怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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怪獣プロレスです。チラ裏版とはちょっと内容変わってるよ!


10、マタンゴ軍団総攻撃Ⅰ

 タチバナ=リリセたちが行ってしまってから、メカゴジラⅡ=レックスは一人で荷物の番を続けていた。

 

 敷かれたシートの上で御行儀良く正座していたレックス。

 ……次はどんなことをさせてくれるのだろう。

 そして自分はどのように役立てるだろうか。

 喜んでもらえたら嬉しいな。

 

 

 そんな期待に胸を躍らせていたとき、院内で銃声が響いた。

 

 

 即座にレックスは臨戦態勢に入った。

 聴覚センサーが続いて捉えたのは、廊下の方から聞こえる慌ただしい足音。

 足音から計算すると人数は二人。

 タチバナ=リリセと、エミィ=アシモフ・タチバナが戻ってきたのだろうか。

 銃声、どうしたのだろう。何かあったのだろうか。

 

 レックスが予見したとおり、戻ってきたのはリリセとエミィの二人組だった。

 

「おかえり、リリセ、エミィ……!?」

 

 銃声から想像していたとおり、二人の様子は尋常ではなかった。

 エミィは全力疾走したかのように息を切らしているし、リリセは全身がずぶ濡れだ。

 後者については雨に降られたというより、頭からバケツの水を被ったみたいだった。

 リリセは言った。

 

「レックス、逃げよう! ここはヤバイ!!」

 

 そう言うとリリセは、広げかけていた荷物をバックパックにぶち込んですぐに背負った。

 シートは広げたままだ。そのまま捨て置くつもりなのだろうか。

 

「何があったの!?」

 

 ただならぬ様子の二人にレックスが訊ねると、バックパックを背負いながらエミィが怒鳴り返した。

 

「マタンゴだ!」

 

 ……マタンゴ?

 レックスにはさっぱりわからなかった。

 データベースを引いてみると、ツチグリというキノコの別名でママダンゴと呼ばれているものがヒットしたが、マタンゴという単語自体はデータベースに存在していなかった。

 首をかしげるレックスに、エミィが怒鳴った。

 

「キノコのオバケだ! とにかく逃げるぞ!」

 

 キノコのオバケ????

 状況をよく理解できないレックスは、廊下の方から聞こえてきたドスドスと重たい足音に振り返った。

 二本脚の足音。人間かとも思ったが、それが間違いだとすぐに悟った。

 

 現れたそいつの身長は2.5メートル。

 全身から菌糸類の子実体が生えている。

 エミィが言ったとおり、キノコのオバケとしか言い様がない姿だった。

 ……なんだこいつら。

 ヒトなのか、それとも菌類なのか?

 すぐさまセンサーで調べてみたが、生命反応はカビや菌類と同等のものしか検出できない。

 しかし、直立二足歩行するキノコなんているわけがない。

 戦うべき敵なのか、それとも人間なのか、レックスの電子頭脳は判断に迷った。

 

「逃げよう、レックス!」

「愚図愚図するな、早く行くぞ!」

 

 が、リリセとエミィの様子から判断した。

 こいつらは怪獣、人間の敵だ。

 

 レックスは戦闘モードに切り替え、リリセから貰った服を体内へと格納した。

 背中からは背鰭、尻からは長い尻尾を伸ばし、子供の柔らかい手からロボット怪獣の鋭い爪へと変形する。

 現れたマタンゴに向けて()き手を構え、メカゴジラⅡ=レックスが咆哮した。

 

「喰らえッ、〈フィンガーミサイル〉ッ!」

 

 レックスの指先から、鋭く尖った貫通ミサイルが発射された。

 発射されたミサイルはプラズマジェットの尾を引きながら真っ直ぐ飛んで、先頭を歩いていたマタンゴを刺し貫く。

 鋭利なミサイルで撃ち抜かれたマタンゴは、ナノメタルの侵蝕作用で瞬時に金属の塊に作り変えられ、やがて砂塵となって消えた。

 

 ナノメタルの侵蝕性を攻撃へと特化させた対怪獣兵器、フィンガーミサイル。

 身を削るために多用はできないが、当てさえすれば相手を確実に仕留めることのできる、極めて強力な武器だ。

 レックスは、武器工場と化した体内でナノメタルのミサイルを次々と増産し、西部劇のガンファイターさながらにフィンガーミサイルを撃ちまくった。

 

 病院のホール内で、空気の破裂音とマゼンタの閃光が連続する。

 フィンガーミサイルに射抜かれるたびにマタンゴたちはバタバタと倒れ、そして粉微塵に散ってゆく。

 

 しかし、一体二体倒したところで、奥から次々と現れるマタンゴの侵攻は止められそうにない。

 マタンゴたちは塵となった仲間の死体を踏み越えて、後から後から続々と押し寄せてきた。

 

 さきほどリリセに襲いかかったツキヨタケやベニテングダケ、シャグマアミガサタケ。

 その他にも、ドクツルタケ、カエンタケ、タマゴテングタケ、スギヒラタケ、センボンサイギョウガサ、コガネホウキタケ、ありとあらゆる毒キノコにそっくりなマタンゴがぞろぞろと現れた。

 ……いったい、何体いるのだろう。

 まさに歩くキノコの展覧会、毒キノコ軍団の仮装行列(カーニバル)だ。

 この廃病院は呪いの館、マタンゴの巣窟だったのだ。

 

「伏せて!」

 

 レックスの指示を受け、リリセとエミィは頭を庇った。

 レックスの手首が高速回転し、マタンゴ軍団の足元に目掛けてミサイルを放った。

 

 〈回転式(スパイラル)フィンガーミサイル〉。

 高速回転するクラスターミサイルはマタンゴたちの足元へ着弾、床面を引っ繰り返す強烈な爆発で、マタンゴたちをまとめて吹っ飛ばした。

 爆風に呑まれたマタンゴたちは、炸裂したナノメタルの散弾をしこたま浴び、まとめてナノメタルに喰い尽くされて動かなくなった。

 

 続けて、レックスは全身の装甲を展開した。

 開いた装甲の下から、無数のミサイルの弾頭が顔を出す。

 

「〈プロミネンス=REX〉!!」

 

 太陽の紅炎(プロミネンス)のように激烈な炸裂ミサイルの一斉発射。

 撃ち出されたミサイル群がマタンゴたちの頭上、上階のバルコニーを撃った。

 天井の(はり)が砕けて倒壊し、バルコニーの残骸がマタンゴの頭上へと降り注ぐ。

 崩れ落ちた瓦礫がマタンゴたちを圧し潰すと同時に、マタンゴたちの侵入口を塞いでしまった。

 

 ……これで少しは時間が稼げるが、安堵はしていられない。

 瓦礫の向こうから、高笑いのようなマタンゴたちの声が聞こえてくる。

 長くはもたない。

 レックスはリリセとエミィに告げた。

 

「今のうちに、早く!」

 

 リリセとエミィは一目散に駆けだした。

 レックスはその殿(しんがり)を努めながら、ビュンビュン振り回すメーサーブレードの結界とフィンガーミサイルの威嚇射撃で、背後に迫り来るマタンゴたちを巧みに牽制しつつ後退してゆく。

 そのときだった。

 

「うわっぷ!?」

 

 リリセの眼前で突然通路の壁が突き破られ、その破れ穴からキノコまみれの手がニュッと伸びてきた。

 壁の向こうにもマタンゴが潜んでいたのだ。

 リリセの顔を掴み、壁の穴の向こう側へと引きずり込もうとするマタンゴ。

 

「危ない、リリセッ!」

 

 レックスがメーサーブレードを繰り出し、リリセを捕まえていたマタンゴの腕を切り落とした。

 同時に壁が崩壊し、壁の向こうのマタンゴがリリセたちの前へと転がり出てきた。

 マタンゴは、腕を切り落とされたというのに平気な様子でリリセたちに躍りかかってきた。

 

「さがって!」

 

 レックスは、リリセたちを下がらせると、今度はマタンゴの脳天からメーサーブレードを叩き込んだ。

 切り分けた食パンのようにマタンゴの頭が真っ二つに割れて、切り口から濃密な胞子を撒き散らした。

 

 しかし、マタンゴはなおも止まらない。

 脳天を唐竹割りにされたというのにキノコ人間は痛みを感じないどころか、そもそも生物としての構造自体が脊椎動物とは異なるようだった。

 

「このっ、このっ、このっ!」

 

 レックスがメーサーブレードで何度も斬りつけて細切れにしてやったところで、ようやくマタンゴは動かなくなった。

 

「大丈夫!?」

 

 レックスがリリセの方へ振り返ると、リリセは顔中にキノコの胞子を浴びていたが無事だった。

 

「ありがと、レックス!」

「早く逃げよう!!」

 

 

 一行が駐車場へと駆け戻ると、幸いにも駐車場にマタンゴたちはまだ到達していなかった。

 扉を閉めた途端、その向こう側にマタンゴたちが到達した。

 中から押し開けようとしてくるマタンゴたちをレックスが扉ごと押さえつける。

 

「急いで!」

 

 レックスが両手で支えている扉から、メキメキベコベコと金属の潰れる音が響いている。

 ……いったい、何体のマタンゴが押し寄せているのだろうか。

 アンギラスとさえ互角以上に渡り合えるレックスの力でも殺到するマタンゴたちを押さえきれず、鉄製のドアが少しずつ歪み始めていた。

 

 レックスがドアを押さえつけている間、リリセはクルマに荷物を放り込み、エミィは運転席でエンジンをかけた。

 昼間にレックスが整備してくれていたおかげで、エンジンはすぐにかかった。

 

「さあ、乗れ、はやくはやく!」

 

 リリセが助手席に乗り、レックスが後部荷台に飛び込むのを確認したエミィはクルマを急発進させた。

 ゴムタイヤの擦れる高音と共に、クルマが走り出す。

 同時にレックスが先ほどまで押さえていた扉が打ち破られ、中からマタンゴの大群が転げ出てきた。

 リリセたちが乗るクルマは駐車場を飛び出し、車道へと躍り出た。

 

 

 

 

 こうして病院を脱した一行。

 だが、追走劇の本番はこれからだった。

 




おまけ短編:ある罪深い男の話Ⅰ


 端緒となったのは西暦2030年。
 かの〈キングオブモンスター〉の登場と同年に起こった『第二龍神丸の事故』であった。


 第二龍神丸自体は特別な船ではない。
 当時の太平洋は『かのキングオブモンスター』の領域(テリトリー)だったという事実が明らかになる前であり、まだ漁業が行われていた。
 第二龍神丸もそんな漁業船の一艘であった。
 かの事故が起きなければ、平凡な南洋マグロ漁船として役割を全うしていただろう。

 西暦2030年。
 南洋へのマグロ漁に出ていたはずの第二龍神丸が連絡を絶ち、その数日後に小笠原沖で漂流していたところを別の漁船に発見された。
 船内は無人の状態で乗組員は発見されず、乗り込んだ発見者たちが体調不良を起こしたことから検査したところ太平沖では考えられない高濃度の放射能汚染が確認された。
 もちろん太平洋沖でそのような核実験など確認されてはいないし、第二龍神丸自体もごく普通のマグロ漁船である。
 結局船員が消えた理由から放射能の原因まで、あの事故については何もかもがわからずじまいだった。

 のちにゴジラ研究の大家として名を馳せることとなるヴィルヘルム=キルヒナーは、最初の著書においてこの事故にも触れている。
 『第二龍神丸の事故こそが、かの〈キングオブモンスター:ゴジラ〉と人類のファーストコンタクトであったのだ』と。
 ……もちろん眉唾、こじつけめいた推測の域を出ていない。
 船内からゴジラの肉片でも回収されたのならまだしも、そんな物証は未だ出ていない。

 しかし、回収された第二龍神丸から、尋常でない数値の放射性物質の塵が検出されたのも事実である。
 第二龍神丸がゴジラ、ないしそれに匹敵する放射線源に当てられたことは間違いない。
 ……もっとも、ゴジラ以外でかの怪物と同等以上の放射線源があるとすれば、そんなものは核兵器以外に有り得ないのだが。


 ここまでが世間で報じられた概要である。
 「船員が跡形もなく消えた状態で、船だけが発見される」という奇怪なシチュエーションは、かの有名なマリーセレスト号事件の怪談を彷彿とさせ、たちまち世間で恰好の話題となった。
 海難か、トラブルか、はたまた新種の怪獣によるものか。
 第二龍神丸の事故は、現代の奇談として世間を大いに賑わせたものだ。
 ……もっともそんなゴシップなど、その数か月後にロサンゼルスを襲撃し壊滅させたあの〈キングオブモンスター〉によって跡形もなく吹き飛ばされてしまったのだが。
 きっと今は『ああ、あったねそんなの』と思い出す人さえ少ないことだろう。



 が、この事件には隠された続きが存在する。



 発見された第二龍神丸の船体は、紆余曲折を経て、わたしの属する組織に回収された。
 そしてその船内を徹底的に検査した結果、行方不明となっていた船員が発見された。
 そう、船員は消えてなどいなかったのである。
 それどころか船員たちはみな生きていた。


 肉体が完全に液化した〈液体人間〉として。


 回収された元船員は体液のみの状態で、しかも致死量にも近しい放射能汚染の中でなおも生命活動を維持していた。
 SFやファンタジーに出てくるスライムさながら、まさに〈液体人間〉だ。
 この液体人間の発見をきっかけに、わたしの属する組織は極秘裏にある研究に取り組み始めた。


 ――――〈変身人間〉を創る研究。


 人類最後の希望、メカゴジラ。
 人々はかの最終兵器さえ完成すれば救われると無邪気に信じている。
 だが愚かしいことに、彼らは大切なことに気づいていない。


 『怪獣黙示録』はいずれ終わる。
 しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()


 長期にわたる怪獣との戦いで生じた放射能と環境汚染、そして人口バランスの破綻。
 そしてかの〈キングオブモンスター〉。
 長い戦乱が残した傷痕はあまりにも深すぎた。
 ゴジラか人類か。どちらが勝っても、この星は旧人類が住むには適さないであろう。
 アラトラム=オラティオのプロジェクトはあるが、あれは飽くまで最後の手段だ。
 それに、両移民船に載ることが出来る人間は限られる。可能な限り地球での生存を模索するべきだ。

 そこで変身人間なのだ。
 核爆発による第二人類。
 放射能に打ち克つ新たなる生命。
 もし地球が死の灰に覆われて我々人類が全滅したとき、次に地球を支配するのは液体人間であるかもしれない。
 この変身人間は、その次代を生きることが出来る人間を創り出すための研究なのだ。


 液体人間から始まったわたしの研究は、バラエティに富んだ。
 まずは古典的な透明人間や、ジキルとハイドのような別人に変化する薬品も開発した。
 電送装置による転移が可能な電送人間や、炎を操る火焔人間など、特殊能力を備えた超能力者の開発も手掛けた。
 あるいは、人体に他の生物の能力を移植した改造人間を創ってみたりもした。

 似た様な研究は他の組織でもやっていた。
 風の噂ではある組織でバッタの能力を移植した改造人間が脱走して反乱を起こしたとか、してないとか。
 噂の真偽はともかく、秘密裏の開発競争が熾烈になるにつれてそのプロジェクトの主体である私への期待は大きいものとなっていった。

 自然、私の研究もエスカレートした。
 子供の脳を開発して超能力者を造ったり、ライオンに猛禽の翼を移植しさらに人間の脳と入れ替える、なんてこともした。


 苦心惨憺、その果てに私は到達した。
 不死身の心臓を持つ究極の新人類。




 〈人造人間(フランケンシュタイン)〉に。

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