コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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モチベにムラがあり済まない……。

本当に済まない……。

非力な作者を許してくれ。


TURN11 兄の気持ち、友への想い

「良いんですか?」

 

「何がだい?」

 

 

 シュナイゼルの直属の部下であり、側近のカノン・マルディーニは不満を顔に浮かべながらシュナイゼルに尋ねた。

 

 

「指揮を全て中華連邦に託してしまって。」

 

「それは少し違うよ、カノン。あくまでも向こうに主導権を握って貰っただけ。細かい指示は変わらず私が出すさ。」

 

「そんな事なさらなくても、殿下が指揮を執れば黒の騎士団など……。」

 

「ここは中華連邦であってブリタニアでは無い。土地、気候、人民、あらゆる要素がブリタニアとは異なる。ならば私より現地人である彼らに任せるのが合理的じゃないかな?」

 

 

 シュナイゼルは優雅に微笑みながら用意されたティーカップを口へと運びながら、「それに」と言葉を続けた。

 

 

「どうやら中華連邦にも優秀な指揮官が居るみたいだしね。」

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「追撃部隊が敗れたのだろう?」

 

 

 中華連邦軍に逆徒として捕縛された星刻は静かに口を開く。

 視線の先には、中華連邦の実質的な支配者である、大宦官。

 

 

「何故分かる?」

 

「場所はシェンチョン渓谷。私ならそこに兵を伏せ、陸軍を足止めする。」

 

「それから?」

 

「シャオペイで本体と合流するだろう。」

 

 

 星刻にとって黒の騎士団の、ゼロの行動は手に取る様に分かりやすいものだった。

 自分なら、ゼロならそうする。優秀過ぎるが故に、次の一手が容易に見える。

 

 

「ふむ。」

 

 

 それを大宦官達も分かっているであろう。

 満足そうに頷いた後、薄気味悪い笑みを浮かべて言葉を紡いだ。

 

 

「星刻、罪を許してもよい。天子様を取り戻せるならな。」

 

()()を貸し与えよう。」

 

 

 彼らの言葉に、一瞬の迷いは生まれたものの、星刻はその瞳に決意の色を浮かべた。

 全てはそう、天子の為に。

 

 

 

 

 

 

「はい、バイタルチェック終わり~。特に問題は無し。水分補給だけはこまめにねぇ。」

 

 

 黒の騎士団が所有する浮遊戦艦「斑鳩」内に用意された医務室で、ラクシャータはキセルを手で遊びながらモニターに目を通す。

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

 アルカはベッドから身体を起こし、綺麗に畳まれたワイシャツに手を伸ばす。

 

 

「全く、アルカちゃんも無茶するよねぇ。モルドレッドのハドロン砲に無窮を突っ込ませるなんてぇ。」

 

「すみません…。機体を雑に使ってしまって…。」

 

「まぁ、あそこの判断が無ければゼロ達もやばかったんだし? 私の無窮の優秀さが証明された訳だから良いんだけどさぁ……。」

 

 

 ラクシャータは普段と変わらない口調で言葉を紡ぎながら立ち上がり、ベッドに腰掛けるアルカに近づく。

 

 

「自分の身体に負担掛け過ぎじゃない? もう少しで貴女、死ぬところだったわよ?」

 

 

 目つきを鋭くし、自身の顔をアルカに近づける。お互いの息づかいが手を取るように分かるほどの至近距離。

 

 

「………守って死ねるなら本望ですよ。」

 

 

 ラクシャータとは対照的に、アルカは笑みを浮かべながらはだけているシャツのボタンに手を伸ばす。

 

 

「……アルカちゃんってさぁ、何をそんなに焦っているの?」

 

 

 キセルをアルカの顎に沿わせ、目線を自分と会う様に持ち上げる。

 焦っている、と指摘された彼女の顔からは笑みが消え、僅かにその目が揺れていた。

 

 

「……焦ってる? 私が?」

 

「質問を質問で返さないのぉ。…私からみたらそう見えるけど、自覚無かった?」

 

「………。」

 

 

 ラクシャータの言葉を嚙み砕いているのか、僅かに視線を逸らし黙り込むアルカ。

 そんな彼女の挙動を一切見逃さない様に、ラクシャータは瞬きも忘れて見つめ続ける。

 

 

「―――私は…。」

 

 

 しばらくの沈黙が部屋に訪れた後、アルカは震える声で口を開いた―――と、その時。

 

 

『アルカ、身体の方は問題無い――――か――。』

 

 

 医務室の扉が開き、機械交じりの声、ゼロの声が新たに加わる。

 突然の来訪者に、見つめ合っていた彼女達は視線をゼロへと移し、口をポカンと開けていた。

 

 

「―――――ば……。」

 

 

 急な来客に我に返ったアルカは、その顔をみるみると赤に染めていく。 

 はだけたシャツ、その間から見える素肌。角度によってはキスしている様にも見えるほど近いラクシャータの顔。そして、配慮に欠けたゼロ()の行動。

 羞恥と怒りとその他諸々。ごちゃ混ぜになった感情のまま。

 

 

「馬鹿!!!」

 

 

『ほわぁ!?』

 

 

 大きな声を上げて自身の横に合った枕をゼロに向かって投げた。

 

 

 

 

『蓬莱島の状況は?』

 

 

 斑鳩の指令室。

 そこで作業に取り掛かっていた扇達は、その手を止めて、ゼロ達の方へ視線を向ける。

 

 

「インドからの援軍は、既に到着しております。」

 

「後は帰って合流するだけだが―――。」

 

 

 ディートハルトと扇が順に報告する。

 その言葉に耳を傾けつつも、ゼロの後ろで壁に寄り掛かりながら、アルカは憤りを露わにする。

 

 

「……ゼロには配慮が足りないと思うの。」

 

 

 彼女の隣に居るC.C.はアルカを見守る様な温かい目を向けながら、口を開く。

 

 

「そう言ってやるな。あれはあれでお前を心配してたんだ。」

 

 

 二人にしか聞こえない程の小声で、彼女達は会話を続ける。

 

 

「それは分かるけど…。それにしたって―――。」

 

「女の扱いがなっていない、だろ? 何、今に始まったことじゃ無いさ。」

 

「ああ、もう…。これじゃあ、シャーリーさんが浮かばれない―――。」

 

 

 脳裏にオレンジ髪の活発な少女の姿を浮かべ、溜息を吐いたその時。

 

 

「っ! 敵襲!?」

 

 

 茶色の髪をポニーテールにしたオペレーター、「日向いちじく」の声と共にけたたましい警告音が艦内に響く。

 

 

「先行のナイトメアが破壊されていきます! 嘘、こんなスピードで…!」

 

 

 彼女の視線の先には驚くべき速さで、次々とロストしていくナイトメアのシグナル。

 

 

「止まれ! 全軍停止だ!」

 

 

 扇の言葉と共に、蓬莱島に向かって進行していた斑鳩がその動きを止める。

 

 

(…おかしい。敵軍と遭遇するにしても、あと一時間は必要だった筈……。)

 

 

 今の大宦官達に、混乱する軍をただちに整え、追撃する力は無い。

 それがゼロの彼らに対する評価だった。

 シュナイゼルなら可能であろうが、彼の性格上、中華連邦領土内で派手な行動を起こす筈も無い。……モルドレッドの追撃は予想外だったが、その証拠にすぐに撤退していった。

 ならば――。

 

 

(読んだやつがいる…。こちらの動きを。)

 

 

 ゼロはこの時、中華連邦の評価を改めると共に、過去の自身の驕りに憤りを覚えた。

 

 

「あれは…、ナイトメア?」

 

「ズームだ、早く!」

 

 

 日向と同時期に入団したオペレーター「双葉」が困惑の声を上げ、続いて幹部の南が指示を飛ばす。

 

 この場にいる全員の意識が中央のモニターへと向いた。

 ズームされたモニターには立ち込める黒煙とその奥に見えるぼやけた人型の影。

 

 

「ん…? え……。」

 

 

 次第に煙が晴れ、その陰の主が姿を現す。

 無窮よりも濃い青色の装甲。道化師の様な顔立ち。そして、その背中にある飛翔滑走翼。

 

 皆が同じように困惑の色を浮かべた。ただ一人、ラクシャータを除いて。

 

 

『あれは……。何故こちらと同じ、飛翔滑走翼を装備している……!?』

 

 

 ゼロの疑問は最もだった。

 目の前の敵対するkMFはブリタニアに規格とは僅かに異なる。どちらかと言うと、黒の騎士団のが使っているKMF寄りの―――。

 

 

「千葉隊所属のKMF『暁』三機。対象に攻撃を開始!」

 

 

 この指令室の中で比較的早く意識を現実に戻したオペレーターの双葉が声を上げる。

 彼女の言う通り、三機の暁が新型を囲む様に展開していた。

 しかし。

 

 

『この神虎を甘く見たな!』

 

 

 一機は何も出来ずスラッシュハーケンで潰され、残りの二機は弾幕を張るも全て避けられ刀で切断される。

 

 

『よくも!』

 

 

 部下を一気に三人も失った事により、激昂した千葉が回転刃刀を構えて、正面から仕掛ける。

 

 

『道理無き者がほざくな!』

 

 

 しかしその攻撃も正面から叩き伏せられ、あっという間に撃墜されてしまう。

 

 

『聞こえているか、ゼロ。』

 

 

 その新型に乗るパイロット、星刻は先程の戦闘で消費した様子も感じさせない程の落ち着いた様子で呼びかけた。

 

 

『その声…、まさか星刻か!?』

 

『ゼロ、ここは通さん!』

 

 

 

 

 情けない。

 無力な自分に嫌気が指した。

 

 先程、星刻目掛けて斑鳩を飛び出し、目下交戦中の友達、カレンを見ながら自身の唇を噛みしめた。

 

 

「カレン…!」

 

 

 病人は大人しくしていなさい。

 困った笑みを浮かべながらそう呟き、自身の額を小突いたカレン。

 エナジーの補給前だというのにも関わらず、皆を守るために出撃したカレン。

 

 

「私も出撃する!」

 

 

 居ても立っても居られない、という様子でアルカは身を翻して指令室から出ようとする。

 

 

「いけません! 無窮は今、ユニットを外したばかりで…!」

 

「無窮が無理でも、他があるでしょう! 動かせる暁は!?」

 

「止めておいた方が良いわよぉ。あれには勝てない。」

 

 

 ラクシャータの声が退出しようとするアルカの動きを制止する。

 

 

『知っているのか?』

 

「あれはうちのチームが作ったものだからねぇ。」

 

「ラクシャータの?」

 

 

 全員が彼女の声に耳を傾けながら、モニターに映るKMF「神虎」に注目する。

 

 

「紅蓮と同時期に開発したんだけど、高いスペックを追求し過ぎてねぇ。扱えるパイロットが居なかった孤高のKMF。それが神虎。ある意味無窮の兄弟機、とも言えるわねぇ。」

 

『無窮の?』

 

「無窮は紅蓮と神虎のデータを元に作った機体だから。」

 

「っ! …ああ、クソ、そういう事か。」

 

 

 総領事館に匿われていた時、黒の騎士団を強襲した星刻との会話を思い出す。

 

 

 「戦闘データだけじゃ、満足出来ませんでした?」

 

 「いえ、非常に役に立っています。」

 

 

 ラクシャータに聞けば今まで神虎に乗ったテストパイロットは漏れなく搭乗中に死亡し、碌にデータが取れなかったという。参照するデータが無ければ満足に調整も出来ない。それ故、今まで無調整のまま放置されていた、と。

 しかし、その機体がここに来て出てきたという事は。

 

 

(紅蓮と無窮のデータを使って調整した、ってことか…!)

 

 

 あの時の黒の騎士団の立場は圧倒的に劣勢であり、中華連邦を味方に付けるのに必死だった。協力してくれる以上、何か考えがあるとは思っていたが、まさかこんな形で返って来るとは。

 

 

「暁で行っても戦力の浪費。それにアルカちゃんの体格的に無窮以外、満足に乗りこなせないでしょう?」

 

「そうだけど……!」

 

 

 悔しそうに顔を歪めながら、再びモニターに視線を移す。

 

 

『喰らいなぁ!』

 

 

 紅蓮の右腕から、輻射波動を収束させた光線が放たれる。

 ブリタニアの次世代量産機、ヴィンセントを一撃で破壊出来るほどの威力を持つ攻撃。それを神虎は真正面から迎え撃った。神虎の胸部から放たれる異常な熱量を持ったビームで。

 二つの攻撃は二機の中央で激突し、お互いを打ち消した。その余波で凄まじい土煙と地響きが起こり、斑鳩全体が振動に包まれる。

 

 

「天愕覇王荷電粒子重砲…、あれも調整済みかぁ……。やってくれたわね。」

 

 

 ラクシャータは驚き半分、悔しさ半分といった様子で呟く。

 

 

『何故、その神虎が敵の手に渡っている!?』

 

 

 ゼロは苛立ちを隠そうともせず、机を叩きながら声を荒げた。

 

 

「インドも一枚岩じゃない、という事でしょう。」

 

「弱点は無いのか!?」

 

 

 ディートハルト、扇が順に口を開く。

 

 

「他のシリーズとは全く別の概念だからねぇ。輻射機構は無いんだけど、後はパイロットが居なかったってこと位。」

 

「そんな…。でも今、乗りこなしている奴がいるじゃないか!」

 

「……ねぇ。」

 

 

 結局、自分達は見守るしか無い。

 そんな残酷な現実に、アルカは顔を険しくする。

 

 

『捕らえたぞ、勝敗は決した!』

 

 

 神虎から放たれたスラッシュハーケンに足を取られ、紅蓮は振り回される。

 

 

『そうね、貴方の負け。』

 

 

 神虎の武装の一つである、スラッシュハーケンを伝う電流。それが紅蓮に達しようとしたその時、紅蓮は左手でハーケンを掴み輻射障壁で電流を防ぐ。

 

 

『何!?』

 

『さぁ、これで貴方は逃げられなくなった! 直に叩き込むよ!』

 

 

 神虎を一撃で堕とせる様に。

 その一身で、カレンは右手に帯びる輻射波動の出力を最大まで上げる。

 ……残りのエナジーを気にする事無く。

 

 神虎に迫る紅蓮、輻射波動が神虎を捉えたその時。紅蓮の輻射波動機構から放たれていた膨大な熱は飛散し、糸の切れた人形の様に機体からは力が抜けた。

 

 

『見誤ったな!』

 

 

 その隙を見逃す程、星刻は甘い男では無い。

 目にも止まらぬ速さで、紅蓮をスラッシュハーケンで拘束する。

 

 

「そんな…、カレン!」

 

「コックピットブロックごと巻かれています! これでは脱出が……。」

 

『残存部隊は今すぐ神虎を挟撃! ハーケンを切断しろ!』

 

『『承知!』』

 

 

 ゼロの言葉に朝比奈と千葉が応える。

 二機が刀を構え、神虎に斬りかかろうとした、その時だった。

 

 

『うっ、何!?』

 

 

 千葉の乗る暁が展開する輻射障壁に、砲弾が着弾した。

 

 

「後方より中華連邦軍! 大部隊です!」

 

 

 神虎を援護するように、黒の騎士団へ飛来する弾幕。

 その弾幕の元には千にも及ぶ中華連邦軍の陸戦兵器『鋼髏』。そしてその中央にはピラミッドの様な形をした地上戦艦『竜胆』。

 朝比奈と千葉はそれらの射撃に足止めされ、紅蓮を連れて行く神虎を追えずにいた。

 

 

「無窮の補給は!?」

 

「もうすぐ、完了いたします……。」

 

「良いから、早く! このままだとカレンが!」

 

 

 悲壮に満ちたアルカの声が艦内に響く。

 しかし、この場の誰もが、声を上げているアルカ自身も。頭では理解していた。

 ――――もう間に合わないと。

 

 

『カレン! 無線はまだ生きているか!?』

 

『す、すみません…。失態を……!』

 

 

 普段の彼の様子とは打って変わり、感情的にゼロは声を上げた。

 

 

『そんな事は良い!』

 

 

 ゼロの物言いに、ディートハルト達は当然の事、C.C.も驚きの色を浮かべる。

 

 

『諦めるな! 必ず助けてやる、下手に動くな!』

 

『……は、はい! 分かっています、諦めません! これ―――。』

 

 

 エナジーが完全に切れたのであろう。カレンの言葉は最後まで続く事無く、耳障りなノイズだけが残された。

 

 

「…、ごめん……。カレン…!」

 

 

 その大きな目に涙を浮かべながら、力が抜けた様にその場に座り込むアルカ。

 そんな彼女を慰める為か、横に居たC.C.は足を折り、座り込む彼女の背中を優しく摩る。

 

 

「今すぐ斑鳩を回頭しろ!」

 

 

 ただ一人を除いて、皆の考えている事は同じだった。

 

 カレンを助ける。

 

 その一心で扇は中華連邦の舞台に立ち向かう様に支持を出す。

 しかし、それに異を唱える男が居た。そう、他でも無いディートハルトだ。

 

 

「私は撤退を進言します。」

 

「何故です!? カレンを助けないと!」

 

 

 ディートハルトは黒の騎士団に所属しつつも、生粋のブリタニア人。ブリタニアに対する復讐心も無ければ、日本に対する思い入れも無い。彼が持つのはゼロに対する忠誠、興味。その考えはトップのゼロが無事であればそれで良く、非常に組織的だった。

 

 

「紅月カレンは一兵卒にしか過ぎません。」

 

「見捨てろと言うのか!?」

 

 

 当然、彼と反りの合わないメンバーは多い。

 

 

「南さん、これは選択なのです。中華連邦という国と1人の命。比べるまでも無い。ここは兵力を温存し、インド軍との合流に備えるべきです。

―――ゼロ、ご決断を。紅月隊長には、先程お掛けになった言葉で十分です。これ以上は、偏愛、贔屓と取られ、組織が――。」

 

「ディートハルト!」

 

 

 ディートハルトの言葉を遮り、怒りをあらわにしたアルカが彼に迫り、頬を叩く。

 

 

「……何です? まさか貴女までもがこの場で戦うという妄言を仰るつもりですか? いくら彼女が友人と言えど、ここは現実を見るべきでは? ここは友情を育む学校では無いんですよ? 」

 

「お前は――!! お前はゼロがどんな気持ちでカレンに声を掛けたか分かっているの!?」

 

「ええ、分かっていますとも。彼女を安心させる為の情けでしょう? ゼロは分かっている筈です。彼女はもう切り捨てるべきだと。」

 

「……ディートハルト…、それ以上口を―――。」

 

 

 怒りで腸が煮えくり返りそうだった。

 この男の物言いに。ブリタニア人らしい思考に。―――過去、自分が似たような考えをしていた事に。

 彼の言葉をこれ以上聞きたくなかった。彼に、兄の気持ちを踏みにじって欲しく無かった。

 怒りの向くまま、彼の目を見つめ、ギアスを掛けようと私は――――。

 

 

『決着を付ける! 全軍、反転せよ!』

 

 

 アルカの放つ雰囲気が重苦しいものに変わりかけたその時、ゼロはその場の空気を変える様に声を上げた。

 

 

「何故です…!? 組織の為にも!」

 

『インド軍が裏切っている可能性もある。』

 

「っ! それは……。」

 

 

 神虎を無断で中華連邦に横流しをしたという事実がある以上、完全に信頼することは出来ない。ゼロの言う事は最もであり、ディートハルトは押し黙った。

 

 

『千葉と朝比奈に鶴翼の陣を敷かせろ。アルカと藤堂は補給が済み次第出撃! 星刻に教えてやる、戦略と戦術の違いを…!』

 

 

 ゼロの言葉を聞いたアルカは、ディートハルトから離れ、指令室の出口へと向かう。

 

 

「……ごめん、取り乱した。」

 

『いや、良い。寧ろよく言ってくれた。君が言わなきゃ、皆不満を貯めたままであっただろうからな。』

 

 

 すれ違いざまに短く言葉を交わす。

 そしてゼロ、いやルルーシュはアルカにしか聞こえない程の小さな声で

 

 「ありがとう」と呟いた。

 

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