ちなみに当作品のキャロルちゃんは「GX」と「XV」の記憶を持っています。
「AXZ」に関してはエルフナインの中から見ていたという感じです。
光が収まり、視界が戻る。
キャロルはいつでも四大元素(アリストテレス)を展開できる様にしながら現状を確認する。
自分達が立っている台座と台座の前にいる祈りを捧げる様な格好と姿勢をしている者達。
即座に位置関係を演算する。
イレギュラーの者達が祈りを捧げている台座の中心位置に立っているのは天之河光輝。
つまり自分達は天之河に対して使用されたなんらかの術式に巻き込まれたと考えるのが合理的であり、警戒レベルを少し下げる。
とは言え、こちらに攻撃を仕掛けてくるなら容赦無く躊躇なく反撃する考えは変わらない。
周囲のクラスメイト達も周囲の変化に戸惑いの声を上げる。
ふと隣の席にいた南雲ハジメの視線が何かに注視したのに気付き、同じ方向に視線を移す。
巨大な壁画だった。
長い金髪を靡かせながら中性的な顔立ちをした人物が微笑みながら両手を広げている。
「反吐が出る・・・」
誰にも聞こえない様な小さな声でキャロルは呟いた。
恐らく、この壁画は前方にいる集団の崇める神か何かなのだろう。
だからどうした?
神だろうがなんだろうが、行手を阻むのならそれは敵だ。
ハジメがすぐに視線を逸らしたのをキャロルは見逃さなかった。
(ほう?この手の存在の質の悪さに本能的に気付いたか・・・?)
そんな考えをしていると気配を感じ、そっちに視線を移す。
台座の前にいた集団の中の代表と思われる豪奢な法衣と装飾を施された物を頭に乗せた老人が数歩前に出て来た。
「ようこそトータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位に就いております、イシュタルと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
一行は大きな広間にいた。
パーティーや晩餐会を行う様な大きな広間に十数メートルもの長いテーブルがいくつか並び、上座にあたる部分に愛子と天之河と友人達が座り、その他はバラバラに座っている。
ハジメとキャロルは後ろの端の側に座る。
ハジメはなんの気なしにそこに座ったが、キャロルがそこに座った理由は単純で扉の一つが近いからだった。
いざとなればすぐに撤退できる様に準備は怠らない。
「くそ、テレポートジェムが使えれば・・・」
小さく呟く。
実はこの場所に移動しいる途中、キャロルはトイレの場所を聞きそこに入った。
すぐにテレポートジェムを使用したが転移は出来なかった。
テレポートジェムが作動する時特有の紋様は床に浮かび上がったが転送圏内にいるキャロルを転移させることはなかった。
これは転移先が存在しないか最大転移距離を超えているか。
テレポートジェムの転送距離はほぼ地球全土をカバー出来る。
つまりここは地球以外の惑星か別の世界のどちらかだろうと判断する。
ここで自身以外の最大の攻撃手段を失った。
テレポートジェムが使えないと言うことはアルカ・ノイズを呼び出せなくなったと言う事だ。
幸いアルカ・ノイズのレシピは記憶しているから手間はかかるが作り直せばいい。
幸運だったのはテレポートジェムは使用できなかったが自身が様々な錬金術の道具などをしまっている収納空間へのアクセスは可能だったことだ。
恐らくだが、このトータスへの転移の際に収納空間も一緒に転移して来たのだろうと考える。
頭で様々なシミュレーションを行いつつ、情報収集は怠らない。
ちょうどあのイシュタルと言う一見好好爺に見える狂信者が説明をしていた。
要約するとこの世界は人間族・魔人族・亜人族の三大知的生物が存在し、人間族と魔人族は数百年争い続けてきた。
亜人族は戦いには関わらず、樹海などでひっそりと隠れ住んでいるらしい。
魔人族は魔法に扱いに長けているが人間の方が数が多い為に今まで均衡状態が保たれここ数十年は大きな衝突は起きていなかった。
しかしここ最近魔人族が野生の魔物を使役し始め、その均衡が崩れ人間側が窮地に陥り始めた。
「あなた方をこの地に召喚されたのはエヒト様です。我ら聖教教会の唯一神にして人間族の守護神であらせられるエヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅びると。そこでエヒト様はこのトータスよりも上位にあるあなた方の世界からあなた方をこの地に召喚するとの御神託がありました。上位の世界に住むあなた方には例外なく強力な力を持ちます。そのあなた方を救いとして送ると。どうか、エヒト様の御意志の元に戦い、人間族を魔人族より救って頂きたい」
なんとも自己中心的な話だろうか。
自分達の代わりに戦えとは。
そして真っ先に反応したのは当然ながら愛子だった。
小柄でよくキャロルと共に学校の二大幼女と言われる彼女が真っ先にそれに抗議する。
「ふざけないで下さい!この子達に戦争させようって事でしょう!?そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
しかしイシュタルから帰ってきた言葉はそれを拒否する言葉だった。
「お気持ちはお察しします。しかし、それは不可能です」
「何故ですか!?呼び出せたのなら送り返せるでしょ!?」
「あなた方を召喚されたのはエヒト様です。我々人間には異世界に干渉する神の御技の様な魔法は使えません。あなた方が元の世界に戻れるかは、エヒト様の御意志次第です」
「そ、そんな・・・!!」
愛子を絶望に突き落とすイシュタルの言葉。
その言葉を生徒たちの脳がその意味を処理し、理解させる。
「じょ、冗談じゃねぇ!帰れねぇってなんだよ!?」
「戦争なんて嘘だろ!?」
「いや!家に帰して!!」
混乱が広がる。
バンッ!と、大きな音がして天之河が立ちあがった。
「みんな!ここでイシュタルさんに文句を言っても仕方がない!彼にもどうしようもできないんだ!俺は、戦おうと思う!この世界の人達の危機は事実でそれを防ぐ事ができるのは俺達だけなんだ!それに人間族を救う為に召喚されたのなら、それを終わらせれば元の世界に帰れると思う!イシュタルさん、どうですか?」
「そうですな・・・。救世主様の願いを、エヒト様も無下にはなさらないでしょう」
「それに、俺たちには力があるんですよね?」
「ええ、この世界の者と比べて数倍から数十倍の力があります」
「うん、なら大丈夫!人々を救い、俺達も家に帰る!みんなも一緒に帰ろう!」
この様な場合、カリスマのある人物が力ある立場になると厄介なのは地球でも歴史が証明している。
現に、天之河の言葉にクラスメイト達から動揺が消えていっている。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。俺もやるぜ?」
「龍太郎・・・」
「今のところ、それしかないわよね。・・・気に食わないけど・・・私もやるわ」
「雫・・・」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織・・・」
俗に言う天之河グループが賛同する。
それに影響され、クラスメイト達がそれに続く。
愛子はそれを止めようとするがこの流れの前には無力だった。
ダンッ!
その流れを大きな音が遮った。
ハジメはその瞬間を見ていた。
キャロルが脚をテーブルに乗せた音だった。
座ったまま脚をテーブルに乗せると言う行儀の悪い行為だが、何故かハジメにはキャロルにはそれが許される行為に思えた。
「ああ、そうかそうか。お前達は戦争に参加するのか」
目を閉じながら淡々と言う。
「ああ、困っている人達を見捨てられない!ディーンハイムもそうだろう。一緒に戦おう!」
同意を求める様にキャロルに歩み寄る天之河。
だがキャロルはその気配を察しながらも無視をする。
(ああ、こいつに最初にあった時、一瞬でも立花響に似ていると思ったのはオレの最大のミスだ)
エルフナインの意識下にいた時、なんどもあの装者が人助けするのを記録で見た。
人助けが趣味と自分で言うほどのお人好し。
(だが、立花響は周りを危険に巻き込む様なことはしなかった。こんな自分が正しいと曲解する様な奴と一瞬でも一緒にしたのは立花響に対する侮辱だ)
世界を分解しようとした自分にすら手を伸ばした姿がくっきりと頭に浮かんだ。
「さぁ、ディーンハイム!俺たちと一緒にこの世界を救おう!!」
キャロルは目を開け、高らかに答える。
「だが、断るッ!!」
一瞬、天之河にはキャロルが何を言ったのか分からなかった。
「すまない、ディーンハイム。今、断ると聞こえたのは俺の聞き間違いだろう?」
「オレは確かに、断ると言ったぞ」
「何故だディーンハイム!?」
「オレには関係のないことだからだ。それ以上でも以下でもない」
単純シンプルな答えが返ってきた。
「イシュタルさんの話を聞いていなかったのか!?この世界の人達は滅びの瀬戸際にいるんだぞ!?」
「だからどうした?そもそも、情報が一方的すぎる。そいつが嘘をついていたとしたらどうする?」
「俺はイシュタルさんを信じる!彼の切実な表情を見ていなかったのか!?」
「表情など、演技でどうにでもなる。映画でも役者がやっているだろうに。とにかく、オレは拒否する」
「そんな勝手がまかり通るとでも・・・!」
「この、キャロル・マールス・ディーンハイムがまかり通すッ!」
天之河の身体が止まった。
キャロルから放たれる圧倒的な威圧感に思わず声が出なかった。
「ま、まぁまぁ、みなさん落ち着いてくだされ・・・。そちらのお嬢さんも、突然の事に混乱なさって——」
「ああ、イシュタルとか言ったな?」
「ええ、そうですが・・・」
「大方お前はオレに、エヒトとやらに選ばれたのに何故喜ばないかとか考えているんじゃないか?」
「いえいえ、まさかそんな・・・」
「そうか?本心じゃあ、オレを異端者として火炙りにでもしたいだろう?」
「まさか、勇者様のご同郷の方にそんな事は・・・」
「まぁ、そう言う事にしておいてやる。ああ、そうだ畑山愛子」
「は、はい!?」
突然呼ばれた愛子はビシッと姿勢を良くしてキャロルを直視する。
生徒であるキャロルに呼び捨てにされたにも関わらず、自然とそれを受け入れてしまう。
「老婆心ながら言わせてもらうが、生徒達の事を思うなら先のことも見据えて話すといい」
「えぇと・・・どういう事ですか?」
「仮にこの天之河光輝がこの世界を救うのに成功したとして、もしも元の世界に戻れなかった時にどうするか・・・だ」
「?」
「世界を救いました、めでたしめでたし。お前達はもう用済みだから好きにしろと放り出されたらどうする?」
「あっ!!」
愛子はキャロルの言わんとしていることが分かった。
すぐに愛子はキャロルの助言でイシュタルに対し、万が一戻れなかった時の生徒達の生活を保証するよう誓約書を書かせる事に成功する。
キャロルだけ「ッ!」なのはシンフォギア仕様です。