怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。   作:よよよーよ・だーだだ

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72、礼賛(Alleluia)

 ヘルエル=ゼルブは、ゴジラの血肉を、そしてその体内に秘められていた無尽蔵の膨大なエネルギーを味わっていた。

 

 怪獣出現以前の地球人は、エネルギーを巡る問題で争い続けていたという。

 エネルギー資源に恵まれた資源大国と、そんな大国に喉元を掴まれて言いなりにひれ伏すしかない小国たち。

 他国のエネルギー利権を握ろうとする資本家と、自分たちの国の資源を奪われまいと抵抗する原住民。

 そんな連中が、同じ小さな星に暮らす仲間であるにもかかわらず、互いに憎み合い、争い、殺し合っていたのだという。

 そもそもゴジラを筆頭とする怪獣を生み出したのも核エネルギー、つまりエネルギー問題が原因だった。

 

 ビルサルド来訪の時点で地球人類は怪獣問題に対して一致団結していたが、結局エネルギー問題は棚上げにされたままだった。

 もし仮にゴジラを討伐することに成功していても、地球人はこの問題で悩む時代に再び逆戻りしていただろう。

 他方、ブラックホールという絶対的な脅威を前に結束せざるを得なかったビルサルド。

 そんなビルサルドのヘルエル=ゼルブからすれば、同胞同士での殺し合いで悩むとは、なんと贅沢なのかと地球人を羨む気持ちすらあった。

 

 だが、ゼルブはここで悟った。

 地球人類は恵まれていただけではない。

 

 

 恵まれていたうえに愚かだったのだ。

 それも、どうしようもないほどに。

 ……実に愚かなことだ。そんな問題、なんのこともないではないか。

 

 

 

 

 この至高のエネルギー源、ゴジラさえいれば、すべて解決可能だったのだ。

 

 

 

 

 地球人類に落ち度があったとしたら、それはゴジラに敗走したことではない。

 人類の存在を脅かす脅威であると同時に、人類に無限の物理的な可能性を示唆する福音でもあるゴジラ、その真理に気づかなかったことだ。

 そして、これほど偉大なゴジラを討伐すべき脅威としか見做せず、畏れ怯えるばかりで、その先を追求しようともしないまま逃げ出したことだ。

 

 たしかにゴジラは強大な存在だが、そんなものは肉体を捨て去る覚悟、鋼たる精神を持ち得ればこのとおり、充分に凌駕し得る。

 もしその価値を一欠けらでも理解し、その有用性を運用するアプローチで挑んでいれば、ゴジラはどれだけの恵みと繁栄をもたらしたことだろう。

 あるいはゴジラと敵対することなく、適切な統制下において共存する未来すら有り得たのではないか。

 

 そんなことにも思い至らなかった地球人類の愚かしさを嘆く一方で、その理由もゼルブは理解していた。

 ……まあ無理もない。

 この()()は、肉体を捨て去り、ゴジラという存在を自らの内へ取り込んでみて、初めて到達できる境地だ。

 その第一段階、肉体を捨てる覚悟すら持てない、腰抜けの下等種族には到底わかるまい。

 

 『アンタは地球を手に入れたんじゃない、きっとみんなから見限られたんだ』

 ……あの小娘、タチバナ=リリセはこのようなことを言ったが、わたしに言わせればそれは違う。

 やつら、地球を脱出した移民船の連中こそ、ゴジラを前にしながらそれが持つ重みに耐えきれず逃げ出した脆弱な連中だ。

 ゴジラを眼前にしながらそれを御することを諦めた雑魚どもに、その冠をかぶる資格などない。

 

 あの馬鹿どもが諦めたこのゴジラという王冠(レガリア)を、このわたし、ビルサルドのヘルエル=ゼルブが(いただ)く。

 そしてわたしが率いるビルサルドは、全宇宙に覇を唱えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エミィと子供たちはタワーに向かっていた。

 そして建物の外に出たとき、ちょうどまさにゴジラがメカゴジラⅡに食い殺される場面を目にすることになった。

 エミィはぽつりと呟いた。

 

「……ゴジラ、死んだのか」

 

 ゴジラ、死す。

 ゴジラはナノメタル怪獣メカゴジラにぺろりと食べられてしまった。

 この星に君臨してきた最強のキングオブモンスターにしてはずいぶんと呆気ない最期だ。

 そして怪獣王ゴジラに代わって地球を支配するのは、ビルサルドが創った鋼の王(レックス):メカゴジラなのだろうか。

 

 半ば放心状態で眺めていたエミィは、傍らにいた浅黒肌の少年に突然手を取られて我に返った。

 

「……どうした?」

 

 尋ねるエミィに、少年は答えなかった。

 少年の表情は、これまでののんびりとした雰囲気とは打って変わって、切迫した緊張感を帯びている。

 

 わかるのは、猛烈に慌てた様子だということ。

 これからとんでもないことが起こると思い込んでいる、いや確信しているかのようだ。

 

 ……しかし何が起こるというのだろう。

 少年がどうしてここまで怯えているのか、エミィにはさっぱりわからない。

 ゴジラは今メカゴジラが倒したじゃないか。

 いったい何を怖がることがあるんだ??

 

「お、おい、どうしたんだ?」

 

 戸惑うエミィの手をとり、少年は、黙ったままぐいぐいと必死に引っ張ってゆく。

 どこかへ、それも出来るだけ遠くへ逃げ出そうとしているようだった。

 少年の表情はこう言っているように見えた。

 

「え、なに、『破壊の王が怒ってる、外にいたら焼き殺される』? わけわからんぞ、おい!?」

 

 途惑うエミィを引きずるように、建物の中へ引き返す少年。

 子供たちも少年に導かれるように、建物の中へと逃げ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ヘルエル=ゼルブである。

 

 あまりに夢中でゴジラを頬張っていたので、ゼルブはナノメタル内部でゴジラの体温が上昇していることに気が付かなかった。

 ナノメタルに包み込まれたゴジラの体温は急速に上昇し、鋼鉄のようなゴジラの皮膚が赤熱してゆく。

 

 その段階になって、やっとゴジラの加熱に気付いたゼルブだが、大蛇に飲み込まれまいと必死にもがくネズミの悪足掻きだと当初は気にも留めなかった。

 たしかに、『サカキ・レポート』によれば、過去のチョモランマに生き埋めにされた際、ゴジラは体内からの放熱で岩盤を融かして脱出したことがある。

 

 だが、その程度ならナノメタルで対処可能だ。

 多少もがいて発熱しようが、ナノメタルで冷却して凍結してしまえばいい。

 氷漬けにしてから、ゆっくりと喰ってやる。

 

 

 しかしゴジラは、そんなナノメタルの制御などあっさり乗り越えていった。

 

 

 ゴジラの表皮に接しているナノメタルが真っ赤に焼け始め、分厚く包んでも覆いきれないほどの熱気が外へ放出されて、空気が歪んで陽炎が揺らめく。

 凍結など到底不可能な高熱だった。

 単に熱を放っているのではない。電子レンジが食べ物を温めるのと同じ原理、強烈な電磁波をぶつけることで分子そのものを振動させてナノメタルを過熱しているのだ。

 

 ……おかしい。ゼルブは戸惑った。

 こんな能力、サカキ=レポートにはなかったはずだ。

 ゴジラはまだ切り札を隠し持っていたのか。まさかゴジラは、過去の戦いにおいて全力など出していなかったというのか。

 なんだ、なんなのだおまえは。

 

 ゴジラが放つ高熱は、ついにナノメタルが制御可能な臨界点、さらに融点を超えた。

 すぐさま離脱しようとするゼルブだったが、ナノメタルの機体はいつのまにか、まるでゴジラの体表に溶接されてしまったかのように離れられなくなっていた。

 

 

 ナノメタルの動作さえも封じ込める、ブラックホール級の超引力が、ゴジラの体表から数メートル範囲にだけ生じていた。

 

 

 ナノメタルを吸い着けている引力の正体は、ゴジラの体内から放たれた強烈な磁力だ。

 しかしナノメタルの原材料に使われている金属分子はスペースチタニウムとは違って常磁性体金属、つまり磁力で貼り付くことなど有り得ない。

 そんなナノメタルの身動きを封じてしまうほどの、桁違いの力がゴジラの体表面、それもナノメタルに対してだけ発生しているのだ。

 ……まるで、一度食らいついた獲物を絶対に逃がすまいとしているかのように。

 

 ――くそう、いつゴジラは全身を磁石の塊にしたんだ!?

 

 紅蓮に焼かれたナノメタルがどろどろと融け、メカゴジラの総てがゴジラを中心とした灼熱地獄に包み込まれる。

 ゼルブはその段階になってようやく、自分がどうしようもないミスを犯していたことにやっと気が付いた。

 

 

 

 

 『ゴジラの踊り食い』。

 テクノロジーの粋を極めようが、ヒトの身を捨ててナノメタル怪獣になろうが、そんなバカげた真似はどうやっても不可能だということに。

 

 

 

 

 しかし力に溺れ、テクノロジーを過信し、支配欲に目が眩んだヘルエル=ゼルブは、そんな、子供ですらわかる道理すら忘れていたのだ。

 その失敗をようやく理解したヘルエル=ゼルブだったが、もはや手遅れだった。

 

 ……バカな!

 

 我々が負けるはずがない。

 地球に負けるはずがない!!

 これまでだってそうだったじゃないか。

 地球人はいつだって我々ビルサルドを先進種族と見上げていた。

 地球の雑魚怪獣どもだって、ビルサルドの科学力を前にしては手も足も出なかった!

 知性だって、力だって、文明だって、何もかもが上回っていた。

 そんな我々のメカゴジラが、地球のゴジラごときに負けるはずが……

 

 この期に及んで自らの愚かしさを受け容れられない、ヘルエル=ゼルブ。

 そんなヘルエル=ゼルブに天啓が降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈 光あれ 〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ力゙ぺッ(A g a p e)

 ビルサルド統制官ヘルエル=ゼルブは、ゴジラの体内から解き放たれた爆熱とともに光のミンチとなって消し飛んだ。

 

 

 

 

 

 ゴジラを中心とした衝撃は、全身をくるんでいたナノメタルを爆砕し、ゴジラを中心とした灼熱の火の玉へと変貌した。

 高熱と衝撃波で大気が捻じ曲がり、急激な上昇気流によって生まれたキノコ雲が、孫ノ手島の中央にドカンとそびえ立った。

 

 

 

 

 




「オマケ設定:メカゴジラⅡ=ReⅩⅩドミヌス&タイラノス」

◆メカゴジラⅡ=ReⅩⅩ 〈ドミヌス〉
全高:60メートル
全長:200メートル
総重量:4万トン

ヘルエル=ゼルブが構想した『怪獣艦隊』の旗艦を務める形態。ドミヌスはラテン語で『領主』の意。
アニゴジ本編の初代メカゴジラと似ているが、ヘルエル=ゼルブが手に入れた『サカキ・レポート』の内容が反映されている。
ドミヌスの武装はいずれも、ゴジラの『非対称性透過シールド』を干渉波クローで破った上で各種刺突武器で頑強な表皮を破壊することを想定して作られている。

・メーサー サーキュラー
硬度精製したナノメタルの丸鋸に、高圧のメーサーエネルギーを帯びさせて斬り裂く技。
メーサーブレードをベースにヘルエル=ゼルブがその場即興で考案した兵器。

・スラスト パイルドライバー
高密度精製したナノメタルのパイルをロケットブースターで瞬間的に加速し、叩き込む。
ハイパーランスを参考にヘルエル=ゼルブが考案した兵器。破壊力はハイパーランスに劣るがそれでもゴジラの表皮を貫通するのに充分な攻撃力を有し、取り回しについてはハイパーランスより優れている。

・クラッシャーバイトファング
メカゴジラの『牙』。トラバサミ状に変形させたナノメタルで四肢へ噛みつき、機動力を封じる。
また対ゴジラ戦以外でも、標的の体を咀嚼して解体することで、マフネ=アルゴリズムで吸収する際の補助的な役割も担う。

・スパイラルクロウ
マシンハンドから生やしたカギ爪状のドリル。ゴジラの身体を削り取り、掘り進む。
『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ東京SOS』に登場した同名の兵器が元ネタ。

・干渉波クロー
『サカキ・レポート』の内容を基にヘルエル=ゼルブが独自研究で造り上げた対G兵器『Gブレイカー』にして、ドミヌスの要。
尖塔状の体外ユニットであり、ゴジラに強烈な電磁波をぶつけることで体内電磁波をかき乱す。
干渉波クローが創り上げるフィールドの内側にいるかぎり、ゴジラは放射熱線を撃つことも、シールドで身を守ることも封じられる。
名前の元ネタは『ガ〇ラ2』。ビジュアルイメージはスペースゴジラの結晶フィールド。


◆メカゴジラⅡ=ReⅩⅩ 〈タイラノス〉
全高:400メートル
全長:1,000メートル
総重量:不明

みんな大好き全長1キロメートルのメカゴジラ。タイラノスはラテン語で『暴君』の意。

・ミレバスター
千台のハイパワーメーサーの集中砲火を浴びせる技。ミレはラテン語で『千の』という意味。
並の怪獣なら肉片すら残らない。

・ブッダ ハンズ
掌で展開した干渉波クローで、ゴジラの放射熱線を封じる防御技。
名前は『釈迦の手』という意味で、「釈迦に勝負を挑んだ孫悟空が、世界の果てから果てまでを飛び回ったつもりが、実際は釈迦の掌の上でしかなかった」という逸話に因んだもの。

・ホーミングゴースト
四散したナノメタルを遠隔操作、変形させてゴジラを攻撃させる技。
作中では刺突用の槍に変形させたが、メーサーの移動砲台へ変形させてファ〇ネルにしたりもできる。
元ネタは『ゴジラVSスペースゴジラ』より。



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