今回から新たな物語、ユーコ編が始まります。
照りつける灼熱の日差し、無辺に広がる砂の海。
人間による行き過ぎた開発によって自然が淘汰された極限の地、それがこの茫漠の砂漠。
そんな環境を模したミッションステージに、爆炎の華が咲いた。
砂の中から爆風にあおられて空に打ち上げられる、ヴェイガンの砂漠戦に長けた局地戦用の機体《ゴメル》。それが三機。
追いかけるように一直線に走ったメガ粒子の閃光が、宙を舞う《ゴメル》たちを貫いた。
「よし! 作戦通り!」
砂を押しのけて出てきたのは、ジオン公国軍の試作型水陸両用モビルスーツ《ゾック》だ。機体は砂漠に対応した迷彩塗装を施されている。
「《ゴメル》は仕留めたぜ!」
《ゾック》を操縦する筋骨隆々なダイバーが叫ぶ。
「よくやった! こっちもあと少しだ!」
そう答えたのは、同じ塗装がされた《ゴッグ》。
ザフトの陸専用モビルスーツ《バクゥ》の四編隊に囲まれ、ミサイルの集中砲火を浴びているが、機体にはそれらしいダメージはない。
「さすが《ゴッグ》だ。なんともないぜ! ……おりゃああああっ!」
力いっぱいに振り回された《ゴッグ》の腕が伸び、先端のクロ―で一機の《バクゥ》を捉えた。剣呑な音を響かせて、他の三機を巻き込みながら地面に叩きつけられる。
「くらえっ!」
跳躍したゴッグが腹部メガ粒子砲を放ち、《バクゥ》たちは光の中に消え去った。
「あとはそいつらだけだ! 姐御!」
「任せな!」
威勢よく吼えたのは、リーダー格の女性ダイバー。搭乗する機体は《ズゴックE》。他の二機と同じカラーだ。
対峙するのは三機の《ディザート・ザク》、そして指揮官機の《ドワッジ改》。
『ガンダムZZ』でガンダムチームと戦ったロンメル隊を模したエネミーである。
「さあ、勝負だよ!」
先に動いたのは《ズゴックE》。
発射された光弾が《ドワッジ改》たちに飛ぶが、四機は散開して避け、ホバーによる機動性を活かしながら女性ダイバーを翻弄していく。
「これならどうだいっ!」
《ズゴックE》の丸みを帯びた頭部から無数のミサイルが飛ぶ。
連続した爆発が起こるが、すぐにこの選択が失敗だったことに気づいた。
「視界が……! ええい、あたしのドジ!」
砂塵が巻き上がり、視界がほとんどゼロになる。それを突き破ってヒート・ホークを構えた《ディザート・ザク》が現れた。
「正面⁉ でも一機だけで!」
再びビーム・カノンを発射しようとしたその時、《ディザート・ザク》の背後から、もう一機の《ディザート・ザク》がザクバズーカをこちらに向けて飛び出した。
「後ろに⁉ うぐっ……!」
認識した時にはバズーカから放たれた砲弾が左肩に直撃していた。水陸両用モビルスーツなだけあって頑強な装甲は砲火の直撃にも耐えるが、女性ダイバーは衝撃に襲われる。
だが、まだ終わりではなかった。二機目の後ろに、もう一機の《ディザート・ザク》が控えていたのだ。
「ジェットストリーム……⁉」
三機の《ディザート・ザク》が、黒い三連星の十八番をやってのけた。
その事実に驚き、動きを止めてしまった《ズゴックE》が最後尾の《ディザート・ザク》のヒート・ホークの斬撃を受けてしまう。
「ぐぁっ! ま、まだこれくらい―」
体勢を立て直した直後にコクピットに鳴り響く警報。ズゴックEの頭上に、《ドワッジ改》がいた。右手に握るヒート・トマホークがギラリと光る。
直撃を覚悟した瞬間、ヒート・トマホークを握る《ドワッジ改》の右腕が吹き飛んだ。
「―危ないところだったな」
警報に割り込んできた通信の声に、女性ダイバーは笑う。
「ああ、助かったよ。ヘルパー!」
砂漠を滑るように飛ぶウェイブライダー形態の《ブラストZガンダム》に乗った、《ガンダム・キマリスクインス》。
《ドワッジ改》の右腕を砕いたのは、ドリルランスから撃った《ダインスレイヴ》だった。
「俺たちは《ザク》をやる。アンタは目の前の相手に集中してくれ!」
「恩に着るよ! たああっ!」
片腕を失った《ドワッジ改》に《ズゴックE》が格闘戦を仕掛けていく。
「セレジュ、やるぞ」
「はい! ショウマさん!」
《クインス》が高く飛び上がったのを確認し、《ブラストZ》が人型に戻る。同時にビームライフルで《ディザート・ザク》を牽制。《クインス》の攻撃の隙を作った。
「おおおっ!」
ドリルランスで頭を叩き潰された《ディザート・ザク》が小さな爆発を起こして砂に沈む。
残りの二機はそれぞれ《クインス》と《ブラストZ》を相手取るが、二体のガンダムの猛攻が待っていた。
「砂地は足を取られやすい……。だから、着地を最小限にしてっ!」
舞うように砂漠を飛ぶ《ブラストZ》に、バズーカの照準を定められないモノ・アイが、飛来したビームサーベルに貫かれる。
「これでっ!」
サーベルの柄を握った《ブラストZ》が、そのままザクを両断した。
「セレジュのやつ、また上達してるな」
『ショウマが師匠をやってるおかげだね』
コクピットで聞こえる少女の声に鼻を鳴らして、ショウマは《ディザート・ザク》の最後の一機を睨んだ。
「俺たちも行くぞっ!」
『うん!』
《クインス》のマシンガンの斉射を躱し、ホバーを最大限に稼働させて砂漠を駆ける《ディザート・ザク》。
『流石は砂漠特化型。さっきまで相手してた《ヒルドルブ》より速いね』
「ああ。でも、俺たちの方がもっと速い!」
ドリルランスを捨てて身軽になった《クインス》が、刀を握って《ディザート・ザク》に急接近する。
「はあっ!」
振り下ろされる斬撃は、紙一重で避けられた。しかし、それもショウマの想定内。
「足の良さが、命取りだ!」
地面に埋もれた刀を支えにして、機体を捻った《クインス》。膝から飛び出した回転式パイルバンカーが《ディザート・ザク》の胴体を背中から穿ち抜いた。
「お見事です! ショウマさん!」
撃墜を確認したセレジュが快哉を上げる。
「これくらいはな。さて、あっちは……」
《ズゴックE》と《ドワッジ改》の戦いも佳境であった。
片腕でヒートサーベルを振るう《ドワッジ改》に対して、《ズゴックE》はほぼ無傷。勝負は見えていた。
「こいつで、しまいだぁっ!」
バイス・クロウが《ドワッジ改》の胸部装甲を貫く。
ゆっくりと仰向けに倒れていく赤銅色の機体は、背中が地面に触れると同時に爆発した。
ミッションクリアの表示が空に現れ、ファンファーレが鳴り響く。
負けないくらい大きな歓声に、セレジュは緊張を解いたのだった。
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「はっはっは! やー、本当にあんがとねぇ! アンタらのおかげだよ!」
岩陰に五機のモビルスーツが並び、その足元に設置されたテントで上機嫌で笑う海賊めいた服装の女性ダイバー。
「クリア報酬のアイテム、こいつが欲しかったんだ! これでアタシたちはまた強くなれるよ。ほい、こいつが今回の依頼の礼だ」
送られきたBCの額に、ショウマは片眉を上げる。
「……指定より多いぞ?」
「いいんだ、いいんだ! 気持ちだよ。何も言わずに受け取っとくれ」
その気立ての良さに、ショウマも思わず笑みを浮かべた。
「喜んでもらえて何よりだ。こっちも面白いガンプラを見せてもらったよ」
「砂漠での戦い、いい経験になりました!」
ショウマの隣に立つセレジュも頭部の羽を動かしながら元気いっぱいに言う。
「にしても、驚いたね。いつの間にヘルパーは二人になったんだい? それもこんな可愛い坊やなんてさ」
女性ダイバーに顔を近づけられ、背筋を伸ばすセレジュ。女性ダイバーの後ろでは、筋骨隆々の海の男チックなダイバー二人がニヤニヤしている。
「出たよ、姐御の悪い癖だ」
「坊主、気ぃつけな。その人、守備範囲広いぜ?」
「しゅ、しゅびっ?」
「お前ら! ふざけたこと言ってんじゃないよ! ったく……。うちのフォースにも、もう少し見た目の若い子が入ってくれりゃねぇ」
一喝した女性ダイバーは、やれやれと肩を落とす。
「フォース『マッドネスアングラー』だったか? 加入者募集の掲示板にあったけど、まだ足りないのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどねぇ。せっかくなら、同好の士ってやつは増やしたいじゃないか」
「め、珍しいですよね。水陸両用モビルスーツであらゆるエリア環境に挑むフォースって」
ショウマの背に隠れながら、セレジュは掲示板に書かれていたフォースの概要を思い出す。
「物好きだろ? でもGBNでなら、アタシやあいつらみたいな物好きも集まるんだ。最高だよ。GBNは」
《ズゴックE》を誇らしげに見上げる彼女に、ショウマは同意と尊敬を覚えながら拳を突き出した。
「わかりきってるけど、依頼達成の証明なんでな。GBNは、楽しいか?」
「へっ……あったりまえよ!」
二つの拳が小さく音を立てて打ち合った。
ZZの地上編、割と好きなんですよ。
砂漠を行くジオン水泳部って想像するとカッコいいですよね。GBNエンジョイ勢はこういうこともしてると思うんです。
いつもは不定期更新ですが、明日も更新します。お楽しみに。