怪獣失楽園:アニゴジ世界で怪獣プロレス。 作:よよよーよ・だーだだ
ゴジラ復活。
破壊の神VS大宇宙創造の神。
迫りくるゴジラに対し、ルシファー=ハイドラはマシンハンドを無数の刃物に変形させた。
耳を突く高音を伴って猛烈に回転するドリル。
がちんがちんと歯を打ち鳴らすトラバサミ。
ダイヤモンドよりも固い
丸鋸、
その数、二千本。
ハイドラは、それらすべてを一斉にゴジラ目掛けて繰り出した。
――どーだ、恐ろしいだろう!
――恐ろしくて声も出まい!
――さあ、喰らえッ!!
だが、ゴジラは逞しい腕の一振りで、それらすべてを根こそぎブッた斬りにしまった。
――ぎゃあ、いたいよう!!
――よくも!
――おのれ、
マシンハンドを失ったルシファー=ハイドラは口を開いた。
先ほどゴジラを花畑に変えた虹色の猛毒、それを再び使おうというのだ。
虹色の毒光が、ハイドラの口内で迸る。
その開きかけたハイドラの顔を、ゴジラの手が掴んだ。
ハイドラの鼻先を鷲掴みにしたゴジラは、力任せに首の関節をねじって頸椎をへし折り、そして
――エぴュっ!?
ぐしゃぼきっ、ちゅどーん。
虹色の稲妻として放出されるはずだったエネルギーと、ゴジラのプラズマ・クローによるエネルギーが、握り潰されたルシファー=ハイドラの口中で衝突し暴発、ゴジラの掌中でハイドラの頭が爆裂した。
撒き散らされたのは爆発ではなく、花吹雪。ハッピーエンドとは程遠い、凄惨な末路。
花びらの大爆風が収まったあと、満開の花束と化したハイドラの首が一本、ぷらんぷらんと力なく揺れていた。
――ひ、ひいっ!?
頭をひとつ失って動転したルシファー=ハイドラは、翼を広げて逃げ出そうとする。
もちろんゴジラは逃さない。
虚勢を張るように嗤いながら飛び去ろうとするルシファー=ハイドラ、その二股の尻尾をゴジラは掴んで引き摺り下ろし、脳天から地面へと叩きつけた。
――いたい、いたい!
引っ繰り返ったまま懇願するルシファー=ハイドラに、ゴジラは情け容赦ない暴力を加えた。
胴めがけてメガトンキックを叩き込み、羽根を毟り、翼をへし折って、胸郭を踏み砕く。
喉笛を踏み躙られたルシファー=ハイドラが、苦痛で叫んだ。
――ぐえええっ!
――なにするんだよう! やめろよう!!
無論、ゴジラがやめるはずもない。
存分に痛めつけた上でルシファー=ハイドラの首根っこを掴み上げると、背負い投げの要領で、地面めがけて滅多打ちにした。
先の戦いでアンギラスを下した、肉弾戦におけるゴジラの必殺技。
〈ゴジラ・プレス〉である。
先と違うのは、アンギラスの時よりも数段力がこもっていること。
どーん! どーん! どーん!! と打ちつけられるたびに、島中へ轟音と衝撃が響き渡り、地盤が陥没し、そして大地に深い亀裂を刻み込んでゆく。
――うぺっ、あぎっ、がぺっ!?
間の抜けた悲鳴を挙げながらボロ雑巾のようにされるルシファー=ハイドラ。
ルシファー=ハイドラの身体は、何度も叩きつけられたことで裂けてゆき、ついには掴まれていた首が根元から引き千切れてしまった。
投げ飛ばされたルシファー=ハイドラの巨体が宙を舞い、悲鳴を上げながらセントラルタワーへと墜落。
タワーを丸ごと瓦礫の山に変えた。
……ルシファー=ハイドラをぶちのめしたゴジラの暴力は、圧倒的なまでに残虐だった。
マシンハンドはまとめて千切れ、翼は強風で煽られた傘よりも無残にひしゃげ、三本あった首のうち無事なのは一本だけになってしまった。
滅茶滅茶に壊されたルシファー=ハイドラの全身から、ナノメタル粒子と火花の鮮血が噴き出ている。
ナノメタルの自己修復では到底間に合わない桁違いのダメージ。
ルシファー=ハイドラはただ力なく倒れ伏しているしかない。
つい先刻まで無敵の不死性を誇ったルシファー=ハイドラだったが、今度ばかりは再生することが出来なかった。
ガルビトリウムとナノメタル中枢、つまり無限の発想力と表現力の両方を喪ったことで、ルシファー=ハイドラは大宇宙を創造する神の座から、ただの一怪獣に堕ちた。
そんなハイドラの眼前に、ゴジラが立つ。
ゴジラの背鰭から溢れ出る光は、はじめ青、ついで紫、そして赤へと変わっていた。
払いきれずにこびりついていた異形の花々が、ゴジラの体内から込み上げる焦熱でどろりどろりと融けてゆく。
ゴジラの全身が
総身が赤く燃えたぎる〈バーニングゴジラ〉。
背負う炎はまさに劫火、まるで太陽のようだ。
心を誑かすルシファーの虹も、ゴジラの威光の前には弱すぎた。
卑劣邪悪なルシファーはゴジラの偉大さを前に、触れるどころか近寄ることも、直視することすらままならない。
……ま、待て。
引き攣り笑いととも後ずさりながら、ルシファー=ハイドラは最後の和解交渉を試みた。
ゴジラよ、おまえが望むものを何でも与えよう。おまえだって欲しいものくらいあるはずだ。
摂理、文明の業、宿命からの解放か?
みんなが楽しく笑い合える優しくて平和な世界でのんびり異世界スローライフなんて最高だろ?
そうだ、家族はどうだ? 息子、お嫁さん、家族は良いぞぉ、欲しくてたまらないはずだ!
それでも足りないというのなら、くだらん人間ドラマなんぞ要らん、やめちまおう!! そうとも、最初から最後まで怪獣プロレス!! ミリオタ、政治厨真っ青の緻密な設定考証!!!! リアルでハードでシリアスで、糞ジャリや萌豚どもに媚びることもない、真っ当な大人の鑑賞に堪えるエンタメ超大作だ!!!!!! どうだ素晴らしいだろう、最高じゃないか!!!!!! これならきっとみんなアヘ顔晒して喜んでくれるだろうさ!!!!!!!!
愛しいあのコの心だって、夢見て止まない理想の世界だって、ありもしない絵空事だってなんだって、我らと手を結べば思うがまま!!
いずれはこの世界さえもが我らのものだ!!
欲しいだろう!
願え、さあ望んでみろ!
なんでも欲しいものを言ってみろ。
おまえの願いを叶えてやれるのは機械仕掛けの神たる我ら堕天の虹、ルシファーだけだ。
だからこれ以上の暴力はやめろ、この大宇宙創造の神と共に、この世界を美しい楽園に造り替えようではないか。
……そうだ! ここで路線変更してお気に入りのヒロインとイチャイチャ純愛ラブストーリーってのはどーだい!?
ほら、最近流行りのゴジモ……
次の瞬間、孫ノ手島が超光熱に包まれた。
その爆心はゴジラであった。
怒りの限界に達したゴジラが体内の核エネルギーを極限まで高ぶらせ、臨界点を突破したエネルギーを解き放ったのだ。
メカゴジラⅡ=タイラノスを葬り去った大技、ゴジラ渾身の〈体内放射〉。
並の怪獣ならば余波を受けるだけで粉微塵に消し飛ばされてしまうほどの、強烈な爆炎。ゴジラの深奥、体内原子炉から止めどなく溢れ続ける劫火の小宇宙。
それはまさに歩く核爆発!
ゴジラの体内から放射された灼熱の核エネルギー、爆熱の津波が怒涛の勢いで押し寄せ、その直撃をもろに受けたルシファー=ハイドラは一瞬で黒焦げになった。
――ぎゃああああああああああああ……!!
焼かれ
そんなルシファー=ハイドラを、怒ったゴジラが睨みつけている。
ゴジラの怒り。
『何かを願う、何かを望む』、誰もが持っている弱味につけこんで玩具にする、そんな卑劣な所業が腹に据えかねたのか。
キングオブモンスターとしての尊厳を愚弄した、侵略者の下劣で浅ましい性根がよほど気に入らなかったのか。
……あるいは、欲望に弄ばれた“模造品”へのささやかな手向けだったのかもしれない。
いずれにせよ、それはゴジラのみが知ることである。
ルシファー=ハイドラに、怪獣王ゴジラが吼えた。
さあ、覚悟するがよい、底無しのクズめ。
このキングオブモンスター:ゴジラが、今から貴様を地獄に送り込んでくれよう。
ゴジラがハイドラの尾を握り締めた。
そして力一杯に引きずり回して、孫ノ手島の地上にあるものすべてを薙ぎ倒してゆく。
タワーと建物、エクシフ空中戦艦の残骸、崩れた岩山と土砂、総計数千万トン。
そのすべてを全身へたっぷりと浴びせられ、孫ノ手島の大地で徹底的に
逃れることも、死ぬことさえできない生き地獄に、ルシファー=ハイドラは絶叫した。
そしてゴジラは、今やスクラップ同然のルシファー=ハイドラを空へ投げ飛ばした。
大気圏外へと打ち上げられてゆくハイドラ、ゴジラはすかさず必殺の放射熱線を撃つ。
ゴジラが撃ち上げた放射熱線は
総てを燃やし尽くす
紅蓮の火柱が雲を裂き、空を割り、そして
機械仕掛けの邪神にして堕天の虹の侵略者:ルシファー=ハイドラは、そんなゴジラの
ピロピロケタケタピピピギャアアアアアア……
ルシファー=ハイドラは断末魔を響かせながら大爆裂。
そして最後に盛大な虹の花火が、孫ノ手島の夜空を華やかに彩った。