怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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66、悲鳴 ゴジラ対キメラ

 ゴジラ対キメラ怪獣。

 わたし、タチバナ=リリセの前で対峙する両者。

 

 

 先に動いたのはキメラ怪獣だ。

 クモンガの脚を深く屈伸し、高く飛び上がるキメラ怪獣。

 ゴジラより一回りも大きな巨体にも似つかわしくない、とてつもなく軽やかな動き。まるでZILLAのジャンピングキックだ。

 さらにラドンとメガギラスの翼で羽ばたいて高いところまで舞い上がり、ゴジラ目掛けて思い切り急降下を繰り出す。

 ゴジラは自分を上回る巨体の急降下攻撃を真正面から受け止めてしまい、キメラ怪獣に伸し掛かられてしまった。

 

 有利なマウントポジションを築いたキメラ怪獣は、エビラのハサミ:クライシスシザースと、カマキラスの鎌:クラッシュハーケンの四刀流で、ゴジラを滅多切りにかかった。

 

 

 ゴジラも負けてはいない。

 背鰭を青く光らせながら(りき)んだゴジラは、放射熱線をキメラ怪獣に向けて放つ。

 渾身の力を込めて撃ち出されたのはただの熱線ではない。

 青く渦巻く光の槍、いわばスパイラル熱線だ。

 ライフル弾のように鋭い螺旋を巻いた線条光がキメラ怪獣の右肩を貫き、その肉を骨ごと撃ち抜いた。

 

 肩を深々と抉られ、その場に引っ繰り返ったキメラ怪獣。

 傷口からはナノメタルの混じった銀色の血液が噴き出し、聞くだけでも傷ましい、裂けるような悲鳴がキメラ怪獣の口から洩れる。

 ……これほどの大怪我なら致命傷だ。

 もう駄目だろう。

 わたしがそう思ったときだった。

 

 

 

 キメラ怪獣の肩が泡立ち、盛り上がった。

 

 

 

 まるで蝋燭が融けるのを逆回しにしているみたいだ。

 抉れた傷が再生しているのだ。

 苦痛に転げ回っていたキメラ怪獣が咆哮を挙げ、むくりと起き上がった。

 再生後のキメラ怪獣の肩は形がより歪になってはいたが、傷そのものは完全に塞がっていた。

 

 完全復活したキメラ怪獣はメガギラスそっくりの尾を振りかざす。

 狙う先はゴジラの鼻先。あの鋭い毒針で、ゴジラの顔を串刺しにするつもりなのだろう。

 

 顔面に飛んできた毒針を、ゴジラは顎で受け止めた。

 まるで達人の真剣白刃取りだ。

 

 尻尾に食らいつかれたキメラ怪獣は引き抜こうとするが、ゴジラの顎の力には押すことも引くことも出来ない。

 やがてゴジラの口元で硬いものが砕けてゆく音が鳴り、ゴジラはキメラ怪獣の尻尾に噛みついたまま思い切り首を捻った。

 キメラ怪獣の尻尾は半ばの所で千切れてしまい、尻尾を喪ったキメラ怪獣が悲鳴を挙げて後ずさる。

 

 直後、尻尾の傷口からまたしても肉が盛り上がり、新しい尻尾が生えてきた。

 

 再生した毒針はより凶悪なデザインに変わっていた。

 尻尾が生え変わる光景はわたしに『トカゲが尻尾を切って逃げる光景』を思い出させた。

 しかしトカゲの尻尾は最初から切れる部分が決まっているし、そもそもこんな一瞬で生え変わったりはしない。

 このキメラ怪獣の再生はどうみても異常だ。

 これもきっとナノメタルの力なのだろう……

 

 というところまで思い至ったわたしは戦慄のあまり全身が粟立ち、脂汗が滲み出るのを感じた。

 

 思わず、自分の下腹部へと手が伸びる。

 かつて多摩川河川敷でアンギラスと戦ったときに負った深手。

 あの時、メカゴジラⅡ=レックスはナノメタルの力でわたしの怪我を完璧に治してくれた。

 おかげでわたしは今も生きている。

 あのとき、わたしがレックスにどれだけ感謝したかわからない。

 

 しかし今、キメラ怪獣の身に起こっていることはそれの裏返しだ。

 腹部を鉄棒で串刺しにされても死なずに済んだのがナノメタルのおかげなら、放射熱線で斬り裂かれたり体の部品を毟り取られても死なないのだってナノメタルのおかげだ。

 わたしも一歩間違えたらキメラ怪獣のようになっていたかもしれない。

 ……なんて恐ろしいテクノロジーだろう。

 

 

 

 

 ちぎってもちぎっても再生するキメラ怪獣。

 眼前で繰り広げられた異様な光景に、流石のゴジラも動揺していたようだった。

 だがすぐに気を取り直してキメラ怪獣へと挑みかかる。

 体格では劣っているもののパワーはゴジラの方が上だ。それにゴジラには放射熱線がある。

 他方、キメラ怪獣は腕を毟られたり熱線で胴体をぶち抜かれたり、一歩的に痛めつけられるばっかりだった。

 かといって死ねるわけでもなく、すぐさまナノメタルが傷を直してしまう。

 

 その光景を見ていたわたしは、ある怪獣のことを思いだした。

 

 

 

 

 ――サイボーグ怪獣、ガイガン。

 

 

 

 

 オペレーション=ロングマーチで地球人と共にゴジラと何度も戦ったという、ゴジラの宿敵だ。

 ゴジラ相手には結局一度も勝てなかったけれど、敗ける度にパワーアップし最後まで勇敢に戦った逸話で知られている。

 わたしがガイガンのことを教わったのは、通っていた幼稚園でのことだ。

 

 ――恐竜みたいにスマートなシルエット。

 

 ――全身に満載した強そうな武器の数々。

 

 ――サングラスみたいな赤い目もナイスガイって感じでとってもクール、カッコいい!

 

 わたしはガイガンという怪獣を、一目見ただけで好きになってしまった。

 幼稚園でガイガンのことを知り、家に帰ったわたしは、実際にオペレーション=ロングマーチに従軍したことのあるゴウケンおじさんにガイガンのことを訊ねた。

 

『ガイガンってどんな怪獣だったの? 一緒に戦ったの? カッコよかったんでしょう?』

 

 ゴウケンおじさんはこう答えた。

 

 

 

 

『二度と聞くな』

 

 

 

 

 凄まじい剣幕だった。

 いつもは優しいおじさんなのに、その時だけは本当に恐ろしかった。

 

 『おじさんはどうしてガイガンのことを話したくないのだろう?』

 

 わたしはその疑問を胸の奥に仕舞い込み、以来二度とガイガンのことを話題に出さなかった。

 大きくなってオペレーション=ロングマーチの実情を学んでからは、『ゴウケンおじさんはガイガンを実際に見たことがなかったのだろう。怒ったのはきっと作戦中に嫌なものを沢山見たからに違いない』と結論付けた。

 以来オペレーション=ロングマーチについて、わたしの方からゴウケンおじさんに訊ねることは少なくなっていった。

 

 だけど今ならわかる。

 ゴウケンおじさんがガイガンのことを話さなかったのは、オペレーション=ロングマーチ絡みの話題だからでも、ガイガンのことを知らなかったからでもない。

 むしろ、ガイガンの実像を知っていたからこそ、口を(つぐ)んだのだ。

 

 身体を改造されてラジコンのように操られ。

 

 全身を八つ裂きにされても死ぬことはできず。

 

 勝てもしないゴジラに叩き潰され続ける……

 

 きっとガイガンの戦いも、実際はこのようなものだったのだろう。

 

 

 

 

 まさに今わたしの眼前で繰り広げられている、ゴジラとキメラ怪獣の戦いのような。

 

 

 

 

 ゴジラの放射熱線がキメラ怪獣の頬に直撃、顔を半壊させた。

 しかし、その手傷もすぐさまナノメタルで補修されてしまう。

 顔がより醜く崩れた状態で再生されたキメラ怪獣は口を大きく開き、ゴジラに向かって糸を吐きかけた。

 クモンガのデスクロスネットを使うつもりか。

 

 そして次の瞬間、べちょり、とキメラ怪獣の下顎が融け落ちた。

 

 喉の奥から絶叫を絞り出すキメラ怪獣。

 デスクロスネットの猛毒に自分自身が冒され、自分の顎を融かしてしまったのだ。

 

 

 毒吐き攻撃に失敗したキメラ怪獣は、次に片手のハサミを振り上げた。

 15メートルに及ぶ巨大なハサミ、エビラ自慢のクライシスシザースだ。

 巨大戦艦さえも叩き折る一閃がゴジラへ直撃、弾け飛ぶ破裂音が響いた。

 

 だが手傷を受けたのはキメラ怪獣の方だ。

 クライシスシザースがぶら下がっている肩が、おかしな方向に折れ曲がっている。

 クライシスシザースのパワーに耐えかねて肩を壊してしまったのだろう。

 せっかく強力なパワーを与えられたというのに、キメラ怪獣はそれらをまったく使いこなせていない。

 

 ……考えてみればおかしなことでもない。

 デスクロスネットもクライシスシザースも、それぞれの怪獣固有のものだ。

 クモンガの顎の構造は毒を発射するために最適化されているし、クライシスシザースだってエビラだからちゃんと使いこなせる。

 それなのに毒を吐く能力、巨大なハサミを振り回すパワーだけ移植すれば、当然こうなる。

 どんな怪獣、いやどんな生物だってそうだ。

 生き物の体は、どれも一つの完成形だ。出鱈目に切って貼って(カット&ペースト)していいものではない。

 『頭を複数にしよう!』『飛べるように翼をつけてやれ!』『金属の鱗を着けたら頑丈だろう!』

 たしかにどれも実際の生物の特徴かもしれないが、しかしそれら全部を一緒にしたような生き物なんているはずがない。ただ有用だからと何も考えずに一部分だけ取り出して組み合わせるようなことをすれば、必ず破綻する。ましてや生物兵器だなんて。

 ……この場にエミィがいなくてよかった。

 動物をこよなく愛するエミィに、こんな残酷な光景は絶対見せられない。

 

 

 勝手に自滅して怯んだキメラ怪獣に、ゴジラは放射熱線を浴びせた。

 スパイラル熱線の乱打。

 首を抉り、尾を斬り裂き、腕を吹き飛ばす。

 飛び散る銀色のナノメタルと、ナノメタル混じりの肉片。

 全身を膾切りにされたキメラ怪獣は絶叫し、地面へと倒れ伏した。

 

 しかし、そこまでされてもキメラ怪獣は死んでいなかった。

 すぐさまナノメタルで再生され、より歪んだ形へとパワーアップして立ち上がる。

 こうして復活()()()()()キメラ怪獣は、再びゴジラに戦いを挑んでゆく。

 

 ――色んな怪獣の強い部分だけ組み合わせて、無敵の怪獣を作ろう!

 ゴジラを倒せる最強の合体怪獣の誕生だ!!

 わっはっは、素晴らしいだろう!!

 

 そんな風に自慢するへルエルゼルブの姿が目に浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吐き気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ゴジラを倒せる最強の合体怪獣』?

 そんなの、ただの見栄だ。

 そんなくだらないことのためにこんな怪獣まで造って、どこまで幼稚で身勝手なんだろう。

 『色んな怪獣の強いところだけ組み合わせた、最強の怪獣を造ろう』だって?

 これまで見せられた中でも下劣極まりない、最低最悪のアイデアだ。

 パクス=ビルサルディーナとかいう誇大妄想もろくでもないと思ったけど、まさかそれより酷いものがあるなんて。

 

 

 何より不幸なのは、このキメラ怪獣自身だ。

 

 

 キメラ怪獣が動くたびに、ブチブチメキメキと骨肉の裂ける音が聞こえてくる。

 ……きっと上手く動けないのだろう。

 それに時間が経つにつれて、足取りもふらついてきているように見える。

 エビラのクライシスシザースとカマキラスのハーケン、ラドンの翼、メガギラスの尻尾、追加したパーツが多すぎるのだ。

 そしてこんな巨体では、クモンガの細長い肢では到底支えきれない。

 バランスを考えずに色んな怪獣の強い部分()()を組み合わせて作った結果、こんな無茶苦茶な生き物になってしまった。

 

 それでも動くことができるのは、ナノメタルで強引に継ぎ接ぎしているからだ。

 仮にゴジラを倒すことに成功したとしても、ナノメタルの力がなければこのキメラ怪獣はすぐに死んでしまうに違いない。

 

 

 ……あるいはそれも織込済なのかも。

 

 

 ――『ゴジラを倒せる怪獣』など、ゴジラを倒してしまえば用はない。

 むしろ長生きしてもらっても邪魔になる。

 用が済んだらとっとといなくなってもらった方が都合がいい……

 へルエル=ゼルブのような下劣な屑なら、これくらいのことは考えるはずだ。

 そしてそんな人間のエゴの行き着いた先が、このキメラ怪獣の惨たらしい姿なのだ。

 

 そんなキメラ怪獣をゴジラは徹底的に痛めつけた。

 放射熱線で腹を抉り、手足と翼をもぎとり、尻尾を食い千切る。

 動くことさえままならず、延々と全身をボロボロにされ続けるキメラ怪獣。

 それでもキメラ怪獣は戦いをやめようとしない。

 いや、()()()()()()()()()()。脳髄までナノメタルに入り込まれたキメラ怪獣は、主人のヘルエル=ゼルブから送られてくる指令コマンドには逆らえないのだ。

 きっとキメラ怪獣は最後までゴジラとの戦いを辞められないだろう。最後の最期、ゴジラの放射熱線でナノメタルが一滴残さず焼き尽くされるまで。

 

 猛毒で自壊した下顎、クライシスシザースの一撃に耐え切れずに壊れた肩、体重を支えられず萎えてしまった足をナノメタルが繕い始めた。

 メキメキという音とともに欠損部が再生してゆき、キメラ怪獣が叫び声を挙げる。

 

 きっと苦しいだろう。

 

 痛くてたまらないだろう。

 

 それでも戦いをやめられない。

 

 これは単なる苦痛の悲鳴じゃない。

 人間の欲望に弄ばれた、怪獣たちの悲鳴だ。

 

 

 

 

 

 

 ……やめてよ、もう。

 

 

 

 

 

 

 可哀想だよ。

 

 お願いだからやめて。

 

 いくらなんでも むごすぎる。

 

 叶うものなら、今すぐ飛び出してでも辞めさせたかった。

 だけど、わたしごときにそんなことなど出来はしない。

 出来ることと言えばただ見守ること、そして祈ることだけだ。

 

 人間でもエクシフの神でも、誰でもいい。

 どうかおねがいします。

 彼らをもうこれ以上苦しませないで。

 

 おねがいだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 怪獣軍団の再生からセプテリウス誕生まで、ずっと不動の司令塔に徹していたメカゴジラⅡ=ReⅩⅩ。

 

 その足元にセプテリウスの頭が転がってきた。

 ゴジラのスパイラル熱線で首を刎ねられてしまったのだ。

 首を喪った胴体の方は、脊髄に埋め込まれたナノメタルのおかげで首無しのまま戦闘を続けていたが、感覚器がないためまるで見当違いの方角を出鱈目に攻撃することしか出来なかった。

 やがてゴジラのスパイラル放射熱線をもろに浴び、バラバラに切り刻まれてしまった。

 

 メカゴジラの足元で藻掻いている、セプテリウスの頭。

 ゴジラを倒せと命じられたセプテリウスは、頭だけの状態になっても戦うつもりのようだった。

 

 

 が、ヘルエル=ゼルブはやめさせた。

 

 

 ……もういい。

 たしかに、ナノメタルがある限りいくらでも再生できる。このまま持久戦を続けていれば、『ゴジラが息切れを起こして倒れる』なんてこともあるかもしれない。

 しかし、根本的にスペックが違いすぎる。

 これ以上続けていてもナノメタルを消耗するだけだ。

 きっとゴジラが力尽きるより先に、孫ノ手島に埋蔵したナノメタルを使い切ってしまうだろう。

 雑魚を掻き集めて合体させたところで、所詮は雑魚か。

 

 データは充分に得られた。

 おまえなんぞにもう用はない。

 

 ゼルブが停止コマンドを送信すると、セプテリウスは動きを停止。

 動かなくなったセプテリウスの頭はどろりと融け、地中へと染み込んで消えた。

 

 ……さて、ゴジラ。

 前座とのお遊びはここまでだ。

 今度はこのヘルエル=ゼルブの駆るメカゴジラⅡ=ReⅩⅩが、貴様を屠ってくれよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴジラがスパイラル熱線でキメラ怪獣の首を刎ねたとき、わたし:タチバナ=リリセは、心の底から「よかった」と思ってしまった。

 ……よかった。もうキメラ怪獣が苦しめられることはない。

 そんな風に思ったのだ。

 

 無論、わたしの祈りが届いたわけではない。

 ゴジラからすれば、勝てもしないのにいつまでも絡んでくる鬱陶しい奴を始末しただけだ。

 ……あるいはガイガン、ひいては他の怪獣たちのこともそんな風に思っていたのかもしれない。

 宿敵、ライバル、そんな勝手なキャラ付けをして喜んでいたのは人間の方だけで、ゴジラからすればしぶといストーカーかなにかとしか思っていなかったかもしれない。

 ……なんて勝手なんだろう、と自分でも思う。

 無理矢理とっ捕まえて改造して兵器にしておきながら、目の前で痛めつけられたら「可哀想」で、惨たらしく殺されたら「良かった、これで苦しまなくて済む」??

 まったく、手前勝手にもほどがある。とっ捕まえて改造したのも、痛めつけるように仕向けたのも、何もかも人間なのに。

 

 そんなことを思っていたとき、戦いの趨勢に動きがあった。

 

 

 〈メカゴジラⅡ=ReⅩⅩ〉が、遂に動いた。

 

 

 赤い瞳に電光が灯り、クリスタル状の背鰭と尾を振るいながら、カギ爪を備えた脚で大地を踏みしめる。

 銀色のボディが身じろぐたびに金属のパーツが組み替わり、擦過音が重なる鋼のシンフォニーとして島中に響き渡る。

 メカゴジラの重く低いエンジン音は、皮肉なことに宿敵ゴジラの唸り声とよく似ていた。

 

 ゴジラも動いた。

 今眼前に立ちはだかっているのは不遜にもキングオブモンスターを模して造られたという複製、十七年前に葬ったはずの宿敵。

 繊維質の筋肉で編み上げられた身体が軋み、背鰭で青い稲光を明滅させながら、超然とした双眸を憤怒に燃やす。

 メカゴジラを睨みながら、ゴジラは大音声の咆哮で島の空気を震わせた。

 

 

 両者は、同時に大地を蹴った。

 

 

 怪獣王:ゴジラは咆哮し、威嚇するように背鰭を光らせながら大地を踏みしめ、メカゴジラに向かって突貫を仕掛けた。

 鋼の王:メカゴジラⅡ=ReⅩⅩも雄叫びのような重い金属音を轟かせ、脚部プラズマブースターを全開にゴジラへ突撃する。

 

 

 怪獣王と鋼の王。

 二体の王による大激突は、孫ノ手島の大気と大地、ひいては全世界をも揺るがした。

 

 

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