怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。 作:よよよーよ・だーだだ
液状化した地面に嵌まり込んで動けないメカニコングと、そいつをモゲラのデモリッシャー・ハンマーで延々と殴り続けるわたし、タチバナ=リリセ。
わたしはメカニコングに一切容赦しなかった。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ――――ッッ!!」
……『It is a beauty killed the beast』って?
よせやい。いくらわたしが超絶銀河スーパーウルトラセクシーキュートな美少女だからって『beauty』だなんて照れるじゃん。
え、なに、『コングにオラオラかましてるメスゴリラが何言ってんだ』って?
花も恥じらうこの乙女にそんなこと言うデリカシーゼロ野郎は、このブルーダイヤのハンマーでブッとばすぞ☆
……とまあ冗談はさておき。
しかし流石にカタいな。
メカゴジラⅡ=レックスとの格闘戦を想定した設計だからか、メカニコングはわたしの想定を遥かに超えて頑丈だった。
これだけハンマーで滅多打ちにしているのに、メカニコングは装甲が凹むだけで機能停止には至らない。
とはいえまだ“手”はある。
モゲラのアームを腰へと伸ばし、新しい工具へと換装する。
わたしが選んだのは〈バスタードリル〉。
オペレーション=グレートウォールでの土木作業に使われたドリルビットのコピー品で、パワードスーツ用に小型化したものだ。
これさえあればスペースチタニウムの装甲なんて目じゃないぜ!!
わたしはバスタードリルをメカニコングの右肩関節へと突き立て、スイッチを入れた。
「喰らえッ!!」
バスタードリルが猛烈な勢いで回転し、メカニコングの肩から火花と削りカスのシャワーが血飛沫のように噴き出す。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……という機関銃のような金属音が数十秒ほど続いただろうか。
手応えがあった。
それと同時にメカニコングの右肩から力が抜け、上腕がだらしなく外れ落ちた。
ついにメカニコングの肩関節を粉砕してやったのだ。
……いける!
わたしは真っ赤に加熱したバスタードリルの矛先を、今度は胸部装甲の隙間に突っ込んだ。
狙うはメカニコングの体内、そのまた奥に収まっているはずの動力機関だ。
再びドリルのスイッチを入れ、ひときわ激しい金属音がわたしの聴覚を乱打する。
……さっきは肩関節だったが今度は大事な機関部が収まった胴体部分、それなりに装甲も分厚いだろう。
むしろこちらのアーム強度がもつだろうか。いくらドリルが頑丈でも、それを支えるアーム部分が壊れる可能性は充分ある。
モゲラ勝つか、コング勝つか。
この勝負は、技術力が高い方が勝つのだ。
そして勝ったのはわたし
甲高い金属音と共に、バスタードリルがメカニコングの胸部装甲を突き破った。
あと一発でメカニコングは串刺しだ。
……いいや、そんなものでは物足りない。
わたしはモゲラのアームをパイルへ換装した。リクファクション・アタックをコングの体内にぶち込んで粉微塵にしてやる。
わたしは勝利を確信し、叫んだ。
「やった、勝ったッ!!
そのとき、メカニコングの目が閃光を放った。
突然のストロボフラッシュ。
真っ白な光に目を貫かれ、わたしは視覚を奪われた。
「しまった……!」
モゲラが倒れないようバランスを取ることは出来たけど、手探りの操縦ではそこまでが限界だ。
攻撃は中断せざるを得ない。
その隙にメカニコングが動いた。
眩んだ目をなんとかこすって視覚を取り戻したわたしが見たのは、液状化した地面から大ジャンプで飛び出すメカニコングの巨体だった。
地中からロケットで飛び上がったのだ。
「嘘でしょ……!?」
稲光を迸らせる巨大な拳を振り上げながら、メカニコングの巨体が急降下してくる。
隕石さながらの加速と迫力。
思わず身がすくんだ。
わたしは咄嗟に反応できず、メカニコングのパンチを思い切り喰らってしまった。
桁違いの衝撃がクリーンヒット、わたしの意識は一瞬ブッ飛んだ。
「ぐっ……!!」
くらくらする頭を振るい、引っ繰り返りかけたモゲラを持ち堪えようとするわたしだったが、メカニコングはすかさず追撃を加えた。
二度目の攻撃は、アッパーだった。
重さ十二トンのモゲラが宙に浮いた。
機内のわたしも無重力感に浮き上がり、十数メートルほど吹っ飛ばされ、地面へと墜落。
わたしの目の中で星が飛んだ。
ピー、ピー、ピー、ピー……
……電子音がけたたましく鳴り響いている中、瞼を開けると左目に血が入った。
どうやら額から流血しているらしい。殴りつけられた拍子に切ったのだろう。
モゲラを立ち上げようとするわたしだったが、それが叶わないことを察知した。
アームとフットパーツ、それら全てが折れてしまっている。そもそもシステムが停止していて、操作を受け付けない。
心の中でわたしはぼやいた。
(モゲラよう、おまえだらしないなあ!)
……いや、だらしないのはわたしの方か。
改造してあるとはいえ所詮は作業用重機だ。多少ぶつけたくらいではびくともしないが、メカゴジラを叩きのめすほどのパワーで殴られるとなると話は違う。
モゲラは悪くない、ちゃんと乗りこなせなかったわたしが悪い。
勇ましいことを言ったくせに、実際にスクラップにされるのはわたしの方だったようだ。
ふらつく頭に喝を入れ直していると、凄まじい金属音と共にコックピットのキャノピーが引き剥がされた。
密封されていたはずのコックピット内に外気が入り、外の光が差し込んでくる。
いきなり開ける視界、モゲラの装甲板を鷲掴みにしたメカニコングが仁王立ちしていた。
ハンマーで殴られ、ドリルで削られ、外装がズタボロになっている。
けれど動作に支障はないようだ。
さっきわたしがぶっ壊してやったはずの肩も、多少角度がおかしくなっているもののちゃんとくっついて動いている。強力な自己修復システムが備わっているのだろう。
……装甲を破ったくらいのことで勝ったつもりになってた自分が、なんだかバカみたいだ。
そうこうしているうちに、メカニコングがコックピットへ手を伸ばす。
……ヤバイ!
わたしはシートベルトを外して脱出しようとしたが、それよりも先にメカニコングの巨大な手がわたしの身体を鷲掴みにしてコックピットから引き摺り出した。
「離せっ、この変態クソゴリラめっ!!」
拳でメカニコングの手を殴りつけてみるけれど、びくともしない。
メカゴジラのミサイルも効かない相手なのだ、人間の素手で殴ったところで勝てるわけがない。
メカニコングの手の中でじたばた暴れているわたしの胴体に、締め付けられる感覚が走った。
「ぐぁっ……!」
ミシミシと肋骨が軋み、内臓が潰される激痛。
メカニコングはわたしを握り潰すつもりだ。
「が……は…………!!」
息が詰まり、視野が真っ赤に充血してゆく中でわたしは考えた。
……元々、わたしはメカニコングを真っ向から倒そうと思ってはいなかった。
いや、負け惜しみじゃないよ。本当にそうだったんだってば。
だいたいさー、モゲラがいくら最強の解体重機だからといって、所詮は重機だよ?
『ダンプが戦車に挑んで敵うか?』って話でね、倒せるわけないじゃん。
いや、コ〇ツの巨大ダンプとか来たら勝つかもしれないけどさ、メカゴジラをぶっ倒すメカニコングを解体作業用のパワードスーツなんかで倒せるわけがない。
そんなわけでわたしはメカニコングを倒してやろうなんて最初から思ってなかったのだ。
とはいえ負けてやるつもりもない。
ただし、“勝ち”とは正々堂々対決して打ち倒すこととは限らない。
わたしにとっての“勝ち”とは、『目標を達成すること』だ。
ビジネスにおいてわたしが欲しかったものが予定通り得られれば、相手がもっと儲かったとしてもこっちの勝ちだとわたしは考える。
もちろんもっと多く儲かるに越したことはないけれど、欲をかくことはしない。
欲しかった分だけ、そして必要な分だけ稼げればそれでわたしの勝利なのだ。
今回だってそうだ。
たとえわたしが倒せなくても、
わたしが捻り潰されそうになったまさにそのとき、轟音が響いた。
重厚な金属の足音。
メカニコングとわたしは足音が響いた方角へほぼ同時に振り向き、その姿を見た。
――灼熱のマゼンタ色のプラズマが揺らめく、クリスタルの背鰭。
全身から眩いばかりに漲る、白銀の輝き。
そして底無しの激情に燃える、赤い瞳。
「タチバナ=リリセを離せ、このバケモノめ!」
そう吼えたのはメカゴジラⅡ=レックスだ。
……やった、今度こそ勝った!
わたしがモゲラで戦いを挑んだ真の理由。
それは『メカゴジラⅡ=レックスが復活するまでの時間稼ぎ』だ。
多摩川の戦いでアンギラスから手痛い一撃をもらって動けなくなりながら、それでもレックスは再び立ち上がり、わたしの命を救ってくれた。
今回もきっと立ち上がってくれるだろう。
しかしそれには時間が必要だ。
わたしはレックスを信じ、勝負に打って出た。
……といってもそれほどリスキーな賭けでもなかったけどね。
わたしの体を冒したマタンゴを駆逐し、ラドンに踏み潰されても屈せず立ち向かってくれた。
そんな最高にカッコいい最強のスーパーロボット、メカゴジラⅡ=レックスが、あんなかみなりパンチごときでダメになるわけがないのである。
ざまあみろ、クソゴリラめ。
叩きのめしてやったはずの敵が再起していることを察知したメカニコングは、手の中のわたしを放り捨てると、復活を遂げたメカゴジラⅡ=レックスへ向かってゆく。
思い切り振りかぶった鋼の拳からは青白い雷光が溢れている。
エレクトロンハンマーナックル、パワー全開の一撃をレックスは顔面から受けた。
雷鳴よりも壮絶な爆音と、重たい金属同士が正面衝突する衝撃。
その場の空気が揺れた。
だが、レックスはものともしなかった。
続けざまにパンチのラッシュを叩き込むメカニコング。
しかし、金属を打ち付ける音が響くだけで、今度のレックスはまったく堪えていなかった。
まさに蛙の面に水、まるで効いていない。
メカニコングのパンチを真正面から受けてもびくともしない、メカゴジラⅡ=レックスの雄姿。
それを見ながら、わたしはエガートン=オーバリーのメカゴジラ映画を思い出した。
――必殺、〈ハイパーランス〉!!
腕を変形させた長さ最大500メートルの巨大槍で、その硬さはダイヤモンドの約十倍!
プラズマジェットで空高く舞い上がり、超音速の錐揉み急降下でゴジラを串刺しの刑にしてやれ、メカゴジラ!!
……というのが、あのメカゴジラ映画のクライマックスだった。
原理はあのハイパーランスと同じだろう。
ダイヤモンドより硬い槍が造れるのだから、全身をスペースチタニウムより硬く出来るのも当然なのだ。
レックスの鋼の意思を体現したかのような、雷の一撃も寄せつけない鋼のボディ。
……その最強形態に名前を与えるならば。
〈スーパーメカゴジラ〉とでも言うべきか。
なおも乱打し続けるメカニコングの両拳を、レックスは鷲掴みにした。
振り払おうとするメカニコングだったが、フルパワーを発揮したスーパーメカゴジラの腕力から逃れることなど出来ない。
そんなメカニコングに、レックスは告げた。
「……メカニコング。おまえは可哀想だ。
こんなにパワーがあるのに、誰かを殴ることしかできないなんて」
そう語るレックスの声は心底悲しそうだった。
……人間の役に立ちたいという気持ちでいっぱいで、『みんなが幸せに笑える世界を創る』と語っていたレックス。
そんなレックスにとって、このメカニコングのような『人を傷つけるだけのマシーン』はどうしようもないくらい悲しい存在なのだろう。
「だから、ボクは、」とレックスは力を込めて言った。
「おまえのことを許さないッッ!!」
そしてレックスはメカニコングをグイと引き寄せ、強烈な頭突きを喰らわせた。
ダイヤモンドよりも硬いヘッドパッドがメカニコングの脳天へと直撃、金属の砕け散る轟音が響き渡る。
メカニコングの頭が胴体へめり込むと同時に、掴まれていたエレクトロンハンマーナックルが握り潰された。
自慢の両拳を粉砕されて後ずさるメカニコングに、レックスはすかさず
狙うは、先ほどモゲラが開けた胸部の大穴。ゴジラさえも串刺しにするハイパーランスの一撃がスペースチタニウムの装甲を打ち破り、派手な金属音と共にメカニコングの機体を貫く。
胴を刺し貫かれてもなお足掻いているメカニコングに、レックスが吼えた。
「バラバラに吹っ飛ばしてやる!」
そしてレックスが背鰭をマゼンタ色に光らせたとき、わたしはレックスが何をしようとしているのか理解した。
……たしかに、メカニコングの重装甲にレックスのデストファイヤーは通用しない。
だが、その内側は違う。
「くたばるがいい!!」
両目と背鰭を真っ赤に光らせながら、レックスは手からデストファイヤーを点火した。
燃え滾るデストファイヤーの拳、メカゴジラの猛烈パンチ。
放った先はメカニコングの体内だ。
レックスはいきなり出力を全開にしたらしい。
だからだろう、メカニコングの装甲の隙間や亀裂、その他ありとあらゆる穴という穴からマゼンタ色の炎が凄まじい勢いで噴き出している。
……メカニコングがロボットでよかった。
こんなの、生きたまま内臓だけを焼かれているも同然だ。
もしも動物だったらこれ以上に残酷な死に方はない。
メカゴジラⅡ=レックスのデストファイヤーで、体内から焼き尽くされてゆくメカニコング。
スペースチタニウム装甲の内側から、プラズマジェットの反響音がひびく。
その金属音は、メカニコングが叫んだ断末魔の悲鳴にも聞こえた。
メカニコングの動きが停まってもレックスはデストファイヤーを放ち続け、やがてメカニコングの装甲が赤熱し始めていた。
……きっと、デストファイヤーを弾いた対プラズマジェットのコーティングは機体の外側だけにしか施されていないのだろう。
それにプラズマジェットを弾くといっても、フルパワーの高圧高温で
……まさか本当にメカニコングを吹っ飛ばすつもりなのだろうか。
衝撃に備え、わたしはとっさに顔を庇った。
メカニコングが爆散した。
……一帯に熱い空気が溢れ、樹脂や電子基板が焦げた悪臭が立ち込めている。
わたしが目を開けると、メカニコングは上半身が消し飛んでいた。
残ったのは丸太より逞しい二本足だけ。しかしそれらも風に吹かれてゴトンと倒れてしまった。
……今まで戦った中でも群を抜く強敵だったメカニコング。
もしもレックスがあのLSOとかいう連中の手に落ちたら、あるいはこのメカニコングのような恐ろしい殺人マシーンに作り替えられていたのかもしれない。
そんなことはあってはならない、断じて。
その傍らで、メカゴジラⅡ=レックスがへたり込んでいる。
史上空前のロボット怪獣同士の戦いで、流石に疲れてしまったようだ。
「おーい、レックス!」
レックスを労おうと、わたしは手を振りながら駆け寄った。
「……! リリセ!」
どうしたのレックス、そんな顔して……
「伏せて!!」
それと同時に、わたしの背中に針で刺したような鋭い痛みが走った。
「……はへ?」
そのとき自分の身に何が起こったのか、わたしにはわからなかった。
同時に強烈なショックが全身を襲い、わたしはその場にぶっ倒れてしまった。
「……あ……ふぁ……ふぇ……!?」
立ち上がろうとしたが、出来なかった。
まるで感電した直後みたいだ。身体に力が全く入らない。
期せずして地面に押し当てた耳が、遠くから近づく数人の足音を捉える。
テーザーガンを携えた兵士たちの姿が、視界に入った。
その姿を見たわたしは、自分がテーザーガンで撃たれたことをようやく理解した。
兵士たちに続いて視界に入ったのは、黒ずくめの男の姿。
男は言った。
「おーっと、動くなよメカゴジラⅡ=ReⅩⅩ。
さもないとお友達が死ぬぜ」
その男、マティアス=ベリア・ネルソン。
ネルソンは、エミィ=アシモフ・タチバナを羽交い締めにしてピストルを突きつけていた。
「オマケ設定:メカゴジラⅡ=レックスの武装 その2」
思いつきで追加した武装各種です。
・アンドレイ
1センチにも満たない大きさの、超小型偵察機。
レックス本人と視聴覚を共有しているのはヤタガラスと同様だが、その小ささを活用した隠密行動や偵察を得意とする。
・ショックアンカー
ワイヤーを撃ち込むテーザーガンの一種。
パラライズミサイルと似ているが有線制御でより精密な調整が可能なため、対人の非殺傷兵器として使用することが多い。
・背鰭カッターカッターフィン
メカゴジラⅡ=レックスの背鰭パーツ。平時は小型化しているが戦闘時には展開される。
なおこの背鰭はオーバーヒート防止のヒートシンクとしても機能し、レックスがフルパワーを発揮するとマゼンタやレッドに発光する。
・テイルアックス
尻尾を変形させた巨大な斧。
ナノメタルで高密度形成された刃を、超音波振動で加熱して高速で叩き込む。単純だがその分強力で、怪獣の首も刎ねるほどの破壊力を持つ。
メカゴジラのテイルブローやブレードランチャー、ハイパーランスは、このテイルアックスの発展系に当たる。
・オールウェポン
フィンガーミサイル、デストファイヤー、プロミネンスREX、レールカノンの一斉射撃。メカゴジラⅡ=レックスの必殺技のひとつ。
・ハイパーランス
硬質化したナノメタルの貫き手で相手をぶち抜く技。オリジナルのメカゴジラのハイパーランスに相当する。
・デストファイヤー・フィスト
ハイパーランスからの派生技。串刺しにした相手の体内で大火力のデストファイヤーを噴射、木端微塵に爆殺する。
メカゴジラⅡ=レックスの体内放射のような技。