怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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9/18まで休むつもりだったんですが、予定を早めて再開。


第四章:キングオブモンスターの凱旋
57、怒り狂うゴジラ ~『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』より~


 キングオブモンスター:ゴジラ、出現。

 

 突然の出来事に動転してしまったエミィだったが、すぐに我に返った。

 自分たちを襲っていたメガニューラは、いつの間にか何処かへ逃げてしまっていた。

 すぐさま、地面に倒れたままの浅黒肌の少年の様子を診る。

 

 浅黒肌の少年が撃たれたのは左肩だった。

 肩の傷口からは鮮血がドクドク溢れている。

 止まりそうにない。

 

 応急処置が必要だ。

 

 まずエミィは自分の服の袖を噛み千切って止血帯にし、さらに頭から(ほど)いたリボンできつく縛って、少年の傷口を押さえさせた。

 桃色のリボンが、真っ赤な血に染まってゆく。

 焼け石に水かもしれないが無いよりはマシだ。

 

「歩けるか?」

 

 エミィの問いかけに、少年は精一杯の笑顔で力なく頷いた。

 不幸中の幸いというやつで、意識ははっきりしている。だが、額には脂汗が浮いていて顔色は青白い。見るからに辛そうだ。

 よいしょっ、と気合を込め、エミィは浅黒肌の少年の肩を担ごうとした。

 

「ぐっ……!」

 

 重い。

 小柄なエミィの体躯では、浅黒肌の少年に肩を貸しながら歩くのは難しい。

 ……やっぱりリリセの言うとおりだ。いざというときは体力勝負、こんなことになるならもっと鍛えておけば良かった。

 そんな後悔と共に歯を食い縛って少年を引きずってゆこうとしたとき、エミィは少年がこちらを見ているのに気がついた。

 少年の瞳はこんなことを訴えていた。

 

 ――ぼくのことなんかいい、だから……

 

「『置いて逃げろ』って?

 バカ、そんなわけにいかないだろ」

 

 弱気になった少年を、エミィは一喝した。

 ……これまで散々助けてもらった。だから今度はわたしが助ける番だ。

 そんなエミィを見かねてか、子供たちが肩を貸してくれた。

 

 手負いの少年を庇うように、エミィと子供たちは島の片隅を歩いてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 沖合いに現れたゴジラを、ZILLAとエビラが睨みつけた。

 主人を乗せたヴァバルーダを撃墜されたZILLAは、ゴジラに向けて怒りの雄叫びを挙げた。

 ZILLAとの対決を邪魔されたのがいたく気に入らないらしいエビラも、ギーッ、とひっかくような威嚇音を挙げた。

 

 先に仕掛けたのはZILLAだった。

 ZILLAは一旦水中に身を沈めるとドルフィンキックで海面から飛び上がり、怒りの勢いそのままにゴジラに掴みかかる。

 ZILLAに続けて、エビラが突進した。

 両手の鋏をがちがちと打ち鳴らしながら、赤い巨体のエビラが黒いゴジラに伸し掛かるように飛びついた。

 

 二大怪獣の同時攻撃、ゴジラは真正面から受け止めた。

 衝撃で海が波立ち、大地が揺れる。ゴジラ、エビラ、ZILLAの三大怪獣は海中へと沈んでゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エミィと子供たちは、担ぎ上げた少年に「あともう少しだ、頑張れ」と声をかける。

 少年も息を荒げながら、懸命に歩いてゆこうとする。

 

 エミィたちが子供たちと共に広場の隅へと移動する間、メガニューラやカマキラスたちは何も手出しをしてこなかった。

 メガニューラたちはメガギラスという司令塔がいなくなったことで、何をどうしたらいいかわからなくなっているようだ。

 カマキラスも同じだ。四方八方を飛び回ってばかりで人間狩りどころではない。

 両者とも完全なパニック状態だ。

 だからエミィたちは、カマキラスやメガニューラたちに襲われることなく安全に戦場の隅へと逃げることが出来た。

 

 その最中、エミィは沖の戦いを横目で見た。

 ゴジラとエビラとZILLAによる三つ巴の戦い。

 海中での激闘がどのような経過を経ているのか、陸上にいるエミィたちからは煮え立った鍋のように沸き立つ海面しか見ることができない。

 

 しかし結果がどうなったのかは、まもなくわかった。

 

 

 先に海中から現れたのはゴジラとZILLAだった。

 

 

 現れた、というのは語弊がある。

 ゴジラは、ZILLAの首根っこを捕まえていた。

 水中のZILLAを海上へ引きずり出したのだ。

 ゴジラが握り締めているのはZILLAの首輪だ。

 ZILLAの首輪。こんな掴みやすい急所を、百戦錬磨の猛者であるゴジラが見落とすはずがない。

 首輪を掴まれて気道を絞められたZILLAは爪を立ててゴジラの手を引き剥がそうとしているが、常識外れのゴジラの握力を前に為す術もない。

 

 ゴジラは背負い投げの要領でZILLAを片手でぶん投げた。

 片手で放り投げられたZILLAの巨体が飛んで行き、そして孫ノ手島の岩山へと墜落。

 岩雪崩とともに山を突き崩し、生き埋めになってしまうZILLA。

 もともとそれほど体格に恵まれていないZILLAはこれだけでノックアウトされてしまった。

 

 続いて、姿を現したのはエビラだ。

 その姿を見て、エミィはアッと声を挙げた。

 

 

 ――ハサミが、()()!?

 

 

 エビラ自慢のクライシスシザースが、左右両方ともなくなっていた。

 ゴジラに引っこ抜かれたのだ。

 真七星奉身軍相手にはやりたい放題だったエビラだが、ゴジラが相手だと話は違うようだった。

 格の違いを思い知らされたエビラは、慌てて沖合へと逃げ出そうとする。

 

 しかし、戦いの最中に背を向けるようなマヌケを、ゴジラが逃してやるはずもなかった。

 ゴジラの剛腕がサソリにも似たエビラの尻尾を引っ掴み、天突き体操のように担ぎ上げた。

 ヘビー級のエビラの体が軽々と宙を舞い、仰向けの状態で海面へと叩きつけられる。

 そして引っ繰り返ったエビラにゴジラの巨体がボディプレスで飛びかかる。

 ギーッ、と殻の擦れるようなエビラの悲鳴が響き、ゴジラとエビラはそのまま縺れ合うように海の中へと沈んでいった。

 どかーん……どごーん……。

 しばらくのあいだは強烈な地鳴りが海中から届き、海面が嵐のように波打っていたが、やがて収まった。

 

 そして、海上から赤い塊がばらばらと孫ノ手島へと目掛けて飛んできて、浅瀬にばらまかれた。

 ハサミ。

 肢。

 尻尾。

 そして頭と胴体。

 

 

 ばらまかれた赤い塊の正体はエビラだ。

 

 

 頑丈な殻は潰れて目玉が飛び出し、肢も尻尾もぼろぼろに千切れていた。

 波に任せてだらしなく漂うその姿には、かつての海の大怪獣らしい覇気も生気もまったく感じられない。

 バラバラの肉片。エビラは完全に死んでいた。

 

 エビラの死骸が海岸に投げ飛ばされたあと、投げた張本人のゴジラが水飛沫をまき散らしながら姿を現した。

 牙の生え揃った口からはエビラの尻尾の切れ端がぶらさがっており、それをゴジラはぺっと吐き捨てた。

 

 ……なんて恐ろしい殺し方をするのだろう、とエミィは思った。

 ゴジラは海中でエビラを捕まえて力任せにぶちのめしたうえに、茹でた海老を剥くように生きたままバラバラに分解してしまったのだ。

 むしろ食べられる海老の方がまだ幸福かもしれない。少なくともバラバラにされる時点では死んでいるのだから。

 

 そんな無惨なエビラの死に様を見ていたエミィは頭上からの羽音に気が付き、空を見上げた。

 

 

 

 

 羽音の主はメガニューラとカマキラスだった。

 それも数え切れない、空を覆い尽くしてしまうほどの大軍団だ。

 

 

 

 

 先程は出鱈目に飛び回ることしか出来ていなかったメガニューラとカマキラスたち。

 ようやく態勢を立て直し、足並みをそろえて、ひとつの方角へ進軍してゆく。

 

 昆虫軍団が次に標的としたのは、沖合から接近しつつあるゴジラだ。

 獲物の生命エネルギーを吸い取るメガニューラからすれば、無尽蔵のエネルギーを滾らせたゴジラは御馳走に見えるのだろう。

 あるいは親玉のメガギラスを殺された敵討ち、というのもあるのかもしれない。

 カマキラスも同じだ。

 先程までは熾烈に獲物を奪い合うライバルだったが、ゴジラという共通の敵を前にいがみ合うのをやめ、今はメガニューラたちと手を組むことにしたらしい。

 ……人間たちもこんな風に一致団結すればよかったのに、とエミィは思った。

 

 メガニューラ&カマキラス連合軍。

 迫りくる昆虫怪獣の大軍勢を鋭い目つきで見上げているゴジラ。

 その背鰭から、青白い火花が溢れ出た。

 黒雲の中で雷鳴が轟いているような、バチバチゴロゴロと空気の弾け飛ぶ音が響き渡る。

 

 

 

 

 

 ゴジラの鼻先で弾ける閃光。

 青白い線条光が空間を叩き割り、空をフルスイングで薙ぎ払った。

 

 

 

 

 

 続いて爆音。

 エミィは、雷が落ちたのかと思った。

 だけど頭上の空は相変わらず雲ひとつない。

 何が起こったんだ???

 

 ぐしゃっ。

 

 わけもわからないうちに聞こえてきた音にエミィは振り返った。

 それはゴジラに襲い掛かろうと頭上を舞っていた、メガニューラたちの一頭だった。

 大空を自由自在に飛べるはずのメガニューラが黒焦げとなり、停めてあった軍用車の上に墜ちてきていた。

 

 青い線条光が、夜空をふたたび斬り裂く。

 

 子供のひとりに袖を引かれたエミィは、改めてゴジラの方を見た。

 ゴジラの背鰭からバチバチゴロゴロという炸裂音が鳴ったかと思うと、ゴジラの鼻先より青いビームが発射され、月が昇りつつある夜空を真っ二つに斬った。

 天をつらぬく青い雷霆(いかづち)

 全てを焼き尽くす絶対最強の火槍。

 

 

 あれはゴジラの必殺技、〈放射熱線〉だ。

 

 

 先ほどメガギラスとラドンをまとめて葬った、ゴジラ必殺の放射熱線。

 あれで、メガニューラとカマキラスが百匹ほどまとめて瞬殺されたのだ。

 ……かつてリリセが教えてくれたのだが、ゴジラはこの放射熱線で地球に接近してきた小惑星を撃ち落としたことがあるらしい。

 まったく桁違いのパワーとしか言い様がない。

 メガニューラやカマキラスごときムシケラなど、ひとたまりもないだろう。

 

 ゴジラが放射熱線を放つたびに撃墜されるメガニューラとカマキラスたち。

 仲間たちが次々と焼き尽くされていっているのに、それでもメガニューラとカマキラスたちはゴジラへの特攻をやめようとしなかった。

 習性に逆らえない昆虫としてのサガか、それとも殺された仲間の復讐心か。

 最初から勝ち目のない戦いだとわかっているだろうに、昆虫怪獣たちはそれでも止まれない。

 まさに飛んで火に入る夏の虫、ゴジラが放つ破滅の劫火へ自ら飛び込んでゆくしかない。

 昆虫怪獣たちで覆い尽くされていたはずの空が、ゴジラの放射熱線で塗り替えるかのように綺麗さっぱり掃除されてゆく。

 

 

 

 

  ……やばい、とエミィは思った。

 

 

 

 

 ゴジラの放射熱線を浴びた昆虫怪獣たちは即席のバーベキューとなる。

 

 ……やばいやばい。

 

 燃える肉片が雨のように降り注ぎ、周囲が焦げくさい悪臭で満たされてゆく。

 

 ……やばいやばいやばい。

 

 そして火の玉となった死骸から炎が燃え移り、地上から火の手が上がる。

 

 ……やばいやばいやばいやばい!!!!

 

 エミィは即断した。

 

 

 

 

 

 

「みんな、逃げろ!

 怪獣たちが落ちてくる、潰されるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 エミィの迅速な号令を受け、子供たちは満足に動けない浅黒肌の少年を担ぎ上げたまま壊れた戦車の物影へと逃げ込んだ。

 新生地球連合軍の兵士たちも同じ判断に至り、慌てた様子で屋内へと逃げ込んでゆく。

 

 ゴジラは、島の地面を駆けずり回っている人間のことなんかまるで気に留めない。

 雲霞(うんか)のようにしつこく(たか)ってくるメガニューラとカマキラスを一匹残らず始末しようと、放射熱線をひたすら撃ちまくっている。

 ゴジラの青白い線条のビームが空を何度も何度も駆け抜け、そのたびに撃墜されたメガニューラとカマキラスの死骸が炎の雨になって降り注いできた。

 放射熱線を乱射するゴジラ。空の羽音はどんどん減ってゆき、そしてついにはゼロになった。

 

 ……ゴジラの放射熱線乱れ撃ちが静まった頃、エミィは潰れた戦車の陰から恐る恐る顔を乗り出して外の様子を窺った。

 

 

 外は一面、焦熱地獄と化していた。

 

 

 燃える肉片が足の踏み場もないほど散らばっていて、さらに炎が建物へと燃え移ってどこもかしこも火事になっていた。

 刺激臭をともなう有毒の黒煙が立ち込め、逃げ遅れた兵士たちは炎の雨を浴び、火達磨で絶叫しながらのたうち回っている。

 ……まさに灼熱の地獄だ。

 直視に堪えない地獄風景に、エミィは思わず顔を背けた。

 

 

 

 そして顔を背けた先でエミィは、埠頭に停めてあったボートがなくなっていることにようやく気が付いた。

 

 

 

 Legitimate Steel Orderはメガギラスとエビラが(たお)されたことで、また真七星奉身軍も切り札のZILLAが蹴散らされたことで戦意を挫かれ、ゴジラの猛威を前に我先に逃げ出し始めていた。

 

 ……しまった、先を越された!

 エミィは(ほぞ)を噛む。

 ボートも軍艦も飛行艇も、島からの脱出に使えそうなものはみんな海上に出て行ってしまった。

 兵士たちを溢れんばかりに詰め込み、ノロノロ出港してゆくフネたち。

 

 

 

 

 

 

 だが、そんな愚かな人間どもを、怒り狂うゴジラは決して許さなかった。

 

 

 

 

 

 

 ゴジラの背鰭が青く光ったかと思うと、昆虫怪獣を一掃するのに使った放射熱線を今度は海面に向けて掃射した。

 青い閃光が海面すれすれを舐め回して海上のフネたちを薙ぎ払い、放射熱線を浴びたフネたちは次々と弾け飛んだ。

 オレンジ色の盛大な爆炎が、暗く碧い海を明るく塗り変えてゆく。

 

 大爆発が収まったあと、ゴジラの周囲は文字通りの火の海へと変わっていた。

 立派な軍艦も、小さなボートも、離水しようとしていた飛行艇さえも、ゴジラの眼前にあったフネと名前の付くものはひとつ残らず焼き尽くされてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これで孫ノ手島の人間たちに、ゴジラの猛威から逃れる術はなくなった。

 

 




登場怪獣紹介その7「エビラ」

・エビラ
体長:70メートル
ハサミの長さ:15メートル(右)、13メートル(左)
体重:2万2千トン
二つ名:レヴィアタン、深海の恐怖、大海老怪獣
主な技:クライシスシザース、レヴィアタンカノン

 初出は『南海の大決闘』、他にも『オール怪獣大進撃』『ゴジラ FINAL WARS』にも登場。

 またの名を大エビ怪獣。ゴジラ、モスラ、キングギドラに続く、「とりあえず『~ラ』ってつけとけば怪獣っぽくなる」というネーミングの代表例の一つ。
 ちなみに「カニラ」は『GODZILLA ゴジラ(2014年版、以下ギャレゴジ)』の中の小道具として名前のみ登場しますが、ゴジラ怪獣の中には未だ登場していません。
 東宝特撮でもカニの怪獣自体は存在していますが、こちらはカニラではなく「ガニメ」という怪獣になります。

 実はこのエビラ、ゴジラの対戦相手として誕生した怪獣の中ではアンギラス、キングギドラに続く古参だったりします。
 モスラとラドンは元々ピン映画の主役ですし、キングコングは余所からやって来たお客様なので厳密なゴジラ対戦怪獣ではないのです。

 しかし「巨大なエビ」という見た目が地味だからかマイナーな部類に入り、『怪獣総進撃』で登場が検討されたもののボツに、『ゴジラアイランド』には登場せず、『ファイナルウォーズ』でもミュータント部隊に倒されかけるなど扱いもわりと不遇なことが多かったり。
 再登場が少ないのは、着ぐるみの構造的に下半身を映しにくいのが理由かなと思います。メガギラスの着ぐるみがあるんだから、エビラももっと出番があっていいと思うんですけどね。

 名前の由来は海の怪物レヴィアタン(リヴァイアサン)から。
 海の怪物クラーケン、強欲の悪魔マムモンなどから二転三転した末に、エビラと語感が似てるレヴィアタンにしましたが、今思うとこいつこそクラーケンでも良かったかも。

 個人的に好きな怪獣の一体。だからあんまり活躍しない割にこんなに長いのです(笑)
 見せ場、もっと増やしてやりたかったなあ。
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