ガンダムビルドダイバーズRe:Birth   作:ドラーグEX

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第19話 暴かれる光

 今回の依頼である『モビルドール五百機組手』は、間違いなく高難易度のミッションだ。

《ビルゴ》たちの持つプラネイト・ディフェンサーは、実弾はもちろんのこと、生半な威力のビームも弾いてしまう。

 そこにビームカノンをはじめとする強力な武装も合わさり、ある程度の腕と適切な武器がなければクリアは難しい。

 だが、裏を返せば、その二つが揃えばクリアできる可能性は十分にあるのだ。

 

「これで……トドメだっ!」

 

 ドリルランスが《ビルゴⅡ》の頭部を叩き潰す。

 ショウマの駆る《キマリスクインス》の撃墜スコアは既に二百を超えていた。

 

「ふう、こんだけ倒せばあとは楽勝だな」

『モビルドールには、私たち相性がいいもんね』

「セレジュも頑張ってくれてる。あいつ、本当に腕を上げてるぜ」

 

 少し離れた位置で戦う《ブラストZ》に、セレジュの成長の速さを感じるショウマ。

 

『あのマリッカって人もすごいよね。《ビルゴ》の防御を突き破るビームが撃てるんだもの』

 

 少女の声は合体と変形を繰り返し、トリッキーな機動から豪快な一撃を放つマリッカの《ジャムル・バウ》を称賛していた。

 

「あっはっはー! チャージの隙を突かれていた今までの私だと思うなー!」

 

 縦横無尽に宇宙を飛ぶ青い機体から、そんな声が聞こえた。

 

「確かに、ソロプレイじゃあこの数を捌くのは酷だよな」

『だからショウマを呼んだんだね』

「さて、残りもチャッチャと片付けるか!」

『うん!』

 

 まだまだ残っているモビルドールたちに《クインス》が仕掛けていく。

 その様子をエリア外から撮影する二機のガンプラがいた。

 ユーコの《インサイトフレーム》とクルミの《フェアリーキュベレイ》だ。

 

「いいわよショウマ! そのままガンガンやっちゃって!」

 

 水を得た魚のようにガンカメラのシャッターを切りまくるユーコ。さまざまなアングルから撮られた《クインス》の写真はすでにかなりの枚数になっていた。

 

「すごいですねぇ、ショウマさん。私のフォトファンネルじゃ追いきれませんよぉ」

 

 カメラ機能を搭載したファンネル《フォトファンネル》を動かすクルミは、《ジャムル・バウ》を追いつつ、ショウマの動きも注目している。

 

「で・もぉ、私としてはぁ、マリッカさんがショウマさんを助ける、もちつもたれつ? みたいな? モノアイの機体が頑張ってる画が欲しいんですよねぇ」

「何言ってんの。ショウマがメインなんだから、ショウマが活躍してなんぼでしょうが!」

「あれぇ? 先輩、そんなこと言っていいんですぅ?」

 

《インサイト》のコクピットのモニターに、クルミのにやついた顔が映る。

 

「な、なによ」

「私もぉ、仕事なんでぇ、ちゃんとした写真が取れないと編集長に怒られちゃいますぅ。それに、私が仕事できなくて怒られるのってぇ、先輩ですよねぇ? この意味、わかりますよねぇ?」

「ぬぐ……っ!」

 

 何か言いたげなユーコだったが、操縦桿を握る手に力を籠めて、ショウマに通信を飛ばした。

 

「ちょっとショウマ! 私の後輩がアンタのピンチが見たいらしいの! 勝ちながら負けてくれないかしら!」

「無茶言うなっ!」

 

 通信越しの声に吠えるのと、アラームが鳴り響くのは同時だった。

 

『ショウマ! 熱源多数! ビームの集中砲火だよ!』

「な──うおおぉっ!」

 

 残る数十機の《ビルゴ》たちの一斉射撃を受け、ショウマの視界が爆光に塗り潰された。

 ビームの威力を減衰させるナノラミネート装甲とはいえ、その数に押されて《クインス》の動きが封じられる。

 

「こ、な、く……そおっ!」

 

 シールドを振り上げ、ビームを霧散させる。

 

「ったく、あいつら、邪魔しやがって……!」

『ショウマ、まだ来る!』

 

 少女の声の通り、大型のビームサーベルを突きの構えで携えた多数の《メリクリウス》が《クインス》へ肉迫していた。

 

「チッ! 次から次へと!」

「ショウマさんっ!」

 

 直撃の寸前、ウェイブライダー形態の《ブラストZ》が部分的に変形させた右腕で《クインス》を掴んで離脱した。

 

「セレジュか! 助かった!」

「このまま距離を取って、一網打尽にします!」

 

 再度モビルスーツ形態へと変形した《ブラストZ》が、背面のフライングアーマーを分離させ、大剣の柄を形作る。

 そのツインアイが輝き、それに呼応するように巨大なビームサーベルが姿を現した。

 

「ハイ・メガ……ブレェェェェェェェドッ!」

 

 振り下ろされた光の剣が、モビルドールたちを飲み込んでいく。大輪の炎の華が咲き乱れ、モビルドールはまた大幅に数を減らした。

 

「いいぞ、セレジュ。完成した《ブラストZ》をよく使いこなせてる」

「ありがとうございます! ショウマさんの指導のおかげです!」

 

 敬愛するショウマからの誉め言葉に、セレジュは頭の羽を動かしながら元気に答える。

 

「そう言われると、なんだかこっちが照れるぜ。……ゴホン、最後まで気は抜くなよ!」

「はいっ!」

 

 二人は頷きあい、マリッカが単独で引き付けていた残りのモビルドール群へ向かっていく。

 ミッションクリアのファンファーレが鳴り響くのには、そう時間はかからなかった。

 

 

 ▼▼▼

 

 

「助かったわ! ヘルパーの看板に偽りはないわね!」

 

 クリア報酬を確認して、満面の笑顔を見せるマリッカ。

 

「役に立てたなら何よりだ。また手伝ってほしいミッションが出たら、連絡してくれ。順番はあるけどな」

「安心しなさい! 今回のミッションを超えればあとはどうとでもなるわ! でも、無理だったらすぐ呼んであげるから!」

「ほんと、自信があるのかないのかわかんないやつだな……。で、そっちはどうなんだ、ユーコ」

 

 振り向いたショウマは、今しがた終えたばかりのミッション中に撮った写真を確認するユーコに声をかけた。

 

「ええ! ばっちりよ! これでようやくまともな記事を書けるわ」

「てことは、お前とはここでお別れだな。やっと解放されるぜ」

 

 その言葉を聞いて、ユーコは笑顔から少し怒った表情になる

 

「なによ、その言い方。言っとくけど、まだあんたの噂のこと、諦めたわけじゃないから」

「ちょっと待て⁉ 話が違うぞ! この記事が書けたらもう付きまとわないんじゃないのかよ!」

「誰がそんなこと言ったのよ!」

「ま、まあまあお二人とも」

 

 睨み合うショウマとユーコの間に、セレジュが割って入った。

 

「いいじゃないですか。仕事とかは抜きにして、たまには一緒にGBNで遊びましょうよ」

「つってもなぁ……」

「セレジュくんの言う通りですよぉ」

 

 ショウマが反論しようとした矢先。クルミがセレジュに加勢した。

 

「先輩ってぇ、落ち目だから会社に仲いい人いないしぃ、お二人が仲良くしてくれたらぁ、私としても嬉しいなぁって思うんですよぉ」

「落ち目? どういうことだ?」

「先輩はぁ、本当は芸能部でバリバリだったんですけどぉ、ちょおちょおヤバいネタを踏んでぇ、GBジャーナルにトバされたんですぅ。あっはは! うけるぅ~」

「ちょっと! 余計なこと言ってんじゃないの!」

 

 ユーコがクルミに掴みかかり、口を塞ぎにかかる。

 

「ショウマ、セレジュくん! 私たちはこれで失礼するわ! ほら、行くわよクルミ! じゃあね!」

「あぁん、先輩暴力はいけないですよぉ~」

 

 そのままクルミを引きずって、ユーコは去っていった。

 

「……なんか、慌ただしかったな」

「ユーコさんも大変なんですね。なにがあったんでしょう。ヤバいネタって」

「さてな。まあ、気にはなるが」

 

 ショウマとセレジュはクルミの言っていた内容が気がかりになっている。

 

「記事が出来上がるのが楽しみね!」

 

 だが、マリッカだけは特に気にしている様子はなかった。

 

 

 ▼▼▼

 

 

 セレジュとも別れて一人になったショウマは、星空が広がるフリーエリアへと足を運んだ。湖畔の草原に腰を下ろし、今日のミッションの内容とその報酬のチェックをおこなっている。

 

「ひーふーみ……っと。よし、あとは先生に報告するだけだな」

 

 ディスプレイを閉じて大きく伸びをすると、入れ替わるようにして、《クインス》の顔が映る小さなディスプレイが現れた。

 

『お疲れ様。今日もよく頑張ったね』

「お前もな。しかし、今日は後半が特に忙しかったな」

『ふふ、GBジャーナルの取材が来るなんて、ショウマもすっかり有名人だね』

「ユーコがあのまま俺の言ったことを鵜呑みしてくれるといいんだが。いろいろ探られると困るのは先生だし」

『うん。嘘をつくのは、ちょっと申し訳なかったね』

 

 少女の声に、ショウマは薄く笑うほかない。

 

「正直に話したところで信じられないだろうさ。セレジュもな。あいつらは、俺をただのヘルパーだと思ってくれてる。それは大切にしたいんだ。こっちの事情に巻き込むようなことはしたくない」

『でも……』

「ん?」

『でも、なんだか最近のショウマ、前より楽しそう』

「そうか?」

『うん。セレジュくんとか、ユーコさんと一緒だからかな』

 

「付きまとわれて大変なんだぜ? セレジュに情けないところは見せられないしさ」

 

 文句を言いながらもショウマの顔は笑っている。

 

『私はショウマもGBNでもっと友達を作ればいいのになって、ずっと思ってたよ。だから、それが叶ってとっても嬉しい。あの二人とフォース作っちゃえば?』

「フォースか……」

 

 夜風を浴びるショウマの顔は、表情が読みづらかった。

 

『やっぱり、嫌なの?』

「いや、考えとく。ともかく、今日は疲れた。そろそろログアウトし……ん?」

 

 立ち上がり、ログアウト操作に入ろうとしたショウマは、ふと背後に気配を感じて振り向いた。

 木の向こうに一瞬だけ見えた、金色の髪。見覚えがあった。

 

「今の……ユーコ?」

 

 

 ▼▼▼

 

 

 翌朝。

 自宅のベッドで眠っていたショウマは、枕元に置いた携帯電話の着信音で目を覚ました。

 

「誰だ……?」

 

 寝ぼけ眼で画面を見ると、発信元は成瀬玲十郎―セレジュだった。通話ボタンを押し、耳に携帯を近づける。

 

「セレジュか? どうした、こんな朝っぱらに……」

『どうしたじゃありませんよっ!』

 

 耳元で爆ぜたセレジュの声に、思わず携帯を顔から離してしまう。

 

「な、なんだよ。なにがあったんだ?」

『GBジャーナルを見てください! とんでもないことになってます!』

「GBジャーナル? えっと……」

 

 ショウマはセレジュとの通話状態を維持したまま、ベッドから降りて机の上のパソコンを起動し、GBNの公式ホームページからGBジャーナルの記事一覧を開いた。

 

「な……っ⁉」

 

 次の瞬間、ショウマは愕然とした。

 

「どういうことだよ、これ……⁉」

 

 

《有名ヘルパーショウマ、謎の少女ダイバーと夜の密会。これが噂の真実か》

 

 

 記事の見出しの下に、一枚の写真が大きく掲載されている。

 その写真の中で湖畔に立つショウマの隣には、少女の姿をした光があった。




立ち去ったのは一体何者だったのか。
そして、ショウマの隣に映るのは誰か。

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