コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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筆が乗るぜ


TURN5 混沌の中で

「黒の騎士団……、ばんざぁぁぁぁぁい!!!」

 

 

 玉城が高らかにそう叫び、拘束着を脱ぎ捨てる。

 周りの団員達、藤堂までもが彼に続いて雄たけびを上げる。

 囚人生活から解放された団員達は、その空いた期間を埋めるかの様にお祭り騒ぎをしている。

 

 そんな彼らの様子をモニターで眺めながら、ルルーシュ、アルカ、C.C.、カレンの4人は総領事館の中で、今後の事について話し合っていた。

 

 

「ゼロを助けたナイトメアは?」

 

「星刻の良図で外に出した。」

 

 

 いくらゼロを助けた実績があるとは言え、バベルタワーや卜部の件もある。そのまま仲間に入れて、はいそうですか、と受け入れて貰えるほど、黒の騎士団は優しい組織では無い。あの手のタイプは組織に馴染むのに時間が掛かる。

 星刻の案は実に合理的で理に叶っていた。

 

 

「星刻?」

 

 

 聞き覚えの無い名前に、ルルーシュは疑問を浮かべる。

 

 

「さっき話した中華連邦の人。武官だけど…、まぁ実質ここのトップ。」

 

「そうか、なら私も使わせて貰うとしよう。」

 

「ロロ……、偽兄の事は?」

 

 

 彼の言葉を口にした後、一瞬顔を顰め、改めて言い直す。

 ロロ・ランペルージの存在を認められない、そういった様子が目に見えた。

 

 

「卜部の件が有るからな。しばらくは伏せよう。知っているのは我々だけでいい。」

 

「裏切りの可能性は?」

 

「無い、と考えていい。今のところはな。」

 

「ギアスを使ったのか?」

 

 

 C.C.の問いに得意げな笑みを浮かべて、ルルーシュはその手を左目に添える。

 

 

「当面は必要無くなった。」

 

 

 彼の目には毒々しく光るギアスの模様。

 ルルーシュが自身の左目にコンタクトを嵌めると、そのなりは身を潜め、彼本来の色が戻った。

 

 

「ゼロの正体は? 組織内で知るのは私達だけとなったが。」

 

「それも伏せよう。」

 

「ルルーシュ、私は今まで通り、ゼロの親衛隊隊長で良いのかしら?」

 

「ああ、引き続き頼む。アルカの事も。」

 

 

 ルルーシュの言葉にアルカはムスっとしながら、異を唱える。

 

 

「兄上! まだ私子ども扱い!?」

 

「実際子どもだろ。」

 

 

 アルカの声に、C.C.は呆れた様に口を開く。

 

 

「お前が心配なんだよ、分かってくれ。」

 

「……本来は、私が……………。」

 

「あーはいはい。いじけていないで皆の所行くわよ。あんたからも話す事、あるでしょう?」

 

 

 ボソボソと文句を言うアルカを担いで、カレンは部屋を後にする。

 

 

「…ギアスの事は後で話そう。アルカの事も。それよりも今は……。」

 

「ああ……。」

 

 

 C.C.の言葉に同意する様に、ルルーシュは仮面に手を伸ばし身に着ける。

 ゼロとして、先導者として、再び皆の前に立つ為に。

 

 

 

 

「おお! 懐かしの団員服!!」

 

 

 用意された服を手に取りながら、興奮した様に声を上げる杉山。

 

 

「よくこんなの用意してたよなぁ。」

 

 

 感心した様に南が声を漏らす。

 

 

「中華連邦の人に協力してもらったんです。向こうにはラクシャータさん達も居るので。」

 

「アルカちゃん。」

 

 

 皆と同じように黒の騎士団の制服に着替えたアルカが少し得意げな顔をしながら、二人に近づく。

 黒を基調にした深いスリットの入ったワンピース型の服。

 どちらの希望かは分からないが、C.C.の団員服に非常に酷似している。

 

 

「話は聞いたよ、この一年大変だったそうだね。」

 

「皆さんに比べたら、私は何も……。あ……。」

 

 

 久しぶりの再会に顔を綻ばせていると、周りの団員達が感激の声を上げた。

 

 

「ゼロだ!!」

 

 

 誰もが話を止め、ゼロの居る方へ視線を向ける。

 大体数を占めるのは尊敬の眼差し、そして彼を称賛する声。

 

 

「待て待て!」

 

 

 しかし、その様子に異を唱える人物が居た。

 元日本解放戦線の軍人であり、藤堂の懐刀、千葉。

 元々彼女を始めとする藤堂一派はゼロに対して忠誠心が有る訳では無い。

 

 彼女の反応はそれを踏まえれば、極自然な事だった。

 

 

「助けて貰った事には感謝する。…だが、お前の裏切りが無ければ私達は捕まっていない。」

 

「一言あっても良いんじゃない?」

 

 

 彼女に続く様に、同じく藤堂一派の朝比奈が声をあげる。

 

 

「ゼロ! あの時、何があったんだ!?」

 

 

 扇の言う「あの時」。

 ブラックリベリオンでの敗北を招く事となった、突然の戦線離脱。

 

 

『全ては、ブリタニアに勝つ為だ。』

 

 

 団員達の疑問に対して、ゼロは当然の様に、静かにそう語る。

 誰もが言葉の続きを待った。しかし、一向に彼からその続きが語られる様子は無い。

 

 

「ああ、それで?」

 

『それだけだ。』

 

「他に無いの? 謝罪とか、言い訳とか。」

 

 

 ゼロの態度に非難の声が上がる中、藤堂がそれを制止した。

 

 

「やめろ!」

 

 

 彼の制止に視線が集まる中、藤堂は静かにゼロの元へと歩を進める。

 

 

「ゼロ、勝つために手を打とうとしたんだな?」

 

『私は常に結果を目指す。』

 

「……分かった。」

 

 

 たったそれだけの問答。

 それだけで、藤堂には十分だった。

 

 

「作戦内容は伏せねばならない時もある! 今は、彼の力が必要だ! 私は、彼以上の才覚を知らない!」

 

 

 藤堂の力強い宣言に同意するように、扇が壇上へと上がる。

 

 

「俺もそうだ! 皆、ゼロを信じよう!」

 

 

 元々人望は有る男だ。

 扇の言葉に団員達は決意の色を顔に浮かべ、次第にゼロを支持する声が再び上がった。

 

 

◇◇◇

 

 

「ルルーシュは何て?」

 

 

 風呂から上がったアルカの髪を、カレンがワシワシとタオルで拭きながら口を開く。

 

 

「ロロ・ランペルージと一緒に監視の穴を付いてゆっくり攻略中だって。ただ障害は―――。」

 

「学園に戻ったスザクと、ヴィレッタとかいう女軍人?」

 

「そ、二人ともギアスは効かないからね。」

 

 

 もうちょっと優しく拭いてよ、と小言を垂れながら、ルルーシュから来た報告をそのまま伝える。

 

 

「中華連邦の方は?」

 

「向こうでディートハルトが上手くやってくれてるみたい。ラクシャータさんもこっちに合流出来るとか。」

 

「上々ね。」

 

「お陰様で。」

 

 

 よし、終わり。と拭いていたタオルをアルカの頭に被せたまま、背中を叩く。

 

 

「雑過ぎない?」

 

「贅沢言うなら、自分でやりなさい。」

 

「そうだぞ、カレン。やるならしっかりと乾かしてやれ。」

 

「アンタはこの子を甘やかし過ぎ……。」

 

 

 全く、と言いながらC.C.はアルカの後ろに立って、ドライヤーを掛け始める。

 気持ち良さそうに目を細めながら、アルカは再び口を開く。

 

 

「しばらくはまた待機かぁ。退屈だね。お祭りでも行く?」

 

「三日後にやるスザクの復学祝いのやつ? 捕まるわよ。」

 

「冗談だよ。」

 

「なんだ、それ?」

 

 

 聞き覚えの無い単語に、C.C.は疑問を浮かべる。

 

 

「スザクが学校に戻ってきたから、それのお祝いに学園総出でパーティー開くんだって。内容的には殆ど去年の文化祭みたいなものらしいよ。」

 

 

 C.C.は去年の事を脳裏に蘇らせる。

 世界一オープンな文化祭。

 外部からの沢山の客。

 巨大オーブン。

 巨大ピザ。

 ピザ。ピザ。ピザ。ピザ………。

 

 

「ほう……。」

 

 

 C.C.の目が怪しく光っていたのを、アルカもカレンも見逃していた。

 

 

◇◇◇

 

 

 三日後。

 

 朝、目が覚めると寝る前には着ていた筈の服は身に着けておらず、ベッドの下に丸まって転がっていた。

 ……まぁ、大体何時もの事だ。

 

 しかし、身体の調子が何時もと違う。

 

 

「……痛く、ない………。」

 

 

 主に腰が。

 何時もだったら文句を垂れているアルカも、久しぶりにすっきりとした目覚めに困惑の色を浮かべる。

 

 調子が悪いのか。

 もしかして飽きられたか。

 

 色々な不安が頭の中を一気に駆け巡る。

 

 

「……ねぇ、C.C.。…………?」

 

 

 居ない。

 

 隣を見ても、部屋を見渡しても、どこにも居ない。

 何時もは居る筈の、少女が。

 

 頭に疑問を浮かべながら、アルカは服を着る事も忘れ、ベッドを降りる。

 

 もう一度部屋を見渡すと、何時もと違う光景に気付いた。

 部屋の中央にあるテーブルの上にポツンと置いてある紙切れ。その紙を手に取り目を通した途端、アルカは顔を青くし、部屋を飛び出した。

 

 

「カ、カレン! 起きて!! カレン!!!」

 

 

 アルカとC.C.の隣に割り振られたカレンの部屋。

 彼女は部屋に入るや否や、まだ寝ているカレンの上に飛び乗り、身体を揺らす。

 

 

「……ん、あ。…な、何よ…。こんな朝早くに……。」

 

 

 まだ完全に覚醒していないのか、目を擦りながらカレンは目を開ける。

 

 

「……って、あんた! 服! 服はどうしたのよ!!」

 

 

 目を開けてみれば自身を馬乗りしている裸の美少女。

 身体に張り付いた髪が、所々跳ねた寝癖が、赤く染めた頬が、色っぽく見える。

 カレンの頭は混乱した。

 実に混乱した。混沌だった。

 何かの扉を開きそうになった。

 

 こういうのを夜這いと言うのか。いや、朝だから違う?

 そもそも何でここに?

 もしかして私の事……、そうしたらC.C.は?

 

 様々な考えが、カレンの頭に浮かぶ。

 

 

「そんな事より大変なんだって! C.C.が!!」

 

 

 カレンのそんな考えも、話を聞いた途端に吹き飛んだ。

 

 

「アッシュフォードへ行ってくる。」

 

 

 紙にはそう書かれていた。

 

 

 

 

「あっつ………。」

 

「流石に、密閉空間だと、きついね………。」

 

 

 二人の少女が汗だくになりながら、不満を吐露する。

 

 

「もうちょっと、どうにかならなかった訳……?」

 

「急造にしては、良く出来てる方だと、思うけど……。このラッコ。ほら、2シートだし。」

 

「2人乗り、って言ったて、私が肩車しているだけじゃない……。」

 

「カレンは下半身担当、私は上半身。こう、胸に滾るモノあるでしょ? 昔の日本に無かったけ? 複数人で1つのロボット動かすやつ! Japanese pop culture!!」

 

「……どこで覚えたその知識。」

 

 

 アッシュフォード学園へと向かったC.C.を連れ戻す為、2人が、主にアルカが考えた作戦。

 それは、背の高いラッコのぬいぐるみを着てマスコットとして学園に潜入する事。

 

 女性1人では着こなせない高さである為、アルカが言った通り、2人で役割分担をして動かしている。

 肩車しているカレンの負担が大きいのが欠点だが。

 

 

「それで? 今どの辺り?」

 

「クラブハウスの裏辺り。C.C.の目的がアレならこっちの方に来てそうだけど……。あ、そこ右ね。」

 

 

 前の見えないカレンは、アルカの指示で足を進める。

 

 ガウェインを操縦していた時のC.C.ってこんな気持ちだったのか、と少しだけ去年のC.C.に同情した。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「……で? 皇帝にギアスを与え、スザクに教えたのは同じ人物なのか?」

 

 

 能天気にノコノコと学園内をふら付いていたC.C.を捕まえたルルーシュは、人気の無いクラブハウス前で話し込んでいた。

 

 

「……………そうだ。しかし、これ以上知ると――――。」

 

「もう巻き込まれている。」

 

 

 たっぷりと時間を置いて、C.C.は意を決した様に口を開く。

 

 

「V.V.。」

 

「V.V.? まさか、スザクにギアスを……。」

 

「いや、それは無い様だ。」

 

「アルカはそいつの事……。」

 

「ああ、知っている。話さなかったのはお前の為だろう。」

 

 

 ルルーシュは苦虫を潰した様な表情を浮かべる。

 隠し事をされたからではない。妹の抱えている物に気付かなかった自分を恥じているのだ。

 

 

「どういう関係だ?」

 

「話せば長くなる。」

 

 

 その一言にルルーシュは悟った。

 浅からぬ因縁を、そしてこの魔女が今はこれ以上話す気が無いという事を。

 

 聞くのを諦めてC.C.の脱出ルートを模索する中、自分の名前を呼ぶ少女の声が聞こえた。

 

 

「ルル~!!」

 

「何だい? シャーリー。」

 

 

 穏やかにそう言いながら、C.C.を傍にあるトラックの積み荷へ突き落とす。

 中には巨大ピザ用の大量のトマト。

 

 

「何か用でも?」

 

 

 シャーリーがこちらに駆け寄ってくるのを確認し、ルルーシュはすかさず積み荷の扉を閉める。

 ブリタニア軍とは何も関係な彼女が相手でも、面倒事は避けたいのだ。

 

 

「あのね、ヴィレッタ先生が私を避けてるみたいなの。だから、ルルの方から――――。あれ? 1人?」

 

「ああ。」

 

「……? 今誰かと話してなかった?」

 

「いや? ここは俺と君、2人っきりだよ?」

 

 

 積み荷から時折感じるC.C.の気配に冷汗をかきながら、言葉巧みにシャーリーの気を逸らす。

 

 ルルーシュの思惑通り、思考が別の方向へと向かったシャーリー。

 恰好のチャンスに思わず視線をルルーシュから逸らしていたシャーリーは、意を決して彼へと視線を戻す。

 

 

「あのね、ルル……。私と………。って、え?」

 

 

 2人きりだと思っていた、絶好の機会。

 しかし、そのチャンスはとある生き物によって失われた。

 

 大きな、女性なら2人は入れそうな程大きいラッコ。の着ぐるみ。

 そんな謎の存在が、ルルーシュを咥えていた。

 

 

「す、すまない……、ちょっと聞き取り辛いんだけど………。」

 

「な、何ですか、あなた!!」

 

 

 突然の来訪者に、怒り半分、困惑半分でシャーリーは声を荒げる。

 

 

「ど、どいうつもりだ…。お前達も人に見られたら……。」

 

「あのピザ女を連れ戻しに来たのよ……。」

 

「ごめんね? お邪魔しちゃって。」

 

 

 突如放り込まれた着ぐるみの中。

 そこには汗だくのカレンと、カレンに肩車された同じく汗だくのアルカが居た。

 

 

「だったらトマトの中だ。コンテナごと運び出し、藤堂か扇の指示をうぉぉおおおっ!?」

 

 

 素っ頓狂の声をあげながら、ルルーシュの身体が外へと引っ張られる。

 シャーリーが思いっきり彼を引っ張っているのだ。

 

 

(ああ、やばいやばい! 何処かに行ってシャーリーさん!!)

 

 

 小声でそう言いながら、引っ張り出されない様に、ルルーシュを必死に抑えるアルカ。

 

 

「誰ですか!? 失礼でしょ!!!」

 

 

 暑さによる疲労と不安定な土台(カレン)。

 上手く力が入らず、ルルーシュは引っこ抜かれ、その勢いのまま地面に転げ落ちていった。

 

 意識をルルーシュの方へと向けると思いきや、シャーリーはそのままアルカ達へ興味を向ける。

 

 

「黙ってないで何か言いなさいよ!!!」

 

 

 そのままシャーリーは力一杯にラッコの頭を引っこ抜こうとする。

 

 

(喋ったら私だってバレちゃうじゃない………!)

 

(何で、こんなに力強いの……!?)

 

 

 想像以上の力強さに驚愕しながら、アルカは頭を押さえつけ、カレンは踏ん張る。

 

 

(こんな間抜けな事で、バレてたまる、かっ!!)

 

 

 いくらシャーリーの力が強かろうと、アルカは訓練を受けた人間。

 素早く彼女の腕を振り払う。

 

 

(良し! カレン、方向転換!! 撤退準備!!!)

 

(あんた、人使い荒らすぎ……!)

 

「こら! 待ちなさい!!!」

 

 

 逃げようとしたアルカ達を、持ち前の反射神経で捕まえ、その拳を顔にお見舞いする。

 

 

「痛ぁ!!」

 

 

 着ぐるみ越しとは言え、与えられた衝撃に着ぐるみ全体が揺れ、アルカは頭をぶつけ、思わず声を出してしまう。

 

 

「…くっ……、シャーリー! その生き物は!!!」

 

「ルルーシュ!」

 

「アーサー見なかった?」

 

 

 混沌としてきたこの場に、また新たな人物声が加わった。

 このパーティーの主役である、枢木スザク。

 そしてこのパーティーの主催者、ミレイ・アッシュフォード。

 

 

「大事にしていた羽ペンを取られちゃって……。」

 

 

 スザクは本当に困った様に眉を下げる。

 彼が取られた羽ペンは生前、ユーフェミアが愛用していた物。数少ない彼女の遺品なのだ。

 

 

「いや、見ていな……。」

 

 

 その時、積み荷の中から激しい物音がした。

 ドン、ドンと何回も。内側から何かがぶつかる物音が鳴り響く。

 

 ルルーシュはそれの正体を知っている。

 そして。

 

 

「まさか、この中に!?」

 

 

 それが決して見られてはいけない、という事を。

 特にこの、枢木スザクには。

 

 

「いや、猫とトマトはセットでは無い!!」

 

 

 度重なるイレギュラーの発生に、最早ルルーシュの言語能力すら失われかけている。

 そして、とどめに。

 

 

「はっ?」

 

「やっば…」

 

 

 突如、C.C.の居るコンテナが持ち上げられた。

 

 

『スタート地点はここなんだろ?』

 

 

 感じの良い青年の声に釣られて、全員が新たに加わったイレギュラーへ視線を向ける。

 そこには黄色のKMFが居た。

 第3世代KMF「ガニメデ」と同じ骨格をした、アッシュフォード家が有するクラシックナイト。

 今回の祭りの目玉。世界一のピザ作りに用いられる機体だ。

 

 

「まさか、ジノ!?」

 

『ああ! 面白いなぁ! 庶民の学校は!!』

 

 

 そう言い残し、ジノと呼ばれた青年はC.C.の居る荷台を抱えたまま、颯爽と走り出す。

 

 

「おい、待て!!」

 

 

 それを追うルルーシュとアルカとカレン。

 ラッコを追うシャーリー。

 騒動に巻き込まれ、KMFから逃げるアーサーを追う、スザクとミレイ。

 そんな事はつゆ知らず、目的地に向かって機体を走らせるジノ。

 

 相も変わらず、アッシュフォード学園で行われる祭りは混沌を極めていた。

 

 

 

祭りとは、カオスであればある程、面白い。

        

By ミレイ・アッシュフォード

 

 

 

◇◇◇

 

 

「「疲れた……。」」

 

「ああ、全くだ。あいつ、トマトの中に落としやがって。」

 

「誰の所為で……。」

 

 

 星刻の手配した車の中で、アルカとカレンは項垂れていた。

 猛暑の中、半日以上も着ぐるみを着て動き回っていたんだ。無理も無い。

 

 

「まぁそう固い事言うな。こいつがどうしても欲しかったんだよ。」

 

 

 そういうC.C.は嬉しそうに笑みを浮かべながら、抱いているぬいぐるみに頬ずりをする。

 黒いシルクハットを頭に乗せた黄色い謎の生き物。

 C.C.が良く利用していたピザ屋のマスコットキャラクターだ。

 

 

「何でそんなものの為に……。」

 

 

 カレンは呆れた様子を隠す事無く、うんざりとした口調で口を開く。

 

 

「ふん、お前には分からないだろう。こいつはな、アルカと私で一生懸命貯めたポイントで引き換えた逸品だ。思い出深いんだよ。」

 

「C.C.……。」

 

 

 先程とは打って変わり、何処か感激した様子で顔をキラキラさせてアルカは顔を上げる。

 

 

「いや、貴女ちょろすぎ。」

 

 

 一見、何も収穫が無かった一日の様にも見えるが、そうでは無い。

 今日を持って、アッシュフォード学園の機密情報局は、全てルルーシュの物となったのだ。

 

 というのも、例の騒動の中でたまたま顔を合わせたカレンとヴィレッタがきっかけである。

 カレンは見たことがあるのだ、ヴィレッタと扇が仲睦まじく一緒に居るのを。

 

 ブリタニア軍人であり、現貴族のヴィレッタとイレヴンである扇の接点。

 思いがけず、彼女の弱みを握れたルルーシュは、早速彼女に取引を持ち掛け、手中に収めた。

 

 

 そして、もう一つ。

 

 

「ん?」

 

 車内に軽快な電子音が響く。

 アルカの携帯だ。

 送信元は彼女の兄、ルルーシュ。

 

 

「兄上から?」

 

 

 送られてきたメッセージを開き、目を通す。

 そこに書いてあったのは非常にシンプルだった。

 ただ一文、簡潔に記載されてあるだけだった。

 しかし、アルカを動揺させるのは、その一文だけで十分だった。

 

 

「っ!!!」

 

 

 あまりの動揺にアルカの身体からは力が抜け、携帯がその手から零れ落ちる。

 車が揺れるのと同時に、落ちた携帯が僅かに跳ね、カレンとC.C.からも画面が確認出来る様になった。

 

 そこに書かれていた内容は、カラレスに次ぐ次の総督の名前。

 ―――――ナナリー・ヴィ・ブリタニア。

 

 ルルーシュの妹であり、アルカの姉、その人だった。

 

 




執筆中にいくつかネタが思いつくことあるんですよ。
何となくそのままにしておくの勿体気がしたので、短編集的なノリで投稿すると思います。
見つけたらどうぞ良しなに。
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