怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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34、Hi diddle dee dee!

 

 玄関で呼び鈴が鳴った。

 

 

 ……やたら連打してるな、とエミィは思った。

 どこの誰だか知らんが随分せっかちだな。

 ピンポンピンポンうるせーよ。

 そうこうしているうちに、階上からトットットッと足音が聞こえてくる。

 

「はいはい、今出ますよー……」

 

 上階でミーティング中だったサヘイジが降りてきて、玄関の鍵を開ける。

 

 

 

 爆発と共にドアが吹っ飛んだ。

 

 

 

「ぐぁっ!?」

 

 サヘイジが数メートル宙を舞い、床へと叩きつけられた。

 事故? 爆発? なにが起こった!?

 異常事態に真っ先に反応したのはヒロセ=ゴウケンだった。

 

「エミィ、隠れろ!」

 

 ゴウケンは、わけもわからない状態のエミィを、パーテーションで区切られた隣のスペースへ力ずくで押し遣った。

 エミィは物影に身を隠し、その隙間から様子を窺った。

 

 

ハーイ、Diddle(ディドゥル) Dee(ディ) Dee(ディー)

 

 浮かれた掛け声で入ってきたのは、黒ずくめの男だった。

 ……黒い帽子に黒いスーツ、黒いコート、黒い手袋。

 上から下まで黒ずくめ、赤い光沢を帯びたサングラスをかけている。

 年齢は30代くらいだろうか、軽薄そうながらも精悍な顔つきをした男だった。

 その胸元には〈新生地球連合〉のインシグニア、そして六角形を象ったロゴには〈LSO〉の三文字が光っている。

 

ステキなカギョー♪……ちょっくら失礼しますよーっと」

 

 鼻歌を唄っている男の後ろから、部下と思しき兵士たちがぞろぞろ続けて入ってきた。

 どいつもこいつもプロテクターに身を固め、同じLSOのインシグニアを胸元に入れている。

 エミィは確信した。

 

 

 こいつら、新生地球連合軍だ。

 それも特殊部隊というやつに違いない。

 

 

「あ、あんたは……!?」

 

 青い顔をしているゴウケンの呟きにエミィは違和感を覚えた。

 ……こいつら知り合いなのか?

 そんなところで、上から階段を駆け下りてくる足音が聞こえてきた。

 

「おい親父!」

 

 降りてきたのはヒロセ=ゲンゴだ。

 階下の物音で異常を察し、護身用のバットを片手に駆け降りてきた。

 

「何の音だ……!?」

 

 床で転がっているサヘイジ、家に土足で上がり込んでいる見知らぬ男たち。

 一目見ただけで、ゲンゴは何が起こったのかを悟ったようだった。

 ゲンゴは血相を変え、黒ずくめの男たちに挑みかかる。

 

「野郎ッ!」

「バカ、行くな!!」

 

 ゲンゴは、ゴウケンの制止を振り切り、バットで黒ずくめの男を思い切りブン殴った。

 

 

 バットの方が折れた。

 

 

「なっ……!?」

「あーあ。お気に入りだったんですけどねえ、このサングラス」

 

 砕けたサングラスを摘まみ上げながらぼやく、黒ずくめの男。

 渾身の一撃が効かなかったことに、ゲンゴは目を丸くした。

 顔面にバットの一撃を喰らったというのに、まるで堪えていない。

 

「な、なんだ、おまえ!?」

「おや、ヒロセ=ゲンゴ先生じゃありませんか。

 作品、いつも拝見しております。こう見えてマンガマニアでね、ファンなんですよ」

 

 おどけた調子でゲンゴに挨拶すると、黒ずくめの男はゲンゴの右手を掴んだ。

 腕を引こうとするゲンゴだったが、黒ずくめの男はよほどの腕力なのかびくともしない。

 

「は、離せっ!」

「先に手を出したのはあんたでしょ」

 

 そう言いながら黒ずくめの男は、ゲンゴの腕を()()()()()()()()()()()捻り上げた。

 

「よ、よせ、やめろっ……!」

 

 

 ぼきっ。

 ゲンゴの右腕が、おかしな方向に折れた。

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……!!!!」

 

 ゲンゴの絶叫が響いた。

 うずくまるゲンゴを、黒ずくめの男はニヤニヤと見下ろしている。

 

「ケンカ売るなら相手を選んだ方が良いですな、ゲンゴ先生」

 

 そう笑いながらゲンゴを掴み上げ、軽々と放り捨てる。

 黒ずくめの男の見かけによらない膂力に、エミィは驚愕していた。

 熊みたいな大男のゲンゴをぶん投げるなんて、こいつ、一体ナニモンだ。

 

 ……まさか、サイボーグってやつだろうか。

 

 エミィは昔読んだ本で、エイリアンのテクノロジーで人間を機械で改造する技術、いわゆる『サイボーグ』が開発されたという話を聞いたことがあった。

 しかし、人工臓器ですらロストテクノロジーになりつつある昨今。

 手や足を簡単な義肢に置き換えたくらいの人間ならたまに見かけるが、体をこんな風に強化改造したサイボーグなんてアニメマンガの中の存在でしかなかった。

 

 

「どーも、ご無沙汰してます、中佐殿」

 

 真っ黒な男は帽子を脱ぎ、ヒロセ=ゴウケンに軽く会釈した。

 ゴウケンが血相を変えて怒鳴った。

 

「ネルソン、貴様、何のつもりだ!?

 約束が違うぞ! 家の者には手を出さない、そういう話だったはずだ!」

 

 怒り狂うヒロセ=ゴウケン。

 エミィも、こんな形相のゴウケンを見るのは初めてだ。

 ……しかし、『約束』って何のことだ? そもそもゴウケンとこのネルソンとかいう胡散臭いサイボーグ男は知り合いなのか?

 ネルソンは『中佐』と言った。確かにヒロセ=ゴウケンは旧地球連合軍の中佐だった、と聞いたことがある。ということは旧地球連合軍時代の知り合いなのだろうか。

 

「約束? ああ、ありましたねそんなの」

 

 ネルソンと呼ばれた男は、猛犬顔負けの怒声をぶつけられてもまるで動じていない。

 どこ吹く風とばかりに涼しい顔だった。

 

「貴様、ただで済むと思うなよ……!」

「へえ、タダじゃなかったらなんです? いくら?」

「貴様アッ!!」

 

 挑発され、杖を振りかぶって殴りかかろうとするゴウケン。

 

「あらよっと」

 

 だが、ネルソンは、掴みかかろうとするゴウケンをひらりと躱し、脚を軽くひっかけた。

 足の弱いゴウケンはあっけなく転び、床へと倒れ込んでしまう。

 そうして床に這い蹲ったゴウケンの手を、ネルソンはすかさずブーツで踏みにじった。

 ぼきっ。

 骨の砕ける音と共に、ゴウケンが悲鳴を挙げた。

 

「ぐぁ……ッ!」

「おーっと失礼、なんか踏んじゃいましたねえ。ごめんなさいねえ」

 

 ちっとも誠意を感じない謝罪を垂れながら、ネルソンは苦痛に呻くゴウケンの胸倉を掴み上げた。

 

「いいですか、御老人。

 口約束なんて約束の内に入らんのですよ。

 そんなに大事な『約束』なら口約束にしないで、ちゃあんと紙に書いて残しておかなくっちゃあ。

 ……ま、おれだったらそんな後ろ暗い取引なんて最初からしませんがね」

 

 自分より恰幅が良いはずのヒロセ=ゴウケンを、ネルソンは片手で軽々と吊し上げた。

 ゴウケンはネルソンの腕を振り解こうとし足掻いたが、ネルソンがよほどの怪力なのか、まったく歯が立たない。

 ネルソンは言った。

 

「すいませんねえ。

 ()()()、奉身軍のイカレた信者どもが動き始めたもんで、予定が変わっちまいましてね。

 モレクノヴァのバカが()()()で上手くやっておきゃあ、こんなマネしないで済んだんですが」

 

 ……『多摩川』。

 エミィは、多摩川河川敷でアンギラスを迎撃していたメーサー戦車の一団を思いだした。

 ……このネルソンという男、あのメーサー戦車の仲間だったのか?

 あいつら、ひょっとしてラドンとアンギラスを迎撃しに来たんじゃなくて、わたしたちを迎えに来てたのか?

 でも何のために?

 その疑問は、ネルソンの次の台詞で解消された。

 

 

 

「……で、メカゴジラはどこです?

 隠したんでしょ?」

 

 

 

 ネルソンの言葉に、エミィは身を強張らせた。

 ……ゴウケンのヤツ、わたしたちが運んできた荷物がメカゴジラだって知ってたのか。

 そしてこのネルソンとかいうヤツに売り飛ばそうとしていたのだ。

 

 ……やはり大人は汚い。

 エミィは最初そう思った。

 

 ヒロセ=ゴウケンをちょっぴりでも信用しそうになっていたわたしは、やっぱりバカだった。

 大人なんていつもそうだ、身勝手で最低なクズばっかり。

 大人なんて、信用に値しない。

 こんなに痛めつけられているのだ、どうせレックスのことだってペラペラ喋るだろう。

 大人なんて、そういう奴らなのだ。

 ゴウケンが口を開いた。

 

 

「メカゴジラは……」

 

 

 ほら、やっぱり。

 こうやってレックスを売り渡すつもりなんだ。

 ……だけど、メカゴジラを売り飛ばすつもりだったのだとして、何か対価があったはずだ。

 その対価は何だったのだろう。やっぱりお金だろうか。

 そのことに思い至ったエミィの視線の先で、ゴウケンは言った。

 

 

 

「……おまえのママのところさ、若造。

 富士山でご来光でも拝んでろ、バカめ」

 

 

 

 そう反駁したゴウケンの身体をネルソンは軽々と振り回して、壁へと叩きつけた。

 壁板が砕け、家全体が震え、全身を強打した苦痛にゴウケンが呻いた。

 そんなゴウケンに、ネルソンは言った。

 

「ナメたクチ利いてんじゃあないぜ、ジジイが」

 

 そしてネルソンは、腰のホルスターから銃を取り出した。

 西部劇に出てきそうな、古めかしいビンテージ物のリボルバー拳銃だ。

 ネルソンは拳銃を手元でくるくると弄んだあと、ゴウケンの顎下に押し当てた。

 

「さて、もう一回、伺いますがね、メカゴジラはどこです? あるんでしょ?」

 

 そんなネルソンを見下ろしながら、ゴウケンは答えた。

 

「言うと思うのか、青二才」

「……あ、そ」

 

 ゴウケンを壁から引き摺り下ろし、テーブルへと叩きつけた。

 テーブルの卓が真っ二つに叩き割られ、ゴウケンはそのまま床へと墜落した。

 背中を強打し、呼吸困難で(あえ)ぐヒロセを見下ろしながら、ネルソンはぼやいている。

 

「ったく、ロートルめ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、付け上がりやがって。

 ウチの統制官と知り合いだし、アンタとは仲良くしておきたかったんだが、残念だ」

 

 そして、ゴウケンの胴を足で抑えつけ、額にリボルバー拳銃を突きつけた。

 

「恨むんなら御自分の非力さと、読みの甘さを恨むんですな、ヒロセ=ゴウケン中佐」

 

 カチリ、と撃鉄を起こす音が聞こえた。

 

 

 

 

 エミィが気づいたとき、考えるより先に自分の身体が動いていた。

 

 

 

 

 たまたま手元にスパナがあったのでそれを握り締め、エミィは隠れていた物陰からネルソンたちの眼前へと飛び出した。

 

「おい、屑野郎!!」

 

 ゴウケンとネルソン、兵士たちがエミィの方へと振り返る。

 

「あん?」

「バカ、出てくるな、逃げ……ぶっ!!」

 

 エミィに逃げるように促そうとしたゴウケンを、ネルソンが蹴りつける。

 

「これはこれは……物陰に猫でもいるのかと思ってたら、勇ましいお嬢さんだ」

 

 そうやってエミィを嘲笑するネルソンに、エミィの怒りが爆発した。

 ……野郎ッッ!!

 エミィはスパナを振り上げ、ネルソンへ飛び掛かった。

 

「あらよっと」

 

 しかし足を引っかけられ転ばされてしまった。

 

「へぶっ!?」

 

 転んだエミィを、すかさず手下の兵士が二人がかりで取り押さえた。

 エミィは力いっぱい暴れたが多勢に無勢、しかも相手は屈強な大人だ。

 あっという間にスパナは取り上げられてしまい、エミィ自身も押さえつけられてしまった。

 抑えつけられたエミィに歩み寄り、目線を合わせるように膝をかがめるネルソン。

 

「おまえが『娘』か。

 血が繋がってるわけじゃあるまいし同じ手に引っ掛かるなよ、バカ。

 さて、おまえさんの処遇だが……」

 

 ネルソンの言葉が途切れた。

 エミィが、ネルソンの顔に唾を吐きかけてやったからだ。

 頬についた痰を拭い取り、ネルソンはふんと笑った。

 

「威勢がいいのは嫌いじゃあない……が、年頃の娘が人の顔に唾を吐くのはいただけないな」

 

 そう言いながらエミィの頬を張り飛ばす。

 そして万力のような腕力でエミィの顎をぐいと掴み、真正面に向き合わせた。

 

「もうちょっと御行儀良かったら別の道も考えたんだが、しつけがなってねえガキは嫌いなんだ。

 おまえは『島』に連れて行ってやる」

 

 ……島? なんだそれ。どこかに連れて行かれるのだろうか。

 エミィが怪訝に思ったそのとき、ゴウケンが大声で叫んだ。

 

「よ、よせ、頼む、それだけは!!」

 

 ゴウケンが足下にすがりついたが、ネルソンは「うるせえジジイ」とあっさり一蹴した。

 口元をニヤニヤさせながら、ネルソンはエミィに言い放つ。

 

「おまえは『島』でせいぜい働くがいいさ、ワルガキめ」

 

 ちょうどその時、離れへ繋がる廊下からドタンバタンと大きな音がした。

 廊下からやってきたのはLSOの兵士だった。

 

「どうした?」

 

 ネルソンが訊ねると、兵士は敬礼しながら答えた。

 

「特佐殿! 例の女を捕えました!」

「おう、おつかれさん。連れてこい」

「はっ!」

 

 そして奥から引っ立てられてきたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

「離せっ、離せったら!」

 

 タチバナ=リリセだった。

 




幼少期に観た山田康雄さんとデ〇ズニーのCDに入ってる小坂橋博司さんのVerしか知らない。
ネルソンの名前は初代『モスラ』に登場した悪役が由来。
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