怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。 作:よよよーよ・だーだだ
2、
ゴジラ東京襲撃から十七年後。
西暦2063年3月某日、月夜の晩である。
小笠原の孤島で、空前絶後地上最大の怪獣プロレスが繰り広げられようとしていた。
中心に居るのはゴジラ。
身長50メートル、体重1万トン。王冠のような背鰭に青い稲妻を纏い、長大な尾を大振りに揺らしながら堂々と吼える、その雄姿はまさにキングオブモンスターだ。
ゴジラの前に立ち塞がるのは怪獣軍団。
アンギラス、ラドン、メガギラスなど、一体でも強豪と呼び得る恐ろしい怪獣たちが計七体。
今にも飛び掛かりそうな剣幕で唸りながらゴジラを前に包囲陣を組んでいる。
まさしく怪獣総進撃の様相だろう。
だがゴジラはそんな雑魚怪獣になんぞ眼もくれちゃいない。
鋭い目つきのゴジラが見つめているのは、怪獣軍団の奥に控えている真の敵。
自らの模造品にして宿敵である。
月光を照り返す、金属結晶状のシルエット。
両手に携えているのは、岩を貫き、鉄をも斬り裂く、鋭く伸びた
背中に負うのは、マゼンタの発光を伴うクリスタルの背鰭。
そして脊椎から連なって伸びる長い尾が、運動の慣性に引かれてしなやかにうねっている。
そのシルエットはゴジラの似姿、まるで白銀で出来たゴジラの骸骨だ。
そんな〈彼女〉の姿を見つめながら、わたしはひとつの名前を思い浮かべた。
――――地球史上、最強の戦闘マシーン。
硬く光る虹色の地肌に、強烈なロケットを着けた、ウルトラCのスゴくて強いヤツ。
この世の絶望を倒し、人類に明るい未来を取り戻してくれるはずだったあの兵器のことを、地球の人々は〈人類最後の希望〉と呼んでいた。
ゴジラを倒すために生まれた最終決戦兵器。
その名前は――――
事の発端は数日前にさかのぼる。
その日の空模様は鮮やかなブルー。
雲一つない快晴だった。
正午過ぎの太陽に照らされた街の色彩は、これまた鮮やかなグリーン。
ただしそれは人為的に造られた緑ではなく、無数の植物に制圧されて築き上げられたものだ。
並び立つ建物は生命力旺盛なツル植物たちにびっしりと覆われていた。
ガラス張りのオフィスビルも、繁華街の雑居ビルも、今は揃いも揃って隙間風が吹くあばら屋と化している。
アスファルトで舗装された道路も、その隙間に入り込んだツル植物にあちこち
緑の大きな布を被せたかのように街全体が緑一色に塗り替えられており、文明の名残といえばその輪郭だけでしかない。
そんな人っ子ひとりいない緑の支配地を、一台のクルマが土埃をまいて駆けてゆく。
各部をオフロード仕様に改造された大型車で、サイドドアには『
クルマは緑に染まった荒れ道をガタガタ揺れながら進み、やがて街のはずれの大きな公園の通用門前で停車。
そして助手席から、一人の女が降り立った。
年齢は二十代前半、身長は160センチほど。
髪は茶色を帯びた黒髪で、肌の色は日焼けしつつも黄色系。
顔には典型的な日系人の特徴があり、右目に黒い眼帯をつけている。
そして腰から提げたベルトのホルスターには護身用の拳銃が収まっており、ツナギのズボンを履き、両手には作業用のグローブを嵌めている。
彼女の名前は〈タチバナ=リリセ〉。
西暦2046年、東京を焼き尽くしたあの大災厄を生き延びた少女。
その少女が、超絶銀河スーパーウルトラセクシーキュートな美少女に成長した姿であった。
……ごめん。
自分で言ってて恥ずかしくなってきた。
何言ってんだろうねホントに。
顔がわからないからって『超絶銀河スーパーウルトラセクシーキュートな美少女』はいくらなんでもちょっと、いやかなり盛り過ぎだ。
それに、相棒が聞いたら「少女ってトシじゃないだろ今年で23歳」とツッコまれてしまう。
とりあえず『極端な美形』ではないし、『極端なブサイク』でもない。
右目に眼帯してること以外はわりとフツー、くらいにしておいてほしい。
……とはいえ、美形寄りで想像してくれるとわたしとしてはやっぱり嬉しいけどね。
だって女の子だもん。
そんなわたし、タチバナ=リリセの眼前にそびえ立っているのは公園の通用門だ。
門はツル植物で巻かれており、さらに南京錠が掛かっている。
わたしはまず、門をぶち壊す作業から始めた。
「さがしものはなんですかー、みつけにくいものですかー♪……ってね」
いい加減に覚えた懐メロを歌いながら、わたしは手にしたチェーンカッターで南京錠のロックを捩じ切り、ツル植物が絡みついた通用門を力任せに押し開いて、園内へとクルマを招き入れた。
器物損壊、不法侵入。世が世ならお縄である。
しかし、住人がすべて消え去ってしまったこの街でそんな不法行為を取り締まる者などいない。
いたところで咎められることなどないだろう。
この街は十年以上も前に滅んでいるのだから。
門をくぐった園内は、外の街と同様にツル植物によって占領されていた。
お化け屋敷さながらに荒れ果てた園内をわたしは物怖じすることなく進み、クルマもそんなわたしに続いてゆく。
そうこうしているうちに、大きな広場が見えてきた。
広場の中心では、墜落した飛行機がその身を横たえていた。
両翼はもぎ取られ、機体はちょうど半ばで叩き折られたかのように真っ二つに断裂している。
その機体の表面をツル植物たちが覆い、飛行機は緑の怪物に半ば飲まれかけていた。
わたし
そんな残骸を
「……さて、始めますかね」
そんなところから、この話は始まるのである。
どうしても気に喰わないので書き直しました。