「ほう、GBジャーナルの取材か」
凰修大学附属病院の資料室。
セレジュの依頼を引き受けた翌日、ショウマは事の顛末を報告するために再び麻玖木のもとを訪れていた。
「すみません。断り切れなくて……」
しおらしくなって謝るショウマに、麻玖木は柔和な表情を向けている。
「謝ることはない。上手くいけば君の活動のいい宣伝になる。それに、彼女が望んだことなのだろう?」
「ええ。まあ」
「ならば、なおさら引き受けてよかったじゃないか。彼女もやる気なら、良いデータが取れるかもしれない」
「先生がそう言うなら……」
「私としては、依頼主の少年ダイバーの方も気になるな。自力でCランクに上がっているにもかかわらず、君に依頼を出すとは」
ショウマは基本的に依頼主のことは他人には話さないが、自身が信頼を寄せる麻玖木は別であった。何を隠そう、ショウマにヘルパーとしての活動を提案したのは麻玖木なのだ。
「俺も妙だと思ったんです。一応の依頼書をその場で作らせた時にランクを確認して、本当に俺が必要なのか聞いたんですけど、どうしてもって押し切られて。依頼書出したらすぐログアウトしたし」
昨夜のセレジュとの別れ際を思い出し、ショウマは小さな不審感を募らせる。
「あまり疑いたくはないですけど、妙な噂も流れていますし」
「噂? ブレイクデカールことか?」
「あ、先生も知ってました?」
「GBN内でガンプラの性能を格段に引き上げる違法改造パーツ……。まだ眉唾の域を出ないが、事実ならば度し難いな。自らの力で強くなることを放棄するなど」
「手っ取り早く強くなりたい初心者ダイバーもいなくはないですからね。そういう手合いは依頼を受けてもちょっと厄介ですよ。操縦が難しいとか、武器が弱いとか。自分のガンプラなのに文句ばかりで……っと。すみません、愚痴っぽくなっちゃいました。そろそろ俺、行きますね」
「いや、気にすることはない。今日は会っていかなくていいのかい?」
「こっちに来る前に顔は見てきました」
「そうか。では、受付まで送ろう。なに、私もこれから診察だ」
そうして二人は資料室を出て、受付へと繋がる通路を歩く。会話の内容はもちろんGBNだ。
「しかし《ディビニダド》か……。対策は考えているのかね?」
「《クインス》はガンダムフレームですし、ビームは何とかなるはずです。あの巨体も、威圧感はあっても的が大きいと考えられます。問題は核ミサイルとフェザーファンネルですね」
「確かに、大規模ミッションで参加ダイバーが多いとはいえ、乱戦になれば厄介だな」
「そこが怖いですよ。撃墜者限定報酬の称号と150万BCはターゲットと同じで10人にしか与えられない。争奪戦になりま……うおっ!」
「わあっ!」
通路の曲がり角で、ショウマの身体が大きく揺らいだ。そして、ショウマ自身でも麻玖木のものでもない声がひとつ上がる。
「いたた……ご、ごめんなさいっ!」
ショウマとぶつかった学生服の小柄な少年は、尻餅をついている。
「いや、こっちこそ。怪我はないか?」
ショウマが差し伸べた手を掴もうとした少年は、ショウマの顔を見て、ぎょっとした。
「えっ……?」
そこで、ショウマも思い至る。この光景に、デジャヴを感じた。
「まさか……セレジュか?」
「やっぱり、ショウマさん⁉」
会った次の日にリアル対面。どうなることやら。
そしてしれっと設定追加です。病院の名前が決まりましたね。
不定期更新です。