怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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67、激闘Ⅰ ~『ゴジラ×メカゴジラ』より~

 

 ゴジラとがっつり掴み合ったメカゴジラⅡ=ReⅩⅩ。

 組み合ったゴジラとメカゴジラが地面を踏みしめるたびに、大砲並の地響きが島中に轟く。

 

 ゴジラがメカゴジラの腕を振り払い、その長い尾を思い切り振り回してメカゴジラの首元へ強烈な一閃を叩き込んだ。

 純ナノメタル製の機体にゴジラの尻尾がめり込み、首が明後日の方向へ捻じ曲がる。

 

 メカゴジラⅡ=ReⅩⅩはものともしない。

 

 自身の首に打ち込まれたゴジラの尻尾を、逆にメカゴジラⅡ=ReⅩⅩは捕まえた。

 鋼のバルクが躍動し、ゴジラの尾を掴んで巨体を持ち上げて背後の岩山へ目掛けて投げ飛ばす。

 ゴジラの巨体が宙を舞い、岩山へと墜落。岩山は子供の積み木のように崩れ落ち、岩雪崩がゴジラの巨体を飲み込んだ。

 すぐさまゴジラは起き上がり、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩに向かって威嚇の雄叫びを挙げた。

 

 ……力、敏捷性。

 いずれも互角以上のもののようだ。

 開発者であるビルサルドの想定通り、あるいはそれ以上のスペックを、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩは発揮していた。

 かつて富士宮で建造されていたメカゴジラもあるいはこんな機動が可能だったろう。

 

 

 だが、とゼルブは不敵に笑んだ。

 ゴジラめ、このReⅩⅩがかつてのメカゴジラと同じ性能だと思ったら大間違いだ。

 

 

 再生させた怪獣軍団、キメラ=セプテリウス、そしてこの格闘でゼルブはひとつ確信を得た。

 表皮下に張り巡らされたメタマテリアルの絶対防御、〈非対称性透過シールド〉。

 ……()()()()()()の通りだ。

 メカゴジラの中でゼルブは狂喜した。

 

 

 

 

 〈サカキ・レポート〉はやはり正しかった!

 

 

 

 

 データベース資料番号:EGX-54-841617。

 新生地球連合内部では作成した担当官の名前からサカキ・レポート、あるいはその黙示録的な内容から〈怪獣黙示録〉の符丁でも呼ばれている。

 

 サカキ・レポート、それは1999年における怪獣との初遭遇から2030年のゴジラ出現、そして2048年の完全敗北までにおける生存者たちの証言を克明に記した報告書(レポート)である。

 作成担当者の熱意の賜物か、現存する当時の証言集としては最も情報量の多いものの一つだったが、主観性の強い証言集という性格から資料的価値は低いと評され、おざなりに扱われた末に散逸し、その存在は半ば都市伝説と化していた。

 

 この資料の断片をヘルエル=ゼルブはひょんなことから入手した。

 ……面白い、とゼルブは思った。

 ヘルエル=ゼルブが手に入れたサカキ・レポートは不完全なもので、特に西暦2045年のオペレーション=ロングマーチ終盤から2048年のリオデジャネイロ陥落にかけて著しい欠落があったが、ヘルエル=ゼルブの興味を引くにはそれで充分な内容だった。

 誰からも見向きされず世界から忘れ去られた謎の資料。そのようなものの中にこそ、ゴジラ打倒のヒントは埋もれているのではあるまいか。

 ゴジラ打倒を目指すにあたって、ヘルエル=ゼルブはこの散逸したサカキ・レポートの蒐集から取り掛かった。

 

 完成したサカキ・レポートを読了したとき――もっとも怪獣が出てくる部分しか興味はなかったが――ヘルエル=ゼルブは確信した。

 

 

 これは黙示録などではない。

 むしろ良い知らせ、すなわち福音書である。

 

 

 なんという皮肉だろう。

 旧地球連合政府が黙殺したこの資料にこそ、勝利の鍵があったなんて。

 十七年前のあのとき富士の宮でメカゴジラ初号機を起動し、このサカキ・レポートを基に確実な討伐プランを構築できていたならば、ゴジラごときに敗北を喫することなどなかったのだ。

 ここに、ゴジラを殺す方法がある。

 

 サカキ・レポートを基に、ヘルエル=ゼルブはゴジラ抹殺に向けたプランを練り上げた。

 

 ヘルエル=ゼルブが秘匿していたナノメタルのサンプル。

 マフネ=ゲンイチロウが執念で組み上げたマフネ=アルゴリズム。

 そして何よりゴジラとの戦闘データが子細に記述されたこのサカキ・レポート。

 その結晶が新生地球連合軍であり、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩなのだ。

 必要なものはすべて揃っている。

 これで負ける道理はない。

 

 レポートは中南米での戦い、旧地球連合軍が〈怪獣:M〉との共闘を決定したところで終わっており、作成を担当した調査官のその後の消息は途絶えていた。

 そしてその筆者、サカキ=アキラは、レポートの結末で未来の読者に向けてこう結んでいた。

 

 

『是非、君たちが、我々が見つけ出せなかったゴジラ打倒の方法を発見してくれることを祈っている。』

 

 

 ……よかろう。

 サカキ=アキラ、おまえの意志はこのビルサルドのヘルエル=ゼルブが引き継ぐ。

 今度こそ、この忌々しい『怪獣黙示録』を完結させてくれよう。

 そしてゴジラを倒した暁には、レポートの結末に金字でこう刻むのだ、『ビルサルドの鋼の精神が創り上げた人類の新たなる希望、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩが、地球文明に永遠の繁栄をもたらした』、とな。

 

 ゼルブはコマンド〈Gブレイカー〉を起動。

 地鳴りと共に大地が揺れ、地割れが生じ、岩場と施設をめちゃくちゃに巻き込みながら大地にナノメタルの塔が突き立つ。

 島に埋設されていたナノメタル群が変形したカギ爪状の塔。その形状は、メカゴジラの掌に備わっているクリスタル状のカギ爪に似ていた。

 ……ゴジラめ。おまえなど、メカゴジラの掌の上で踊るだけの指人形にも等しい存在なのだということを思い知らせてやる。

 

 ――メカゴジラの逆襲だ!

 

 ゴジラは周囲の異変など気にも留めず、眼前のメカゴジラⅡ=ReⅩⅩへ直行する。

 自身の体表でパチパチと火花がスパークしていることに、ゴジラは一向に気付かない。

 

 そんなゴジラに、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩが腕を変形させた〈メーサーブレード〉を叩き込んだ。

 ゴジラは身を守ろうともしない。

 当然だ。その程度の攻撃など、核爆弾すら防ぐ非対称性透過シールドが発動して防いでしまうからだ。

 

 しかし、今度は違った。

 メカゴジラⅡ=ReⅩⅩの一閃が、ゴジラの胸郭へと斬り込んだ。

 

 ゴジラは驚愕していたようだった。

 無敵の非対称性透過シールドが発動しない。

 本来なら通用しないはずのメーサーブレードが金属の擦れる音とともに肉を轢き切り、ゴジラの胸部を深々と斬り裂いてゆく。

 胸を抉られる激痛に叫ぶゴジラ、そしてそんなゴジラを見ながらヘルエル=ゼルブは勝ち誇った。

 

 ――どうだ、これがメカゴジラの力だ!

 

 仕掛けはこうだ。

 周囲のカギ爪、〈干渉波クロー〉から発する電磁パルスがゴジラのシールドに干渉し、その絶対防御を無力化していた。

 サカキ・レポートに記載があった非対称性透過シールドを攻略するために、ゼルブが用意した切り札のひとつだった。

 サカキ・レポートを分析した結果から、ゼルブはゴジラの弱点をひとつ看破した。

 

 ゴジラの攻撃も防御も、そのほとんどが電磁波に頼っている。

 ならばその電磁波を狂わせてしまえばいい。

 

 

 不意に喰らった今の一撃でゴジラが膝を着く。

 だが、息はまだある。

 すぐさま立ち上がり、どす黒い体液をまき散らしながら吠えるゴジラ。

 並の怪獣なら仕留めていたはずの一撃だ。しかし流石にゴジラともなると、胸を斬った程度では死なないらしい。

 

 ――ならば、これでどうだ!

 

 干渉波クローの出力を調整するゼルブ。

 EMPクローから発する電磁パルスの波長が切り替わり、ゴジラの体表でのスパークがより激しいものになる。

 EMPクローの攻撃で非対称性透過シールドの極性が転換し、ゴジラの体表を焼き始めたのだ。

 せいぜい苦しむがいい。自らの身を守るはずのシールドが、おまえ自身の生命を蝕むのだ。

 

 メカゴジラⅡ=ReⅩⅩがもう片方の腕、さらに尻尾の先端もメーサーブレードに変形させ、両手と尻尾の三刀流でゴジラに斬りかかった。

 ゴジラ細胞と、鋼のナノメタルがぶつかり合い、激しい火花を散らして甲高い金属の轟音を鳴り響かせる。

 

 メカゴジラⅡ=ReⅩⅩが、右手のメーサーブレードを蛇腹へ分割し、ゴジラの顔に巻き付けた。

 このまま思い切り引けば、ゴジラの顔面は真っ二つだ。

 ――ふん、他愛もない。

 ゼルブは、勝利を確信した。

 

 しかし、ゴジラも一方的な斬られ役に甘んじるつもりはなかった。

 ゴジラは、自らの顔に巻き付いたメーサーブレードの刀身へ食らいつき、逆に自分の方からメーサーブレードを引っ張った。

 メーサーブレードのワイヤーが極限まで引き延ばされ、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩは思わず腕をもぎとられそうになり、左腕のメーサーブレードも伸ばしてゴジラの腕を絡めとる。

 

 だが、ゴジラは一向に怯まない。

 思い切り身体を捩って、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩを引っ張り上げる。

 メカゴジラⅡ=ReⅩⅩの3万トンの巨体が、ゴジラの怪力に引きずられて岩山へと叩きつけられた。

 

 

 そして、金属の割れる音が響く。

 耳障りな高音が孫ノ手島の大気を(つらぬ)くと同時に、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩの両腕はようやく自由になった。

 

 

 ゴジラが、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩのメーサーブレードを破壊したのだ。

 

 

 顔に巻き付いたブレードを噛み砕き、腕に巻き付いたメーサーブレードも力任せに引き千切ったのだ。

 口と腕からぶら下がっているメーサーブレードの残骸を放り捨てながら、満足げに唸るゴジラ。

 

 ――なるほど、ブレードではこういうリスクもあるな。

 

 それを眺めたゼルブは、ひとつ閃いた。

 だったらこれでどうだ。

 破損したメーサーブレードの分だけ短くなった両腕にナノメタルを補充すると同時に、ゼルブは新しいコマンドを入力した。

 メカゴジラⅡ=ReⅩⅩの両腕が金属音と共に変形し、即興で新兵器を組み上げる。

 完成した新兵器が、重低音の唸りを挙げてプラズマエネルギーの光刃を形成する。

 

 ゼルブがこの場で新開発した新兵器、〈メーサーサーキュラー〉だ。

 

 メーサーエネルギーの光輪を形成し、高速振動させることで獲物を八つ裂きにする。

 これなら噛み砕かれる心配はないだろう。

 

 両腕のサーキュラーを振り上げ、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩはゴジラに再び躍りかかった。

 

 

 

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