そして、またまた阿井 上夫 様よりイラストを頂きました。
しかも二枚!!
可愛いです。可愛すぎて一人で画面の前でニチャニチャしてました。
圧倒的感謝
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中華連邦 首都「洛陽」 朱禁城
「外の世界はどうなっているのですか? 私は、この城から出たことが無いから……。」
ブリタニアに次ぐ広い国土を持つ中華連邦のトップ、天子は興奮した様に神楽耶に尋ねる。
そんな天子をなだめる様に、近くに控えていた大宦官が口を開く。
「天子様、この洛陽が、朱禁城こそ世界の中心ですよ。」
口調こそ穏やかだが、言葉の裏が丸見えだった。
天子には今のまま、何も知らない子どもでいて欲しいのだろう。そうした方が政治を思い通りに出来るのだから。
「でも……。」
生まれながらの君主。中華連邦の治める盟主になる事を定められた少女、天子。
より良い国を作る為に必要な事を、彼女は本能的に理解している。
それは、外の世界の事を学び、取り入れること。
彼女の外に対する渇望は、大宦官の言葉だけでは消えない。
そんな天子に過去の自分を重ねた神楽耶は、優しく笑みを浮かべた。
「では、私が外を見てまいります。そしてそれを貴女に伝えましょう。」
「え?」
「…実は、今日はお暇を告げに参りましたの。」
神楽耶の言葉に、天子はその大きな瞳に涙を貯める。
「そんな…、折角初めてお友達が出来たのに……。」
幼い頃から大人に囲まれ、朱禁城の中でずっと暮らしてきた天子。
当然、友人には恵まれず、一年前にやってきた神楽耶が初めての対等な相手だった。
「申し訳ありません…。でも、夫が待っておりますので……。」
天子の涙に若干の罪悪感を覚えつつも、神楽耶は「それに」と言葉を続ける。
「私の妹に渡さなきゃいけないものありますの。あの子、危なっかしいから。」
◇◇◇
中華連邦から譲り受けた黒の騎士団専用の潜水艦の中で、1人の少女と科学者が顔を合わせていた。
鋼鉄の巨人が見下ろす中、お互いに笑みを浮かべる。
「ひっさしぶり~。元気してたぁ?」
褐色肌、キセル、白衣、間延びした口調。
以前に会った時と何一つ変わっていない彼女の姿に、思わず笑みを零しながらアルカは応じる。
「お久しぶりです、ラクシャータさん。」
「私が離れている間、無窮を壊していないか心配していたけどぉ。言いつけ守ってくれてた様で安心したわぁ。」
「あはは…、あれだけ口酸っぱく言われたら流石に……。」
中華連邦からの支援があるとは言え、今の黒の騎士団には人手も物資も足りておらず、カツカツの状態だ。そんな状態で新規兵装も開発もしていたとなれば、修理に回せる物資も限られてくる。カレンとアルカはラクシャータから無理しない様にと口酸っぱく言われていた。
「それで、あっちの方は?」
「完璧よぉ。貴女の分も、カレンちゃんの分も。」
得意げに笑みを浮かべながら、ラクシャータは手に持つキセルをそれへ向ける。
「…すごい、これが……」
「正真正銘、貴女専用の第八世代KMF。名を――――。」
▼
太平洋奇襲作戦。
本国からエリア11へ向かう空中戦艦を奇襲し、新総督であるナナリーを攫う作戦。
参加メンバーはカレンと藤堂、四聖剣の面々。
航空戦力が無い黒の騎士団は、KMF用の輸送機から戦艦に取り付き、着実にブリタニアの戦力を削っていく。
ゼロも無事艦内に潜入し、順調に事が進んでいたその時、戦局は一気にブリタニア側に傾く事になる。
「……! ナイトメア!」
紅蓮弐式のモニターが、複数の機影を捉える。
ランスロットを元にした量産機「ヴィンセント」。それに付き添う様に空を駆る3機のサザーランド。
「全機、弾幕を張れ!」
藤堂の掛け声と同時に、黒の騎士団は一斉に射撃を開始する。
しかし、相手は宙を自在に舞う翼を持った騎士。
張った弾幕も全て避けられ、瞬く間に距離を詰められてしまう。
一機、また一機と確実に戦力を削がれていく黒の騎士団。
銃で応戦しようととも、ひらりひらりと避けられ、接近戦に持ち込もうとしても、宙へ逃げられる。
「キッツいねぇ、これ。」
声は飄々としながらも、顔を顰めながら朝比奈が呟く。
「しかし、ここを持ち堪えなければ――――。」
この不利な状況に置かれた自分達を鼓舞する為に口を開いた仙波だったが、その言葉が最後まで続く事は無かった。
貫かれたのだ。
仙波の乗っている月下のコックピットに、巨大なスラッシュハーケンが突き刺さっていた。
「仙波大尉!」
千葉の絶叫が各々のコックピット内に響く。
彼女の声に答える事無く、月下はそのまま爆発した。
『弱い物虐めは好きじゃないけど、さ。』
スラッシュハーケンの射出先に目を向けると、一機の戦闘機の様な期待が浮かんでいた。次第にその機体は変形を繰り返し、一つの騎士の姿と変貌した。
第八世代可変型kMF「トリスタン」。
そしてそれを駆る帝国最強の騎士、ナイトオブスリー「ジノ・ヴァインベルグ」。
そんな存在が、黒の騎士団の前に敵として立ち塞がる。
加えて。
『かくれんぼは、もうお終い。』
通常のKMFよりも大柄なボディ。全身を赤い鎧に包んだナイトオブシックス専用機。
第八世代KMF「モルドレッド」。
そのパイロット「アーニャ・アールストレイム」。
「ナイトオブ…、ラウンズ………!」
忌々しそうに藤堂が呟く。
本国から遠く離れたエリア11でも、それの活躍は度々耳にしていた。
ブリタニア皇帝直属の騎士達。ラウンズの出た戦場に決して敗北は無く、その実力は正しく一騎当千。
そんな存在が、ここに二機。
そして、もう一機。
トリスタンよりもさらに速い速度で、この戦場に向かっている一つの機体を紅蓮は捉えた。
「そんな…、まさか!」
幾度と無く黒の騎士団の前に立ち塞がり、最大の障害として敵対していた白騎士。
試作段階のフロートユニットから、正式採用されたモノに換装した白き征服者。
「カレン、僕はナナリーを助けなくてはならない。……今更許しは、請わないよ。」
白い騎士は静かに銃口を紅蓮へと向ける。
「スザク!!」
新総督を守る為、黒の騎士団を根絶する為。最強の3人の騎士がこの戦場に集った。
▼
『状況を確認します。』
普段の姦しさは身を潜め、静かな神楽耶の声がコックピット内に響く。
『戦況は私達が劣勢。残存戦力は月下二機と中破した紅蓮弐式のみ。対しブリタニアにはナイトオブラウンズ専用機が3機。ランスロット量産型モデル、ヴィンセントが1機。』
操縦桿を握る淡いミルクの様な髪色をした少女は、静かに目を閉じて俯いている。
『紅蓮の方は私達の方で換装するから、アルカちゃんは気にせず戦いなさぁい。』
『ゼロ様の乗る主艦は現在、エンジン部が損傷し徐々に高度を下げています。海面の到達までおよそ5分。つまりは――。』
神楽耶は穏やかな笑みを浮かべて、口調を柔らかくする。
『ラウンズ3機を相手取りながら、沈没するまでの間にゼロ様を救出する。ふふっ、言葉にすると無茶なオーダーですけど……、行けますね? アルカ。』
「ハイハイ、承知致しました。お姉様。」
アルカは俯いていた顔を静かに上げ、その瞳を開く。
『飛翔滑走結束具、輻射障壁共に動作正常。パイロットバイタル、良好。』
上部のハッチが開き、戦場の様子が目で確認出来る。
操縦桿を握る手に力が入る。
機体全体がドライブの振動に包まれ、僅かにコックピット内の温度が上がる。
『頼んだぞ、アルカ。』
「……無窮蒼天式、行きます。」
アルカの静かな言葉と共に、蒼い巨人が勢い良く真上へと射出された。
▼
「カレン、これで君を……!」
海へと堕ちていく紅蓮に止めを刺す為、再びスザクはハドロンブラスターの照準を紅蓮に合わせる。
フロートユニットの無い紅蓮が避ける術は無い。
一撃必死の破壊の光。その光が紅蓮に目掛けて放たれた。
「クソっ!!!」
頭上から降って来る赤黒い光線に目を顰めながら、カレンは悪態を付く。
ここまでか。
そう思った矢先。
下から凄まじい速度でその光に向かっていく蒼い閃光がカレンを通過した。
その閃光は僅かに赤い熱を帯びながら、ハドロンブラスターを弾いて上空へと高度を上げていく。
「何?」
スザクが異変に気付いたのはすぐの事だった。
放たれた筈の閃光は、何時まで経っても紅蓮を捉えず、それどころか何かに弾かれている。
「一体何が―――っ! 君は…!?」
スザクの疑問の答えは直ぐに目の前に現れた。
それをスザクは知っている。
紅蓮に次ぐ、黒の騎士団の主戦力。
第七世代KMF相当の力を持ち、元ラウンズのノネットを二度も退いた永遠の名を冠する機体。
「アルカ!!」
無窮は畳んでいた背中のバインダーを広げ、その中から太刀を取り出し、そのままランスロットのハドロンブラスターを叩き切る。
「枢木…、スザク!!」
「くっ…!」
一瞬の隙を見せたランスロットに畳みかける様に、コックピットに向かって横薙ぎに一閃。
しかし、その剣筋はランスロットを捉える事無く、宙を切った。
後退し、距離を取ったランスロットにトリスタンとモルドレッドが加勢に来る。
『なぁスザク。あれってブリーフィングであった一本角だよな?』
「ああ。」
『随分と様子が違うんだが。』
『記録と、違う……。』
アーニャとジノの言葉に、スザクは再び無窮を黙視する。
確かに一年前とは違う。
腰に取り付けられていた燕尾服の様なバインダーは背中に取り付けられ、その数も増えている。
ブラックリベリオンの時は装備されて居なかった外部装甲も再び装備されており、遠距離武装も節々に確認できる。
無窮蒼天式。
一年前、ブラックリベリオンにおいて活躍した無窮天式の欠点を改善した第八世代相当KMF。
課題であったエナジーの燃費の悪さ、完全武装の無窮を浮かせられない出力の低さを、完璧に補った次世代機。
以前は腰に装着されていたバインダーの一つ一つにフロートシステムと輻射障壁を取り付けた「飛翔滑走結束具」。
それを背中に取り付ける事で安定した飛行性能と、高い防御力を手にした。
時にすればほんの数刻、一瞬の沈黙を破ったのはモルドレッドだった。
「排除。」
何処までも冷たい声で、アーニャは呟く。
肩に取り付けられた砲台を前に構え、激しい光が迸る。
「スザク! ここは俺達に任せて、お前は総督を!」
「っ! すまない!」
モルドレッドのシュタルクハドロンに合わせて、ランスロットとトリスタンが散開する。
ランスロットは高度を下げる主艦へ、トリスタンは無窮を挟撃する為。
「私を囲む気…? だけど!」
背中のバインダーで機体を覆い、上空へと勢い良く飛び上がり射線から離れる。
「逃がさないよっと!」
高度を上げる無窮に対し、メギドハーケンを連結させ、その先端からハドロンスピアーを放出する。
KMFの装甲すらも貫くほどの威力を持ったこの武装も当たらなければ意味を成さない。
鞭の様にメギドハーケンをしならせ、追尾を試みるもそれが無窮を捉える事は無い。
「クソっ、大柄の割に素早いな…。アーニャ!」
「分かってる。」
全身のハッチが開き、モルドレッドから無数の追尾式ボマーが射出される。
ハドロンブラスターと大量の追尾式ボマー。
普通のパイロットなら音を上げていたであろう、激しい弾幕も、障壁で阻まれ、ギリギリで避けられ。
ついには無窮を追っていたメギドハーケンのケーブルも太刀で切断されてしまい、トリスタンは1つ武装を失った。
『ヴァインベルグ卿!』
「……ああ、ギルフォード卿か。」
主艦に取り付いていた千葉と藤堂の相手をしていた筈のヴィンセントが、加勢に来る。
『あれは、ブラックリベリオンの時の…!』
「そうか、貴方は面識がありましたか。ただ貴方と記憶にある機体と同じだと思わない方が良い。恐らくこいつは――――。」
ジノの言葉が最後まで続く事は無かった。
凄まじい熱量を持った光線が、下から向かってきたからだ。
その光線は真っ直ぐにヴィンセントを捉え、ヴィンセントは与えられる膨大な熱量により内側から膨れ上がっていく。
『何!? 遠距離で!』
熱に耐えきれなかったヴィンセントは、凄まじい音を立てて爆発する。
その光景を見てアルカはふわりと笑みを浮かべた。
「遅いよ、カレン。」
『ごめんって。』
無窮の隣に、フロートユニットを新たに換装した紅蓮が並ぶ。
「紅蓮可翔式、使い心地はどう?」
『悪くない。……私達がここで負けたら、もうおしまいね。』
「……なら、負ける訳にはいかないね。」
蒼と赤の機体。
二機はお互いの主武装を構えながら、ジノとアーニャに対峙する。
その光景は正しく、高く聳え立つ双璧。
「まさかここまでやるなんてな…。なぁ、アーニャ。」
「…邪魔。」
紅蓮可翔式を新たに加えて、両者は再び激しくぶつかり合う。
▼
「……埒が明かない。」
「そうね…。」
次世代のKMFによる攻防。実力は完全に拮抗しており、膠着状態になっていた。
『アルカ、ゼロ様の居場所が分かりましたわ。主艦後部の庭園エリアに! ただ、時間が…!』
チラリと目線を戦艦へと向ける。
黒々とした煙を立てながら、徐々に高度を下げていく。
「……っ。カレン、ここは私が。貴女はゼロを。」
『……一人で戦う気?』
「空中戦では私の方が長いからね。」
『……分かったわ。………死なないでよね。』
そう言い残し、カレンはその場から去る、が。
「おいおい、行かせると思うのか……? っておい、アーニャ!!」
カレンを阻もうとしたジノだが、横に居たアーニャが急にアルカに迫った事によって妨げられる。
迫って来る大腕を躱し、モルドレッドに一太刀浴びせる。
しかし。
「無駄。」
機体全体を覆うブレイズルミナスに阻まれ、決定打にはならない。
(…何、こいつ。急に私を……?)
その時、モードレッドの全身が光り出す。
機体中に付いている訪問から無数の黒いボマーが射出される。
「やばっ。」
モードレッドから距離を取り、追尾してくるボマーを振り払う。
「
高速で飛行する無窮を中心に捉え、両肩の砲門を構える。
シュタルクハドロン。
最新鋭のブリタニア浮遊戦艦をも一撃で沈めた程の威力を持つ兵器。
それを飛んでいる無窮に目掛けて放つ。
「いつになくやる気だな、アーニャ。……まぁ、細かい事は良いか。」
モルドレッドと無窮の戦闘をしばらく傍観していた彼も意識を無窮に向け、攻撃を開始する。
「ああ、もう! 人気者は辛いなっと!」
ボマーを切り捨て、シュタルクハドロンやハドロンスピナーを躱す。
全ての攻撃をギリギリで避けながら、アルカはバインダーから武装を取り出す。
それは銃身と砲門が分離した大型の銃。
機体を激しく揺らしながら、バラバラの銃を組み合わせる。
「超電磁式榴散弾銃砲……。日本解放戦線と同じものだと思うなよ?」
凄まじいエネルギーを持った一発の銃弾が、無窮から放たれる。
KMFのモニターですら追えない程の速度で、真っ直ぐモルドレッドへと向かっていく。
「こんな直線的な攻撃、私が避けられないとでも……。何?」
弾の軌道は確かにモルドレッドから外れた筈だった。しかし実際にはモルドレッドのフロートユニットを翳め、それを破壊した。
「おい、アーニャ!」
翼を失ったモルドレッドを支える為、トリスタンが駆けつける。
「これ以上は戦闘の継続は不可能だ! 総督の救出も完了したみたいだし、退くぞ!」
『アルカ! カレンさんがゼロ様を保護しましたわ! 離脱してください!』
「……分かった。」
トリスタンとモルドレッドに向けていた銃口を下ろし、その場を後にする。
戦場から離れていく無窮を眺めながら、ジノは感心した様に口を開く。
「ふぅん、思ってたより手強いな。本気でやれば良かった。」
「………ええ、面白い子。」