今回は原作の方がちょこっと登場します。
「まったく! 信じらんない! 発射直前のビーム砲に放り投げるなんて!」
限定ミッションを終え、フリーエリアに戻ってきたショウマは、さっそくユーコに怒鳴られていた。
「わ、悪かったって。でも、うまくいったろ?」
「結果論じゃない! すっごく怖かったんだから!」
その様子を見ていたセレジュは、ショウマにミッションが終わってから気がかりだったことを尋ねた。
「あはは……。でも、ショウマさんはどうしてあの《ディビニダド》に核兵器がないってわかったんですか?」
セレジュに問われ、ショウマはユーコをなだめながら説明する。
「クロスボーンの続編のゴーストには核兵器が搭載されていない《ディビニダド》が登場するんだ。で、あの《ディビニダド》だけ型番の横にゴーストの時代と同じUC-0153って書かれてて、もしかしたらってな」
「そういうことだったんですね。僕、自分で斬っておいてすごく焦っちゃいました」
「そう! セレジュ君すごかったわ! あのおっきいビームサーベル! ライザーソードみたいだった!」
「えへへ、ありがとうございます。《ブラストZ》のハイ・メガ・ブレードです」
そこへ、三人に近づく一人のダイバーの姿が。
「やはり君だったか。ショウマ」
「キョウヤ! わざわざ声をかけに来てくれたのか?」
そこに立っていたのは、のちにチャンピオンの称号を得るダイバーであるクジョウ・キョウヤその人であった。
「移動中に見覚えのある《キマリス》を見かけたが、急いでいたのでね。挨拶が遅れてすまない。元気そうで何よりだ」
「こっちこそ光栄だよ。覚えていてくれてたなんて」
「忘れるはずがないさ。今の私があるのは、あの時に君がいてくれたおかげだよ。後にも先にも、あれほど心躍る塩探しはなかった」
「ああ。俺もだ。あのあとしばらく、他の依頼が物足りなくなった」
がっちりと、固い握手を交わす二人。
「お二人がしたのって、採集ミッションですよね……?」
「ヘルパーって顔が広いのね……」
完全に置いてきぼりのセレジュとユーコに気づいたキョウヤは意外そうな顔を作った。
「おや、ユーコさん」
セレジュはキョウヤがユーコの名を呼んだことに驚いた。
「え、ユーコさんもお知り合いだったんですか?」
だが、当のユーコは「違う違う」と笑って首を横に振る。
「私がこのミッションの前に取材してたの、彼なのよ」
「ああ、なるほど」
「ショウマ、君もフォースを作ったのかい?」
「え? ははは。違うよ。ただの依頼人さ」
「そうか。君ほどの腕だ。勧誘も多いんじゃないか?」
「まあな。その気はないってのに」
にこやかに聞いていたキョウヤの顔が、ふと真剣なものに変わった。
「ショウマ、先ほどのミッションだが、あの《ヘブンズソード》は―」
「気づいてたか。あれが、噂のブレイクデカールなんだろうな」
ショウマの脳裏に、《ディビニダド》と融合した異形の凶鳥の姿が浮かぶ。
「すまない。救援に駆けつけたかったが、乱戦の只中にいてしまった。不甲斐ない」
「気にしないでくれ。あんな突然出てこられたら、対処するのは難しい」
「でも、ショウマさんは倒せてましたよ。それも一瞬で! すごいです!」
《クインス》の戦いを間近で見ていたセレジュは、興奮気味に頭の羽根を動かして称賛の声を送る。
「あ、ああ……」
だが、ショウマ自身はそれを素直に受け取ることはできなかった。
「ブレイクデカールねぇ。まさか写真にも残せないなんて」
ユーコは《インサイト》で撮影した写真を一覧で表示するが、《ヘブンズソード》の姿はなく、《クインス》が見えない何かと戦っているかのような画像ばかりが並んでいた。
「あんなに暴れておいて……。作り手の陰険さを感じるわ。作ったのはきっとGBNのアンチよアンチ」
ユーコがディスプレイを消すと、キョウヤは三人に向けて告げた。
「ブレイクデカールのことを認知しているなら話は早い。まだ発見例は少ないが、ブレイクデカールの使用者は今後増える可能性もある。正しくGBNをプレイするダイバーたちを守るためにも、君たちも協力してほしい」
「わかった。初心者ダイバーたちに注意するよう呼びかける。俺にとっても他人事じゃなさそうだしな」
「私も上に報告して、注意喚起の記事を作れないか掛け合ってみるわ」
「は、はい! 僕も、できることがあれば協力させていただきます!」
「ありがとう。では、私はこれで」
そう言ってキョウヤは、フォースのメンバーらしき揃いの衣装の男女二人のダイバーとともに去っていった。
「クジョウ・キョウヤ、取材の時も思ったけど、堂々としてるわ……」
「そうですね……。さてと、それじゃあそろそろ報酬の話をしましょうか」
「………………」
「ショウマさん?」
「どうしたのよ、ぼーっとして」
「えっ? あ、ちょっと考え事をな。ブレイクデカールのこともあるし」
「もう、あなたが報酬はちゃんと払えって言ったんでしょ。しっかりしなさいよね」
「あはは、悪い悪い……」
曖昧に笑うショウマに身体を向け、セレジュはBC管理のディスプレイを開く。
「今回の報酬は入手BCの2割だから、30万BCですね」
同じく管理ディスプレイを開いていたショウマは、BCの譲渡を確認した。
「ショウマさん、ユーコさんも。本当にありがとうございました」
礼儀正しく頭を下げて感謝を述べるセレジュに、ショウマとユーコは微笑む。
「いいんだ。これが俺のGBNでの仕事だからな」
「そーそ! 私もこいつから追加取材のオッケーもらえたし! 万事円満ね!」
「キョウヤは『彼』で俺は『こいつ』かよ……」
「ビーム砲に女の子投げるようなやつは『こいつ』で十分よ。安心なさい。記事ではちゃんと書くから」
ユーコは踵を返すと、ゲートに向かって歩き出した。
「今回のミッションのこと、クジョウ・キョウヤのインタビューと一緒に近いうちに投稿するわ。追加取材の件は追って連絡するけど、逃げたらマジであることないことでっちあげるから、そのつもりでね?」
「お、おう……」
「ユーコさんって、綺麗ですけどちょっと怖いですよね……」
顔を引きつらせて見送ったショウマとセレジュは、いよいよ二人きりになった。
「よかったな、セレジュ。お兄さん、きっと喜ぶぞ」
「はい! これで、兄さんの作りたかった《ブラストZ》を完成させられます……!」
既に心はガンプラ作りに向き始めているセレジュに、ショウマは拳を突き出す。
「……? なんですか?」
「依頼完了の証明みたいなもんだ。セレジュ、GBNは楽しいか?」
「……はいっ!」
そしてショウマと拳を合わせ、セレジュもGBNからログアウトした。
▼▼▼
エリア11。
初心者用サーバーに存在するこのエリアの、ラグランジュ4の資源衛星群。
宇宙であっても殺伐とした印象のこの領域に、《ヘブンズソード》を操縦していたダイバーはいた。
「すまねえ。せっかくもらったブレイクデカール、ダメにしちまった」
謝罪の言葉を述べた相手は、仮登録ダイバーに与えられるアバターであるマスコットロボット《ハロ》だ。
「気にするな。あれは試作品。一度使用したら自壊するようプログラムしてある」
深い紫色で目つきが悪い球体から発せられる声は、静かで、冷たい。
「お前の戦いぶりは見せてもらった。おかげでいいデータが採れた」
「へへ、じゃあ報酬は……」
「ああ。もう送ってある。今回渡したものを改良したブレイクデカールだ」
「よっしゃあ! これでまた暴れられるぜ! じゃあな!」
忙しなく去っていくダイバーを最後まで見送らず、《ハロ》は広大な宇宙に視線を投げる。
「せいぜい楽しめ。この生温い世界をな」
その声に憎悪と怒りを込めて。
ゴースト、好きなんです。
チャンピオンとまだ悪なシバさんが登場しました。シバさんについてはハロでしたが。
今作は前日譚なので、ブレイクデカールもまだまだ未完成です。
次回はまた現実世界の話かなと思います。
不定期更新です。
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