励みになります!
『黒の騎士団、斑鳩艦隊に告げる。ゲフィオンディスターバーによって、トウキョウ租界のライフライン、通信網、第五世代以前のナイトメアは機能停止した。
敵の戦力は半減している! 各主要施設を叩き、トウキョウ租界の戦闘継続能力を奪い取れ!』
ゼロの言葉と共に、黒の騎士団の航空部隊が進軍する。
先導するのは司令官であるゼロの乗る『蜃気楼』。
それに追従するのは、『無窮蒼天式』と新たに加わった帝国最新の量産機『ヴィンセント』。
(ギアスを知らない団員達の目があるのにも関わらずギルフォードの投入か。余裕無いな、兄上。)
なりふり構わず、と言った様子の兄を心配しているアルカの元に、ふと通信が入る。
送信元は零番隊副隊長の木下。
「どうしました?」
『わ、私達はどのようにして……。』
本人の性格からか、オドオドした様子で木下は指示を仰ぐ。
カレンが帝国に捕らえられてからというもの、零番隊の実質的な隊長はアルカになっていた。
彼女がカレン同様に戦場の最前線の立ちやすいから、というのもあるが、実際はルルーシュの過保護の表れだ。
危なっかしい妹のお目付け役、もしくはいざという時の盾か。
それをアルカ自身、ひしひしと感じているし、兄の過保護さも身を持って知ってはいるが。
「私だって守りたいの。」
『……えーっと…? 今なんて……。』
「いや、何でもない。」
項垂れていた顔を上げ、アルカは顔を引き締める。
「私の守りは不要。零番隊は租界を囲むゲフィオンディスターバーの死守に徹してください。ゼロの身は私が守ります。」
『し、しかし…。』
「自分の身は自分で守ります。ほら、分かったなら早く行って。……敵が来ますよ、っと!!」
目の前に迫るのは黒い閃光。
ゼロの乗る蜃気楼を正確に射抜く様に放たれた光線は、無窮の輻射障壁に阻まれて霧散する。
「シュタルクハドロンに比べたらこんなの…!」
『おい、アルカ。ガレス程度のハドロン砲なら絶対守護領域を破る事は出来ない。こんな危ない真似は……。』
「はいはい、分かりました。お兄様。」
ヴィンセント同様、帝国最新の量産機であるガレス。
ブラックリベリオン時にゼロが乗っていたガウェインを元に製造された砲撃戦用KMF。
「でも振りかかった火の粉を振り払うのが私の役目でしょ!」
『アルカ!』
そんなガレスの部隊に向かって、制止を振り切って無窮は鋭い軌道を描きながら先陣を切る。
放たれた閃光を避け、一機、また一機とその数を減らしていく。
「全く、あいつは……。」
今もなお、ブリタニア軍を撃墜し続ける無窮を目で追いながら、ルルーシュは頭を抱える。
どうもらしくない、とルルーシュは思った。
昔から俺達を守る事に固執していたが、あそこまで個人的な行動はしなかった。
「…余裕が無いのはあいつも同じ、か。」
過去の記憶を無理矢理掘り起こされ、自身の真実を知り、心の拠り所を失った幼い妹。
余裕を持て、というのが無理な話か。
「――全軍! 無窮に続き、戦線を上げろ! シュナイゼルが率いる主力部隊が到着する前に叩くぞ!!」
状況は切迫している。
今、重要なのは一早く勝利をこの手に収める事。
なりふり構うものか……!
▼
今回の戦争における勝利条件は、総督である姉上を保護する事。
私達がこうしてブリタニア軍と交戦するその裏で、咲世子さんとロロが姉上の確保の為に政庁に潜入している。加えてカレンの救出の為にも。
だから私達はこうして戦線を維持し続ければ、いずれ……。
「―――来たか。」
トウキョウ租界の中心に聳え立つ政庁から一機。従来の戦闘機を遥かに超える速度で、アルカ達の元へ直進する一筋の光。
『………スザク…!』
ふと、ルルーシュは声を漏らした。その身一つでは抱えきれない程の憎悪と、ほんの少しの憐憫を含んだ声を。
(ルルーシュ……、それにアルカも…!)
操縦桿を持つ手が僅かに震える。何故震えているかはスザク本人も分からない。
戦闘に対する恐怖を憶えたのか。その手に持つには大きすぎる兵器を持っているからか。
―――友達をこの手で殺めなければならない事を認識したからか。
僅かに芽生えた迷いを振り切る様に、スザクは眉間に皺を寄せ、目の前に佇む二機を睨み付ける。
友達が乗っているであろう二機を。
「聞こえるか、ゼロ。戦闘を停止しろ。こちらは重戦術級の弾頭を搭載している!使用されれば、4000万リータ以上の被害をもたらす…。その前に……!」
スザクは必死に声を挙げ続ける。ゼロ=ルルーシュの良心に。自身から紡がれる言葉を、彼がどんな表情で聞いているか知らぬまま。
「……だってさ、どうする? 撤退?」
「…………」
妹の問い掛けに答える事無く、ルルーシュはただただ睨む。まるで皇帝と対峙した時の様に。
そして次第にゆっくりと口を開く。
激しい憎悪を含んだ声で。
「お前の…、……っ! お前の言う事など信じられるか! アルカ、ジェレミア!!」
「っ!!!」
ゼロ=ルルーシュの言葉と同時に、二つの凶刃がランスロットを襲う。
一つは無窮の武装の一つである太刀。
もう一つは―――。
「ジークフリート……!? ジェレミア卿!!」
突如、ビルの壁を貫いて現れた巨大なスラッシュハーケンとその持ち主であろう規格外のナイトメア。
嚮団から回収したジークフリートをラクシャータの手によって改良されたワンオフ機。
その名を、サザーランド・ジーク。
「スザクの突破力は障害となる。今、この場で―――。」
ランスロットと交戦する2人は目を細める。
次に紡がれるであろう言葉を待って。未来の為に手を汚す覚悟を、その目に宿して。
「殺せ!!!!」
「「イエス、ユアマジェスティ!」」
▼
カレンと同等の実力を持つアルカ。
旧純血派のリーダーであり、帝国軍でも有数の実力者であったジェレミア卿。
そして、帝国の先槍と言われるギルフォード卿。
「く……っ!!」
正直に言って、やりにくい。
「ジェレミア卿! 何故貴方が!!」
「枢木スザク……。君には借りがある。情もある、引け目もある…。
―――しかしこの場は、忠義が勝る!!!」
ジークフリートから放たれるミサイルの嵐とスラッシュハーケンを掻い潜る。
弾頭の爆発で発生した黒煙によって生まれた一瞬の攻撃の隙。
煙幕に紛れながらファクトスフィアで捕らえた巨大な熱源に向かって銃口を―――。
「っ!」
向ける事は叶わなかった。
黒煙で目視が困難な筈のランスロットに向かって放たれた正確無比な銃撃。
咄嗟にルミナスブレイズを展開し、その凶弾を辛うじて弾き飛ばす。
「この状況下での精密な射撃……、アルカ!!」
真っ直ぐこちらに向かってくる凶刃をMVSで受け止め、両者の間に一瞬の膠着が生まれる。
「また君達は…、いや君は! そうやってまた手を汚すのか!!
犠牲の先に得た未来に、一体何の価値があると言うんだ!?」
「何を今更! お前だって同じことをしている癖に!
それに、これはお前が望んだ戦争だろ!」
少女の慟哭が戦場に響く。
「お、俺はただ――、この戦いを終わらせたくて!!」
「じゃあ大人しく殺されれば!? ジェレミア!」
「イエス、ユアハイネス!!」
剣の交わりを解き、無窮はその場から一歩後退する。そしてそこに代わる様に現れたサザーランド・ジーク。
「捕らえたぞ、枢木スザク!!」
サザーランド・ジークに搭載された電磁ユニットを展開した近距離戦用の雷撃。
その攻撃は確実にランスロットを捕らえ、その動きを鈍らせる。
「枢木……。貴殿には悪いが、お互いに主君を持つ身……、許せ。」
「情けは無用…ってね。」
ヴィンセントと無窮がそれぞれ武装を展開し、少しずつランスロットに迫る。
その光景を静観しながら、ルルーシュは顔を歪ませ、口角を僅かに上げた。
「良し、作戦通りここでスザクを始末すれば、ナナリーを取り返す障害は―――、なっ!!」
ルルーシュが勝利を確信したその時、突如現れた新手がそれを阻む。
「ラウンズの戦場に、敗北は無い!!」
絶対守護領域によって阻まれたスラッシュハーケンを戻しながら、フォートレスモードから変形させる。
頭部から伸びた二本の角が特徴的なトリコロールの可変型ナイトメア。
「ジノ・ヴァインベルク!!」
「おっと、そう女性から熱烈にアピールされるとは嬉しいねぇ。だけど!!」
素早く反応した無窮の凶刃を受け流し、トリスタンは再び変形してランスロットを捕らえるサザーランド・ジークの背後へと回る。
「今回の君の相手は私では無い。なぁ? ――
▼
神聖ブリタニア帝国第二皇子及び宰相、シュナイゼル・エル・ブリタニアは此度のトウキョウ決戦を予め予測していた。
それこそ、ゼロによる合衆国決議が放送されるその前から。
皇帝であるシャルル・ジ・ブリタニアは表舞台には立っているものの、戦争や政治に直接関与すること無く、その全権をほぼほぼシュナイゼルに託している。
そしてそれは、ナイトオブラウンズも例外では無い。
シュナイゼルの声によって集められた日本にナイトオブラウンズ達。
その内の一人にナイトオブトゥエルブ「モニカ・クルシェフスキー」が居た。
本来、皇帝の護衛の任の付いている彼女は前線に出る事は少なく、他のラウンズと比べると戦果も乏しいが、本人の強い希望
「一本角は私が抑えます。」
開戦前、普段は温厚な様子を見せる彼女が珍しく、顔を強張らせながら一言、そう言った。
一度も邂逅した事は無く、パイロットの顔も知らない。因縁と言うべき因縁も無い。
しかし、それでも。
(先輩の敵討ち位は許されるよね。)
尊敬すべき先輩であるノネット・エニアグラムがラウンズを退いた切っ掛けになった相手。
歴戦の騎士であった彼女を二度も下した相手。
ラウンズの中でも取り分け仲間意識が強い彼女にとって、戦う理由はそれだけで十分だった。
・
・
・
「邪魔をするな!!!」
トリスタンに続く様に現れた白い甲冑に身を包んだナイトメアが、自身の両腕に固定されたエッジを無窮の太刀と交差させる。
機体の出力が高いのか、無窮は押される形でじわじわとゼロから離される。
「邪魔と思ってくれたなら結構! 私の役目は貴女の邪魔をすることだから、ね!」
突如、白い甲冑のナイトメアは上半身を180度回転させ、遠心力に任せて太刀を弾き飛ばす。
「っ!」
今までのナイトメアの常識とはかけ離れた挙動に、アルカは目を見開いたが、それも一瞬。
迫る二撃目を自身のバインダーで受け止め、様子見の為、距離を取る。
(エッジの威力はそれほど高くない…、警戒すべきはさっきみたいな変則的な挙動、か。)
僅かに傷が出来たバインダーを眺めながら、血が昇った頭を冷まして状況の把握に努める。
「随分変わったナイトメアを使うのね、モニカ・クシェルフスキー。帝国のナイトメアの生産ラインとは外れすぎね。」
「…………。」
「ロイド・アスプルンドの様な突拍子の無い変態が居たか、或いは。―――他国から鹵獲した機体を改修したか。」
「――テロリストにしておくには勿体ないほど頭回るわね。」
変形型KMF「フローレンス」
E.U.戦線においてユーロピア連合が導入した「アレクサンダ・ドローン」を有人機用に改修し、それを専用にカスタマイズした機体。
ハドロンブラスターやスラッシュハーケン等のブリタニア特有の武装が追加されつつも、本来の変形機構をそのまま残したワンオフ機。
「……何かまためんどくさい相手を引いちゃったな。」
戦況は激化する。