コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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そろそろ後半戦突入。
そしてここからが本番。

お付き合いください!


TURN21 黄昏の中で

 夕日に照らされながら、2人の少女は向かい合う。

 

 

「……C.C.。」

 

「……アルカ。」

 

 

 お互いに存在を確かめる様に名前を呼び合い、アルカはC.C.の胸に向かって手を伸ばす。

 彼女がまだ人間だった頃に、刻まれた胸の傷の辺り。

 

 2人の影が重なると、彼女達を照らす光が強くなる。

 

 C.C.の額にギアスの模様が浮かび、赤く輝く。

 それに呼応する様に、アルカが羽織っている布の奥で、ギアスの模様が赤く輝く。

 

 ドクン、と鼓動が早くなった。

 胸の中心から、熱が込み上がっていく。

 

 

(嗚呼、そんな悲しそうな顔をしないで。)

 

 

 ようやく悲願が叶うというのに、C.C.の瞳は何処か悲しそうだった。

 

 

(すぐに私も一緒に行く。貴女はもう、1人じゃない。だから――、お願い。)

 

 

 そう願うアルカの顔も、C.C.と同じ様に愁いを帯びていた。

 

 

「…アルカ、楽しかったよ。」

 

「――私もだよ。」

 

 

 果てには互いの瞳から涙が零れ出た、その時。

 

 

『アルカ! C.C.!』

 

 

 この場に居ない筈の少年の声が響いた。

 

 

「っ!」

 

「開いたのかルルーシュ……、思考エレベーターを!」

 

 

 突然の兄の声にアルカは思わずC.C.から手を離し、ルルーシュの方へと意識を向ける。

 

 

「…なるほど。この空間そのものが思考に干渉するシステムか。」

 

 

 この空間が誰の手によって作られたモノかは知らないが、思考に干渉できるのなら、過去に死んだはずのO.O.が存在出来ていることも合点がいく。

 先程まで乗っていなかった筈の蜃気楼にこうして今乗っているという事は、そうしたいと考えた故なのだろう、とルルーシュは考えた。

 

 

「ルルーシュ…、黙ってそこで見ておれ。」

 

 

 シャルルが手を翳すと、何も無かった空間から、正八面体の物体が、蜃気楼を取り囲む。

 

 

「さぁ、アルカ。続けるがよい。」

 

 

 そう言いながらシャルルはその剛腕でアルカの細腕を掴み、C.C.の元へと寄せる。

 シャルルに掴まれたその腕が、震えながらもC.C.の元へと辿り着こうとした。

 

 

「止めるんだ! そいつらは、俺の―――、俺にとっての!」

 

 

 その時、ルルーシュは叫んだ。

 

 

「俺は知っているぞ! お前達の純粋な願いを! お互いの幸せを願う気持ちを!」

 

 

 死に急ぐ少女達を、引き留める為に。

 

 

「お前達の幸せが、ゴールが本当に死という結末なら――――、最後ぐらい笑ったらどうだ!?」

 

「……!」

 

 

 苦し気に細めていた合うアルカの瞳が見開かれる。

 

 

「そんな顔して死に急ぐな! 本当は嫌なんだろ!? 離れ離れになりたくないんだろ!

必ず俺がお前達が幸せに過ごせる世界を作ってやる…!

―――だから!!」

 

 

 ルルーシュの言葉を聞き終えた、その時。

 

 

「っ! 放して!!」

 

 

 掴まれている腕を力一杯振り上げ、シャルルの手を振り払う。

 

 

「何を―――?」

 

 

 突然のアルカの行動に、僅かに眉をしかめたシャルルの隙を突いて、C.C.も動く。

 彼女は神殿の床から、操作盤の様な物を起動させ、蜃気楼を囲う物体を操作する。

 

 

「これ以上、奪われて溜まるか……!」

 

 

 自由を取り戻した蜃気楼は浮上し、その砲門を神殿へと向ける。

 

 

 ハドロンショット。

 ハドロン砲を弾丸状にして射出する蜃気楼のメイン武装。

 

 

 その弾丸は皇帝の頭上の遺跡を破壊する。

 

 

「何たる愚かしさか!」

 

 

 今まで余裕の笑みばかりを浮かべていた皇帝が、声を荒げる。

 

 

「きゃっ!」

 

 

 遺跡の崩壊は、皇帝だけに飽き足らず、アルカとC.C.をも巻き込む。

 2人の足場は崩れ、重力に従って落ちていく彼女達。 

 

 

「C.C.…!」

 

 

 アルカは必死に手を伸ばし、C.C.の身体を抱きしめ、彼女の頭を胸元へと寄せる。

 いつ訪れるか分からない衝撃から、彼女を守る為に。

 

 その光景に僅かな笑みを浮かべつつも、ルルーシュは2人の元へと駆け付ける。

 

 

「手を―――!」

 

 

 コックピットから身を乗り出し、ルルーシュは手を伸ばす。

 自身にとって、守べき大切な存在の2人に。

 

 

「……!」

 

 

 C.C.を強く抱きしめながらも、アルカもルルーシュへと手を伸ばす。

 

 

「くっ、アルカ―――!」

 

 

 ルルーシュは必死の形相で妹への名前を呼び―――。

 

 

「……お兄、ちゃん。」

 

 

 それに応えるように、アルカは小さく呟く。

 ―――その時、確かに2人はお互いの手を感触を感じた。

 

 

 

 

 ギアス教団の中央部。

 神根島と同じ扉が、中央に聳え立つ祭壇の上に、三人は居た。

 

 

「おい、戻ってきたんだC.C.。しっかりしろ!」

 

「………。」

 

 

 意識の戻らないC.C.に呼び掛け続けるルルーシュと、そんな彼女を見つめながらも、項垂れているアルカ。

 

 

「うぅ……。」

 

「しー、つー…。」

 

 

 C.C.の口から僅かに言葉が漏れ、彼女の瞳が開かれる。

 

 

「ロロには連絡を入れた。すぐにでも三人でここから――。」

 

「…あの、どなたでしょうか……。」

 

 

 意識を取り戻した彼女から出た言葉は、怯える少女のモノだった。

 普段のルルーシュに対する高飛車な態度は感じられず、それこそ、年相応な少女の様な。

 

 

「C.C.……?」

 

 

 先程まで項垂れていたアルカが顔を上げ、縋る様にC.C.の元に近づき、彼女の瞳を見つめる。

 

 

「あの、新しいご主人様でしょうか…?」

 

「……何の冗談? 私の事、憶えて、わからないの………?」

 

 

 迫るアルカの瞳に恐怖を憶えたのか、C.C.はヒっと小さな悲鳴を上げて縮こまる。

 

 

「ごめんなさいごめんなさい! 私に、で、出来るのは料理の下ごしらえと掃除、水汲みと羊の世話―――。」

 

 

 怯えながらも自身の出来る事を精一杯口にするC.C.。

 自分を売り込む様に、媚びる様に。

  

 

「―――――。」

 

 

 その光景にアルカとルルーシュは言葉を失い、ただただC.C.を見つめる事しか出来なかった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「……ん、ぅん………。」

 

「…お嬢様ぁ……、起きて下さいよぉ…。」

 

 

 2人の少女の声が、ベッドの中から漏れる。

 

 

「……まだ…、ねむ―――。」

 

「わ、私がご主人様に、怒られちゃいますぅ…。」

 

 

 黒の騎士団の拠点、蓬莱島のとある建物内の一室。

 幹部の中でも極限られた者のみが立ち入る事を許されるアルカの部屋で。

 2人の少女は文字通り絡み合っていた。

 

 

 事の発端は早朝の事。

 ルルーシュとアルカと共に召使い(自称)として暮らし始めたC.C.は、ルルーシュに言われてまだ寝ているであろうアルカを起こしに来た。

 彼が言うには、()()()()()()()()()()に会って欲しいのだという。

 

 嚮団の一件からアルカは、ゼロの私室よりも自室で過ごす事が殆どになった為、こういった情報共有もC.C.頼みとなってしまっていた。

 

 ルルーシュに頼まれて二つ返事で快諾したC.C.は、張り切って彼女の元へと向かった。

 寝起きの悪いアルカを起こす為に。

 しかし、記憶の無いC.C.にとって、アルカは予想以上の強敵であった事に間違いない。

 

 

 アルカの部屋に入ったC.C.は、真っ先に彼女の眠るベッドに向かった。

 布団に包まり、気持ちよさそうな表情で、枕に顔を埋めるアルカに、微笑ましそうな表情を浮かべるも、心を鬼にしてC.C.はアルカの身体をゆすった。

 「お嬢様、起きて下さい」と。

 

 C.C.による優しい振動に僅かに目を開けたアルカは、C.C.の方へ視線を向けた。

 「んん、っと吐息混じりの寝起き声を口にしながら。

 

 ここで無事に起きてくれる、とC.C.は思っていた。

 しかし、現実はそう甘くない。

 

 布団の中から伸びてきた白い細腕は、C.C.の腕を掴み、ベッドへと引きずり込む。

 「え?」と困惑の声を上げた頃には、彼女はベッドの中に居た。

 

 理解が追い付いていないC.C.を叩みかけるように、アルカはC.C.の脚に、自身の脚を絡ませる。そして、仰向けに眠る彼女の首に両腕を伸ばし、その細い首に顔を摺り寄せた。

 この行動にC.C.は混乱した、大いに混乱した。

 

 なぜならこの童女、服を殆ど着ていなかったからだ。

 着ているのは腰丈までのキャミソールたった一枚のみ。その下に下着はしておらず、下半身に関しては何も着ていない。

 

 絡み取られた脚から直に伝わってくる年相応の高い体温。密着する腕から伝わる心臓の鼓動。時折口から漏れ出る吐息に、首筋に当たる穢れの無い柔らかな髪。

 そして、何故かC.C.の情欲を刺激する媚薬の様な甘い匂い。

 

 C.C.の行動を止めるには十分過ぎる程の要素。

 次第に彼女のアルカへ呼びかける声は弱くなっていき、そして冒頭に至る。

 

 

「だ、誰か助けてぇ……。」

 

 

 情けない声を上げるC.C.とは裏腹に、気持ち良さそうに眠りこけるアルカ。

 そんな少女が完全に目を覚ましたのは、今から一時間後の事だった。

 

 

 

 

 ゼロの私室へと繋がる廊下を、2人の少女は歩く。

 

 

「な、何であんな恰好で寝てるんですかぁ…。」

 

 

 そう呟くのは少し疲れた表情を浮かべたC.C.。

 

 

「それは、記憶を失う前の貴女が――。」

 

 

 そんな彼女に抗議する様に、アルカは口を開く。

 

 元々アルカとて、ちゃんと服を着て寝ていた人種だ。

 仮にも皇族として昔は生活していたのだから当然と言える。

 

 しかし、その常識は彼女にとって壊された。

 そう、他でも無いC.C.によって。

 

 始まりは何だったか、とアルカは思い返す。

 

 そう、始まりは心臓まで凍ってしまいそうな極寒の夜の事。

 手元のモノだけでは寒さを凌げそうに無かった彼女達は、お互いの体温で身体を温めた。

 

 その日を境に、人の体温の心地よさと、C.C.に守られている様な安心感を知ったアルカは、度々C.C.に求める様になり、C.C.はC.C.で新たな趣味嗜好に芽生えた。

 

 後は語らなくとも想像出来るだろう。

 

 兎に角、色々な心地良さを学んだ二人は、温度差はある物の、段々とそれが癖になっていき―――。

 

 

「―それで私は薄着で寝るようになったの。だって、C.C.って着こんでると無理矢理脱がして―――。」

 

「えぇ! 絶対そんなのお嬢様の作り話です!! わ、私がそんな、お嬢様みたいな幼い子どもに手を出す訳!!」

 

「……はぁ。もう、分かった分かった。そういう事にしといてあげますよーっだ。」

 

 

 一瞬、隣に居るC.C.も見逃す程の一瞬だけ、表情を曇らせたアルカだが、極めて何時も通りに。

 いや、何時もよりも明るく振る舞う。

 

 後ろであーだこーだと抗議するC.C.を無視して、ゼロ=ルルーシュの私室への扉に手を掛け、部屋に入る。

 

 

「やっと起きたか。」

 

「おはようございます、アルカ様。」

 

 

 部屋に入ったアルカを迎えたのは、ゼロの衣装で仮面のみを外したルルーシュと、礼儀正しく深々と頭を下げるジェレミア。

 

 

「是非、私自身がアルカ様の元へと向かい、朝の支度のお手伝いをしたかったのですが、ルルーシュ様と咲世子に止められまして――。」

 

 

 自身が用意したであろう紅茶を注ぎ、ティーカップをアルカの元へと運びながらジェレミアは少し残念そうに語る。

 

 

「ああ、顔に枕を投げられるぞ、と言って止めた。」

 

「あれは兄上のタイミングが悪いんでしょ。…まぁ、来なくて正解だったと思うけど。」

 

 

 紅茶を一口飲み、美味しいと小さく呟くと、アルカは雑談を程々に、本題を切り出した。

 

 

「それで、捕虜というのは?」

 

「嚮団での一件の時に確保した奴らだ。1人はジェレミアが。もう1人は…、自分から?」

 

 

 ここ数日、アルカはゼロの私室に居る時間が限りなく減っただけでは無く、黒の騎士団の活動にすら顔を出していなかった。

 団員達の間では、誘拐された事に対するトラウマから克服できていないと噂されているらしい。

 最も事実をを知るルルーシュは参加を強要することは無かった。

 

 そんな彼女が再び顔を出し始めたのは、記憶を失ったC.C.がここの環境に慣れ始めた頃のこと。

 彼女からの連絡が来たときは、アルカもアルカなりに前に進もうとしているのだろう、とルルーシュは嬉しく思った。

 

 

 閑話休題

 

 

「自分から?」

 

 

 ルルーシュの不思議なもの言いに、疑問を浮かべる。

 

 

「ああ…、木下が言うには自ら捕虜にしてくれと言ってきたらしい。にわかには信じがたいが…。」

 

 

 木下、というのは零番隊の副隊長を務める男の事。

 平凡でありながらも、皆に分け隔てなく優しく、誠実な彼が言うのなら真実なのだろうが―――。

 

 

「ギアスは?」

 

「1人目は効かない。」

 

「―――ああ、コーネリアか。」

 

 

 ルルーシュの命令が絶対であるジェレミアがそれを曲げてまで捕虜として確保する程の存在。

 それに加えてルルーシュのギアスが効かない存在。

 自ずと候補は絞り込める。

 

 

「それで、もう1人は?」

 

 

 アルカの言葉に、ルルーシュは理解が追い付かない生き物を前にしたような表情を浮かべて、僅かに視線を逸らす。

 その表情は、時折枢木スザクに向けていた表情と似ている、とアルカは考えた。

 

 

「掛けようとしたんだがー、その。掛けようとすると直前で目を閉じるんだよ。そして一言言うんだ、アルカを呼んで来いと。それの繰り返しさ。」

 

「……、無理矢理は?」

 

「出来たらやってるさ…。」

 

「ですよね。」

 

 

 誰か大体分かったかも、とため息を吐きながらアルカは腰をあげる。

 

 

「私一人で会うよ。その方が良い。」

 

「良いのか?」

 

 

 まぁ…、と髪の毛をクルクルと遊びながら、少し恥ずかしそうに、彼女は呟いた。

 

 

「母親の様なものだし――。」

 

 

 




今のアルカとルルーシュとのイメージ。

喧嘩して仲直りしたばかりの反抗期の子ども(アルカ)と母親(ルルーシュ)。
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