怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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64、オール怪獣大進撃

 

 完成したメカゴジラⅡ=ReⅩⅩ(レックス)

 その姿はかつて観たエガートン=オーバリーの映画に出てきたメカゴジラと似ていたが、モデルになったゴジラ細胞の影響か、わたし、タチバナ=リリセの目にはより禍々しさが増しているように見えた。

 ……まるで骸骨みたいだ。

 ゴジラの似姿として造られた白銀色のスーパーロボット、それがメカゴジラなのだけれど、眼前で実際に怪獣の死骸を貪食するシーンを目の当たりにしたからか、命を刈り取る死神のようにも思える。

 かつて『人類最後の希望』と呼ばれたメカゴジラ、その進化した姿がゴジラを象った髑髏の死神とは、まったく皮肉が効いている。

 効きすぎて反吐が出る。

 クソッタレにもほどがある。

 こんな禍々しい姿がレックスの本性だろうか。

 

 ……頼りになるけど、子供っぽいレックス。

 アンギラスを追っ払い、マタンゴを蹴散らし、ラドンと互角に渡り合い、メカニコングを吹っ飛ばし、毒や怪我まで治してくれて何度も命を助けてくれたレックス。

 髪に花を挿してあげたときの笑顔がとても可愛らしかったレックス。

 その本性は、こんな機械仕掛の餓者髑髏(ガシャドクロ)だったのだろうか。

 

 

 いや違う。

 

 

 たしかにこの姿もレックスなのかもしれない。

 だけど、それは飽くまで一面だ。

 花の美しさに目を惹かれ、人が楽しそうにしていれば無邪気にはしゃぎ、命の尊さをちゃんと理解してくれる。

 わたしが知っているレックスは、そういう善い子なのだ。

 こんな恐ろしいロボットの死神なんかじゃない。

 ……そう信じたかった。

 

 

 物言わぬメカゴジラⅡ=ReⅩⅩの巨体がレックスの姿に重なる。

 わたしには、レックスが泣いているかのようにも見えた。

 ……どうか、もうこれ以上レックスを苦しませないで欲しい。

 お願いだから誰もレックスをいじめないで。

 

 

 わたしは祈りながら、戦いの趨勢を見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メカゴジラⅡ=ReⅩⅩ、モード:Dominus(ドミヌス)

 ヘルエル=ゼルブが構想した『パクス=ビルサルディーナ』の中核、怪獣艦隊の旗艦となるべく開発されたメカゴジラの改良型。

 そのコックピット――その肉体は最早メカゴジラそのものと一体化していると言っても過言ではなかったが――から、ヘルエル=ゼルブはゴジラの姿を眺めていた。

 

 ……ザルツブルクの防衛戦線を思い出す。

 ビルサルド族長ハルエル=ドルドの副官であると同時に最前線で指揮を執る軍人でもあったヘルエル=ゼルブは、かつて地球の戦線でゴジラを間近に見たことがあった。

 

 ――鋭利な背鰭。

 ――黒い肌。

 ――怒り狂ったその表情。

 

 ゼルブ率いるビルサルド技術部隊の支援を受けていたはずのメーサー大隊を、いとも容易く蹴散らしたその圧倒的なパワー。

 ナノメタルを搭載されたガイガンのファイナルフォームを一欠けらも残さず蒸発させた、あの狂暴性。

 メカゴジラⅡ=ReⅩⅩの眼前に立ちはだかるゴジラの姿は、かつてゼルブが見たその姿と寸分も変わらなかった。

 

 そんな猛々しいゴジラの威容を眺めながら、ゼルブは自らの魂が震える感覚を覚えた。

 恐怖で? いいや、これは武者震いだ。

 ゴジラを前にしたヘルエル=ゼルブは、不遜にもまったく恐れを感じていなかった。

 むしろその戦意は激しく燃え盛り、その脳裏にはかつて地球での会合で鑑賞した『歓喜の歌(An die Freude)』が高鳴っている。

 

 旧地球連合ブエナヴェントゥラ陥落から十五年、ゴジラは完全に姿を晦ましていた。

 メカゴジラⅡ=ReⅩⅩ完成の暁には、草の根分けてでも探し出すつもりだった。

 

 ……しかしまさか自ら出向いてくれるとは。

 おかげで手間が省けたというものだ。

 この孫ノ手島が、貴様の墓場となるのだ。

 

 LSOが捕らえたメガニューラ、メガギラス、エビラ、カマキラス、クモンガ、アンギラス。

 奉身軍の連中が連れてきたZILLA。

 途中で飛び入り参戦してきたラドン。

 その他保管されていた実験体。

 そのすべてがマフネ=アルゴリズムの餌食になった今、もはや孫ノ手島そのものがメカゴジラとなっていた。

 この島全体を、おまえを殺すための処刑場に作り替えてやる。

 

 

 

 ……ゴジラめ。

 まずはおまえの強さを確かめさせてもらう。

 

 

 

 LSO統制官ヘルエル=ゼルブは、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩのコックピットから、島中のナノメタルへコマンドを送信した。

 メカゴジラⅡ=ReⅩⅩを見据えていたゴジラの眼前、孫ノ手島の大地から金属の噴水が噴き上がった。

 孫ノ手島の地下で増殖したナノメタル。

 その総量は測定不能。

 地下から噴き上がったナノメタルの噴水は、やがて七つのシルエットを形作ってゆく。

 

 

 巨大な翼を広げた、空の大怪獣。

 

 サソリの鋏と尾、そして蜻蛉の俊敏さを併せ持つ、超翔竜。

 

 左右非対称の鋏を備えた、深海の恐怖。

 

 引き締まった細身の体躯を持つ、強脚の巨獣。

 

 長い脚のカギ爪と鋭い毒牙をぎらつかせた、巨大毒グモ。

 

 両手の鎌を研ぎながら今か今かと舌なめずりする、殺人カマキリ。

 

 そして、無数の棘と頑強な鎧で身を固めた、暴龍。

 

 

 ラドン、メガギラス、エビラ、ZILLA、クモンガ、カマキラス、そしてアンギラス。

 ゴジラが先程殺した怪獣たちの似姿。

 マフネ=アルゴリズムのナノメタルで喰い尽くした七大怪獣を、ナノメタルで再生させたのだ。

 

 

 ……見たか、ゴジラ。

 そして(おそ)(おのの)くがよい。

 これがナノメタル、そしてビルサルドの力だ!

 

 

 破壊せよ(Destroy)怪獣軍団(All Monsters)

 

 

 ヘルエル=ゼルブの号令に従い、復活した七大怪獣は一斉に動いた。

 数十メートルの巨大怪獣たちが島の一点、ゴジラを目指して襲い掛かってゆく。

 それはさながら怪獣総進撃であった。

 そんなナノメタル怪獣軍団を忌々しげに睨みつけていたゴジラだったが、迫りくる七大再生怪獣の総攻撃に怯むことなく威嚇の咆哮を挙げた。

 

 

 

 

 ゴジラの咆哮、それが開戦のゴングだった。

 

 

 

 

 真っ先に襲い掛かったのは、強脚怪獣ZILLAであった。

 自慢の強脚を活かして高く飛び上がり、ゴジラにハイジャンプキックを喰らわせようとする。

 

 しかしゴジラは、ZILLAのジャンプの間合いを完全に見切っていた。

 

 ゴジラは俊敏な動きで身を翻し、紙一重で回避しながら放射熱線を撃ち込む。

 ゴジラの放射熱線がZILLAの右腕をかすめ、深々と抉り飛ばした。

 

 ZILLAは、使い物にならなくなった右腕を引き千切り、ゴジラへ飛び掛かる。

 ゴジラは、そんなZILLAを捕まえて組み伏せて足蹴に踏み付けると、その胸部目掛けて猛烈なパンチを叩き込んだ。

 レールガンさながらに加速された強烈な鉄拳がZILLAの胴体を覆っているナノメタル装甲を貫通、そのまま内部のメカニックを握り締めて引っこ抜く。

 

 体内のものをすべて掻き出され、虚ろな胸郭を曝け出しても、ナノメタルで改造されたZILLAはそれでもなお反撃しようとした。

 だが、ゴジラのパワーには到底敵わない。

 足の下でもがいているZILLA、その頭部にゴジラが放射熱線を撃ち込んだ。

 そして先の戦いと同様に頭が粉砕されたところで、ZILLAはようやく動かなくなった。

 

 

 

 ゴジラがZILLAをバラバラにした、その次に襲い掛かったのは深海の恐怖エビラだった。

 自慢の大鋏:クライシス・シザースを打ち合わせながら挑発し突進、渾身の力でゴジラを抑え込もうとする。

 ゴジラもまた真正面から組み付いた。

 

 がっしり四つに組み合った二大怪獣の力比べ。

 万トン級の巨体が均衡し、両怪獣の足が大地へとめり込む。

 

 その押し合いに勝ったのはゴジラの方だ。

 メキメキと轟音が響き、ゴジラはエビラの鋏をまたしても引っこ抜く。

 先とは異なりナノメタルで闘争本能を過剰に刺激されたエビラは、両腕を失っても突進を仕掛けようとする。

 

 その鼻先に、先ほどZILLAを打ち砕いたゴジラの重厚な正拳突きがめり込んだ。

 

 響き渡る大砲のような轟音、一撃で叩き潰される外殻。

 艦砲の集中砲火や重爆撃にも耐えるほど頑強なエビラの殻をメガトン級の衝撃波が駆け抜け、エビラの脳髄を木端微塵に爆砕した。

 

 

 

 そのゴジラの背後に飛来したのは超翔竜メガギラス。

 無音の飛行でゴジラの死角から素早く忍び寄り、尾の針とハサミでゴジラの首を背後から刈り取ろうと迫る。

 

 そんなメガギラスの尻尾を、ゴジラは尾の先で搦め獲った。

 

 不意打ちをするつもりが逆に捕らえられてしまったメガギラスは脱出しようともがいたが、ゴジラのパワーは桁違いで()(ほど)けない。

 ゴジラはメガギラスを尻尾で搦め獲ったままハンマーのように振り回し、そして投石機のように放り投げた。

 

 投げ飛ばされたメガギラスは宙を舞い、続けざまに飛び掛かろうとしていたカマキラスと衝突。

 思いきり全身を強打したメガギラスとカマキラスは、為す術もなく合挽のミンチになった。

 

 

 

 敵を二体同時に屠ったことで満足げに唸るゴジラだったが、その頭を空の大怪獣ラドンが襲った。

 生前は不意打ちの狙撃で戦うまでもなく倒されてしまったラドンだったが、今度はラドンの方が不意打ちを喰らわせた。

 おろし金のような腹部のトゲでゴジラの後頭部を削る。

 

 頭を打ち付けてたたらを踏んだゴジラ、その胴体に暴龍アンギラスが迫った。

 ナノメタルで強化された棘と装甲で身を覆ったアンギラスは身を丸めて前転、やがてタイヤのように高速回転しながら、ゴジラへと突進を仕掛ける。

 ビルサルド製のセントラルタワーを削り取ったアンギラスの突進技、『暴龍怪球烈弾(アンギラスボール)』。

 研磨機さながらの猛速回転で、鋼鉄よりも硬いゴジラの体表を削った。

 

 ふらつくゴジラの頭上へ、空中で急旋回したラドンが舞い戻った。

 鋭いカギ爪と膂力でゴジラの首を抑え、研ぎ澄まされたクチバシを登山家のピックのように振り下ろす。

 ダイヤモンドより硬いクチバシが、ゴジラの脳天を穿つ。

 ラドンに気を取られたゴジラ、その死角からアンギラスボールの一撃が再び襲った。

 今度も直撃、不意打ちで背中を突き飛ばされ、ゴジラは思わず膝を突いた。

 

 そんなゴジラを、空高く舞い上がったラドンが嘲笑う。

 二大怪獣アンギラスとラドンの巧みな同時連携攻撃だ。

 

 

 ゴジラも一方的に翻弄されるばかりではない。

 ゴジラが鋭い目線で見据えた先は、地面を駆けるアンギラス。

 地面を削りながら大地を転がり、ゴジラに向かって三度迫ろうとする凶暴凶悪なアンギラスボール。

 

 ゴジラは自らの尻尾を構え、ホームランバッターのように力一杯振り抜いた。

 ゴジラの尻尾はアンギラスへと直撃し、大気の炸裂音が響き渡った。

 

 打ち飛ばされたアンギラスの巨体、吹っ飛んでいった先は空を飛ぶラドンだ。

 三度の急降下を目論んでいたラドンは、飛んできたアンギラスボールの直撃を受けてバランスを崩し、アンギラスと縺れ合いながら錐揉み回転で墜落してしまった。

 

 

 

 アンギラスとラドンを撃破したゴジラの頭上に、黄色い毒網が降りかかった。

 クモンガのデスクロスネットである。

 ナノメタルで強化された網が幾重にも被さり、ゴジラの動きを封じ込める。

 

 ゴジラがデスクロスネットに揉まれているうちに、ノックアウトされていた怪獣軍団は体勢を立て直した。

 どれも深手を負っていたが、ナノメタルで生命力を極度に活性化されているためか痛くも痒くも感じていない。

 立ち上がった怪獣軍団は、ほぼ同時にゴジラへと飛び掛かった。

 アンギラス、ラドン、ZILLA、エビラ、カマキラス、クモンガ、メガギラス。

 怪獣軍団の同時総攻撃、これならゴジラもかなうまい。

 怪獣軍団は勝利を確信した。

 

 

 しかしゴジラはものともしなかった。

 

 

 背鰭を青く瞬かせ、その光熱でデスクロスネットを焼き切ると、迫りくる怪獣軍団へと果敢に立ち向かってゆく。

 アンギラスの首を食い千切り、メガギラスとラドンとカマキラスを尻尾でまとめて叩き落し、エビラの顔面を抉り、そしてクモンガとZILLAを放射熱線で重ねて撃ち抜いた。

 怪獣王ゴジラには、怪獣軍団が束になってもかなわないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな怪獣軍団の醜態を眺めながら、ヘルエル=ゼルブは嘆息した。

 

 ……雑魚をまとめても話にならん。

 そもそもゴジラは『怪獣黙示録』の時代、その頂点に君臨していた存在だ。

 『怪獣黙示録』で暴れ回っていた三下怪獣では到底相手にならないようだった。

 

 だがこれならどうだ?

 ヘルエル=ゼルブはコマンドを送信する。

 

 

 

 

〈 コード、キメラ! 〉

 

 

 

 

 

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