怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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第二章はここまで。。。


42、ヘルエル=ゼルブ登場

 LSOによるヒロセ家襲撃から数日後。

 

 立川にはかつて自衛隊の駐屯地があったが、新生地球連合軍:LSOが拠点にしているアジトはそれとは別の場所にあった。

 

 ヘリポートの掲揚ポールには、ビルサルドの六角形マークに『LSO』の三文字――つまりLegitimate Steel Orderのマークである――が描かれたフラッグがはためいている。

 

 こちらの基地は元々引き払うことが決まっていたらしい。

 LSO兵士たちの指揮の下、雇われた作業員たちが輸送ヘリへ荷物を積み込む作業に忙しく従事していた。

 

「……おい」

 

 そんな中、監視の兵士の一人が、作業員の一人を呼び止めた。

 自分が呼ばれていると思っていないのか、その作業員は無視して作業を続けようとしていたので、兵士が肩を叩いて呼び止める。

 

「おい、おまえだ、おまえ。

 おまえ、見慣れん顔だな。所属を言え」

 

 そう呼び止められた作業員はそれに応えないまま、肩に乗せられた手を思い切り振り払い、全力で走り出す。

 

「おい待て!!」

 

 侵入者を察知した兵士は大声を挙げ、基地内に警報が響き渡る。

 流石に訓練された兵士たちは瞬時に臨戦態勢、銃を構え、作業員を包囲した。

 ……ここまでか。

 侵入者こと()()()も観念し、足を止めた。

 

 

 その中に割って入ってきたのは黒ずくめのLSO指揮官、マティアス=ベリア・ネルソンだ。

 

「はいはいちょっくらごめんよー……おーっと、これはこれは!」

 

 わたしの顔を見たネルソンは、口角を釣り上げた。

 

 

「ようこそ、“ミス・タチバナ”」

 

 

 鷹揚に歓待の態度を示そうとするネルソンを、わたし、タチバナ=リリセは睨みつける。

 先日のヒロセ家襲撃時に見せた『人を舐め腐った態度』。

 この男ならこう動くと思っていた。

 

 ……この油断丸出しのタイミングを待っていた。

 わたしは叫んだ。

 

「動かないで!!」

 

 そして、羽織っていた作業服を脱ぎ捨てる。

 わたしは手の中のリモコンをこれ見よがしに構え、そして『お腹のベルト』を引っ叩きながら怒鳴った。

 

 

 

「エミィとレックスを返して! さもないとこの爆弾を吹っ飛ばすよ!!」

 

 

 

 腹に巻いたダイナマイト、いわゆる腹マイトである。

 

 

 

 この爆薬は、新宿でアンギラスを生き埋めにする際に使ったのと同じものだ。

 量はずっと少ないが、それでも半径十数メートルを吹っ飛ばすくらいの破壊力はある。

 そしてネルソンは爆風の範囲内だ。

 一歩でも動いたら、容赦なくリモコンで起爆してやる。

 

 ネルソンの部下たちにも向けて、わたしは叫んだ。

 

「アンタたち、自分たちのボスを死なせたくなかったら、今すぐここにエミィとレックスを連れてきなさい!! これは脅しじゃないから!!」

 

 一瞬の間があってから、ネルソンは言った。

 

「……あんた、自分が何をやってるかわかってんのか?」

 

 そう言いながら、ネルソンは逃げも隠れもしなかった。

 ……なんだろう、この違和感。

 その表情は動転しているというよりも、呆れ返っているかのように見える。

 

「見えないの!? 爆弾だよ!? ホラ!!」

 

 念押しで見せつけてみせたけど、兵士たちもまったく動じていなかった。

 ボスが殺されかけている、自分たちも爆弾の巻き添えにされるかもしれない。

 ……なのに、なんで平気なの、こいつら。

 あまりに平然としているので、逆にわたしの方がたじろいでしまった。

 

「オイオイオイオイ……」

 

 そんなわたしに、ネルソンは眉へ皺を寄せながら溜息を吐いた。

 

「なんの冗談です、それ?

 日本のヤクザ映画じゃ『カチコミ』っていうんでしたっけ、ソレ?」

 

 そして大仰に両腕を広げ、肩をすくめて言った。

 

「おれたちは軍人だ、そんなチンケな花火にビビるやつはいない。

 それに、ここが宇宙船の中だっていうならともかく、こんなひらけた場所を爆破したところで痛くも痒くもありゃしませんよ」

 

 ……ちくしょう、ネルソンの言うとおりだ。

 

 本当はこんなヘリポートじゃなくてもっと逃げ場のない場所を狙うつもりだったのだが、バレるのが早すぎた。

 それに爆風の範囲内だとしても、咄嗟に伏せれば致命傷は逃れられる可能性が高い。

 ネルソンたちにはそれがわかっているのだ。

 

 失策を見透かされて舌打ちするわたしに、ネルソンはヘラヘラと言った。

 

「それからあなたの御友達ですが、もう本部に移送しちまいましてね、ここにはいないんですよ。

 だからあなたの『献身』は無駄ってわけだ」

 

 ……なんだって。

 それじゃあ、わたしは何のために。

 

 

 

 その、動揺した一瞬のスキを突かれた。

 すぐ背後で轟音が響き、わたしは振り返る。

 

 

 

 

 

 現れたのは、鋼のボディの巨大ゴーレム。

 メカニコングだ。

 

 

 

 

 

 即座に爆弾のリモコンを構えるわたしだったが、メカニコングの方が素早かった。

 メカニコングの巨大な張り手が、わたしの胴体を直撃した。

 

「ごふっ!?」

 

 ……あばらが折れていないのが不思議な一撃だった。

 メカニコングの剛腕にわたしの身体は吹っ飛ばされ、宙を舞う。

 そして地面へ叩きつけられた拍子に、わたしの手中から爆弾のリモコンが滑り落ちた。

 

「しまっ……!」

 

 慌てて拾い上げようと地面を這ったわたしを、すかさずメカニコングの掌が抑えつけた。

 わたしは立ち上がろうともがいたけれど、メカゴジラさえノックアウトさせるメカニコングの怪力を前にしてはただ無力だ。

 

「がはっ……」

 

 重機に挟まれたような感触。

 メカニコングがちょっと指先に力を込めただけで、わたしは肺の空気を一気に押し出されて息が詰まってしまった。

 さらにメカニコングはわたしの身体から爆弾ベルトを引っぺがし、さらに巨体に似合わぬ器用さでわたしの両腕を後ろ手に捻り上げて、手錠を掛けてしまった。

 

 

 そんなわたしの眼前で、ネルソンのブーツが爆弾のリモコンを踏み砕いた。

 メカニコングに捕まったわたしを見下ろしながら、ネルソンは嘲笑った。

 

 

「……それに、自爆攻撃を仕掛けるなら、ちゃんと手に固定して引き金には指をかけなきゃ、ねぇ?」

 

 

 メカニコングに襟首を摘まみ上げられても、それでもわたしは屈しなかった。

 

「……殺すなら殺しなさいよ、クズ野郎」

 

 ヒロセ家の皆を傷つけられ、エミィとレックスを攫われて。

 あっさり見つかった上に腹マイト作戦も大失敗で、後ろ手に手錠もかけられてしまったけれど、こんなゲス野郎に弱味なんて一欠けらも見せたくない。

 

「『殺す』だの『クズ野郎』だの、あなたのようなレディーには似つかわしくありませんな」

 

 わたしを見ながら、クックックッと笑いを噛み殺しているネルソン。

 腹マイトでカチコミ仕掛けた挙句にあっさり失敗したマヌケな小娘のことなんて、さぞ無様で、みっともなくて、そして滑稽に見えるのだろう。

 ネルソンは恭しくへりくだり、こう言った。

 

「我々の〈統制官〉がお待ちかねです。どうぞ、こちらへ」

 

 ネルソンに手招きされ、後ろ手に手錠をかけられたわたしは引っ立てられ、ヘリに乗せられた。

 それからまもなくヘリは、LSOのアジトを飛び立った。

 

 わたし、タチバナ=リリセを載せたヘリは本土を離れ、南へと飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小笠原諸島のひとつ、〈孫ノ手島(まごのてじま)〉。

 かつてダイバーたちのマニアックな穴場リゾートとして愛されていたことを除けば、特に取り立てた特色もない小さな島だ。

 

 そんな地味な島だったが、今はLegitimate Steel Orderたちの主要拠点として大きな意味を担っていた。

 孫ノ手島は、あのゴジラの存在が初めて確認され、その名の由来ともなった呉爾羅(ゴジラ)伝説の地でもある大戸島から数海里もしない位置にある。

 そんな孫ノ手島が対ゴジラ決戦兵器再構築計画の主要拠点になっている、というのはなんとも因果めいたものがある。

 

 わたし、タチバナ=リリセが載せられたヘリの行く先は、その孫ノ手島だった。

 両手に手錠をかけられ、拳銃を突きつけられたまま、横目でヘリの窓の外を見た。

 

 眼下に広がる、孫ノ手島の全景。

 近づいた当初は、ただの岩と森だけの無人島にしか見えなかったが、ヘリが接近してゆくにつれて偽装が解除され、その真の姿が露わになった。

 

 

 岩と森はただの立体映像で、一皮剥けば、隅から隅まで機械化されていた。

 昔サルベージの仕事で古い工場地帯の廃墟に赴いたことがあるが、島を丸ごとひとつ工場地帯にしたらきっとこんな風景になるのだろう。

 至る所にクレーンや重機が並び、波止場には軍艦や輸送艇が浮かんでいて、駐車場にはメーサー戦車が、ヘリポートにはヘリや輸送機がずらりと駐機している。

 島のあちこちに作業用パワードスーツが歩いているのが見える。モノを運んだり、修理したり、皆何かしらの作業に従事しているようだ。

 

 新生地球連合軍LSOの秘密基地。岩山を削り、森を切り拓いて造られた、鋼の要塞。

 そんな孫ノ手島が、わたしにはあたかも地獄に建てられた悪魔の城、恐ろしい伏魔殿(パンデモニウム)のようにも見えた。

 

 ……ここにレックス、そしてエミィもいるのだろうか。

 レックスはどうなっただろう。

 エミィは無事だろうか。

 

 もし痛めつけられたり、傷つけられたりしていたら、そのときは絶対に許さない。

 

 

 

 

 

 

 

 孫ノ手島到着後、捕虜となったわたしの引き渡しは地上のヘリポートで行われた。

 

「アルファ!」

「ケンタウルス!」

 

 兵士たちが引き渡しの合言葉を掛け合っている最中、わたしは島の様子を横目で観察した。

 

 ……この島の作業員は、大半がパワードスーツだ。

 荷物の運搬はもちろん、遠くの駐車場に停まっているメーサー兵器の整備も、建物の増築修繕作業も、皆パワードスーツの作業員が行なっていた。

 それに先日レックスと戦ったメカニコングをはじめ、監視カメラや歩哨の兵士、見張りも厳重に見える。

 つまり、それだけここが重要な拠点だってことだ。その他にも目に見えないような仕掛けが沢山あるに違いない。

 こんなに厳重では、たとえスタローンだって掻い潜ることは出来ないだろう。

 ましてや、わたしなんかが出し抜ける余地などありっこない。

 

 

 ……正直言って、怖い。

 

 

 殺されるかもしれない。酷い拷問を受けるかもしれない。

 このバカげた無謀な行動を、死ぬまで後悔する羽目になるのかもしれない。

 怖くてたまらない。

 これから自分の身に何が起こるのか想像すると、泣き出したくなる。

 

 

 だけど、泣いてる場合じゃない。

 わたしはエミィたちを助けに来たんだ。

 

 

 そうやって自分を奮い立たせたわたしは破裂しそうな心臓を深呼吸で宥め、今にも崩れ落ちそうな足腰に力を籠めて背筋を伸ばした。

 

「ほら、移動だ。進め」

 

 随伴する兵士に小突かれながら、わたしは毅然とした態度で歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘリから降ろされたわたしが連れてこられたのは、『統制官室』と書かれた小さなオフィスだ。

 

 オフィスの奥にあるデスクの席には男が座っていたが、背をこちらに向けているせいで顔は見えない。

 わたしを引っ張ってきたLSOの兵士が、デスクの男に報告する。

 

「〈統制官〉殿!

 例の女を連れてまいりました!」

 

 ……拳を胸に当てる独特な敬礼。その仕草を、わたしはエガートン=オーバリーの映画で見たことがある。

 間違いない、()()()()()の敬礼だ。

 

「……うむ、ご苦労」

 

 統制官と呼ばれた男が、わたしの方へと振り向く。

 

 

 

 

 肩幅の広い、がっちりとした筋骨隆々の大男だった。

 浅黒い肌、変わった耳の形、顎髭を生やした彫りの深い顔つき。

 まさに典型的な〈ビルサルド〉である。

 人間の年齢でいうと中年、四十か五十歳くらいに見えるが、ビルサルドは自分の肉体をサイボーグ化していると聞いたことがある。

 だから見た目の年齢はあまり当てにならない。

 

「……タチバナ=リリセ君、よく来てくれた」

 

 ビルサルドの男が口を開いた。

 

「無作法な歓迎になって申し訳ない。何ぶんキミのような淑女(レディ)の来訪は久しぶりでね」

 

 茶褐色の液体の入ったグラスを片手に揺らしながら、男はわたしへ親しげに話しかけた。

 

「タチバナ君、わたしはキミの父親を知っている。

 旧地球連合軍ではキミの父親、タチバナ准将には随分と世話になった。

 地球人にしては勇敢で有能な男だった。南米の防衛戦線でタチバナ准将が消息を絶ったと聞かされた時は、ずいぶんと落胆したものだ。

 ……しかし、その娘であるキミが生きていると聞いてから、キミとは一度会って話がしてみたかった」

 

 男が口にしているのはブランデーだ。

 かつてはどうだったか知らないが、製造法が失われた今の地球ではとてつもない高級品である。

 ブランデーの豊かな風味を存分に堪能しながら、男は言った。

 

「アルコール補給しながらで失礼するよ。我々が初めて地球を訪れたときに地球人が教えてくれた趣味でね。

 我々ビルサルドにこのような形で栄養補給を楽しむ習慣はなかったのだが、始めてみるとなかなか良いものだ。

 不合理とわかっていても、ハマるとなかなかやめられん。

 キミもどうかね?」

 

 そういって勧められたが、わたしは首を横に振って固辞した。

 毒を盛られたりすることはないだろうけれど、そもそも悪の親玉と会食なんてどうかしている。

 

 男は飲み干したグラスをテーブルに置いて席を立つと、わたしの前へと歩み寄ってきた。

 

 ……デカい。

 椅子に座っていた時点で想像はしていたが、並んでみるとビルサルドという人種の大柄な体格がわかる。

 身長はきっと180センチ、ともすると190センチを優に超えているだろう。

 他方、身長が160センチのわたしは自然と見上げるような形になってしまう。

 ……いや、こんなところで気圧されてる場合じゃない。

 わたしは気合いを込め直す。

 

 そんなわたしを気遣ってか、男は膝を曲げて目線を合わせ、顔同士で向き合ったところでニッコリと笑いかけた。

 新生地球連合軍LSOの統制官――

 

 

 

 〈ヘルエル=ゼルブ〉は青い瞳をしていた。

 

 

 

「『不合理を楽しむ』

 それはキミたち地球人が伝授してくれた価値観だが、キミのその不合理な行動は楽しむためか?」

 

 そのヒトを馬鹿にしたようなヘラヘラと余裕ぶった態度が、わたしにはムカついて仕方なかった。

 大柄な体格に負けじと睨みつけながら、わたしは声を張り上げた。

 

「レックスを地球侵略兵器になんかさせない!」

 

 不倶戴天の決意表明のつもりだった。

 なのに、途端にゼルブは目を丸くして噴き出した。

 

「ぶっ、はははは。『地球侵略』か。

 つまらん冗談だなこれは。笑ったものか怒ったものか。

 いやはや、如何にも子供らしい」

 

 大声で笑っているヘルエル=ゼルブ。

 ……なにがおかしいんだろう。

 表情を険しくするわたしに、ゼルブは問いかけた。

 

「誰から聞いた? エクシフのカルトか?

 ひとつ経験ある大人として教えてやるが、エクシフはあまり信用しない方がいいぞ。

 連中が何のために地球に来たのか、宗教的な善意と移民目的だけで来たとでも思っているのなら、既にヤツらの術中に落ちているぞ」

 

「それは、天帝ニヒルが……」

 

 反論しようとするわたしを、ゼルブは鼻で笑った。

 

「ああ、その話か。キミは真に受けているのかね。なんの証拠もない、あんな世迷言を?」

 

 その言葉でわたしは気づいた。

 ……世迷言。たしかにそうだ。

 何の物証もない話である。

 

 たしかに、天帝ニヒルの伝説はエクシフ飛来の説明にはなっている。

 とはいえ結局は状況証拠だ。そもそもエクシフ側、それもウェルーシファの言葉以外に裏付けるものなど何一つない。

 妄想、出任せ、作り話と言ってしまえばそれまでじゃないか。

 ……なんでそんなことを一瞬でも信じてしまったんだろう。

 

 そんなわたしに「それがエクシフの手口だ」とゼルブは言った。

 

「追い詰められたタイミングを見計らって現れ、(もっと)もらしい話を吹き込んで意志を誘導し目的を達する。

 地球の土着信仰は、ゴジラという真の災厄を前に力を失った。

 奴らがゴジラ出現と同時に地球に来たのも、その時期こそが奴らの宗教を刷り込む最大の好機だっただけに過ぎんよ」

 

 ゼルブの話はこれはこれで筋が通っている。

 むしろウェルーシファの話よりもよっぽど論理的だ。

 ……いけない。この悪党に篭絡されそうになっている。気をしっかり持たないと。

 気を張るわたしに、ゼルブは続けた。

 

「そうやって他人の隙を窺い、心の内側に入り込んで、骨の髄までしゃぶり尽くして利用する。

 そんな(よこしま)な連中を信用することほど、愚かな判断はないと思うがねぇ」

 

「ビルサルドは違うっていうの?」

 

 わたしの辛辣な言葉に、ゼルブは大仰に渋面を作ってみせた。

 

「まあ、キミが我々を信用しないのは仕様がない。

 ネルソンとモレクノヴァがとんだ無礼を働いたようだし、詮のないことを言う輩も多いからな」

 

 だが、とゼルブは続けた。

 

「だが、贔屓目混じりで、ビルサルドの名誉のためにも言わせてもらうが、我々はテクノロジーを提供したがキミたちの心に踏み込んだことはなかったはずだ。

 ゴジラとの戦いにおいて結果として犠牲を強いたこともある。あるいはキミたちの心の拠り所とやらを冒涜する結果になったこともあったろう。

 だが、エクシフのようにキミたちを誑かして、心を支配しようとはしなかった。違うか?」

 

 ……ゼルブの言う通りだった。

 子供扱いする態度は腹立たしいが、言っていることは間違っていない。

 

 ビルサルドとエクシフ、そしてそんな両者を受け容れた地球人の歴史については本で読んだことがある。

 本を読む限り、たしかにビルサルドは地球人と分かり合えない部分もあったかもしれないが、彼らなりに地球人を尊重しようとしていたと思う。

 一方でエクシフは強制こそしなかったが、献身の信仰を広めるという形で、地球人の心の在り様にまでその影響を及ぼしてきた。

 

 ……ひょっとしてわたしは、ウェルーシファから良いように利用されているのかもしれない。

 惑うわたしに、ゼルブは続ける。

 

「そして我々ビルサルドのテクノロジーがなければ、キミたち地球人はただゴジラに殺されるだけだった。

 エクシフの信仰がなければ心を折られていたのと同様に。

 そんなキミたち地球人に、我々の美味い上澄みだけを()しとって用が済んだら放逐してやろう、という思惑が欠片もなかったと言えるのかね。

 下心は誰でもある。問題はそれを踏まえてどう判断し、行動するか。

 それが出来るかが大人と子供の違いだよ」

 

 そして、ゼルブはわたしに笑いかけた。

 

「仮にエクシフのいうような化け物が存在したとして、それがなんだというのだ。

 怪物一匹克服できずして、何が霊長か。

 栄光の未来を掴む、いや掴まねばならん。

 それこそがヒト型種族たるものの特権であり、宿命なのだ。

 そんな怪物など、鋼の意志でいずれ超えてみせるさ」

 

 ……大胆不敵な宣言だった。

 『栄光の未来を掴む、掴まなければならない』

 口元をニヤリと歪めて笑うゼルブの表情は、言葉通りの決意と希望に満ち溢れている。

 自信に溢れたゼルブの剛毅さには、どうも憎めない魅力がある。

 この自信たっぷりの笑顔を見ていると、なんだか本当にゴジラさえも倒してしまいそうな気がしてくる。

 

 

 ……しかし、だからこそ危険だ。

 

 

 このヘルエル=ゼルブという男には、自らの運命をゆだねて従いたくなるような大らかな風格(カリスマ)がある。

 そんな奴に最もふさわしい職業があるとすれば『カルト宗教の教祖』か、そうでなければ『独裁者』だ。

 

 

 

 そう思い直したわたしの思考に気づいているのか否か、ゼルブはわたしの背後で待機していた部下に声をかけた。

 

「おい、この若い淑女(レディ)の拘束を外してやれ。

 せっかくの客人なのだ、かつて地球人がワインの酒肴でもてなしてくれたように、我々の流儀でもてなそうではないか」

 

 ゼルブの指示で、わたしの手錠がカチリと外された。

 先導するゼルブが、手首の調子を確かめているわたしを手招きする。

 

 

 

「来たまえ、タチバナ=リリセ。『人類の新たな希望』を見せてやろう。

 これを見れば理解できるはずだ。

 真に正しいのはエクシフではない、我々ビルサルドだとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『怪獣失楽園』紀行 「オマケ設定:タチバナ=リリセとエミィ=アシモフ・タチバナ」

 ヒロイン2名のプロフィールです。

【挿絵表示】


◆タチバナ=リリセ(橘内 リリセ)
・概要
西暦2040年8月生まれ、22歳独身。
タチバナ・サルベージ社長。自称、超絶銀河スーパーウルトラセクシーキュートな美少女。
自他ともに認める体育会系。頭の回転は速いが御人好しとドジで死に掛けたことは数知れず。
怪獣が生息する危険地帯での物資回収と、途上で拾った廃品の転売などで生計を立てている。

身長160センチ、隻眼眼帯巨乳で幼馴染で義妹にして義姉という属性過多な日系人。
腹筋が縦に割れてるむちむちのグラマー体型、バストサイズはゴジラもびっくりGカップ。
「その健康な恵体の秘訣は?」という質問に対し「肉! 筋トレ!! アクション映画!!!!」とは本人の弁。
「筋トレし過ぎて脳味噌までゴリラなんだな」「なんか言った?」「べつに」

映画鑑賞と筋トレ以外の嗜好として、機嫌が良いときに懐メロを鼻歌で歌う癖がある。

・心理テストの結果:主人公型
https://www.16personalities.com/ja/enfj%E5%9E%8B%E3%81%AE%E6%80%A7%E6%A0%BC

・好物
キャラメル、肉
・好きな映画
『007シリーズ』『エクスペンダブルズ』『スターウォーズシリーズ』『ワンダーウーマン』、その他ヒーロー映画全般

・家族
エミィ=アシモフ・タチバナ…義妹
タチバナ=シュウスケ…実父。旧地球連合Gフォース准将。故人。
ヒロセ=ゴウケン…義父。旧地球連合Gフォース中佐。
ヒロセ=ゲンゴ…義兄

・元ネタ
名前はGMKのヒロイン、立花由里から。由里→百合→リリーともじった結果。
苗字はじめ某ごはん&ごはんの人と似たところが多いが偶然。いやホントにマジで偶然です。せめて苗字は変えるべきだったなと後悔している。



◆エミィ=アシモフ・タチバナ
・概要
西暦2049年3月生まれ、14歳。
タチバナ・サルベージ専属エンジニア兼ドライバー兼アシスタント兼副社長。
人見知りの毒舌ツンデレヒロインって要は社会不適合者だよねを地で行く御年14歳。これが証拠に友達が一人もいない。
リリセからは妹分として溺愛されており、当人としては甘えたいのと自立心との狭間で揺れる絶賛中二病の思春期。

金髪碧眼、桃色のリボンがトレードマークの白人。身長145センチ、ちんちくりんの痩せぎす。
頭脳労働者だから筋トレなんぞしなくてもいいだろと当人は主張しているが、むしろ頭脳労働こそ体力勝負だよと誰かアドバイスしてあげてほしい。

実は「動物図鑑を眺めながらペットとの優雅な暮らしを空想してニヤニヤするのが好き」という非常に豊かなイマジネーションの持ち主。
「うわあネクラだあ」「うるさいぶっとばすぞ(半泣き)」

・心理テストの結果:冒険家型
https://www.16personalities.com/ja/isfp%E5%9E%8B%E3%81%AE%E6%80%A7%E6%A0%BC

・好物
オレンジジュース、キャラメル
・好きな映画、アニメマンガ
『ショーシャンクの空に』『101匹わんちゃん』『マウス・ハント』『けものフレンズ1&2』

・家族
タチバナ=リリセ…義姉
レオニード=アシモフ…実父。メカゴジラ建造計画に参加していた地球人の科学者。故人。

・元ネタ
苗字の由来は『ゴジラVSメカゴジラ』に登場した科学者レオ=アシモフ、名前は『ゴジラVSキングギドラ』のエミー=カノーから。
性格のモデルは『ゴジラ×メカゴジラ』のヒロイン、家城 茜。

・名前について
初期案では「アカネ」という名前だったんですけど、検討中にもっと強烈なアカネちゃんが登場したのでやめました。目を醒ませ僕らの世界が何者かに侵略されてるぞ
次いで『モモと時間泥棒』に因んでモモにしたら、これまた強烈な桃ちゃんが登場してしまったので更に変更。シャミ子が悪いんだよ
最終的にエミィになったものの、本名に設定しようとした名前が某なろう小説のヒロインと被りそうになったので危うく神回避。
そんなわけで名前に()()()がありすぎるため、今後エミィというキャラクターが出てくるのではと戦々恐々しています。

・その他
初期には男の子にする案もあったんですよね。
十中八九エロ方面になるのでやめてしまったんですけど、今思えばおねショタ二人旅でもよかったかもしれません。

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