怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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33、ターニングポイント

 メカゴジラⅡ=レックスが送り込んだ羽虫型偵察機アンドレイは、居間の片隅に身を潜めていた。

 先ほどヒロセ=ゴウケンにリリセが怒鳴られていたときは、危うくレックス自身が飛び出しそうになった。

 ……大丈夫、殺しはしない。

 だけど()()()()()()()()()()()

 『秘密にしておきたい』とは言われたけれど、リリセやエミィの身の危険には替えられない。

 だけど、二人の様子を観察するうちに、レックスが恐れているような危機ではないことにすぐ気づいた。

 

 

 ……これは、単に叱られているだけだ。

 

 

 親が子供を躾けているときは他人が邪魔をしてはいけない、とデータベースにもある。

 部外者が関わらない方が良い。

 そんなわけで、レックスは静観を決め、アンドレイで屋敷内を探索することにした。

 

 

 

 

 それから数十分後。

 屋敷中を探索し終えたアンドレイを居間に戻してみたところ、風呂上がりのエミィがヒロセ=ゴウケンと何やら話し込んでいる場面に遭遇した。

 ヒロセ=ゴウケンは杖を突きながら席を立ち、エミィに語りかけている。

 

「このあいだの話なんだが……あれから考えてくれたか?」

 

 ……一体何の話だろう、それもわざわざリリセのいないところで。

 エミィ=アシモフ・タチバナとヒロセ=ゴウケン、二人のあいだに話があったのだろうか。

 居間で繰り広げらている会話に、レックスは聴覚センサーを集中させた。

 『このあいだの話』と聞いた途端、エミィは剣呑な態度を剥き出しにしながら答えた。

 

「……前にも言ったけど、クルマを弄るくらいならともかく、メーサー戦車の整備士なんか出来ないぞ」

「そんなことはないだろう」

 

 エミィの返答に、ゴウケンは首を振った。

 

「今のご時世、〈ビルサルド〉のメカを弄れるエンジニアは引っ張りダコだ。

 しかも新生地球連合軍からの直々のスカウトだなんて良い話なのに、勿体ないぞ」

 

 どうやらゴウケンの話は、メーサー殺獣光線車を整備する技術者の求人が出ていて、それをエミィに斡旋しよう、という話らしい。

 ゴウケンの話を聞きながら、レックスはデータベースを引いてみた。

 

 

 

 ……エイリアン種族、〈Bilusaludo(ビルサルド)〉。

 

 

 

 彼らが公式に地球人の前へ姿を現したのは、エクシフ飛来の翌年、西暦2036年頃のことだ。

 故郷ビルサルディアをブラックホールによって失ったビルサルドたちは、エクシフと同じく新たな故郷を求めて放浪した末に地球へ到達。

 ビルサルド族長ハルエル=ドルドが地球人に向けて発したメッセージは、レックスのデータベースにも収録されている。

 

 ――我々はビルサルド。

 我らの母星ビルサルディア連星系第三惑星は、呪わしきブラックホールに呑み込まれ崩壊した。

 ここ太陽系第三惑星への移住を希望する。

 受け容れの対価に、目下地球人類の最大の脅威である、怪獣ゴジラの駆逐を約束しよう――――

 

 ビルサルドが提供したゴジラ駆逐の手段とは、『テクノロジー』だ。

 エクシフがもたらしたのが献身の信仰、つまり精神的な支えであるならば、ビルサルドが持ち込んだのは科学技術の発展だった。

 量子コンピュータ、ナノマシン、人工臓器などのサイボーグ技術。メカゴジラⅡ=レックスを形作るナノメタルだって、ビルサルドのテクノロジーの産物だ。

 地球人よりも遥かに高い技術力を持ったビルサルドたちは、それらを惜しみなく地球人たちへ提供した。

 特に、怪獣からの欧州奪還作戦:オペレーション=エターナルライトの成功は、ビルサルドがなければ有り得なかったと言ってもいい。

 

 

 それほど優れたビルサルドのテクノロジーだが、欠点もあった。

 ビルサルドの欠点、それはビルサルドの技術が地球人の理解を超えていたこと。地球の科学を超えたオーバーテクノロジーは、裏を返せば『地球人の科学力では扱いきれない』ということでもある。

 つまり、地球人だけでは整備や修理ができなかった。

 そして、メーサー戦車に使われているメーサー技術は、メー()ーという名前こそついているが、地球で使われていたようなメー()ー技術とは異なり、ビルサルドに由来する部分が大きいオーバーテクノロジーである。

 並大抵の整備士で手に負える代物ではない。

 

 だが、ゴウケンの言うとおりなら、エミィはそんなビルサルドのメカを整備できるのだ。

 もしそれが本当なら、地球人としては凄いことだ。

 メカニックとしての腕前が、ビルサルドに匹敵するということなのだから。

 ゴウケンの提案にエミィは口を尖らせた。

 

「わかるといっても、ビルサルドの十六進コードとインターフェイスをちょっと弄れるだけだ。

 それくらいなら猿の惑星でも出来る。

 メーサー戦車の整備なら、ゲマトロン言語まで出来ないとダメだ」

 

 エミィの指摘するところは正しい、とレックスは思った。

 メーサー戦車の大部分はビルサルド製であっても、制御系OSや人工知能のソースはエクシフ由来のゲマトロン演算を基にしたコード、いわゆる〈ゲマトロン言語〉で記述されている。

 整備をするというのなら、ビルサルド十六進コードだけでなくゲマトロン言語や人工知能に関する知識も必要だろう。

 だが、ゴウケンは食い下がった。

 

「だからこそ、だ。新生地球連合軍の士官学校できちんと勉強させてもらえばいい。

 しかも、学費も生活費も、先方が奨学金で全部出してくれる、とまで言ってるんだ。

 まったく、ありがたい話じゃないか」

 

 どうやらゴウケンの話は、新生地球連合軍側から持ち込まれたものらしい。

 それでもエミィは首を横に振った。

 

「いやだ。ゲマトロン言語の勉強なんかしたくない。エクシフが絡むと蕁麻疹(ジンマシン)が出る」

 

 意固地に拒絶し続けるエミィ。

 そこで、ゴウケンは手を変えた。

 

「学校が嫌だっていうなら、他からも引き合いは来とるよ。うちの取引先のマルトモさんなんかは堅いぞ」

「マルトモの社長は嫌いだ。キレやすそうだし」

「マルトモさんがイヤならクドウさんとか、アオキさんとか、トリイさんとか。その腕ならどこでもやっていけるだろ?」

「クドウのとこはマイクロマシン、アオキは飛行機、トリイは怪獣避けの防犯グッズの工場だろ。どれも専門外だ」

 

 そういって断固拒否を貫きながら、エミィは眉をひそめた。

 

「……なんでそんなにわたしを余所にやりたいんだ? 邪魔ってことか?」

「違う、違う」

 

 そう訝しむエミィに、ゴウケンは言い聞かせるように言った。

 

「……いいか、エミィ。おまえさんも14歳だ。

 そろそろ将来のことを考えにゃいかんぞ。

 いつまでもリリセにくっついてるわけにもいかんだろう」

 

 反論しようとしていたエミィだったが、リリセの名前を出された途端に黙りこくってしまった。

 ゴウケンは続けた。

 

「リリセには、今は下積みのつもりでサルベージやらせてるがな、いずれはゲンゴと一緒にこのヒロセを継いでもらおうと思っとるんだ。

 リリセには話してあるし、リリセもそのつもりでいてくれてる」

 

「…………」

 

「だが、エミィ、おまえさんはどうするんだ。

 ちゃんと考えた上でヒロセに入る、リリセと一緒に働く、それならそれでもかまわん。

 しかし、おれの見るかぎりだと、おまえさんはリリセの後にくっついてまわってるだけにしか見えん」

 

 エミィは黙ったまま、答えない。

 

「……おまえさんが、おれをどう思っとるのかは知らん。

 だが、おれは、おまえさんのことを家族だと思っとるし、おれで出来ることなら何でもしてやりたいと思ってる。

 もしなにか希望があるっていうんなら、言っておくれ。

 なるべくそれに沿うようにするから、な?」

 

 そんなゴウケンをエミィはじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒロセ=ゴウケンの言葉を聞きながら、エミィ=アシモフ・タチバナは考えていた。

 エミィはヒロセ家のことが嫌いではない。ゲンゴはヘタレだが良いヤツだし、ゴウケンだって今まで自分を可愛がってくれてきたと思う。

 リリセの家族だ、きっと悪い人たちではない。

 

 

 ……だけどそれでも、いざというときどう転ぶかはわからない。

 

 

 ヒロセ家からすればリリセは家族かもしれないが、エミィについてはリリセが拾ってきただけの身元もはっきりしない孤児(みなしご)だ。

 エミィの方も、ヒロセ家のことはリリセの家族だからそれなりに尊重はしてきたが、心の底から信用することが出来なかった。

 もっと言えば、ヒロセ家に限らず他人を信用したことが殆どない。

 ……パパを騙したのはエクシフだし、そんなパパを食い物にして、わたしの家族をぐちゃぐちゃにしたのも周囲の大人たちだ。

 誠実っぽく見えるだけのペテン師を、自分の都合に合うかどうかだけでジャッジして、『正直者』だの『聖人』だのと褒めちぎってチヤホヤする。キレイゴト、カッコイイことばかり並べ立てて、互いに騙してスカして、時には自分の嘘に自分自身で騙されるバカばっかり。

 ……大人なんて信用に値しない。大人たちはみんなズルい嘘吐きで、みんな敵だ。

 

 

 例外がいるとしたら、タチバナ=リリセだけ。

 

 

 それは、嘘をつかない、という意味ではない。

 リリセは方便として嘘をつく、エミィ自身だって嘘をつくことはある。全く嘘をつかずに生きられる人間なんてどこにもいない。

 

 先の入浴で見た、タチバナ=リリセの体。

 その素肌には、無数の古傷がある。

 

 リリセがそこらへんのズルい嘘つきと違うのは、根っからの正直者なところだ。

 リリセはバカだ。それもとてつもないバカだ。

 いわゆる、バカ正直というやつだ。

 バカだから時には騙されて酷い目に遭わされることもある。死にそうな目に遭ったことだって数知れない。

 身体中に残っている傷痕のいくつかは、そうやって出来た傷なのだ。

 そんな、上手くいかないときでも、タチバナ=リリセは他人に当たったりはしない。

 へらへら笑って誤魔化すだけだ。

 リリセはバカだが、鈍感なわけじゃない。

 悔しくてたまらないときや、辛くて泣いてしまいそうなときもある。

 ……全身に残った傷痕、それらが(うず)いてたまらないときだって。

 

 

 

 だけど、そんな弱さを、エミィにぶつけたりはしなかった。

 

 

 

 そして、縁もゆかりもない孤児(みなしご)のエミィを拾って、対等な家族、妹分として扱ってくれる。

 こんな、底抜けに御人好しなバカはリリセだけだ。

 ……本当にバカだ。こんなひねくれたクソガキを拾ったって一文も得なんかしないだろうに。

 

 たしかに、エンジニアとしての腕はエミィの方が上だ。

 ぶつくさ文句を垂れながらクルマを整備するエミィを眺めながら、リリセは『エミィがいないとダメだな~わたし』なんてヘラヘラ笑ったりしている。

 だけど実際のところ、エミィなんていなくたってリリセは困らないはずなのだ。

 本当はクルマの整備だって運転だって、リリセひとりで出来るはずだ。

 エミィと出会う前の修業時代は、一人でやっていたのだから。

 

 

 エミィ=アシモフ・タチバナは、そんなタチバナ=リリセに心を許していた。

 

 

 子供っぽいヤツだと思うし、スキンシップ過剰なところはたまに鬱陶しい。

 だけど、自分より弱いヤツを騙して食い物にする、そういう()()()()()()()()()()とは無縁だ。

 ……この世の誰もが信用できないのだとしても、あいつだけは信用してやってもいい。

 そんな風に思っていたエミィに、ヒロセ=ゴウケンは投げかけた。

 

 

『おれの見るかぎりだと、おまえさんはリリセの後にくっついてまわってるだけにしか見えん』

 

 

 ……図星だった。

 ゴウケンの提案を拒否しまくってはみたものの、別段未来に展望があるわけじゃない。

 タチバナ=リリセの傍が良い、ただそれだけのことだ。

 

 

 

 

 だけど、そのままでいいのだろうか。

 

 

 

 

 エミィが『一緒に居たい』と願えば、リリセはきっと優しいから許してくれる。

 きっと、何が何でもエミィの希望をかなえてくれようとしてくれるだろう……たとえ、自分の幸せを犠牲にしてでも。

 そういうバカなのだ、タチバナ=リリセという人間は。

 

「……わたしは、」

 

 エミィが答えようとした時、玄関で呼び鈴が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風呂から上がったわたし、タチバナ=リリセは、脱衣所で身体を乾かしていた。

 

 せっかくだからと暫く手をつけていなかった肌の手入れ――いや人と会わないからと手を抜いていたわけではないのだ野営中はやる余裕がなかったから止むを得なかったのであって決して無精で怠けていたわけではないのだいや断じて――まで念入りにやっていたら、時間がかかってしまった。

 『水も滴るイイ女』? よせやい照れる。

 

「ふふんふ、ふんふんふん♪ ははんは、はんはんはん♪……」

 

 鼻歌の続きを口遊みながら、濡れた身体をタオルで拭きとってゆく。

 

 充分に体を拭き終えたところで、綺麗な下着をまとう。

 右目に眼帯を嵌め、火照った身体を下着姿で冷ましながら、湿った髪をタオルで乾かしていたときだった。

 

 

 

 

 

 遠くから銃声が響いた。

 

 

 

 

 

 緩み切った極楽気分は一瞬で消し飛んだ。

 わたしは、音が聞こえた方へと振り返った。

 途端に、またしても銃声が響く。

 

 

 ……母屋の方だ!

 

 

 わたしは、壁にかけていたガンベルトを手に取り、護身用のピストルにちゃんと弾が装填されているかどうかを確認する。

 ……弾はすべて入っている。その気になればすぐ使える。

 そしてシャツを羽織り、ズボンを履いて、わたしは脱衣所を飛び出した。




「バヤリース オレンヂ」

 ゴジラ映画に登場したバヤリース オレンヂのまとめ

◆キングコング対ゴジラ
0:10~
 主人公の桜井修(演:高島忠夫)が夕食のビフテキを食べるシーンで、飲み物として瓶入りバヤリースが登場。
 ただし登場人物たちはもっぱらビールを飲むばかりで、コップに注いでいません。
 ちなみにこのシーンには東京製綱のCMも入ります。
0:12~
 世界驚異シリーズの壮行会にて、主人公二人の飲み物として瓶入りバヤリースが登場。
 こちらではコップに注がれており、多胡部長(演:有島一郎)が口をつけています。
1:13~
 ヒロインである桜井ふみ子(演:浜美枝)を捕まえたキングコングが街中を歩いてゆくシーンに、バヤリースの看板が登場。


◆モスラ対ゴジラ
0:23~
 主人公トリオ(演:宝田明、星由里子、小泉博)が話し合うシーンにて、ウェイトレスが運んでくる飲み物としてオレンジジュースが登場。
 グラスに入っているのでロゴなどは登場しませんが、色がオレンジなので、十中八九バヤリースオレンヂで間違いないかと思います。
 なお、登場人物たちが口をつけている様子はありません。
0:54~
 主人公トリオが中村記者(演:藤木悠)と合流するシーンで、背後にバヤリースのノボリと看板のかかった屋台が登場。
その他
・映画ポスターのひとつに、バヤリースオレンヂの広告が描かれたものがあります。
 しかし「首筋をモスラに喰いつかれて悶え苦しむゴジラ」という絵が強烈すぎて、これがバヤリースの広告であることに中の人はしばらく気づきませんでした。
・浜風ホテルの虎畑二郎(演:佐原健二)の部屋、金庫の上にオレンジ色の瓶が見えますが、あれは酒のボトルのようです。


◆怪獣島の決戦 ゴジラの息子
0:08~
 真城伍郎(演:久保明)の食卓に、缶ジュースのバヤリースが登場。
 隊員たちが持ち込んだのでしょうか?
0:10~および0:14~
 背景として映る棚や調理台に、缶ジュースのバヤリースが並んでいます。
 隊員たちが飲むシーンもあります。


 また、ゴジラ以外の作品であれば『モスラ』『マタンゴ』『ゲゾラ ガニメ カメーバ 決戦!南海の大怪獣』などにも登場しています。

◆マタンゴ
0:06~
 ヨットでの酒宴の最中、酒宴の飲み物として黄色い缶のバヤリースが登場。
 作家の吉田(演:太刀川寛)がバヤリースを飲むシーンもあります。
 また六缶パックのバヤリースも登場するので、ヨットのオーナーである笠井(演:土屋嘉男)が好きなのかもしれません。

◆モスラ
1:08~
 横田から東京に向かうモスラ幼虫の左側に、「バャリース Bireley's オレンヂ」と書かれた看板が登場。
1:13~
 東京タワーが遠景に映る、その手前にバヤリースオレンヂの看板が登場。

◆ゲゾラ ガニメ カメーバ 決戦!南海の大怪獣
0:21~
 セルジオ島駐在員 横山(演:当銀長太郎)をゲゾラが襲撃するシーンで、瓶入りのバヤリースが登場。
 缶詰が並んでいる棚に、瓶入りのバヤリースが置かれています。


 他に『ゴジラの逆襲』『三大怪獣 地球最大の決戦』『怪獣大戦争』『南海の大決闘』『怪獣総進撃』も確認したものの、見つからず。
 漏れがあれば補足いただけると幸いです。
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