怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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プロレスです。


36、キングコング対ゴジラ ~『キングコング対ゴジラ』より~

 メカゴジラⅡ=レックス対メカニコング。

 試合開始のゴングに代えて、メカニコングが両拳を打ちつける金属音が響く。

 

 先に仕掛けたのは、メカゴジラⅡ=レックスの方だ。

 近寄ってきたメカニコングに、レックスは腕を変形させたメーサーブレードで斬りつけた。

 レックスのブレードとメカニコングのボディ、金属同士の擦れ合う音と共に、メカニコングの体表から火花が散る。

 だが、メカニコングの機体にはかすり傷ひとつついていない。

 よほど頑丈なのだろう、普通に斬りつけるだけではダメージにならないのだ。

 

 レックスは後退して間合いを稼ぎ、メーサーブレードを蛇腹状に変形させ、メカニコングへと振り下ろす。

 メカニコングの胴体にメーサーブレードの刀身が巻きついて動きを封じると同時に、金属が軋む耳障りな音を響かせる。

 先日のアンギラス戦で高層ビルさえ輪切りにした、メーサーブレードの切れ味。

 あの破壊力で、メカニコングを真っ二つに挽き切るつもりだった。

 

 だがメカニコングを斬ることは出来なかった。

 軋んでいるのはメカニコングの機体ではなくて、メーサーブレードの方だ。

 メカニコングはメーサーブレードの刀身を掴むと、力任せに引き千切ってしまった。

 

 メーサーブレードを破壊されたレックスはさらに後退し、両手と尾先をメカニコングへ向け、さらに全身の装甲を展開した。

 

 腕からは超音速の電磁加速砲、レールカノン。

 指からは貫通ミサイル、フィンガーミサイル。

 尻尾からはプラズマジェット火炎放射、デストファイヤー。

 そして全身から放つ無数の誘導ミサイル弾幕、プロミネンス=REX。

 まさに全身武器の塊だ。

 

「喰らえ、〈オール・ウェポン〉!」

 

 破壊力抜群の必殺技がてんこ盛り、レックスはそんな一斉射撃(オール・ウェポン)をメカニコングへ撃ち込んだ。

 全弾が命中。

 爆炎と爆風、そして濃厚な粉塵がメカニコングを覆う。

 

 しかし、メカニコングには屁でもなかった。

 レールカノンとフィンガーミサイルはあっさり弾かれてしまったし、デストファイヤーやミサイル弾幕は上半身にちょっとした焦げ目をつけただけだ。

 

 そうこうしているうちに、メカニコングがついに間合いに踏み込んだ。

 ……まずい!

 咄嗟に尻尾をアックス状に変形させて、強烈な一撃を叩き込むレックス。

 テイルアックス、斬首刑さながらだ。並の怪獣なら首が刎ね飛ばされているだろう。

 

 しかし、メカニコングはびくともしない。

 それどころか、自身の喉元に打ち込まれたレックスの尻尾を鷲掴みにしてしまう。

 すぐさま尻尾を引っ込めようとするレックスだったが、メカニコングのパワーには敵わずそのまま掴み上げられてしまった。

 

「は、離せッ!」

 

 尻尾を吊るされた状態で暴れるレックスを、メカニコングはぐるんぐるんと振り回した。

 プロレス技でいうところのジャイアントスイングだ。

 レックスの小柄な体をメリーゴーラウンドのように振り回しながら、ブロック塀や電柱などに幾度も叩きつける。

 

 散々打ち付けたあとメカニコングは手を放し、勢いよくレックスを隣の建物へと放り込んだ。

 重たいナノメタルの塊であるメカゴジラⅡ=レックスの機体が衝突したことで、建物はまるごと全壊。

 レックスは倒壊した建材で生き埋めにされてしまった。

 

「えーいマヌケなサルめっ、もう怒ったぞ……!」

 

 すぐさま瓦礫を吹っ飛ばし、赤い目をギラギラ光らせながら立ち上がるレックス。

 

 

 

 その鼻先に、青い電光を迸らせたメカニコングのパンチが直撃した。

 

 

 

 〈エレクトロン=ハンマーナックル〉。

 落雷のような高圧電流を帯びた、解体重機の鉄球(モンケン)よりも重い一撃。

 電気ショックと強打、ナノメタルが苦手としている攻撃の合わせ技。

 

 ラドンのキックにすら怯まなかったはずのメカゴジラⅡ=レックスが、怯んだ。

 

 ふらついているメカゴジラⅡ=レックスを、メカニコングは容赦なく殴りつけた。

 フック、ボディブロー、アッパーカット、スレッジハンマー。

 続けざまに猛烈な電撃パンチを叩き込まれ、メカゴジラⅡ=レックスはとうとう膝を突いた。

 ノックダウン、ボクシングならこのままいけば負けである。

 

 勝負が決まったというのに、メカニコングはなおも無慈悲な攻撃を加え続けた。

 レックスの頭を鷲掴みにするとコンクリート塀に押しつけ、そのまま()()()()()で擦り崩すようにゴリゴリと擦りつけた。

 おまけにメカニコングは掌から電撃を流し続けているらしく、レックスはまともに身構えることすら出来ない。

 

 そうやって散々痛めつけた挙句の果てに、メカニコングはレックスを地面へと叩きつける。

 メカゴジラの機体がアスファルトへ深々とめり込み、巨大なクレーターを築き上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンギラス、マタンゴ、ラドン、数々の強敵を相手にしながら互角以上に渡り合っていたメカゴジラⅡ=レックス。

 そのメカゴジラⅡ=レックスが、今はメカニコング相手に為す術もない。

 そんな戦いを眺めていたわたし、タチバナ=リリセは、このメカニコングがメカゴジラⅡ=レックスの天敵であることに気づいた。

 

 ……レールカノンやフィンガーミサイルでは、スペースチタニウムの頑丈な装甲を貫けない。

 マタンゴを八つ裂きにしたデストファイヤーも、メカニコングの重装甲には歯が立たない。おそらくスペースチタニウムをベースにした、対プラズマジェットの特殊反射コーティングが施されているのだろう。

 斧のフルスイングに似た尻尾の一撃(テイルアックス)も通用しないし、メーサーブレードに至ってはさきに見たとおりあっさり破壊されてしまった。

 きっとメーサー光線だって効かない。メーサー光線の原理は、電子レンジを武器にしたようなものだ。電子レンジで金属が加熱できないのと同様、スペースチタニウム製のメカニコングにメーサー光線は効果がない。

 

 

 ……そもそもメカゴジラは怪獣と戦うためのロボットだ。

 だから装備も大半が怪獣用で、メカニコングのようなロボットとの戦いなど想定していない。

 

 対するメカニコングは、LSOがメカゴジラを捕まえるために用意してきた、いわば切り札。

 メカゴジラの装備なんて殆どが対策済み、メカニコング自身の武器もメカゴジラを倒すために特化したものに違いない。

 まさにメカゴジラ・キラーだ。

 

 そして格闘戦、プロレスではどうみてもレックスの分が悪い。

 機敏さでは(まさ)るものの、パワーでは完全に押し負けている。

 これでは筋骨隆々の大男に小さな子供が挑むようなものだ。

 このままだとレックスが捻り潰されてしまう。

 わたしは深く息を吸い、立ち上がった。

 

「……ちょっと、行ってくるね」

「まて!!」

 

 一緒に隠れていたエミィがわたしの腕をつかんだ。

 

「ばか、行くな! 殺されるぞ!!」

 

 そうやってエミィは、わたしの腕を離そうとしなかった。

 ……エミィは本当に賢くて、そして本当に優しい子だ。

 これからわたしが何をしようとしているのか、ちゃんとわかっている。

 だからこそわたしを止めようとしているのだ。

 

 

 でも行かなきゃ。

 

 

「……あのね、エミィ」

 

 今にも泣き出してしまいそうなエミィに、わたしは真正面から向き合った。

 

「わたしはね、わたしたちを守る為に戦ってくれてる仲間を見殺しにするような、イヤな大人になりたくないんだ」

「だったらわたしも……」

 

 そうやって一緒について来ようとするエミィを、わたしは「ダメダメ」と制止した。

 

「エミィはおじさんやゲンゴ君たちを連れて逃げて。できるよね?」

 

 ……わたしは上手く笑えているだろうか。

 恐怖で引き攣りそうな口元を力押しで誤魔化し、笑顔を作る。

 でも、でも、と震える手ですがりつこうとするエミィに、わたしは言って聞かせた。

 

「大丈夫、大丈夫だから。

 あんなスペースチタニウムのモンキーシンバルなんかにわたしが負けるわけがない」

 

 ……そうだ、いいことを思いついた!

 わたしは思いつきを喋った。

 

「そうだよ、ほら、あいつはスペースチタニウムじゃん?

 バラバラにしたらきっと高く売れるよ、そしたらわたしたちも大金持ちだ!

 それでお祝いも豪勢にしよう!

 だから、ね?」

 

「リリセ……」

 

 わたしの気持ち、覚悟が伝わったのだろうか。

 エミィの手が一瞬、ゆるんだ。

 その瞬間、わたしはエミィを振り払い、全力で駆け出した。

 

「リリセッ!!」

 

 ……行先は決まってる。

 ()()を使おう。

 ()()ならきっとレックスを助けられるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 エレクトロン=ハンマーナックルの殴打でノックアウトされたメカゴジラⅡ=レックスに、メカニコングは伸し掛かった。

 いわゆるマウントポジションだ。

 メカニコングを押しのけようとするレックスだったが、電気ショックの余波で力が入らない。

 

 そんな、抵抗もままならないレックスを、メカニコングは両拳で容赦なく滅多打ちにした。

 

 パンチを一発叩き込まれるごとに電撃も流し込まれ、メカゴジラⅡ=レックスは弱っていった。

 雷よりも強い衝撃。これ以上打ち込まれ続けたら、さしものメカゴジラでも壊れてしまう。

 たとえレックス自身が戦い続けたくとも、電子頭脳に組み込まれた保護システムが作動して緊急停止するのも時間の問題だ。

 

 ただ電撃パンチで痛めつけることだけに特化したメカニコング。

 こんな創意工夫もないやつに、ハイテクの権化であるはずのメカゴジラⅡ=レックスが手も足も出ない。

 ……こんなやつに負けるなんて、悔しい。

 レックスがそう思ったときだった。

 

 

 

〈 おい、そこの100万ゴリラパワー! 〉

 

 

 

 響いた怒鳴り声。

 

 

 

〈 こっち向けええ!! 〉

 

 

 

 言葉のとおりに振り返ったメカニコングの顔面へ、重たい金属の円盤が飛んできた。

 フリスビーのような高速回転で飛んできたのはマンホールの蓋だ。

 猛スピードで投げつけられた重さ数十キロの鋼鉄の塊に、メカニコングはすかさず反応した。

 腰を捻り、腕を振り上げ、自慢の剛腕でタイミングよくキャッチするメカニコング。

 金属同士が激突する重い音が響いた。

 

 ……誰だろう、今のは。

 レックスは重たい首を持ち上げ、声が聞こえた方へと顔を向ける。

 声の主は、一台のパワードスーツだ。

 レックスは辛うじて動作するセンサーで、そのパワードスーツの細部をスキャンした。

 

 直立二足歩行に、長い腕を備えた胴体。

 旧地球連合が開発したもので、たしかアラトラム号やオラティオ号にも同型のモデルが載せられていたはずである。

 

 だが、かなり改造されている。

 

 旧タイプのパワードスーツがベースになっているが、金銀に輝く無限軌道(キャタピラ)のような装甲が追加されている。

 他にも背中には丸鋸のようなグラインダー、ドリルの鼻とショベルのような顎を備えた頭部。

 腰のラックにはドリルやハンマーなど数々の工具がずらりとぶら下がっており、チューンナップされたフットパーツにはホバリング用ブースターまで増設されている。

 レックスのデータベースによれば、これらの追加パーツは旧地球連合軍が使用していた『地底戦闘車』のものだ。

 あるいはスクラップから部品を転用したのかもしれない。

 

 そして胴体にあるのは〈MOGERA(モゲラ)〉のロゴ。

 

 そのロボット怪獣:モゲラの頭部スピーカーから甲高いハウリング音が走り、怒鳴り声が響く。

 

 

〈 やい、ブリキのゴリラめ!

 弱い者いじめしかできねーのかよ!? 〉

 

 

 その声は、タチバナ=リリセだった。

 モゲラのパイロットはタチバナ=リリセだ。

 彼女は今ロボット怪獣モゲラを駆り、メカニコングに戦いを挑もうとしているのだ。

 

 メカゴジラⅡ=レックスを救うために。

 

 

 

〈 来やがれ、バケモノ!! 〉

 

 

 

 面と向かって挑発されたことで、メカニコングもモゲラを敵と認識したようだ。

 掴んでいたマンホールの蓋を煎餅のように叩き割ったメカニコングは、行動不能のレックスをその場に捨て置いてモゲラへ挑みかかった。

 




あのBGM緊迫感溢れてて好きなんですけど、ついキングコングがとことこ歩いてる姿を幻視してしまうんですよね。
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