弾が車に轢かれた数日後
彼は学校に登校してきた
車に轢かれた事は言わなかった。
心配をかけたくないと言うのもあるが
轢かれたのに怪我の一つも無いと言うことに
疑問を持つ人物が出てくることを阻止する為である。
なので事情を知っている更識家と
五反田家以外は秘密にしたのだ
「にしても、あんたも災難だったわね……
引ったくりにあうなんて……」
「だから!ひったくりを
捕まえようとしたんだって!!!」
そう、だから皆には弾は道でひったくりと遭遇し捕まえようとして怪我をしたと言ったのだった
「んで、その引ったくりって捕まったの?」
数馬が聞いてくる
「ああ……まあな」
目を泳がせながら答える弾
見かねて一夏が助けを出す
「俺も見てたからな、捕まるの」
ふーん、と数馬は納得したようだ
「悪ぃ、助かった……」弾が小声で謝ってくる
「気にすんな」一夏もそれに返した
いらない心配等かけない方が良い
知らなければ……心配する事はないのだから……
月日は流れて夏の季節
その頃には弾の事件の事を
話題にする者もいなくなった
しかし、新たな事件が待っていた
……この二人に……
何時も通り、一夏と簪が
共に登校してそれぞれの道で別れた後
一夏は自分の学校に着き、クラスに入った
「「「─────」」」
すると既にいた複数の生徒が何やら話していたのだ
「?」 一夏はそんな彼らを見ていたのだが……
「「「!!!………………」」」
一夏に気付いた、さっきまで話し込んでいた
生徒達が此方を見てきたのだ
「へ?」 一夏は驚き、一歩後ろに下がる
「一夏……」 すると背後から鈴の声が
「鈴……これ何?」
と聞くと鈴が重々しい顔で口を開いた
「噂がね……」「噂?」
「一夏、今簪と登校と下校してるでしょ?」
「ああ、途中までな」
「それを見ていた子がいてね…… で噂がたったの」
「うわさ?何の?」 「……あんたと簪がーーーー」
「…………は?」
「え、えええええ!!!??」
所代わりここは簪の学校
そこでも噂がたっていたのだ
一夏と簪が一緒にいるところを見た生徒がいた
そこから生まれた噂……それは………
「で、どうなの更識さん? その人……
『彼氏』なんじゃないの?」
そう……つまりそう言うことだ。
一夏と簪が付き合っていると言う噂がたったのだ
彼女達は学生。 こんな噂、かっこうの話題の種だ
今、簪はそんな生徒達に質問攻めにあっていた
「ちょっ、ちょっと待って!
私と一夏はそんなんじゃ……」
「なに!?もう名前で呼ぶ仲に……」
「だから……!」 そこで彼女は説明した
一夏の事を……
「という訳で、一夏は私達の家族なの……」
簪はそう言い終わると溜め息をついた
体が暑いのに冷や汗をかくという
よく分からない現象が起こる
「……き」「?」
「それ……素敵じゃん!!!」 「へぇ!?」
「家族との禁断の……」 「だ、だから……!」
簪が弁解しようとするも、全く聞いてくれない
「布仏さん、貴方更識家に住んでるんだよね?」
「そうだよ~」
「じゃあ、その一夏君と更識さんの関係、
何か知ってるんじゃない?」
(本音!余計なこと言わないで!!!)
そう簪は心の中で叫んだ
本音はそんな簪を見て、コクりと頷いた
ホッとした瞬間、本音は口を開いた
「いっちーとかんちゃんは~
(気持ちが)繋がってる仲だよ~」
「「「……………………」」」
「「「えええええええ!!!??」」」
「つ、繋がってるって、もう二人はそんな関係に……?」 「は、初の?よ、夜を……?」
「?…………!!!ち、ちちち違う…っ!!!
そんなんじゃ…っ…!」
顔を真っ赤に染めながら否定する簪
そんな彼女は、この状況を作った人物を睨み付ける
「ほ、本音ーーーー!!!」 「ほえぇ!?」
その後、本音は簪に『お仕置き』されたらしい……
そんなある意味大事件から一ヶ月がたった
噂は少し収まったが、
まだ探りを入れている者もいた
その殆どが一夏の学校の女子学生だったが……
そんなある日
学業が終わり、何時も通り一夏は学校を出て
簪を迎えにいこうとした
しかし教師に書類運びを手伝って欲しいと
言われた為、その旨を電話で簪に伝えた
「て訳だから、悪いけど先に帰っててくれるか?」
『うん、しょうがないね…』
電話越しだが、簪が落ち込んでいるのが分かった
「……その代わり!今日のご飯は俺が作るよ」
「本当!?」 「ああ、何が良い?」
「じゃあ、ハンバーグで!!!」
それから二人は一言二言言って電話を終えた。
「んじゃ、頑張るか!」 そう笑顔で呟く一夏
「おーい、織斑。いけるか?」
「あ、はーい!今いきます!!!」
そして一夏は自分を呼んでいる教師の方に
向かっていった…………
「…今日は一人か……」
電話を終えた簪は、一人で帰ることに
「……久しぶりだな、こういうの……」
簪は帰り道を歩きながら呟いた
「最近は何時も
この道は一夏と二人だったもんなぁ……」
一夏が家に来てから、色々と変わった
家族が増えた、賑やかになった……
……温かくなった
一夏と一緒にいるとき、彼女は恥ずかしさと共に、
どこか安心感を感じていた
守ってくれると言う心強さと、
一緒にいる温かさ
そんな空間が、簪はとても気に入っているのだ
家で一夏を待とう……早く会いたいなぁ……
そう思い、足を速めた時だった
「なぁ、君?」 「!?え、えぇ?」
簪は声をかけられた
振り替えればそこには柄が悪そうな複数の男
「可愛いなぁ、君……」
そう一人の男が言ったとたん、
周りの男はニヤニヤし始める
「……!」 簪は逃げようと前を向いた
「!?あ、ああ……」 しかし、
前にも男が数人立っていたのだ
「怖がらなくてもいいぜぇ?」
先ほど喋った男が簪に近づく
「ただちっと……遊ぶだけだ」
全員がニヤニヤする中、簪は恐怖した
(い、一夏……助けて……!)
簪は心の中で一夏に助けを求めたのであった……
「……ん?」
一方その頃一夏は、何か嫌な予感を感じていた
「……簪?」 そう考えた瞬間、彼は急いで
彼女の元にいかなければならないと感じた
「!!!」 「え?あ、おい織斑!?」
教師の呼び掛けに応えることも無く、
一夏は駆け出した
嫌な予感……簪が危ない事を感じて………
「簪……!!!」
「は、あぁ……」
「そんなに怯えないでよ~」 「!」
男達は、どんどん簪に近づいていく
「「「へっへっへ……」」」 男達の手が、
簪に触れようとした時だった
「簪!!!」 「……一夏?」
簪を呼ぶ一夏の声が聞こえたのだ
と次の瞬間──
「ぐえええ!?」 一人の男が倒れ込んだ
「「「!!!??」」」
男達が驚き振り向くとそこには
「……おまえら……」
此方を鬼の様に睨み付ける一夏の姿が
「簪に……なにしてんだぁぁァァ!!!」
その後、一夏は騒ぎを聞き付けた住民が呼んだ
警察がくるまで暴れ続けた
数の差があったが、楯無に鍛えられていた事と、
怒りがあったことで負けてはいなかったのだ
結局は男達は補導、一夏は簪を守ろうとしたと
言うことで注意と手当てをされて帰ることにした
話が伝わった更識から迎えの車に乗り、
二人は自宅へと帰宅した
「「………………」」 その間、お互い無言であった
自宅内
一夏は楯無達に事の説明をしていた
「…ごめん……俺………」 一夏は謝るが……
「別に一夏が謝る事では無かろう?」
楯無は優しく論してきた
「でも……」 「一夏」
楯無は一夏を…『息子』を見て言った
「私達はお前を責めたりしない……逆に感謝してる」 「え?」
「お前が助けに入らなければ……」
楯無は暗い顔で呟く
「だからありがとう、一夏
ありがとう」 楯無は一夏を抱き締めた
「父さん……ぐっ………」
一夏は暫く、そのままでいたのだった
「…簪は今どこに?」 楯無の問いに
「自分の部屋で休むって言ってた……」
一夏は応える
相当参った様で、屋敷に着くなり自室に入ったのだ
「……行って一夏………」
そこに刀奈が一夏に声をかけてきた
「刀奈姉……」
「今あの子が
一番傍にいて欲しいって願っているのはあなたよ」 「俺……?」
そう、と刀奈は頷く
「だから、お願い……」 「……分かった」
何時も通る簪の部屋への道。
今日はどこか重々しい感じがした
「………」やがて一夏は、簪の部屋の前へとついた
「ふぅ……」軽く深呼吸して、
一夏はコンコンと扉をノックする
「簪、入っていいか?」
「一夏?……どうぞ。」
簪がそう言ったので一夏は部屋へと入る
部屋に入ると、簪は自分のベットの上に座っていた。
傍らには簪の好きなヒーロー物のDVDが
置かれているが、手は付けていないようだ。
「簪、それ……」
一夏はDVDのパッケージを見ながら聞いた
「ああ……何か気が乗らなくて………」
何時も目を輝かせながら見ている物を
簪は気が乗らないので見ていないと言った
やっぱりかなり落ち込んでいる……
そう一夏は改めて思った
「それでどうしたの、一夏?」
簪は首を傾げて一夏に問いかけてくる
「ごめん!!!」一夏はそう言って頭を下げた
「い、一夏?」 簪は困惑してしまった
何故謝るのだろう?と。
「簪に怖い思いさせて……
俺がいてやれなかったから………」
そう暗い顔をする一夏に簪は
「…そんな事無いよ……一夏は助けてくれたじゃない」 「で、でも……」
「…私ね……一夏に助けてって祈ったんだ」「………」
「そう願ったら一夏が来てくれて……
ホッとしたよ」 「簪……」
「一夏がいてくれるだけで、心が落ち着く……
今だってそうだよ。
ほんとはね……さっきまで震えが止まらなかった。
でも一夏が来てくれた時から震えなくなったんだよ」
「………」
「だから………自分を責めないで?
……ありがとう、助けてくれて。
本当にありがとう」
簪は笑顔でそう言った。
その笑顔は優しく、
どこか温かくなるような笑顔だった。
……ああ、そうか 一夏は何かに気が付いた
ずっとあったこの感情は………こういう事だったんだ……
「…簪」
一夏は簪に向き直る
その顔はとても真剣な表情だったので、
簪は思わず緊張してしまった
「な、何?」
「……俺約束するよ」 「約束?」
「簪にもう二度と怖い思いをさせない……
簪の笑顔を……守りたい。守り抜いてみせる
…誰よりも近くで」
「…え……?」
「簪…………好きだ」
「い、一夏…?」
「……初めて会った時、話が合って嬉しかった。
簪が絡まれているとき、
守らなきゃって思ったんだ。
笑ってるのをを見たとき、綺麗だって思った。
この笑顔を……守りたいって思った。
……こんな気持ち初めてで、最初は分からなかった。
でも今ならはっきり分かる。
俺は簪が好きなんだって。 簪に惚れたんだって」 「………………」
「簪…俺は弱い…… まだ守りきれるだけの強さが足りないから。
…でもそれでも……… 俺は君を守りたい」
一夏の告白に簪は…………
泣き出した
「え!?か、簪!!?どうした、んだ!?
そ、そんなに嫌だったか!!?」
一夏は完全にパニックになってしまう
しかし簪は首を横に振って、違うと言った
「違う……違うの…………嬉しくて……」 「へ?」
「私も……一夏が好き」「!」
「一夏と一緒にいると温かい気持ちになるの……
私はそんな感じが好きで、
一夏とずっといたいって思った……だから…………」
「私とこれからも、 一緒にいてくれますか?」
簪はそう言った
その時の顔は、涙でグシャグシャになっていたが、
今までよりもずっと綺麗な笑顔であった
「ああ……勿論」 一夏は簪の告白にそう答えた
「「………………」」 二人は見つめ合いながら、
少しずつ顔を近付けていき…………
「「………………///」」 二人の距離はゼロになった
その後、二人は交際を家族に報告。
皆祝福してくれた。
どうやら影ながら、二人の仲を応援していたらしい。
楯無は滅多に見せない涙を見せ、
一夏と簪に抱き付いた。
二人は苦笑いしていたが、只されるがままにしていた
そしてこれは鈴達にも打ち明けた。
三人はあれから時々屋敷に遊びに来ていて、
簪とも接点が合ったという事と、
簪自身が言って欲しいと言ったので話した。
弾は「おめでとう!!!」
数馬は「裏切り者……まぁお似合いかぁ……… ちくしょう!!!」グッ!とサムズアップして祝ってくれた
只鈴は「おめでとう」と言ってくれたが、何処か寂しげな顔をしたのが一夏は気になっていた。
しかし、これは聞くべきでは無い……
とそんな感じがしたのであえて問わなかった。
「…………そっかぁ…」
と家で鈴はベットに寝転びながら呟いた
「………………しょうがないわよね」
そう言った後、彼女は部屋から出てリビングへ
「お母さん、お腹減った~」 そう言いながら入ると
「「………………」」
何故か鈴の父親と母親が暗い顔をしていた
「……どうしたの?」 鈴は恐る恐る両親に問いかける
「……鈴」すると父親の方が顔を上げて鈴の方に向いた
「鈴、大事な話があるんだ」 「大事な話?」
「ああ、実は………………」
鈴は話を聞いた後、自室に飛び込んだ
そして……
「う、ううう…………」
それから一晩、泣き続けていた………
次回、鈴との別れです