怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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41、明星と天帝

 

 真七星奉身軍の拠点に招かれたわたしは、ウェルーシファの私室へと案内された。

 

 部屋自体は和室だが、置かれている調度品はどうみても洋風のアンティークだった。

 畳の間なのに洋風のテーブルとソファが置かれている、違和感のある部屋だ。

 テーブルとソファの脚が柔らかい畳にめり込んでしまっているし、本来なら掛け軸でも掛かっていそうな床の間には、エクシフの七芒星旗が張られている。

 そのソファへかけるように促され、わたしはテーブルを挟んでウェルーシファと対面した。

 

「……リリセさん」

 

 ウェルーシファが、穏やかな口調で切り出したのはヒロセ家のことだ。

 

「ヒロセ家の方々ですが、皆さん命に別状はありませんでした。

 せいぜい手足の骨が一本か二本、といったところでしょうか。

 一番重傷なのはヒロセ=ゴウケン氏ですが、意識ははっきりされています。

 わたくしの方で医療機関を手配しました。しばらく療養されるといいでしょう」

 

 ……よかった、死人が出なくて。

 わたしは、息を吐いた。

 直近にして最大の懸念事項が解決した。

 

 

 とはいえ、後悔せずにはいられない。

 

 

 メカゴジラⅡ=レックスを探すように依頼してきた依頼人。

 こちらから連絡する手段もない、どこの馬の骨ともわからない、そんな怪しい人物の依頼なんて受けるべきではなかった。

 『余計なトラブルに巻き込みたくない』?

 もしそういうなら、そもそもレックスを家に連れ帰ってくるべきじゃなかった。人目から隠しておけば大丈夫、だなんて浅はかにもほどがある。

 『何事も起きなければ問題ない』??

 わたしが家まで連れて帰って来さえしなければ、こんなことにはならなかったのだ。

 

 

 

 ……全部、わたしのせいだ。

 わたしはなんて迂闊で、浅慮で、大馬鹿だったのだろう。

 

 

 

 後悔してもしきれない。

 固く唇を噛んでいるわたしに対し、ウェルーシファは言った。

 

「タチバナ=リリセさん。タチバナという苗字は日系でしたね。

 日本人の感性からするとこの部屋はお気に召されないでしょうが、どうか御容赦くださいな。

 わたくしもこの国に移り住んでから十年以上経ちますが、純和風というのも疲れるもので」

 

 ウェルーシファは和やかな態度を崩さなかった。

 世間話を交えてくれているのは、場を和ませてくれようという気遣いだろうか。

 

「こちらも、お口に合えばいいのですが……」

 

 そう言いながら、ウェルーシファが急須から白い陶器のティーカップへ注いだのは、湯気の立った緑茶だった。

 さらに、ショートケーキでも合いそうな洋風の小皿には、小豆色の四角い羊羹が盛られ、爪楊枝じゃなくて小さなフォークが添えてある。

 たしかにウェルーシファの言うとおり、どこまでも和洋チャンポンだ。

 

 

 だけどそんなこと、どうでもいい。

 

 

「……ウェルーシファさん」

 

 わたしは単刀直入に切り出した。

 

「あなたがた奉身軍は新生地球連合なんでしょう? ネルソンやLSOは仲間じゃないんですか」

 

 わたしの問いに答えたのはウェルーシファの傍らに控えていた、マン=ムウモだった。

 

「あんな連中、仲間でも何でもない。

 Legitimate Steel Orderの実態は、ビルサルドの傀儡だ。

 『正当なる鋼の秩序(Legitimate Steel Order)』だと?

 首魁がビルサルドというだけで、正当性や鋼の秩序など欠片もありはしない、ただのゴロツキだ。

 新生地球連合は本来我らが聖女、ウェルーシファ様が、盟友マリ=カエラの意志を引き継いで始められたもの。

 LSOなんぞ、野良犬どもに聖女様の御慈悲で軒先を貸してやっただけのことに過ぎん」

 

 忌々しげな表情を浮かべながら、ムウモは続けた。

 

「そしてLSOを率いるビルサルドの統制官、〈ヘルエル=ゼルブ〉。ヤツの思惑は、完全に新生地球連合の本義を逸脱している。

 やつが本性を露わにしたのは昨年、メカゴジラ再構築計画が完了した頃合からだ。

 メカゴジラ再構築の片手間にビルサルドのやつら、『ナノメタライズ』などと称して、ナノメタルを人体へ埋め込む生体改造実験に手を出していた。

 挙句の果てに『パクス=ビルサルディーナと地球環境最適化プラン』だと? ふざけたことを」

 

 今にも吹き零れそうにLSOへの怒りをぶちまけるムウモの話を、わたしは黙って聞いていた。

 

「…………。」

 

 エクシフ派である真七星奉身軍と、ビルサルド派であるLegitimate Steel Order。

 要するに、新生地球連合におけるエクシフ信者とビルサルドの仁義なき戦い。

 組織の内部抗争だ。

 

 

 ……そのくだらない、心底どうでもいい内輪揉めに巻き込まれたのか、わたしたちは。

 

 

 しかもヒロセ家の人たちに怪我までさせて、レックスと、大切なエミィまで奪われて。

 ふざけんじゃねえ。

 あまりにも理不尽な状況への怒りで、わたしは全身が震えるのを感じた。

 爆発しそうな怒りを抑え込みながら、わたしは言った。

 

「……ウェルーシファさんたち真七星奉身軍がLSOとは仲間じゃない、ってことはわかりました。

 もうひとつだけ、いいですか」

 

 LSOが下衆な悪党なのはもうわかってることだ。

 だけど、一番肝心なことをまだ教えてもらっていない。

 ウェルーシファたちに、わたしは問う。

 

 

 

「そもそもあなたがたがレックス……いや、メカゴジラを欲しがってる理由は何なんですか。

 LSOに渡さなかったら、あなたがた奉身軍はメカゴジラをどうするつもりなんです?」

 

 

 

 LSOと奉身軍の対立、その主軸にメカゴジラⅡ=レックスがあることは、部外者のわたしから見ても明白だ。

 こんな争奪戦をやってるのは、ウェルーシファたちもメカゴジラが欲しいからだ。

 LSOが欲しがるのは想像がつく。

 メカゴジラを手に入れて世界征服、どうせそんな馬鹿げたことでも考えてるんだろう。

 

 だけど、逆にウェルーシファたち奉身軍が欲しがる理由がわからない。

 エクシフの信仰上の理由? んなバカな。

 レックスをLSOに渡すつもりは更々ないが、奉身軍ことウェルーシファが手にした場合はどうするつもりなのか、どうしても聞かなければ気が済まなかった。

 

「……っ」

 

 そんなわたしの疑問は、問題の核心を突いていたのだろう。

 マン=ムウモが口ごもりながら、両目を細めている。

 他方、ウェルーシファは、相変わらず口元の薄い微笑みを絶やさない。

 

 

 

「……ムウモ、人払いを」

 

 

 

 ウェルーシファの指示に、ムウモが目を見開く。

 

「聖女様っ、まさか『あの話』をされるおつもりでは……」

「ええ。彼女にはそれを知る権利がありますから」

 

 ウェルーシファの指示を受け、動揺しつつもムウモは襖を開け、室外が無人であることを確認する。

 今この場にいるのはウェルーシファとマン=ムウモ、そしてわたし、タチバナ=リリセの三人だけだ。

 

「……いいですか、リリセさん。

 これから話すことは、他人(ひと)にみだりに話してはなりません。

 一度聞いたらもう引き返すことはできませんよ。

 その覚悟は、ありますか?」

 

 わたしは即座に頷いた。

 レックスだけじゃない、大事な人たちを傷つけられたのだ。

 今さら引き返すつもりなんて欠片もない。

 

 躊躇なく覚悟を受け容れたわたしを見、ウェルーシファは意を決するように一呼吸おいてから話し始めた。

 

 

 

「……タチバナ=リリセさん。あなたは、〈明星の民〉と〈天帝ニヒル〉の物語をご存知ですか」

 

 

 

 ……明星(みょうじょう)の民、天帝ニヒル。

 どちらも聞いたことのない名前だった。

 隣のムウモをちらと見ると、瞬きもせずに険しい表情を浮かべている。

 エクシフ信者だけで通じる符牒かなにかなのだろうか。

 

 ウェルーシファは続けた。

 

「我らエクシフの間で伝わる、遥か太古の昔に栄えた種族、〈明星の民〉の伝説です」

 

 ウェルーシファはそのように語り始めた。

 

「明星の民は、かつてこの宇宙に強大な帝国を築いていた偉大なる種族でした。

 その文明レベルはビルサルドはおろか、我らエクシフでさえ遠く及ばぬ神の領域に至っていた。

 栄華を極めた末、彼らが目指したのは永久(とわ)に続く繁栄と秩序、そして永遠不滅の意志。

 その探求の過程において、彼らは『肉体を捨てる技術』すら編み出したと言います」

 

「肉体を、捨てる?」

 

 よく意味が分からなかった。

 生身の肉体を捨てる、という意味ならサイボーグ化のことだろうか。

 サイボーグ化ならビルサルドの人工臓器テクノロジーが知られているが、そんな大仰に言うような代物とも思えない。

 

「どれほど肉体を改造しようと、劣化する物質存在である限りその存在は摩耗し、いずれ必ず滅ぶことになる。

 であれば、滅びを定められた肉体という形を捨て去り、第五元素(エーテル)に意志を宿すことで、その存在は不滅となる。

 彼らはきっとそのように考えたのでしょう」

 

 つまり生きたまま幽霊になるってことだろうか。でもそれだと死ぬのと変わらないような気がする。

 途方もない話だった。エーテルだの不滅だの、もはやオカルトの領域だ。

 そしてそんな話がレックスとどう繋がるのだろうか。気が急きつつも、わたしは黙ってウェルーシファの話を聞き続けた。

 

「……しかし、その不死の探求の果てに、目覚めさせてはならない存在を彼らは揺り起こしてしまった。

 この世界における真の上位存在、天帝(オーヴァーロード)を前に、明星の民は自分たちがどれだけ思い上がっていた傲慢な存在だったか、とくと思い知らされることになりました。

 全宇宙に覇を唱え永久の秩序をもたらそうとした明星の民ですら、その存在の全力を前にしては数日ももたなかった。

 輝かしい明星の帝国は、あの怪物のために永遠に死の世界になってしまったのです。

 明星の文化も科学も根こそぎ焼き尽くした、その真名(まな)を口にすることさえ(はばか)られる恐怖の具象。

 その絶対的な破壊の権化を、我々エクシフは虚無(Nihil)の天帝、〈ニヒル〉の忌み名で呼んでいます」

 

「天帝ニヒル……それって怪獣なんですか?」

 

 わたしが訊ねると、ウェルーシファは首肯した。

 

「かの天帝の全貌を把握している者は、もはやこの世界にはいません。

 おそらくは高次元存在、宇宙を収奪する怪獣の一種だったのでしょう。

 ……しかしこれだけははっきりしている。かの天帝がゴジラ以上の脅威であるということ」

 

 ゴジラ以上の脅威、つまりその天帝とかいうのはゴジラより強い怪獣ってことだろうか。

 そんなものがこの世にいるとは思えない。

 だが、かといってウェルーシファが嘘を言っているとも思えなかった。

 全宇宙は広いのだ、隅々まで探し回ったらいないこともないかもしれない。

 ウェルーシファは続けた。

 

「初めてこの世界に産み落とされてから三十年、未だにこの星ひとつ滅ぼせないゴジラなど、数日で連なる星系すべてを喰らい尽くした天帝に比べれば恐るるに足らない。

 そして天帝は今、地球に狙いを定めています。このままでは、地球は天帝ニヒルのために死の星となるでしょう」

 

 地球は狙われている、なぜそう言い切れるのだろう。

 わたしが訊ねるよりも先にウェルーシファは答えた。

 

「我々エクシフが宇宙を放浪してきたのはあなたもご存知でしょうが、その途上において我々は多くの文明の終焉を目にしてきました。

 その中には、天帝の毒牙によるものと思われる滅びがいくつもあった。

 その際に見られた兆候(しるし)がこの星にも表れているのです」

 

「それって、まさか……」

 

 わたしの頭の中に浮かんだものを読み取ったかのように、ウェルーシファは言った。

 

 

 

「そう……ゴジラです」

 

 

 

 そしてウェルーシファは続けた。

 

「天帝ニヒルの獲物は、その文明における最強の霊長。すなわち、この星で呼ぶところのゴジラを喰らう。

 このままゴジラが成長を続けこの星の支配者の座を手に入れれば、天帝はその熟した果実であるゴジラを喰らいに現れる。

 その在り様はまさに〈星を喰う者〉。そしてそのまま、この星を喰い尽くすでしょう」

 

 ゴジラを喰ってしまう、ゴジラ以上に恐ろしい〈星を喰う者(Planet Eater)〉。

 どんな姿か知らないが、とてつもなく巨大なそいつが地球を丸呑みにする光景をわたしは想像した。

 

 同時に、合点のいくこともあった。

 

 地球にやって来たエクシフたちがゴジラ討伐に協力していた真の理由。

 単に移住先が欲しいだけなら、ゴジラが暴れまわるこの星をわざわざ選ぶことはない。

 

 エクシフがゴジラを討伐しようとしていたのは、ゴジラ以上の脅威である天帝ニヒルの襲来を防ぐため。

 天帝ニヒルの餌となるゴジラを先に討伐してしまえば、天帝ニヒルは現れない。

 そして、博愛の人道主義を主是とするエクシフは、眼前の破滅へと突き進んでゆく地球文明を放っておくことができなかったのだ。

 

 ウェルーシファが語る壮大な神話はついに核心、メカゴジラへと到達する。

 

「そのような運命の流れの中においては、唯一ゴジラに抗することができる〈鋼の王〉の存在こそが、天帝ニヒルを祓う鍵となるでしょう。

 邪悪な天帝ニヒルを呼び寄せるゴジラを討ち、ひいては天帝そのものさえも滅することができる光の聖剣。

 それが鋼の王にして人類最後の希望、〈メカゴジラ〉なのです」

 

 そしてウェルーシファは口を閉じた。話は終わったようだった。

 

 

 

 

 ……ここまで聞いていたわたしは、怒りたくなった。

 

 たしかに、メカゴジラⅡ=レックスはナノメタルで出来たスーパーロボットだ。

 その気になればゴジラでさえやっつけられる、そういう凄い力を持っているのかもしれない。

 けれど、心は普通の子だ。

 花の美しさに目を惹かれ、人が楽しそうにしていれば無邪気にはしゃぎ、命の尊さをちゃんと理解してくれる。

 わたしの知ってるレックスは、そういう善い子なのだ。

 そんなレックスを、ニヒルだかなんだか知らないが怪獣を殺す為の道具に使おうだなんて、この人たちは結局LSOと大差ないじゃないか。

 

 同時に、エミィがエクシフを嫌う理由もこれでわかったような気がした。

 この人たちは、自分たちの掲げる御大層な大義のために、罪もないレックスを使い潰そうとしている。

 そんな残酷な仕打ちを、正しいことだと信じて疑ってすらいない。

 ……そんな酷い人たちに、レックスを渡したくない。そんな言葉が喉まで出かかった。

 

「……ご不満でしょうね。見ていればわかりますよ」

 

 そうやって憤慨するわたしの心を見透かしたように、ウェルーシファは言った。

 

「しかし天帝による破局を回避するために、我々が選べる道はそう多くはありません。

 ゴジラを斃し、天帝を祓い、そしてこの星を護る。

 かの鋼の王こそが『人類最後の希望』、それが彼女に課せられた天命なのです」

 

 それとも、とウェルーシファは言う。

 

「それともLSO、ビルサルドに任せてみますか?

 ゴジラを斃すことにおいては彼らも一致していますから、道筋は違えど同じ結末に辿り着くかもしれません。

 かの『鋼の王』がビルサルドに従う道を選ぶなら、それもまたよいでしょう。

 ……まあ、目先の実存に固執し因果の流れを掴めないビルサルドに任せたとしたら、あなたにとっては非常に不本意な結果になると思いますが」

 

 ウェルーシファの言う通りだ。

 ウェルーシファがレックスを手に入れなかったとして、その場合は代わりにLSOが手に入れることになる。

 怪獣を操り、人殺しも辞さないあんな非道な連中の手に落ちたら、その方がよっぽど不幸な事態を招くだろう。

 

「……で、おまえはどうするのだ」

「えっ」

 

 ムウモの問いかけに、わたしは思わず聞き返してしまった。

 そんなわたしを見ながら、ムウモは呆れ顔で言った。

 

「聞くだけ聞いてハイサヨウナラ、とでも思っていたのか?

 ここまで聞いたなら、多少なりとも協力してもらうぞ」

 

 突然のことで戸惑うわたしに、ムウモが急かすように追い討ちをかけた。

 

「メカゴジラが奪われた今、愚図愚図している暇はない。

 決めるならさっさと決めてもらうぞ。

 さあ、ここで決めろ」

 

 迫るムウモの剣幕から、状況が非常に切迫していることはわたしにもよくわかる。

 ……だけどそんなの、急に決められるわけがない。

 そんな大人げないムウモを、ウェルーシファは「まあ、まあ」と宥めた。

 

「迷うのも知性ある故。真実を知ったばかりのリリセさんにそんな即断をさせるのは酷というものですよ、ムウモ。

 ……それに、もとはといえば新生地球連合の問題で、リリセさんは巻き込まれただけの被害者。

 本来ならば我々だけで片付けるべきです」

 

 そしてウェルーシファは穏やかな口調で言った。

 

「いかがでしょう、リリセさん。あなたはヒロセ=ゴウケン氏の看護に行かれては。

 あなたが傍にいれば、氏もきっと安心されることでしょう。

 そのあいだにこのウェルーシファと奉身軍、神明に誓って、福音をもって戻ることをお約束いたします」

 

 その言葉の裏の意味を察し、わたしは眉をひそめた。

 つまるところ、ウェルーシファはこう言っているのだ。

 

 

 

 

「……安全な場所へ隠れてろ、ってことですか?」

 

 

 

 

 低い声で訊ねたわたしに、ウェルーシファはにっこりと答えた。

 

 

 

 

「仮にそのようにしたとしても、あなたが責められる謂れはないかと思いますよ。あなたはまだ若いのですから」

 

 

 

 

 その返答で、わたしの中で何かがキレた。

 

 ……大事な家族のエミィと、友達のレックス、そしてヒロセ家の人たち。

 大切な人たちが傷つけられたのに、何もするなって?

 ウェルーシファたちがエミィを連れて帰ってきてくれるのを、安全なところで待ってろってこと?

 それに、ウェルーシファがさっきからわたしを若造扱いするのも気に入らない。

 まあ、その態度が、年長者としての善意から来るのはわかるんだけどさ。

 

 

 ……ふざけるな。ナメるのも大概にしてよ。

 

 

 バン! わたしはテーブルに手を着いて立ち上がった。

 わたしの豹変にムウモは驚いたようだが、ウェルーシファの方は微動だにしない。

 

「……ウェルーシファさん。

 こちとら伊達にサルベージ稼業で怪獣と毎日やり合ってないんです。

 なのにそんな『何も出来ない役立たず』みたいな扱いされたら、わたしの沽券にかかわるんですよ」

 

 そしてわたしはウェルーシファに迫った。

 

 

 

 

「あなたがたは、わたしに何をしてほしいんですか?」

 

 

 

 

 闘志の炎を宿したわたし、タチバナ=リリセの瞳を、ウェルーシファは微笑みながら見つめていた。

 

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