「それで君はブリタニアから追われているわけか……」
アルカと名乗る少女は小さく頷いた。
彼女は元貴族階級の出らしく、ブリタニアに対して反体制的な思想を持った家系、所謂「主義者」だったようだ。
ナンバーズに対して支援を行っていたある日、同じ貴族の家系から告発され、両親は暗殺。血の繋がった
「将来的に反ブリタニア勢力の戦力にする為、母上は私に幼少時から様々な訓練を施しました。身体の動かし方から
それであの身のこなしと判断力か、まだ不鮮明な部分は多いが納得は出来る。
「君の素性はわかったが………」
扇さんが頭を掻きながら少女に問う。
「どうやって日本まで来たんだ?君一人ではとても来れるような距離じゃないだろう?」
少女は静かに話し始めた。
両親が殺され
「んで?その女ってのはどこに居るんだよ?」
玉城の言葉を聞いた少女は、今までで一番の動揺を見せた。瞳に涙を貯めながら彼女は独白を続ける。
「ブリタニア…軍に…先日捕まりました………。私、を……逃がすために…囮となって……………。もともと彼女も、ブリタニアに…追われている身なんです……。それを彼女は分かっていながら……!!」
少女の小さな拳が力んでいるのが私達から見ても分かる。―――悔しいのだろう、何も出来なかった自分が。
私はその少女の姿に自分自身を重ねる。
(お兄ちゃん……)
「私に抗う力さえあれば、彼女を失うことは無かったんです!これ以上ブリタニアに搾取されることは無かった……!!」
少女の瞳を見つめる。同じ目だ――。私達と、ブリタニアを憎む目。
扇さん、玉城、私の3人はお互いの顔を見合わせる。この少女をどうするか。
いくらブリタニア人といえど、追われているのを知りながら10歳の少女をここに放って行くのも目覚めが悪い。
しかし、保護しようにも――――――。私達は再び頭を悩ませることとなった。
◇◇◇
一通り話し終えた私は、チラリと3人の様子を伺う。
最初に比べるとだいぶ警戒心が薄まったように見える。
少なくともギアスを使わずともこの場を切り抜けることは出来そうだ。
嘘に少しの真実を織り交ぜただけで警戒心を薄めることに成功した。日本人はやはり甘いな、と内心ほくそ笑む。
「あの、皆さんは何をされている方なんですか?一般人の様には見えませんが……」
一斉に3人が私の方へ顔を向けた。
ゲットーに居る時点で名誉ブリタニア人では無いのは確実。
少女が見せた強いブリタニアに対しての嫌悪感、訓練されている身のこなし。
私の想像通りだと嬉しいのだけど………。
「あ、ああ。俺たちは……「反ブリタニアのテロ組織の人間……ですか?」
扇という男の言葉に被せて3人に言い放つ。
その言葉を聞き、3人の顔色が変わった。図星か。
「そうだ、と言ったらどうするつもり?」
カレンと呼ばれる少女が私を睨みつけながら問いかける。
「仲間に…加えて頂けませんか?」
日本は数ある植民地の中でも群を抜いて反抗勢力が多いと聞く。
現在進行形で活動しているテロ組織と連携出来るのなら可能性が有るのなら試す価値は大いにある。
「君がブリタニアを憎む気持ちはわかったが……俺たちの組織は日本人の集まりだ。ブリタニアの血が入っている君が歓迎されることは無いと思うが…」
扇が言葉を慎重に選びながら私を諭すように言った。優しい性格の男なのだろう。
よし、あと一押しだ。
「承知の上です。出会って間もない私を信用できないのも理解しております。ただ、ブリタニアを憎む気持ちに人種は関係ありますか?今の日本により好みをする余裕はあるのでしょうか?」
間髪入れずに私は続けた。
「あなた方の敵はブリタニア人ですか?ブリタニアという国そのものでは無いのですか?ブリタニアという国と戦争する気があるのなら、覚悟を決めてください。」
ブリタニア人である私を受け入れる覚悟を―――――。
◇◇◇
「ブリタニアも把握してないレジスタンス用の移動ルート…ですか。キョウトという組織も中々やりますね」
北九州から本州へと繋がる海底トンネルの中でアルカが年相応に目を輝かせながら呟いた。
結局私達は彼女の圧に負け、仲間に加えることにした。まぁ歳も考えると仲間というよりかは保護という意味合いの方が強いが。
「んで、アルカはトウキョウ租界に行きたいんだっけ?」
「はい、そうです!皆様の活動拠点がシンジュクゲットーなのはラッキーでした!!」
彼女の顔にパァっと笑顔になる。こういうところは年相応で可愛らしいな、と私は呑気に考えていた。
トウキョウ租界に彼女の
自ら協力を申し出た彼女だが、
「そうは言うけど、もし私達がトウキョウの方で活動していなかったらどうしてたのよ」
「この辺りの方ではないという確信はありました、土地勘が無さそうだったので。あとは……喋り方ですかね、なまりを感じなかったので関東の方かなぁと」
「まぁほとんど勘ですけど、あはは」とアルカは続けた。
貴族の出というのもあり語学能力は高いらしい。逃亡生活中を続けている中でも少しずつ勉強していたのだとか。10歳という歳で平然とやってのけている彼女が末恐ろしい。
「そういえば、トウキョウで活動している皆さんはどうしてフクオカに?」
「ああ、物資の補給も兼ねて、こっちで活動しているレジスタンスに会いに来たんだ。
アルカのことで完全に忘れていたけど。そういえば本来の目的はそれだった。
「なぁ扇ぃ、連れて行くのは良いけどよ。こいつゲットーで匿うのか?俺らはともかく周りの住民達が何するかわかったもんじゃねぇぞ」
玉城の言葉で私の意識は再び会話へと戻される。珍しくまともな意見を言ったわね…
「ああ、そのこと何だが……「私が預かります」
扇さんの言葉を遮る。
ブリタニア人の彼女をゲットーに住まわせるのは危険すぎる。癪であるがブリタニア貴族である私の家ならばある程度は誤魔化しが効くだろう。正妻は無視をすればいい。それに彼女は何処か危なっかしくて、放っておけない。
「追われているのは一部の人間からだけなのよね?」
「はい、そうです。彼らも大事にはしたくない筈なので、普通に暮らしている分には問題無いかと…。追手も完全に撒きましたし」
「まぁ念の為に軽い変装はさせるとして……大丈夫そうね。そういう訳だからよろしくね」
アルカを見つめながら私がそう言うと、彼女は一瞬キョトンとした後に「ありがとうございます!」と元気に答えた。
「お姉ちゃんみたい……」
アルカが顔を赤らめながら嬉しそうに小さく呟く。
う、なんだこの可愛い生き物…………。
カレンの兄であるナオト。
一話の永田の口ぶり的にこの頃はまだ生きていたと思うけど、死ぬときの描写とか生前の描写がアニメにも小説にも無く、わからない為、死んでもらいました。
ごめん、ナオト