怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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39、さよならレックス

 エミィが、ネルソンの人質にされてしまった。

 ネルソンの腕に捕まえられながら、エミィが必死にわたしたちの名前を叫んでいる。

 

「リリセ、レックス!」

「お……ふぁ……!!」

 

 わたしはエミィに応えてあげたかったが、テーザーガンのショックで喉が痺れて声が出ない。

 這いずって逃げようにも、手足に力が全く入らない。

 そしてわたしも、自身のこめかみに冷たい鉄の感触が押し当てられるのを感じた。

 きっと銃口を突きつけられているのだろう。

 

 エミィの方はというと、ネルソンの腕の中で暴れたり噛みついたり必死に暴れていたが、ネルソンの腕力が強いのかびくともしないようだった。

 そんなわたしたちを見て、レックスがいきり立った。

 

「おまえ……っ!」

「おっとっと」

 

 尻尾のデストファイヤーを構えようとするレックスに、ネルソンはこれ見よがしにピストルをエミィの顔に押し付けた。

 そんなネルソンに合わせるように、LSO兵士たちもわたしへ銃口を向ける。

 ネルソンはへらへらと笑いながら言った。

 

「刺身にされるのは御免だぜ。

 もしここでおれを殺したとしてどうなる?

 おれは()()()()引き金を引いちまうだろうなあ」

 

 ……ぬかった。

 エミィ一人に任せるべきじゃなかった。せめてわたしが一緒に行っていれば。

 そんな思いが頭をよぎったけど、すぐに思い直した。

 仮にモゲラに乗っていたとしても、怪我人を庇いながらでは戦えない。わたしがいたところで単に羽交い締めにされる人質が増えただけだったろう。

 

 わたしたちが悔しげに睨みつけている前で、ネルソンは飄々と言った。

 

「……あーあ、やってくれちゃって、まあ。

 うちのドクター、怒るだろうなあ」

 

 そうぼやくネルソンの足下には、メカニコングの頭の残骸が転がっている。

 語っている内容は愚痴っぽいが、語る口調はどこか楽しげだ。

 

「しかしうちの強化型メカニコングをここまでぶち壊すとは、なかなか大したもんだ。

 流石あのタチバナ准将の御息女と、人類最後の希望:メカゴジラさんだけはある」

 

 ネルソンはいたく感心していた。

 そしてわたしに向き直り、にやにや笑いながら言った。

 

「どうです、ミス・タチバナ。LSOに来ません?

 きっとうちのボス、統制官もあんたのことを気に入るだろうぜ」

 

 わたしは即答した。

 

「ふあうぇぅあッ!!」

 

 『ふざけんな!!』と怒鳴ったつもりだった。

 だけど電気ショックで口が回らず、変な呻き声が涎と一緒に漏れただけだ。

 そんな情けないわたしをネルソンはゲラゲラ笑った。

 

「んー、日本語でおK」

 

 ……どこまでも人をコケにしやがって!

 地面に転がってうーうー唸りながら憤慨するわたしを横目に、ネルソンは今度はレックスに話しかけた。

 

「なあ、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩ。

 おまえは手強い、それはよーくわかった。

 だから此処でひとつ()()と行こうじゃないか」

「……取引?」

 

 牙を剥き出しにして威嚇するレックスに、ネルソンは臆することなく“取引”を持ちかけた。

 

「おれたちLSOはおまえが欲しい。

 もしおまえが素直に投降してくれるっていうなら、タチバナ=リリセたちのことは助けてやってもいい。どうだね?」

 

 わたしの名前が出た時、レックスがわずかに身じろぎしたのが見えた。

 ……レックスが迷っている。

 その迷いを振り払うかのように、レックスは声を張り上げた。

 

「……いいや、信じるものか! そうやってヒロセ家の人たちを騙したくせに!」

 

 もっともな指摘にネルソンは平然と答えた。

 

「あれは事故みたいなもんさ。

 言ったろう、おれは本当は平和主義者なんだ。

 欲しいものさえ手に入れば他の奴に用はない」

 

「レックス、耳を貸すな!」

 

 羽交い締めにされながら叫んだエミィを、ネルソンは「だまれクソガキ」と締め上げた。

 

「オトナが大事な話をしてるんだ、ガキがしゃしゃり出てくるんじゃねえ」

 

 首を絞められて顔を真っ赤にしながら暴れるエミィを抱え、ネルソンは選択を迫った。

 

「さあ、どうする、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩ?

 御友達をとるか、それとも我が身をとるか?

 おれとしてはどっちでもいいんだぜ。

 ()()()()()()()()()()()()

 

 そんなネルソンの言葉で、レックスの様子が変わったのを感じた。

 

 

 

 友達を助けるか。

 自分の身を護るか。

 究極の二択だ。わたしだって迷うだろう。

 

 

 

 だけど、レックスは違う。

 メカゴジラとして生まれ、人の役に立ちたいと願ってやまなかったレックス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなレックスの答えなんて、きっと聞くまでもなく決まっていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……わかったよ」

 

 『待って、行っちゃダメだ!』

 わたしはそう叫んだつもりだったけど舌が全く回らず、意味不明な叫び声にしかならなかった。

 そんなわたしを余所に、レックスはネルソンに訊ねた。

 

「……本当に、リリセたちのことは助けてくれるんだな?」

「あぁ、おれは約束を守る男さ。『正直ジョン』だからな」

 

 最後にレックスが振り返ったとき、わたしと目線が合った。

 ……その時のレックスは名残惜しそうで。

 

 そしてとても悲しそうだった。

 

 

 

 

 

 

「……さよなら、リリセ」

 

 そしてメカゴジラⅡ=レックスは、トランクに変形してしまった。

 

 

 

 

 

 

 メカゴジラⅡ=レックスの降伏を見届けたネルソンが口を開いた。

 

「モレクノヴァ、メカゴジラにロックを掛けろ」

「わたしにいちいち指図(さしず)するなっ」

 

 モレクノヴァと呼ばれた副官がぶつくさ文句を垂れながら、停止状態(ステイシス)のメカゴジラⅡ=レックスに電磁ロックを掛けてから抱え上げる。

 そうやってメカゴジラをしっかり確保できたところで、ネルソンは他の部下たちに告げた。

 

 

「ジジイと野郎は殺せ」

 

 

 その合図で、LSOの兵士たちは建物の中へと入って行った。

 

()っ、騙したの(らあひらろ)!?」

「騙したとは人聞きの悪い」

 

 (いきどお)るわたしに、ネルソンは平然とした顔でこう言ってのけた。

 

「言ったとおりでしょう、()()()()()()()()()()()()()()()()()ってね。

 ヒロセ家の人間を助けるとは言ってない。

 駄目だぜ、悪いオトナと取り決めするときはちゃんと確認しなきゃあ」

 

 ……なんてヤツだ。

 何が『正直ジョン』だ。

 こいつ、最低最悪のゲス野郎じゃないか。

 

「だいたい、こんな目撃者を生かしとくわけねーだろうが。

 さてミス・タチバナ、あんたの処遇だが……」

 

 ネルソンの言葉に合わせたように、LSOの兵士たちが地面に倒れているわたしを抱え上げた。

 無論、親切で立たせてくれたわけではない。

 

「あ、あんら、さっひ……」

 

 不意に羽交い締めにされて動揺するわたしに、ネルソンが告げた。

 

「『助ける』とは言ったが『逃がしてやる』とは言ってないんだなこれが」

 

 そう言うネルソンはニヤニヤと笑っていた。

 ……こいつ、最初からわたしたちを見逃すつもりなんてなかったんだ。

 レックスの犠牲が、あっさり反故にされてしまった。

 わたしは怒鳴った。

 

『このウソつき、クズ、卑怯者!

 そんなに人の心を弄ぶのが面白いのか、この性根の腐ったゲス野郎め!!』

 

 怒りに任せて思いつくかぎりの罵倒を吐きかけてやったけど、呂律の回らない口で怒鳴ったので言葉になっていなかった。

 怒り狂うわたしの罵声を涼しい顔で聞き流しながら、ネルソンは言った。

 

「ミス・タチバナ、あんたのことはうちの『統制官』もいたく御執心でね。

 こうして助かったことだし、ここはひとつ御同道願いたいのですわ」

誰が行くか(られらいぅら)っ!!」

 

 断固拒否するわたしを、ネルソンはさも残念そうに眉を顰め、しかし楽しげに笑った。

 

「……そういうことなら仕方ない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ネルソンの指示で、兵士たちが銃を構えた。

 青白くスパークする銃口、テーザーガンだ。

 電気ショックで気絶させて強引に連れてゆくつもりだろう。

 逃れようとするわたしだったけど、麻痺した身体では振りほどくことなんて出来なかった。

 向けられるテーザーガンの銃口。

 

 来たる高圧の電気ショックに備え、身体を縮こまらせたときだった。

 

 

 

 サクッ、という音がした。

 

 

 

 見ると、わたしを捕まえていた兵士たちの喉元に、細長い金属片が刺さっていた。

 投げナイフだ。

 喉をぶち抜かれた兵士たちが一斉にドサッと倒れ、捕まえられていたわたしが地面に放り出されたのを皮切りに、ナイフを投げた張本人が姿を現した。

 

 

 プロテクターで身を固め、顔を隠した姿。

 まるでニンジャだ。

 

 

 そして一体どこに隠れていたのやら、一人の登場を皮切りに続々とニンジャたちが姿を現した。

 まさにニンジャ軍団だ。

 

「な、なんだ!?」

 

 動転するモレクノヴァの様子からすると、少なくともLSOの仲間ではないようだ。

 そしてニンジャのリーダー格らしき人物の手振りで、ニンジャ軍団はLSOの兵士たちへ襲いかかった。

 同時に、建物の中から銃声と悲鳴が響く。きっと中でもニンジャたちが暴れているのだ。

 

 ニンジャたちはとてつもなく強かった。

 俊敏な動きでLSO兵士たちを翻弄し、ナイフを苦無(クナイ)手裏剣(シュリケン)のように巧みに使いこなして次々と仕留めてゆく。

 

 電気ショックの麻痺がだいぶ抜けてきて、わたしは身を起こした。

 唐突なニンジャの登場。わたしの中では安堵よりも、困惑の方が大きかった。

 ……どこの誰だ、いきなり出てきて。

 

 そうこうしているうちに、ニンジャ軍団はLSOの兵士たちを制圧。

 わたし、タチバナ=リリセの身柄も確保し、そして最後に残ったLSOのネルソンとモレクノヴァを取り囲む。

 

 そんなニンジャ軍団の奥から背の高い人物が現れたとき、わたしは思わず声を挙げてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……えっ、なんで、この人が出てくるの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現れたのは長身の人物。

 白装束をまとい、輝くような金色の長髪、そして顔を隠す仮面。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでです、Legitimate Steel Order」

 

 

 ニンジャ軍団を率いながらそう告げたのは、エクシフの聖女:ウェルーシファだった。

 

 

 

 

 

 




登場怪獣紹介その3

・メカニコング
身長:3.5メートル
体重:15トン
二つ名:ゴーレム、ロボット怪獣
主な技:エレクトロンハンマーナックル

 初出は『キングコングの逆襲』。
 ゴジラ怪獣と呼ぶには疑問符がいっぱいつきますが、一応東宝特撮怪獣ということで。

 元々は作業用ロボットでキングコングをモデルに開発されたものの、そのわりには電磁波や電流に弱くてすぐぶっ倒れたり、一号機がぶっ壊れた途端に二号機がすぐ用意できる辺り粗製なんじゃないか疑惑があったり、意外とポンコツっぽいのがチャームポイント。
 「主人公怪獣のコピーとして造られたロボット怪獣」としてはメカゴジラに先行する怪獣でもあります。

 上記の出自から権利関係が曖昧らしく、再登場に恵まれません。
 『ゴジラVSコング』でメカゴジラが登場するという噂もありますし、これを機にメカニコングの扱いもはっきりしてくれるとよいのですが……。



・モゲラ
身長:3メートル
体重:12トン
二つ名:ファベル、ロボット怪獣
必殺技:リクファクションアタック、デモリッシャーハンマー、クラッシャードリル

 モゲラの初出は『地球防衛軍』。
 日本特撮怪獣映画史上初のロボット怪獣として知られています。
 平成世代では『ゴジラVSスペースゴジラ』のMOGERAがお馴染み、人形劇『ゴジラアイランド』には両方出てきます。

 『VSスペースゴジラ』のMOGERAはメカゴジラをも凌ぐ強豪なんですけど、『地球防衛軍』のモゲラはそれほど強くありません。
 防衛隊の集中砲火には耐え抜いたものの崖に墜ちてそのまま動けなくなったり、腕をグルグル回しながら地面を掘ってマーカライトファープを引っ繰り返そうとしたら巻き添えで潰されたり。
 のそのそした動きも含めてそのドジっぷりが実に愛くるしい奴です。

 平成MOGERAじゃなくて昭和モゲラのイメージで書きました。
 ……モゲラのリボルテック、買っとけばよかったなあ。
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