には長けてないよ。分かってるでしょ?』

 

 

 意地悪そうに笑みを浮かべながら揶揄うルルーシュに、アルカは不貞腐れた様子で答える。

 

 

『まぁお前、器用貧乏な所あるからな。』

 

『うぐっ………。』

 

「冗談だよ、ブリタニア軍の相手は俺達に任せておけ。お前達は引き続きそっちの作業を頼む。」

 

『ああ、分かっているよ。』

 

『うん、じゃあまた後で。』

 

 

 アルカ達からの連絡が途絶え、部屋に静寂が訪れた。

 

 

「また後で、か。」

 

 

 この一年、別人として過ごしてきたルルーシュからしてみれば、こうして記憶を取り戻すまでの日々は一瞬の事の様に思えた。

 しかし、アルカはどうだ。

 不安だっただろう、寂しかっただろう。さぞかし世界は残酷に映っただろう。

 

 

「ああ…。そんな思い、もうさせてやるか。」

 

 

 ルルーシュの瞳に再び決意が宿る。

 全ては自身の願い、妹達の幸せの為。

 少年は再び覇道を歩む。

 

 

◇◇◇

 

 

 ブラックリベリオン以後、ブリタニアからの追跡を逃れていた黒の騎士団残党によるバベルタワー襲撃事件。

 ブリタニア軍からも複数のKMFが投入され、現エリア11の総督であるカラレスも自ら出陣した事から、黒の騎士団による反抗もここまでかと思われていた。

 しかし。

 

 

『日本人よ! 私は帰ってきた!!』

 

 

 一人の男の手によってブリタニアは再び土の味を知る事となる。

 

 

『聞けブリタニアよ! 刮目せよ! 力を持つ全ての者達よ!!

……私は悲しい。戦争と差別、振りかざされる強者の悪意。間違ったまま垂れ流される悲劇と喜劇。世界は、何一つ変わっていていない。

――――――だから、私は復活させねばならなかった!!』

 

 

 英雄の復活。

 

 

『私は戦う! 間違った力を行使する全ての者達と!

故に、私はここに合衆国日本の建国を再び宣言する!

国民たる資格はただ一つ、正義を行う事だ!!』

 

 

 ある者は歓喜した。

 ある者は恐怖した。

 ある者は憎悪した。

 

 世界は今、再び一人の男を中心に周り始めた。

 

 

 

中華連邦総領事館 ゲストルーム

 

 

 

 赤を基調とした煌びやかな装飾が施された部屋で、カレンとアルカはテレビを眺めていた。

 

 

『黒の騎士団の残党とゼロを名乗る人物は、未だに中華連邦総領事館の一部に立てこもっています。

しかしご安心ください。負傷したカラレス総督に代わって、ギルフォード総督代行が率いる軍が―――。』

 

 

 カレンは喰い入る様に、アルカは読書をしながら横目で、テレビに映し出されている総領事館周辺のライブ映像を見ている。

 

 

「負傷、ねぇ……。」

 

「カラレスが死んだこと、公表しないのね。」

 

「無用な混乱を避ける為か、他国に弱みを見せない為か。まぁ、どっちでもいいけど。」

 

 

 ふわぁ、と呑気に欠伸をしながら、アルカは本を閉じて軽く身体伸ばす。

 

 

「それにしても、すごい騒ぎね。」

 

 

 テレビの映像を眺めながら、カレンは他人事の様に感嘆の声を漏らす。

 

 現在、アルカ達が滞在する中華連邦総領事館の周りには、無数のKMFが四六時中睨みを効かせている。

 ブリタニアの領土内と言えど、ここは総領事館。

 国際問題という壁に阻まれ、膠着状態が続いているが、このままという訳にはお互いいかないだろう。

 アルカ達は今まさに、喉元に銃口を向けられているのだ。

 

 

「当然だろ。」

 

 

 二人しか居ない筈のこの部屋に、新たな声が加わった。

 アルカは勿論の事、カレンにとっても馴染みのある声だった。しかし、何かに遮られたかの様にその声はくぐもっていて、少し聞き取りづらい。

 その人物は仮面を身に着けていた。

 今まさに、ブリタニアから狙われている渦中の黒い仮面。

 

 

「演説お疲れ様!」

 

 

 その声にいち早く反応したのはアルカだ。

 先程まで退屈そうに欠伸をしていた面影は無く、その顔はハツラツとしていて満開の笑みを浮かべている。

 

 

「ああ、本当に疲れたよ。手振りだけとは言え、あいつの動きを真似するなんて…。」

 

 

 言葉が後ろになるにつれ、段々と言葉がクリアになっていく。

 身に着けている仮面を外したからだ。

 仮面の中が息苦しかったのか、先程まで身に着けていた少女、C.C.は「ふぅ」とため息を吐きながら、肌に張り付いた髪をかき上げる。

 

 

「あんた…、何時の間に入れ替わって……。」

 

 

 仮面の下の顔がルルーシュだと思い込んでいたカレンは、口をぽかんと開けたまま唖然としている。

 

 

「演説の前だ。声は録音、現れた時点で既に別人。マジックショーと同じだな。」

 

「……気に入らないわね。私達にまで秘密にするなんて。」

 

「私達? 私に、だろ?」

 

「アルカ! あんたも知っていたの!?」

 

 

 カレンは顔を険しくしアルカを睨みつける。

 

 

「いや、ほら。話している時間が無くて、ね?」

 

 

 罰が悪そうに頬を掻きながら、鋭い視線を向けてくるカレンからアルカは目を逸らす。

 

 

「落ち着けカレン。アルカをそう虐めてやるな。実際、時間が無かったのは本当だったんだ。記憶を取り戻したとはいえ、ルルーシュは未だに囚われのお姫様。」

 

(お姫様……?)

 

「さっさとアッシュフォードに戻らないとアリバイが作れないだろ?」

 

「それは、そうだけど……。」

 

 

 カレンと言葉を交えながらマントを脱いだC.C.は、ソファに座っているアルカを後ろから抱きしめ、身体を摺り寄せる。

 

 

「そんな事より私は疲れたよ、アルカ。とっとと風呂に入って床に就こう。」

 

「それは良いけど…、本当にそれだけで終わるの?」

 

「さぁな。」

 

 

 C.C.は妖艶な笑みを浮かべながら、アルカの耳に口を近づけ、それを咥える。

 その光景を見ていたカレンは少し頬を赤らめながら口を開く。

 

 

「あ、あんた達ねぇ……。こんな状況なのに………。」

 

「何だ、また嫉妬か? 混ざりたいのか? まぁお前も年頃だからな、そういう事に興味を持つのも仕方ないが―――。」

 

「そういうのじゃないわよ! 大体アルカってまだ13とかでしょ!? 私は犯罪に手を染めるのは勘弁……。」

 

「はっ、今更犯罪がどうとか言われてもな。それ以上の事をやってきているだろうに。」

 

「それ以上の事、って……。」

 

 

 カレンはゆでだこの様に頬を赤らめる。

 

 

「黒の騎士団の事だ。何を想像している? むっつりめ。」

 

 

 頭上で繰り広げられる言い合いも慣れた様子で、アルカは収まるのを静かに待っている。

 彼女は知っている。経験則で知っている。ここで口を開いても、事態は何も変わりはしない。

 だったらそこに労力を使わなくても良いでしょ、この後の事考えると体力残しておかないと意識飛びそうだし。というのが彼女の今の心境だ。

 

 

「ふん、相変わらず五月蠅いやつだ。行くぞ、アルカ。」

 

「あ、うん。」

 

 

 カレン弄りに満足したのか、C.C.は声かけるや否や、彼女の手を取り立ち上がらせ、部屋の出口へ向かう。

 

 

「じゃあ、今日はお疲れ様。おやすみ、カレン。」

 

「え、えぇ…、おやすみ……。」

 

 

 会話に体力を持っていかれたのか、作戦の後よりも顔に疲労の色を浮かべているカレンは、覇気の無い声で応じる。

 そんなカレンに苦笑いを浮かべながら、アルカは部屋を後にした。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 風呂も済ませ、火照る身体を冷ましているアルカは、ふと険しい表情を浮かべてC.C.に問う。

 

 

「今回の、生き残りは……?」

 

「………話にも聞いているだろうが、卜部は死んだ。ルルーシュを庇ってな。他の団員達もブリタニア軍にやられたり、タワーの崩壊に巻き込まれたり……。損失は6割ってとこか。」

 

「………そっか。」

 

 

 少し悲しそうに、それでいて何処か安堵した様に。アルカは複雑な表情を浮かべる。

 

 

「生き残った団員達のギアスの効果は確認済み。ゼロがルルーシュだという事は憶えていない。」

 

「……そう、なら良かった。」

 

「複雑そうだな。無事に成功したと言うのに。死を悼んでいるのか?」

 

「…どうだろうね。ギアスを掛けずに済んで安堵している自分が嫌なのかも。死を悼むとか、もう出来なくなっちゃったよ。」

 

 

 自嘲する様な表情を浮かべ、アルカはそう語る。

 そんな彼女の笑みはどこまでも綺麗でいて、何処までも人間離れしていた。

 

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