怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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69、激闘Ⅱ ~『ゴジラ×メカゴジラ』より~

 

 丸鋸(サーキュラー)も悪くはない。

 だが、もう少し貫通力が欲しい。

 腕のサーキュラーの使い勝手を確認したゼルブは、次の手に打って出た。

 

 ゼルブの求めに応じてメカゴジラⅡ=ReⅩⅩは片腕を尖った(パイル)を備えたハンマー、〈スラストパイルドライバー〉へ変形させた。

 肘のロケットに点火、思い切り振りかぶってゴジラの胸部へ叩き込む。

 炸裂する爆音。

 鋭角に尖ったパイルが爆炎で加速し、先ほどブレードとサーキュラーで斬りつけられてから塞がりかかっていたゴジラの胸の傷口を深々と刺し貫く。

 ゴジラが絶叫した。

 

 ――このまま胴体を刳り貫いてくれるわ!

 

 ゴジラの体内に入り込んだパイルを、ゼルブはドリルのカギ爪〈スパイラルクロウ〉へ変形させた。

 狂暴なドリルのカギ爪がゴジラの体内で高速回転し、傷口をこじ開け、深々と突き込んでゆく。

 

 後ずさろうとするゴジラの足に、地面から湧き出たナノメタルが食らいつき、トラバサミのようにその場へ縫い留めた。

 怪獣の足さえも食い千切るメカゴジラⅡ=ReⅩⅩの牙、まさに〈(ファング)〉だ。

 

 続いて島の各地から、捕鯨砲にも似た銛撃ち(ハープーン)の砲台が現れ、足を取られたゴジラに向かって、四方八方からアンカーを撃ち込んだ。

 撃ち出された(アンカー)、〈ショックアンカー〉はシールドを無効化されたゴジラの表皮を易々と貫き、脚をファング、全身をアンカーで固定されたゴジラは身動きが取れなくなってしまった。

 

 

 ゴジラよ。

 この島すべてがメカゴジラだということはすなわち、おまえは今メカゴジラの掌中にいるということだ。

 おまえを握り潰そうが揉んでやろうが、このメカゴジラⅡ=ドミヌスの思うがままなのだ!

 

 

 胸元に潜り込もうとするメカゴジラの首を抑えつけ、ドリルの進行を阻止しようとするゴジラ。

 だが、そんな程度のことでは、伸縮自在のナノメタルで出来たメカゴジラⅡ=ReⅩⅩを止められるはずがない。

 メカゴジラⅡ=ReⅩⅩの腕が伸び、スパイラルクロウはゴジラの胴体を穿孔し続けた。

 そしてスパイラルクロウが削ったその傷口、ゴジラの体内奥深くへと液状のナノメタルが浸透してゆく。

 突き立てた矛とそこから行なうナノメタルによる浸食攻撃。十七年前に叶わなかった机上のプラン、『メカゴジラ建造計画』にあった戦術だ。

 そのプラン通りに、ゴジラを内部から喰い尽くしてくれよう!

 

 ゴジラの方は追い詰められていた。

 体内はスパイラルクロウで掘り進められ、全身はファングとアンカーでがっちり固定されている。

 そして極性の転換された非対称性透過シールドは身を守るどころか、体表で迸る火花となってその体を焼き続けている。

 絶体絶命。

 退()くことも、防ぐことも封じられたゴジラは、放射熱線を発射しようと背鰭を光らせ始めた。

 

 ――そうくると思ったぞ、ゴジラ。

 

 計算通りのゴジラの動きに、ヘルエル=ゼルブはほくそ笑んだ。

 絶対の盾を喪い、退路も奪われたなら、次は荷電粒子ビームでの攻撃に頼ってくると思っていた。

 当然だ、攻撃は最大の防御だからな。

 

 ゴジラが放射熱線を発射した。

 火花が散り飛び、放射熱線が孫ノ手島の各地へと飛散する。

 

 

 しかしメカゴジラには届かない。

 

 

 ゴジラが再び放射熱線を放つ。

 しかし直進するべき放射熱線はゴジラの鼻先で四散し、メカゴジラには決して届かない。

 放射熱線が思うとおりに発射されないことに、ゴジラは口惜しげな唸り声を挙げた。

 

 ――ははははは!!

 

 ゼルブは、苛立つゴジラを嘲笑った。

 キングオブモンスターといえど所詮、貴様などけだものに過ぎない。

 干渉波クローのことを忘れたか。

 この空間電位を狂わせているのだから、放射熱線を封じることだってお手の物。

 最初からおまえは詰みに入っていたのだ。

 

 そして今度はメカゴジラが詰めに入った。

 

 背中から生えたナノメタルの触手が鎌首をもたげ、その先端に次の兵装を錬成する。

 さきほどまではゴジラの表皮に通用しなかったが、干渉波クローで非対称性透過シールドを封じた今なら充分通用するはずだ。

 創り出したのは鋭利な鋼のドリル。

 それを四本も。

 

 

 四連装(クアドロ)スパイラルクロウ。

 これでおまえを葬ってやる。

 これで王手だ!

 

 

 ゼルブが吼え、メカゴジラⅡ=ReⅩⅩのスパイラルクロウが唸りを上げて猛回転し、ゴジラの身体を幾重にも抉った。

 轟音と共に黒い破片が舞い散り、ゴジラが苦悶の絶叫を挙げた。

 

 そのとき、ヘルエル=ゼルブは見逃していた。

 ゴジラの拳から、青白い火花が散り始めているのを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メカゴジラのドリルが縦横無尽に荒れ狂い、轟音と共にゴジラの体を容赦なく削りとってゆく。

 脚は(ファング)に捕らえられ。

 全身はショックアンカーに絡めとられて。

 そして全身をドリルに抉られ続けている。

 雁字搦めで、放射熱線も使えない。

 このままだとゴジラは無惨な削り節にされてしまうだろう。

 まさに絶体絶命のピンチだ。

 

 しかし一方でわたし、タチバナ=リリセは、ゴジラの拳から青白い火花が散り始めているのに気づいた。

 ……ゴジラは何をするつもりなんだろう。

 拳に電撃、どこかで見たことがある光景だ。

 たしかアレは……

 

 そうやって回想に耽っているわたしを尻目に、メカゴジラはガンガン次の手を詰めてゆく。

 ダンスのようにドリルの触手をくねらせ、ゴジラを膾切りにしてゆくメカゴジラ。

 そして、ゴジラの喉を抉り取ろうと振り上げた、まさにその時だった。

 

 

 

 ゴジラのアッパーカットがメカゴジラⅡ=ReⅩⅩの下顎をしたたかに張り飛ばした。

 

 

 

 雷が落ちたような爆音が炸裂すると同時に、メカゴジラの様子が変わった。

 

 軽快なステップを踏んでいたメカゴジラの動きからリズム感が失われ、みるみるうちにふらふらとした足取りへと変わってゆく。

 倒れそうな機体を支えようとして足を踏み出すメカゴジラだったが、その足がぐにゃりと曲がってしまい、ますますバランスを崩してしまう。

 天を仰いだ状態のままよたよたと千鳥足で後ろにたたらを踏んだメカゴジラⅡ=ReⅩⅩは、その場に尻餅を着いてひっくり返ってしまった。

 まるでナノメタルが突然コンニャクになったか、もしくはメカゴジラが酔っ払ったみたいだ。

 生成しようとしたスパイラルクロウや兵装も、ぐにゃりとおかしな形に歪んでしまう。

 よろめいているメカゴジラⅡ=ReⅩⅩの体表で、ナノメタルが荒れた水面のように激しく波立っている。

 ……一体何が起こったのだろう?

 その姿を見ているうちに思い出したのは、過去のレックスの戦いだ。

 

 多摩川でアンギラスに叩き落されたとき。

 立川でメカニコングにぶちのめされたとき。

 レックスが苦戦した相手に共通しているのは、どちらも『電気を使うこと』。

 特に、制御を失ったナノメタルが出鱈目に波打つあの動きは、多摩川河川敷でレックスがアンギラスに雷撃を喰らったときの症状とそっくりだ。

 きっと、あのときと同じことが起こったのだ。

 

 レックスの弱点は〈高圧電流〉だ。

 

 その弱点はきっとメカゴジラⅡ=ReⅩⅩも同じなのだろう。

 ゴジラのパンチと同時に高圧電流を叩き込まれたメカゴジラは、ナノメタルのプログラムに不具合を起こしてしまったに違いない。

 多摩川で墜落したレックスの姿を思い出す。

 あのときのレックスの状態は尋常なものではなかった。すぐに復活したから気にしていなかったけれど、もしかするとあのとき何か致命的な後遺症が残ってしまったのかもしれない。

 

 ヘルエル=ゼルブはさぞ驚いているだろう。

 最強無敵であるはずのメカゴジラにまさかこんな欠陥があったなんて。

 ……あの邪悪な男の動転している顔を想像したとき、少しだけ溜飲が下がる思いがした。

 

 

 そういえばゴジラについて、こんな話を聞いたことがある。

 『ゴジラの体は巨大な原子力発電所と同じ』

 核エネルギーを体内に有している関係からか、元々ゴジラは電磁パルスを放つ怪獣として知られていた。

 地球人が作った電子機器は、ゴジラに近づくだけで故障してしまったという。

 メカゴジラは元々ゴジラを倒すための兵器だ。

 ゴジラが発する程度の電磁パルスであれば本来対策済みだろう。そうでなければ戦いにならない。

 

 だが、そんな人間風情が出来る猪口才な対策など、ゴジラの本気を前にしては大した防御になどならなかったのだ。

 

 桁違いの出力、核爆弾級の電磁パルスをまとった猛烈パンチ。

 それが顔面へクリーンヒットしたメカゴジラⅡ=ReⅩⅩは、いともたやすくノックダウンされてしまった。

 

 

 

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