千冬が帰ってくる2週間の間
それまでに実家への引っ越しを済ませてしまおうと
一夏は考えていた
しかし色々あり…自身の荷物を纏めるのに時間がかかって、結局荷造りが済んだのは2週間後、千冬が帰ってくるギリギリの日になってしまった
その理由…と言うか原因は……
2週間ほど前
「のほほんさん、前俺が貸した料理レシピどこ?」
「あ~、あれ私の部屋にあるよ~」
ちょっと待ってて~、
と言いながら本音は自室へと向かっていった
その30分後……
「……遅いな、のほほんさん……」
未だに帰ってこない事に疑問を感じながら待っていると
「……」 本音がやけに静かに戻ってきた
「のほほんさん見つかった?」
そう一夏が訊ねると本音は応えた
「あの~…… ……見つからなかった」
「…はい?」
「……無くしました……」「…………」
少しの沈黙の後
「なにーーー!!!??」
一夏は思いっきり怒鳴った
「ひええぇぇ!!!」
本音は聞いたことの無い一夏の怒鳴り声に身が縮んだ
「無くしたって、あれ大切なレシピなのに……」
一夏が言う料理レシピとは、彼が独自で考えた物だ
考えに考えて出来たもの、ある意味一夏の宝物なのだ
このレシピでもって、一夏は家庭の胃袋を掴んでいた
「…………」 「あの~…いっちー?」
突然黙り混み、俯いた一夏に
本音は恐る恐る声をかけた
「…本音」「ふぇい!?」
「俺も手伝うから必ず見つけるぞ!!!」
その後、一夏と本音は本音の部屋から始まり
屋敷全体をくまなく探索し、ようやく見つかった
何故かその場所は虚の部屋だった……
更に
「よし、服類は纏め終わったな……」
一夏が荷物整理をしていた所……
「一夏~」「ん?母さん…?」
薫が一夏の元へとやって来た
「これどうしたのかしら?」「ん?」
薫が自分の手を見ながら言ってくるので
一夏もその目線の先に目を向けると……
そこにはブクブクと動いているゆで卵が……
「レンジでチンしたらこうなったんだけど……」 「え!!?」 その瞬間
バーン!!! ゆで卵は爆発し、一夏と薫……そして一夏の纏め終わった服に卵が付着した
「あら……」 「母さん……」
「ゆで卵はチンしたらこうなるんだよ!」 「あら、そうなの?」 「そうなんだよ!!!」
薫は料理をあまりしていなかった為、
知らなかったそうだ
結局服は全て洗い直し、
再び纏める事になったのだった……
その他にも理由はあるが、
大抵は他の者が やらかした結果である
「やっと……終わった……」
一夏は溜息を吐きながら呟いた
「あはは……お疲れ様」
その横で簪が苦笑いしながら労いの言葉をかける
「……いよいよだね……」「……ああ……」
この日、一夏引っ越しをする。
そう考えると、お互い寂しい訳で……
「「…………」」 二人とも無言になってしまった
「……簪」その沈黙を一夏は破った
「今日一緒に行く?」「え?」
「汚いと思うけど…招きたくてさ……」
どうかな?、と一夏は簪に聞いた
「…うん!行きたい…」 簪は笑顔で応えた
その後、一夏は皆に迎えられながら更識家を簪と共に出ていき、御付きの人達の車で織斑家へと向かっていった
その数分後
「付いた……」
一夏は実家である織斑家へと到着した
「ここが一夏の実家……?」
「ああ、そうだよ……」
簪は全体を見た
更識家とは違い、極普通の一軒家
しかし何だろう……どこか懐かしい感じがする様な…そんな感じがした
一夏は鍵を開け、家へと入る
御付きの人には片付けもお手伝いしましょうか
と言われたが、そこまでは悪いと思って断った
簪も織斑家の中へと入っていった
「……あの時のまんまだな……」
一夏は感慨深く呟いた
この家には、更識家に住まわせて貰ってから一度だけ荷物を持ってくる時に入っただけで、それから来ていなかった
なので、ドイツに行く前と全く同じ雰囲気がした
(とは言っても、ホコリとかは溜まってるな……荷物整理するまえに掃除しないと……) そう一夏が考えていると
「一夏」
簪が一夏の服の袖をクイクイ、と引っ張った
「簪?」 「…掃除、するでしょ?」「え?」
「私も手伝うよ」
「いや…でも汚れるぞ?」 そう一夏が言うが
「大丈夫……手伝わせて?」
簪はにっこり微笑んでそう応えた
「…分かった。それじゃあ頼みます」
「はい…頼まれました」
一夏と簪は二人で掃除を始めた
家の中全部を、くまなく掃除したため時間はかかったが、簪が手伝ってくれたお陰で夕暮れには終わった
「「ふぅ~」」
二人はリビングのソファに座って溜息を付いた
今の時期は夏の終わりでもまだ暑い
何度か休憩をしたが、
やはりそれでも疲れはててしまった
「簪、麦茶飲むか?」「うん、ありがとう」
カラン…トクトク…… 氷を入れた冷えた麦茶
二人はそれを一口飲む
「「…ふぅ……」」
喉を潤す冷たい麦茶に、
思わず気が抜けた様な声が二人の口から出た
平和だなぁ……一夏はそう思いながら
二口目を口に入れようとした
そうすると……
ガチャン…… 「「?」」 家の扉が開いた
誰だろう?と思っていると、
リビングに人が入ってきた
「え?」 「あれ?」
「千冬姉?」
「ああ、久しぶりだな一夏」
家に入ってきたのは千冬であった
「あり?帰ってくるの明日じゃなかった?」
「そのつもりだったんだがな…… 飛行機をとった者がドジをして、今日の便に乗るはめになったのだ……」
のほほんさん(本音)みたいな人だな……と思う一夏と簪
「でもだったら連絡してもらえば迎えにいったのに……」 「バタバタして電話できなかったんだ」
談笑する一夏達だったが、
千冬は一夏の傍にいる簪に気付いた
「一夏、その子は?」
「ああ、彼女は更識簪。
更識家の娘さんで俺の……大切な人だ」
「…は?」
「はあああ!?」 「……何だその驚き様は?」
「いや、だってお前が…ド唐変木のお前が……?」
「ド唐変木って……」
ジト目で睨む一夏を苦笑いして見ながら、
簪は千冬に話しかけた
「は、初めまして…更識簪です」
「うむ、此方こそ。織斑千冬だ」
軽く自己紹介して、千冬は簪に話しかけた
「一夏の言ったことは本当か?」
「は、はい…私は一夏の彼女……です……」
最後の方は照れから小声になったが、
しっかりと千冬の耳に入った
「そうか……一夏になぁ……」 そう染々と呟いた後
「苦労したんだなぁ……」と千冬が言って
「アハハ…そう、ですね……」と簪が応えた
「ん?」
一人分からない一夏を呆れた目で見ながら
三人はそれから夕飯の時間まで、談笑していたのであった
ゆで卵のくだりはとあるマンガでやってたネタです
本当にそうなるのかは分からないんですが、作者は焼きサンマを電子レンジでラップ無しで暖めようとした事があります
レンジ内が凄まじいことになりました