ガンダムビルドダイバーズRe:Birth   作:ドラーグEX

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第18話 桃色の衝撃

 無辺の宇宙空間にぽつんと浮かぶ白銀の巨大なモニュメント。

 それは『ガンダムW』の世界に存在するコロニー……をモチーフにしたミッションエントランスである。

 物資運搬ミッションの依頼を終えたショウマ達は、次なる依頼の場へと赴いていた。

 

「ウイング! いいわね! この世界観で宇宙なら、そうそうトンチキなミッションじゃないはずよ!」

 

 窓に張りつき、小惑星帯を見るユーコは期待に目を輝かせている。

 

「あはは……。ユーコさん、目の色が変わってますね」

 

 苦笑するセレジュの隣で、ショウマは「うーむ」と唸る。

 

「ショウマさん? どうしました?」

「いや、依頼人がいないんだ」

「え? 来てないんですか?」

「ああ。先にこっちで待ってるって話だったんだが……」

 

 きょろきょろと周囲を見渡すショウマとセレジュのもとへ、ユーコが戻ってくる。

 

「ちょっと、肝心の依頼人はどうしたのよ」

「いや、だから―─」

「せんぱぁ~い!」

 

 ショウマが言いかけたとき、フロアに響くような大きな声が三人に飛んできた。

 

「げ……!」

 

 三人同時に振り向いて、渋面を作ったのはユーコだった。

 

「先輩じゃないですかぁ! 奇遇ですねぇ!」

 

 手を振りながらこちらへ駆けてくる一人の女性ダイバー。

 

(どギツイ。流星号か)

 

 そんな言葉がショウマの脳裏に浮かぶほど、全身の衣装をピンクにしている。

 

(なんだか破廉恥だ!)

 

 そんな言葉がセレジュの脳裏に浮かぶほど、身体のラインを強調する服装だった。

 

「こっちで直接会うのは初めてですねぇ~!」

「え、ええ。そうね」

 

 合流とともにノータイムで会話に入った女性ダイバーに、ユーコは顔を引きつらせながら対応する。

 

「知り合いか?」

「まあね。私の後輩」

「後輩? ってことは、GBジャーナルの……」

「クルミっていいまぁす! はじめまして、ショウマさん!」

 

 両手を握ってブンブンと激しく揺らすクルミに、ショウマは怪訝な表情になる。

 

「どうして俺の名前を?」

「そりゃあ、有名人ですしぃ、私も興味あったりぃ? みたいなぁ?」

 

 淡いクリーム色からグラデーションになっているピンク色の毛先を指でいじるクルミ。ますます戸惑ったショウマは、ユーコを睨んだ。

 

「ユーコ、お前が呼んだのか?」

「まさか。あんたは私が単独で追ってるネタなんだから」

「そぉですよぉ。私は自分の記事のしゅ・ざ・い。こぉいう企画で!」

 

 押しつけられるように見せられたディスプレイには、鮮やかなでポップなフォントの文字が躍っていた。

 

「なになに……モノ・愛ガールズ?」

「モノ・アイ系の機体を使う女性ダイバーを取材してるんですぅ。可愛いですよねぇ、モノ・アイ! くりくりっとしてるところとか!」

「へぇ、SD系を可愛いっていうのはよく聞くけど、モノ・アイか」

「やっぱり、《ザク》とか《グフ》とかですか?」

 

 セレジュの問いに、クルミは彼と目線を合わせるように身をかがめて答えた。

 

「もちろんそういうのもアリだけどぉ、《バウンド・ドッグ》とかもステキでしたよぉ」

「そ、そうですか……!」

 

 急接近してきた女性の顔に、思わず赤らめた顔を逸らしてしまう。

 

 ユーコが咳払いをして、一同の注目を集める。

 

「じゃあクルミ、あんたは私たちとは関係ないわけね? なら、邪魔しないでくれる? 私もあんたの邪魔しないから」

「あはぁ、先輩こわぁ~い。で・もぉ、私の取材相手の方がぁ、関係あるみたいでしてぇ」

「そのとーりっ!」

 

 甲高い靴音を鳴らして現れたのは、ネオ・ジオンの制服に袖を通した、これまた女性ダイバー。しかし容姿が幼い。セレジュとそう大差はなかった。

 

「待たせたわねヘルパー! その記者さんの取材が長引いたわ! ごめんなさい!」

 

 尊大なのか礼儀正しいのかよくわからない口調で登場した少女の発言に、ショウマは得心いった。

 

「あんたが依頼人か」

「マリッカよ! よろしく!」

「ショウマだ。よろしく頼む」

 

 握手を交わしたあと、ショウマはクルミの方へと顔を向けた。

 

「なるほどな。あんたの取材相手が、俺の依頼人だったわけだ」

「そぉいうことですぅ。取材の終わり際にこのあとのことを聞いて、せっかくならご一緒したいなぁ、なんて」

 

 すり寄ってくるクルミから一歩後退し、ショウマは依頼人のマリッカへ声をかけた。

 

「マリッカ、実は俺を取材してるこのGBジャーナルの記者が、俺がバトルミッションのヘルパーをしてるところを撮りたいって言うんだ。急な話で悪いんだが、付き合わせていいか? 邪魔はしない。写真を撮るだけだ」

 

 会釈したユーコを見て、マリッカは鷹揚に頷いた。

 

「別にいいわよ。さっきのついでだもの。好きになさいな」

「ありがとう! これでやっとまともな記事になるわ!」

 

 ショウマを押しのけてマリッカの手を握るユーコ。セレジュに支えられたショウマが文句を言うより先に、マリッカがミッションステージへの入り口を指さした。

 

「役者は揃ったわね! さあ、私についてきなさい!」

 

 ▼▼▼

 

 宇宙に浮かぶコロニーから飛び出す、四つの光。

 ショウマの《キマリスクインス》、セレジュの《ブラストZ》、ユーコの《インサイトフレーム》だ。

 

「わあ~、みなさぁん、待ってくださぁ~い!」

 

 そして、三機の《ガンダム》の後ろに、ころころとしたフォルムの機体がやや遅れ気味で続く。

 

「SDの《キュベレイ》……」

「クルミさんですね。《貂蝉キュベレイ》をベースにしているようです」

 

 ショウマとセレジュがモニターに映る鮮やかなピンクの機体に意識を向ける。

 

「なぁにが『待ってくださぁ~い』よ。ふんっ」

 

 ユーコだけはつまらなそうに鼻を鳴らした。

 

「みなさん速いですぅ。私の《フェアリーキュベレイ》じゃ追いつくのがやっとですよぉ」

「まあ、多少の機動性の差は仕方ないな。そこをカバーするのがビルダーとしての腕の見せ所だけど」

「えーん、ショウマさんが厳しぃ! 私だって頑張って作ったのにぃ!」

「え、俺そんな厳しいこと言ったか……?」

 

 調子が狂わされそうになるショウマ。と、《クインス》の横を飛んでいた《ブラストZ》がウェイブライダーへと変形し、減速しつつ《フェアリーキュベレイ》の下についた。

 

「良ければ乗ってください。そうすれば置いて行かれずに済みますよ」

「いいのぉ⁉ セレジュくんありがとぉ! それじゃあお言葉に甘えてぇ、えいっ」

 

 コクピットで感じたわずかな揺れでセレジュは《フェアリーキュベレイ》が乗ったのを認識し、再びショウマたちとスピードを合わせた。

 隣に戻ってきた《ブラストZ》に乗る《フェアリーキュベレイ》がSDならではの笑顔を見せながら手を振ってくるのを横目に、ショウマは依頼人の姿がまた見えないことを考えた。

 

「マリッカはどこだ?」

『ショウマ、上!』

 

 コクピットに響いた声に弾かれるように見上げると、ショウマの真上を二機の戦闘機が通り過ぎて行った。

 

「まさか、あれか?」

「そのとーりっ!」

 

 その声とともに、急上昇した二機の戦闘機は、それぞれに変形を開始した。

 後ろを飛ぶ戦闘機は機体を伸長させてモビルスーツの下半身のようになる。

 前を行く戦闘機はシールドとライフルを分離させ、バーニアから変形した腕でそれを掴むと、長いトサカが特徴的な頭部でモノ・アイを輝かせる、モビルスーツの上半身へと変わった。

 

 そして二機が合体。モビルスーツ《バウ》をベースにした機体となった。

 

「あっはっはー! どう! 劇的な登場でしょ!」

 

 元気いっぱいな笑い声と共に、青い《バウ》はマリッカがするように腰に手をおいて胸を張る。

 

「これが私の《ジャムル・バウ》! 驚いたかしら⁉」

 

 一行に加わったマリッカが感想を求めてくる。ショウマは純粋な驚きをもって言葉を紡いだ。

 

「ああ。モノアイだとは思っていたが、バウは予想外だ。しかも、ナッターに《ジャムル・フィン》の意匠が見えた。火力も高そうだ」

「んふふふ! そうでしょそうでしょ! 作った甲斐があるってもんよ!」

 

 そこで、五機のコクピットに同時にアラートが鳴り響いた。

 

「どうやら、ミッションステージに入ったみたいね」

 

 ユーコの言葉通り、ミッション開始の表示が現れ、レーダーが前方に10の反応をキャッチする。そのすべてが輸送艦だ。

 

「来るぞ、モビルドール軍団だ!」

 

 輸送艦から一斉に飛び出す、無数の機影。

 それは『ガンダムW』に登場する究極の機械兵団。戦争を冒涜する鉄の人形たち。

 

「《ビルゴ》に《ビルゴⅡ》、《ビルゴ³》まで……!」

「《メリクリウス》に《ヴァイエイト》もいますよぉ! それもあんなにいっぱぁい!」

 

 セレジュとクルミがこちらへ殺到する機体たちの名を口にする。

 

「『モビルドール五百機組み手』……。このミッションをクリアしないと、次のミッションに進めなくてね。私は基本ソロなんだけど、こればっかりは難しくて」

「なるほど、それで俺の出番ってわけか」

 

 マリッカの言葉に得心いって、ショウマは《クインス》にドリルランスを構えさせる。

 

「ユーコ、ちゃんと撮ってくれよ」

「オーライ。しっかり戦ってちょうだいね」

 

 すでに《アルミューレ・リュミエール》も展開して準備万端の《インサイトフレーム》がガンカメラを上下させる。

 

「セレジュ、今度の依頼は少しハードだが、ついてこれるか?」

「は、はいっ! ついていきます! 頑張ります!」

「いい返事だ。じゃあ──」

「ああー! 待って待って!」

 

 出撃直前、耳をつんざいた声に思わず一同は機体をつんのめらせる。声を上げたのはクルミだった。

 

「セレジュくん、私降ります、降りまぁす!」

 

 言いながら、《フェアリーキュベレイ》が蹴るようにして《ブラストZ》から離れる。

 

「く、クルミさんも戦われないんですね?」

「私も撮影ですので! ファンネル!」

 

《フェアリーキュベレイ》が射出したのは、ろう斗のような形のファンネル、のようなカメラ。砲口はレンズになっていた。

 

「先輩のカメラより、いろんな画角でいろんなものが撮れますよぉ」

「あらあら、そんな大口叩いて平気なの? シャッターの切り方が難しくてしょっちゅうブレブレの写真を撮るくせに」

「先輩! 意地悪なこと言わないでください! あ、みなさん! 敵が来ますよ!」

「あんたが引き留めたんでしょうが! ああもう、行くわよっ!」

 

 痺れを切らした《ジャムル・バウ》がモビルドールの群れに吶喊する。

 

「ま、待ってください!」

 

 それにつられて《ブラストZ》も動き出す。

 

『ショウマ、号令、取られちゃったね』

 

 取り残されたショウマは、少女の声にため息をついてからすぐに真剣な顔になって、レバーを握る手に力を込めた。

 

「さあ、俺たちも行くぞ!」

『うんっ!』

 

 ツインアイを輝かせ、悪魔の名を持つ《ガンダム》が遅ればせながら戦場へと飛び込んだ。




久しぶりの更新ですが、変なやつが現れましたね。
ユーコの後輩記者のようですが、かなりピンクいみたいです。

そしてバウを使うネームドまで。どうなることやら。

不定期更新です。
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