全て目を通して、嬉しくてニヤニヤしています
出来るだけ、返信しようとしているのですが、流石に今後の展開に関わる様な感想はスルーしています…(私が何て返せばいいか思いつかない為。)
無視してる訳ではないYO!
注)今回、がっつりオリキャラが出ます。
不思議な空間だった。
雲一つ無い青空の下に並ぶ無数の本棚。
棚の合間に浮かんでいる、何も入っていない額縁。
時間、という概念が感じられなかった。
この空間は何処までも異質で、何処までも非現実的だった。
「ここは……? 私は確か――――。」
「あれ、あれあれあれあれ。思ったより反応が薄いな。」
呆然と眺めるアルカの耳に、1人の少女の声が届く。
「……貴女は?」
視線を向けると和服に身を包んだ、肩口で切り揃えられた、何処か見覚えのある黒髪の少女。
その容姿は少し幼さが残るものの、アルカよりは歳上であり、10代半ばから後半だと推測出来た。
「おっ、意外にも警戒しないね。頭が働いていないか、本能的に害を為す者じゃないと判断したか…。うん、まぁ僕にとっては都合が良い。話がしやすい娘は好きだよ。」
「……あの…。」
「ああ、ごめんね。人と話すの何て何世紀ぶりだからさ、嬉しくてね。」
コホン、と黒髪の少女は咳ばらいをし、改めてアルカの瞳を見つめる。
「僕の名前は、■■■。■■とも、お姉さんとも、隙に呼ぶと言いいさ。」
「……えっと、何て?」
「え、君って耳が遠かったりするかな? ■■だよ、■■!」
別に耳が遠い訳でも、彼女の声が小さい訳でも無い。
単純に聞き取れないのだ。
その部分だけノイズが掛かった様に。
「ん、待てよ。そうか、そういう事か。」
一人で疑問を浮かべたと思えば、勝手に納得して考え込む。
忙しい人だな、とアルカは呑気に考えていた。
「伝わらないから仕方無いとは言え、名称が無いのは大変だな。
ーーーーうん、そうだな。O.O.とでも呼ぶが良いさ。」
「おーつー……?」
「君達に合わせて名前を作ったんだけど、呼びにくいかな? 我ながら良く出来た名前だと思ったが……。」
「呼びにくい何て事は無いけど…」
目を覚ましたら非現実的な空間に、謎の少女。
アルカが戸惑うのも無理は無い。
そうとも知らずに遠慮無く話を進めていく彼女は相当空気が読めないか、或いは。
「えっとそれでO.O.?」
このままでは埒が明かないと、アルカは思い切ってO.O.を名乗る少女に呼び掛ける。
「何かな?」
その呼び掛けに、眩しいくらいの笑顔で応じるO.O.。
彼女のその端正な容姿も相まって、アルカは一瞬だけ物怖じをしてしまう。
「貴女はその…、神根島に所縁があったり…する? その、変に思わないで欲しいんだけど、貴女が祭壇で踊っているのを…。」
O.O.の姿を見た時、真っ先に神根島で見た光景を思い出した。
遺跡の扉の前に立った瞬間に、頭に流れ込んできたあの光景を。
あの時の映像の少女の、目の前の彼女は非常に容姿が似ていた。
「ああ、イエスだ。君が思い浮かべている人物と僕は同一人物さ。」
アルカの質問が予想通りだったのか、彼女は驚くほどあっさりと、肯定する。
「そう、やっぱり…。
それで…、それを踏まえた上で聞くけど、……貴女は一体、何者?」
「良く聞いてくれた!」
仰々しく、芝居染みた手振りで。
「僕こそは、日本に伝わる名家にして、その当主。物語にもなっている超有名な巫女様、さ!」
アルカの質問を待っていました、とでも言わん雰囲気で、彼女は胸を張って雄弁に語る。
「………巫女…。」
「あれ、思ったより反応薄いね。」
「えっと、何ていうか…。実感湧かなくて…。」
彼女の言う言葉が誰を指しているのかは分かる。
物語にもなっている巫女と言ったら、天子と神楽耶が言っていた人物と同一人物と見なしていいだろう。
ただ、その物語になってまで伝わっている人が、こんな剽軽な性格だとは想像していなかったから。
「まぁ、無理も無いか。君はブリタニアの出身。日本には疎くて当然か。」
「あー…、すみません。」
「いいや、謝る必要は無いよ。第一、巫女という表現は重要では無い。君の分かる言葉に置き換えてくれて構わないさ。」
「私の分かる言葉っていうのは?」
「何でも良いさ。巫女でも、シャーマンでも、聖女でも、預言者、見者、魔術師、皇帝、女王、エトセトラエトセトラ……。
それに代わる言葉は沢山あるさ。それこそ、魔女でも、ね。」
アルカの中に浮かんでいた疑問が、段々と確信へと変わっていく。
「それじゃあ…、貴女は……。」
O.O.はニコリと笑みを浮かべ、アルカの手を取る。
冷たい手だった。
人の温かみは無く、陶器の様な冷たい手。
「さぁ、アルカちゃん。」
記憶の回廊巡りと洒落込もうじゃないか。
自らをO.O.と名乗る少女は笑みを浮かべてそう呟いた。
▼
嚮団の本拠地内部。
研究室へと続く長い長い廊下を、V.V.と青年は歩く。
「ご苦労だったね。どうだった? 久しぶりの彼女との再会は。」
「別にどうってことねぇよ。」
アルカをこの場に連れてきた金髪の青年は、欠伸をしながらぶっきらぼうに呟く。
「そうかな? 君は彼女と仲良かったんじゃないのかい?」
「……ガキの頃の話だろ。それにあいつは俺らの事なんて憶えちゃいない。
それより聞いても良いか、嚮主様。あいつは今―――。」
「ずっと眠っているよ。君が彼女を確保した時から、ずっとね。」
「……そうかい。」
アルカに興味が有るのか無いのか。
彼の言動はチグハグだった。
「眠る、という行為は彼女にとって、とても大事な事なんだよ。僕が君に薬で眠らせる様に指示したのも彼女の為さ。」
「……別に聞いてねぇ。」
「そうかな。君の顔に気になるって書いてあったけど。」
「……っ。めんどくせぇ。」
悪態を付く青年を冷笑しながら、V.V.は研究室と廊下を遮る扉に手を掛けて、青年はその足を止める。
「じゃあ、また任務があったら頼むから、君は戻って良いよ。」
「……へいへい。」
V.V.は青年をその場に残し、研究室へと入っていった。
「どうかな、彼女の様子は。」
白で統一された無機質な部屋。
部屋の中央にある簡素なベッドの上には、服を着ておらず、目閉じたままの少女、アルカ。
そして彼女を囲む様に立ち並んだコンピューターと研究員達。
「前回計測した時より、R因子、C因子共に上昇しています。特にC因子の伸び方には目を張るものがありますね。」
「そっか。順調そうでなにより。……うーん、でもまだ足りないな。そうだ、C因子の活性剤を投与してみようか。」
「宜しいので?」
「今の彼女なら大丈夫さ。」
モニターを眺めながら語る彼らの会話には、人間的な温かみなど持ち合わせていなかった。
嚮団の刺客がアルカを指して言った言葉が、ここでの彼女の立場を全て物語っていた。
V.V.はモニターから目を離し、アルカの元へと足を運ぶ。
身動ぎ一つもせず、規則正しい呼吸を繰り返す彼女の額に手を乗せて、V.V.は優しく呟く。
「おかえり、アルカ。」
優しい声音とは裏腹に、その表情は何処までも冷たいものだった。
▼
「さぁて、何から見ようか。君の出生から? それとも初めて言葉を発した時? はたまた君の初体験とか? ここには君の全てがある。好きなものを――!」
「待って、待って、待って。」
興奮気味に語るO.O.に、思わずアルカは待ったを掛ける。
「……何だい。ノリが悪いなぁ。」
話の腰を折られて不満、と言わんばかりの表情で、O.O.はアルカをじっと見つめる。
「まだ理解が追い付いていないの……。勝手に話を進めないで…。」
「案外、慎重なんだねぇ。そういう所はお兄さんそっくりだ。」
やれやれ、と肩を竦めて、彼女は近くの椅子に腰かける。
「……流石に、現実って訳では無さそうね。」
アルカはO.O.が腰掛けている椅子を見つめながら呟く。
さっきまで、彼女の傍には椅子等存在しなかった。
現れたのは本当に突然。O.O.が座る動作をしたと同時に、彼女の元に出現したのだ。
「半分正解、半分外れ、かな。
ああ、君の言う通り、確かにこの場所は現実世界には存在しない。だが、ここで見た事聞いた事、経った時間は紛れも無く現実だ。」
「……そう、それで。この場所は一体何? 貴女はさっき、君の全てがあるって言っていたけど。」
「言葉通りの意味さ。君が今まで経験してきた事、感じた事、その全てが保管されている。君だけの場所、君だけの世界。」
「……その私だけの世界にどうして貴女が居るの?」
「その内教えてあげるよ。」
「……そう、ですか。」
彼女から聞いた言葉をもう一度思い返し、アルカは整理する。
(彼女の言葉を信じるのなら、ここは言わば私にとっての記憶の保管庫…。コンピューターで言う所のクラウドサーバーみたいなもの、かな。
そして私は何故かそのサーバーにアクセスしてしまった、と。)
彼女が何故ここに居るか、は今は考えない。
アルカは経験則で知っているからだ。この手のタイプはどんなに聞いても教えてくれない、ということを。
「悩みは解消したかい?」
「…ここがどういう場所かは分かった。まぁ完全に理解は出来なくても、そう割り切る事にする。」
「うんうん、物分かりの良い娘は好きだよ。さてと、そろそろ―――。」
「最後に一つ良い?」
なんだい、と立ち上がったO.O.は、笑みを浮かべたままアルカを見つめる。
「貴女は
ニヤリと笑みを浮かべて、O.O.は再び雄弁に語る。
「君の成長の為に。」
彼女がそう言い終えた途端、何も入っていなかった筈の額縁に、ある風景が映る。
華やかな絨毯の上で、少女を抱きしめながら息絶えている女性。
アルカ自身にも記憶がある。母であるマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアが死んだあの日の光景だ。
「本当は君のこれまでの軌跡を全て知りたかったんだけどね。生憎、そんな時間は無い。非常に残念だけど君自身が憶えている事は、飛ばさせてもらう。」
さっきまでのおちゃらけた雰囲気は身を潜め、O.O.は神妙な顔で呟く。
と思いきや。
「ああ。何、気にしなくて良い。私は何時でも君の記憶を覗けるから。また改めてゆっくり観させてもらうさ。彼女との濃密な絡みとか、特にね。」
「いや、別に気にして無いけど。……貴女って人を茶化さなきゃ気が済まないの?」
「僕は可愛い女の子の様々な表情が見たいだけさ。」
頭が痛くなってきた、とアルカは自身の頭を抑える。
そんな彼女を様子を横目で見つつも、O.O.は語り続ける。
「君はギアス嚮団に身を置いていた時の事を、憶えているかい?」
「……忘れる訳ないでしょ。」
その顔に影を落とし、恨み辛みが入り混じった言葉が、アルカから漏れる。
「そうかな。良く思い出してみなさい?」
「…………。」
言われた通り、アルカは考える。
嚮団に連れて行かれたあの日。人体実験、戦闘訓練という名の殺し合い。人を信じられなくなり、孤立していく日々。
アルカにとっての精神的外傷とも言える幼少期。
そんな過去を思い出し、そして――。
「君は嚮団で出会った人々の事、憶えているかな。ああ、C.C.とV.V.は除いて。」
「――? 憶えているに決まって――――。」
そこでアルカは気づいた。誰一人、顔も名前も、声すらも。何一つ記憶が無いことに。
「君は嚮団で体験した事やその胸に抱いた感情を、鮮明に憶えているかな。」
彼女の問い掛けに、アルカは応える事が出来なかった。
「…何で………?」
私に優しくし接してくれた人は何人も居た。それは憶えている。
しかし、その姿が鮮明に思い出せない。
「…どうして……?」
嚮団で過ごす日々が嫌で嫌で仕方無かった。逃げ出したくて仕方無かった。
しかし、何故そう思い、感じたのか。それが鮮明に思い出せない。
「漠然とは憶えている。しかし、鮮明には思い出せない。
可笑しくは無いかい? 嚮団での日々は幼い君にとって忘れる事が出来ない程鮮烈なモノだった筈だ。
自分の精神を守る為に記憶に蓋をする。それならまだ分かる。人間なら誰もが持つ自己防衛本能だ。
しかし、今の君のその状態は非常に中途半端だ。忘れたいのか、忘れたくないのか。チグハグなんだよ。」
O.O.は言う。
アルカは自身に振りかかった過去の出来事を、歴史書を捲る第三者の様に眺めていただけ、と。
「殺人事件の報道を聞いた時に、憤りや恐怖を感じたとしても、いちいち事細かに記憶はしないだろう。自分には関係の無い出来事なのだから。
……今の君が持つ嚮団への恨み何て、所詮はそんなものっていう話さ。」
「何を……。」
呆然とするアルカを畳みかける様に、O.O.は言葉を続ける。
「それが悪いと言うつもりは無い。寧ろ、君に良い結果をもたらしたよ。
あんな幼い子どもが、あの仕打ちを受ければどうなると思う?
恨むだろうね。人を、世界を、ギアスの事も。そして
それを危惧した者が、君の記憶に蓋をした。君に嫌われない様に。恨まれない様に。決して手放さない様に。
一体誰だと思う?」
「……。」
「人の記憶や意識に干渉が可能で、君が好意を寄せている存在が居るだろう?」
「…C.C.………。」
O.O.は、より一層笑みを深くし、呆然とするアルカを抱き寄せる。
「ああ、良くその答えに辿り着いた。賢い娘は好きだよ。」
娘を褒める母親の様に、妹をなだめる姉の様に、彼女はアルカを抱きしめたまま、背中をさする。
「さて、予習も終えた事だし、そろそろ本題に入ろう。」
場面は切り替わる。
ヴィ家が崩壊したあの事件から、アルカが嚮団へと連れて来られたあの日に。
「彼女は君の記憶に蓋をした。
今こそ…そう、今こそ! その蓋を開ける時だ。
あの頃の君を! あの頃の感覚を! 是非、取り戻して欲しい!!」
記憶は巡る。
少女の意志とは関係無く。
思惑は交差する。
少女を中心に、そして複雑に。
はじめは主人公以外のオリキャラ出すつもり無かったんですが、後々の展開的に出した方が面白そうだったので出しました。
苦手な人、すまない。