やっぱ勢いって大事。
「依頼って、いきなりそんなこと言われても、今ちょっと取り込み中で……」
GBジャーナルの記者のユーコから逃げていたショウマを引き留めた少年ダイバーのセレジュは、座り込んだままのショウマに深々と頭を下げた。
「おっ、お願いします! 僕、どうしてもクリアしたい……いや、しなきゃいけないミッションがあって、でも、一人じゃ難しくて……! ヘルパーさんの話を聞いて、それで、ログインしてずっと待ってて……」
「おいおい、勝手に話を進められても―」
「追いついたわよ!」
ほんのわずかな会話のうちに、ユーコはショウマとの距離を詰めていた。
「さあ、観念して取材を……って、誰? その子」
「知らないよ。いきなり引き留めて依頼をしたいとか言ってきたんだ」
立ち上がったショウマの言葉を聞いて、ユーコは身をかがめてセレジュと目線を合わせた。
「ごめんね、ぼく。実はこのお兄さん、私が先に依頼を頼んであるの」
「そ、そうなんですか?」
「こいつが勝手に言ってるだけだって!」
「じ、じゃあ僕の依頼が先に受けてもらえるってことですね!」
「あら、意外とガッツあるわね……ん?」
少年ダイバーの思わぬカウンターにたじろぐユーコ。しかし、すぐにある事を閃いた。
「そうだ! ぼく、いいわよ。君の依頼、このお兄さんに引き受けさせてあげる!」
「本当ですか⁉」
「おい! 何を勝手に……!」
「いい? あなたはこの子の依頼をこなす。私はその様子を密着取材する! ほら、これなら問題ないでしょ?」
「俺の意思が無視されてるんだが!」
「あなたさっき自分で言ってたじゃない。ミッションのヘルプは受けるって」
「う……!」
痛いところを突かれた。ユーコは先ほどの会話の内容をしっかりと覚えている。無論、ショウマ自身も。
「そんな揚げ足を……! 子どもをダシにして、そこまでやるか普通!」
「あら、絹江・クロスロードもこれくらいの貪欲さがあったわよ?」
「そのせいでサーシェスに消されたんだろ!」
「なによ、煮え切らないわね。どうしてダメなのよ」
「どうしてって、あのな―!」
『私はいいと思うよ?』
「かっ⁉」
「「か?」」
「あ、ゲフンゲフン……。ちょっと失礼」
二人に背を向けたショウマは、最小表示のディスプレイの中の《クインス》を睨みつけた。
「おい、どういうつもりだよ……! こんな人前で声なんて出したら……」
『だって、あの女の人はともかく、男の子の方は困ってるんでしょ? ショウマはヘルパーなんだから、助けてあげなよ』
「そんなこと言ったって……」
ショウマはもう一度ユーコとセレジュの方へ振り向いた。ユーコは挑発するように肩をすくめて見せ、セレジュは不安そうにショウマの返事を待ち続けている。
運営公認の情報サイトを無下にあしらうことのデメリット、幼気な少年ダイバーの依頼を突っぱねることへのヘルパーとしてのプライド、そして
様々な言葉が数秒の間に頭を駆け巡り、ショウマは一つの結論にたどり着いた。
「わかったよ! 受けるよ! ただし、ちゃんと報酬はもらうからな! それから、変に探るような真似もしないでくれ! あくまでヘルパー活動の取材ってことで!」
それぞれ指差し確認のようにして言われ、その内容を理解した二人の表情が華やいだ。
「ありがとうございます!」
「ふふふっ、そうこなくっちゃ!」
「よくわからないけど、お姉さんもありがとうございます!」
頭の羽根をパタパタと動かしながら言うセレジュに、ユーコは余裕たっぷりに微笑む。
「気にしないで。私のことはユーコでいいわよ」
「はい! ユーコさん! それから、えっと……」
セレジュの視線に、ショウマは観念して答える。
「……好きに呼べよ」
「はいっ、ショウマさん!」
セレジュの笑顔に頷いたショウマは、小さくつぶやく。
「これでいいんだな?」
『うん、ばっちり!』
《クインス》の返事に苦笑し、ショウマはこれ以上の追究を避けるべく、話を依頼にシフトした。
「で、セレジュだっけ? どんなミッションを手伝えばいい?」
「あ、それ私も気になる!」
「は、はい。その……。これ、なんですが」
遠慮がちにセレジュが表示したディスプレイを、ショウマとユーコが覗き込む。
そこに映っていたのは、木星帝国の総帥クラックス・ドゥガチが搭乗した、『神』の名を冠する巨大モビルアーマー。
「僕と一緒に、今度の10機の《ディビニダド》攻略戦に参加してください!」
話が動いてきましたね。
そして皆さんに謝らなければいけないことがあります。
第二話で勢いで13機のディビニダドと書いていましたが、原作読みなおしたらそんなにいませんでした。都合10機いるってだけでした。
指摘される前に謝ります。ごめんなさい。
勢い……。
不定期更新です。