怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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29、激闘の末

 ……さて、と。

 ようやく落ち着いたところで、エミィはブラストボムの爆心地へと視線を向けた。

 

「……ひっでえなあ」

 

 思わず呟いてしまったとおり、ブラストボムの破壊力はすさまじいものだった。

 

 

 ブラストボムの地雷原だった河川敷は、スリバチ状の巨大クレーターと化していた。

 猛烈な爆風で焼かれた上に、まるで隕石でも直撃したかと見紛うほどに深々と抉られ、その深さは数十メートルほどもある。

 地形が丸ごと変わってしまった。

 このまま水が溜まったら川じゃなくて池、いや湖に変わってしまうかもしれない。

 

 

 そんな河川敷の惨状を眺めていると、突然地面がぐらぐらと揺れ出した。

 

「な、なんだあ!?」

「エミィ、離れてッ!」

 

 身じろぐエミィと、そんなエミィを庇うように飛び起きるレックス。

 それと同時にクレーターの中心部、スリバチの最底辺が爆音と共に吹き飛んだ。

 

 

 

 中から現れたのは空の大怪獣、ラドンだ。

 

 

 

 ラドンの全身は黒焦げで、溶岩のような体表もぼろぼろにひび割れており、動きもかなりふらついている。

 しかし致命傷を負っている様子はない。

 

 ……なんで生きてんだ、コイツは。

 そのときエミィは、昔読んだ怪獣図鑑に書いてあった記述を思い出した。

 

 『ラドンは熱に強い』

 

 ラドンは元々火山を棲み処にしている怪獣であるため、高熱には強い体質を持っている。

 個体差もあるが、中には全身に溶岩を浴びても平気だった例もあるらしい。

 きっとこのラドンはそういう特別にタフな奴なのだ。

 だからブラストボムのような爆弾の直撃にも強いのだろう。

 

 全身に浴びた土砂を払い落として身繕(みづくろ)いを終えたラドンが、エミィたちの方を睨みつけた。

 怪獣がこんな目つきで人間を見る場合というのは、たったひとつしかない。

 

 ……殺される!

 

 咄嗟にエミィが身体を縮こませた時、そんなエミィの眼前に銀色の背中が立ち上がった。

 

 

 立ち上がったのはメカゴジラⅡ=レックスだ。

 

 

 レックスはエミィを守るため、ラドンに立ちはだかっていた。

 レックスの赤い瞳がラドンを睨みつける。

 

 ……レックスはなんて強いヤツなんだろう。

 ラドン相手に不屈の闘志で対峙するレックスの背中を見上げながら、エミィは心の底から尊敬の念を覚えた。

 レックス自身だってフラフラだろうに、それでもなお怪獣から人間を守ろうとしてくれている。

 

 

 

 

 そんなメカゴジラⅡ=レックスに対し、ラドンは逃走を選んだ。

 

 

 

 

 翼を広げてジェット噴射を燃やし、猛烈な熱風で周囲の砂利を吹き飛ばしながら、ラドンの巨体が宙へと舞い上がる。

 その表情は忌々しげで、そして『もうこりごりだ』と言わんばかりだ。

 

 エミィはそんなラドンのことを『賢いヤツだな』と思った。

 

 リリセは甘ちゃんだから『傷つけるな』と言ったが、今のレックスにそんな手加減をしてやる余裕などない。

 デストファイヤーで八つ裂きにするか、フィンガーミサイルで蜂の巣にするか、容赦なく仕留めに掛かるだろう。

 ラドンだって一方的にやられるようなタマじゃない。きっと死に物狂いで抵抗して、レックスを今度こそ再起不能のスクラップにしようとするに違いない。

 今戦えば間違いなく本当の殺し合いになる。

 お互いに無事では済まない。

 

 この場におけるラドンの撤退は、そんな戦局を見据えた判断なのだろう。

 引き際を見誤らないラドンという怪獣は、相当に利口だ。

 ともすると人間なんかよりよほど賢いのかもしれない。

 

 そんなことをぼんやり考えているエミィを尻目に、空の大怪獣ラドンはあっという間に遠くの方角へと飛び去ってしまった。

 

 

 

 ラドンがいなくなったあと、エミィはクレーターの中心部分を覗き込んでみた。

 

 クレーターのどん底、ラドンが這い出てきたと思しき穴の隣でアンギラスが仰向けで引っ繰り返っていた。

 体表は真っ黒に煤けていて、あちこちから焦げた悪臭を伴う黒煙が上がっている。

 ラドンが無事だったのも、アンギラスの巨体を盾にして爆発の直撃を凌いだからかもしれない。

 

(……まるで豚の丸焼きみたいだ。)

 

 ブラストボムを十発以上喰らって無事な怪獣なんかいやしない。いるとしたらあの『キングオブモンスター』くらいだ。

 もしもこれで生きてたら、それこそ本物のバケモンだろう。

 

 続いて、立川の方へと視線を向けてみた。

 多摩川河川敷のブラストボム地雷原は立川で監視しているはずだ。

 それにこれだけの大爆発なら、たとえ監視してなくても少なからず人目についただろう。

 じきに立川から人が来るに違いない。

 

 

 

 

 そのとき、信じられないことが起こった。

 ……嘘だろ、バケモンかコイツは。

 

 

 

 

 

 

 アンギラスが起き上がったのである。

 

 

 

 

 

 

 エミィは唖然とすると同時に、ラドンがやけに素直に撤退した理由についても理解した。

 ……ラドンのやつ、アンギラスが生きてるのに気づいてたんだな。

 だからさっさと逃げやがったんだ、アンギラスが起きて暴れ出す前に。

 

 自分たちも逃げなくては。

 エミィはすぐさま立ち上がり、眠ったままのリリセを起こそうとした。

 

「おい、起きろ! アンギラスが来るぞ!!」

 

 そうやってエミィは揺すり起こそうとするのだが、リリセは目覚めない。

 

「むにゃむにゃ、そんなにキャラメルばっかり食べられないよ……」

「何アホな寝言ほざいてんだ、おい、起きろ!」

 

 気持ちよさそうに眠っているリリセの頬を、エミィは張り飛ばす。

 それでもリリセは起きない。

 二、三発、往復ビンタを叩きこんでみたが、それでも眠ったままだ。

 

(……ああもう、ホントわたしがいないとダメだな、こいつは!)

 

 エミィはリリセを起こすことを諦め、そのまま担いでゆくことにした。

 寝惚けたリリセの両脇を抱え、土手の上へと引き揚げようとする。

 が、エミィの細腕では大人ひとりを抱え上げるのは無理だ。

 

「レックス、手伝え!」

「わかった!」

 

 レックスにも声をかけ、エミィとレックスの二人がかりでリリセを担ぎ土手を駆け昇る。

 クルマの助手席へリリセを放り込んだあと、エミィは運転席でエンジンを掛けようとする。

 だが、エンジンがなかなか掛からない。

 

「クソッ、こんなときにエンストかよ!!」

 

 そうこうしているうちに、アンギラスがすぐ傍まで迫ってきていた。

 黒焦げでずたぼろの身体を引きずりながら、エミィたちのクルマを叩き潰そうと前肢を振り上げている。

 エミィがクルマを動かそうと四苦八苦していると、後部荷台でゴトンと重いものが倒れる音が聞こえた。

 

「ごめん、エミィ、ちょっとだけ休ませて……」

「おい、レックス!?」

 

 倒れたのはレックスだった。

 リリセを運び込んだ直後に後部荷台でぶっ倒れてしまったのだ。

 これ以上戦わせるのは無理だ。

 

 クルマはエンスト、武器はナシ、頼みの綱のレックスも動けない。

 ……もうダメだ。

 頭上に掲げられたアンギラスの巨大なカギ爪を見上げながら、エミィは諦めかけた。

 

 

 

 

 そのとき、稲妻がエミィたちの頭上を横切った。

 

 

 

 

 青白い稲妻はアンギラスの鼻先を挫き、土手を這い上がろうとしたアンギラスの巨体が引っ繰り返った。

 アンギラスの丸い体格がごろんごろんと転がって土手からさらにクレーターの底へと落下、激突した拍子に地面が大きく揺れた。

 

 ……なんだ、今のは。

 エミィは稲妻の発生源、橋の上へと振り返る。

 

 

 

 橋の上にずらっと並んだそいつらは亀によく似ていた。

 丸い緑のシルエットは本当に亀にそっくりだ。

 

 

 

 しかし大きさが違う。鼻先から尻までの長さは16メートル、高さは4メートルもある。

 そして最大の特徴は、消防の梯子車にも似た長い砲塔を備えていることだ。

 戦車にも似ているが、砲塔の先は大砲ではなくパラボラアンテナ状になっている。

 

 エミィは、この亀型マシンの正体を知っている。

 

 ……こいつらは、旧地球連合軍が造った中でも最も有名な軍事車輛の一種だ。

 旧地球連合軍のプロパガンダ映画にはどんな作品にも登場していたし、立川にも何台か配備してあったのでエミィにも馴染み深い車輛であった。

 

 

 

 

 こいつらの名はメーサー戦車。

 あるいは〈メーサー殺獣光線車〉の名前でも知られている。

 

 

 

 

 そのメーサー殺獣光線車が、橋の上で何台も並び立っている。

 

 ……多摩川河川敷での騒ぎを聞きつけて駆けつけてくれたのだろうか。

 エミィが呆気に取られていたところで、メーサー戦車たちは一斉に行動を開始した。

 几帳面に整列したメーサー戦車たちは、車体上部に備わったメーサービームの砲塔を示し合わせたかのように転回し、アンギラスへと向ける。

 

 そして光線砲の照準をアンギラスへ合わせたところで、メーサー戦車たちは一斉にビームを発射した。

 

 

 怪獣をやっつける強力なメーサー光線だ。

 

 

 稲妻そっくりの青白いメーサー光線が幾本も空を横切り、河川敷のアンギラスへと命中。

 周囲に肉の焦げる強烈な悪臭が立ち込め、アンギラスは苦悶の悲鳴を挙げた。

 メーサー戦車たちが発射するメーサー光線は、数十万ボルトにも及ぶ高電圧を帯びている。

 並の怪獣ならあっという間にウェルダンにローストしてしまうほどの破壊力があるのだ。

 

 流石のアンギラスも、強力なメーサー光線の集中砲火とあってはひとたまりもない。

 慌てて退散しようとするが、ブラストボムのダメージを引きずっているのか、先程の俊敏さとは打って変わって這いずるように動くことしかできないようだった。

 

 

 

 

 ……今のうちだ!

 アンギラスとメーサー戦車が戦っているあいだに、エミィはクルマのエンジンを始動、立川自治区へ向けてクルマを走らせた。




「オマケ設定:メカゴジラⅡ=レックスの武装 その1」

 メカゴジラⅡ=レックスの武装として登場した各種兵器は「いずれも対ゴジラ用兵器として考案され、メカゴジラへの搭載が検討されたもののオミットされた」という設定。
 中にはオペレーション・グレートウォールのガイガンに搭載され、ゴジラ相手にテスト運用されたものもある。

・メーサーブレード
高圧のメーサーエネルギーを纏わせることで標的を切断するブレード。
蛇腹剣としての機能も持ち、数百メートルまで伸ばすことが可能。巻きつけて括ることで、コンクリートの高層ビルさえ輪切りにしてしまうほどの破壊力を持つ。
ただし、文中でリリセが指摘しているとおり、強度はさほど高くない。
また、ガイガンのハンマーハンドに同様のワイヤーブレード兵器、通称:ブラッディトリガーを搭載してテストしたもののゴジラには通用しなかったため、メカゴジラには採用されなかった。

・レールカノン
いわゆるレールガン。
メカゴジラには採用されなかったものの設計データは残されており、『決戦機動増殖都市』のヴァルチャーのレールガンの参考にされた。

・プラズマジェットウィング
メカゴジラにも搭載されているプラズマブースターの一種で、翼状に展開し、プラズマジェットの推進力で高速飛行する。
メカゴジラには採用されなかったものの設計データは残されており、『決戦機動増殖都市』のヴァルチャーの翼の参考にされた。

・ヤタガラス
背鰭から分離、発進する小型偵察機。
レックス本人と視聴覚を共有しており、ヤタガラスが見たものはレックス本人も観ることが出来る。
また無線操縦で自在に動き、超音波ビーム砲でメカゴジラⅡ=レックスの戦闘をサポートする支援メカとしての側面も持つ。
 作者注:メカゴジラの支援飛行メカといえばやっぱり鳥の名前だよね、ということでヤタガラス。

・フィンガーミサイル
言わずと知れた昭和メカゴジラの超兵器。
指先からナノメタルの誘導ミサイルを発射、標的へ撃ち込み、ナノメタル侵蝕で組成を脆くして粉々に粉砕する。
文字通り身を削る武器なので採用はされなかったものの、「突き刺したナノメタルによる侵蝕で標的を倒す」という思想はハイパーランスに、また「刺突武器を撃ち出す」という思想はブレードランチャーに受け継がれた。

・スパイラルフィンガーミサイル
フィンガーミサイルをクラスターミサイル化したもの。
着弾時の爆風を利用してナノメタルの散弾を飛散、広範囲にわたってナノメタル化して標的を粉砕する。
破壊力はフィンガーミサイルより上だが精密性に欠け、ナノメタル消費も激しいので多用出来ない。
 作者注:元ネタは『メカゴジラの逆襲』で登場した回転式フィンガーミサイル

・プロミネンス=REX
全身の装甲から放つ炸裂ミサイル。フィンガーミサイルとは異なりナノメタルの浸食機能を持たず、着弾と同時にプラズマ衝撃波を放って標的を爆砕する。
ほら、「全身の装甲が展開してミサイル乱射!!」ってロマンじゃん?

・メーサーキャノン
メカゴジラの主力兵装のひとつで、本編未使用だが設定上は使用可能。胸部や腕部を変形させて使用する。
アニゴジ世界のメカゴジラには搭載されていないが、これは実戦でゴジラ相手に通用せずオミットされたため。

・デストファイヤー
高圧高温のプラズマジェットの火炎放射で相手を溶断する、メカゴジラⅡ=レックスの必殺技。
プラズマジェットウィングにも使われているプラズマジェットを攻撃に転用したもので、殺傷力は高いもののエネルギー消費が激しく多用できない。
またオペレーション=ロングマーチでの実地試験においてゴジラ相手に通用しなかったため、メカゴジラには搭載されなかった。
文中では口と尻尾から発射しているが、その都度放射器を形成しているだけなので設定上は鼻から噴くことも可能。

・パラライズミサイル
撃ち込んだ相手に電気ショックを流し込むミサイル。フィンガーミサイルとは異なり、侵食機能を持たない。
出力は自在であり、焼き殺す威力から単に痺れさせる程度まで調整が可能。
西暦2040年初頭の『LTF作戦』で動員する怪獣を捕獲するための兵装として考案され、設計データがのちに『怪獣惑星』で使用されたEMPプローブに転用された。

・スタンブレード
パラライズミサイルと同様の思想を持つ、電気ショックで攻撃するブレード。パラライズミサイルと同様の経緯から開発された。
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