今回は私の好きな名前の機体が参戦します。
ミッション開始から十数分。
参加するダイバーたちの中には、木星帝国軍の防衛網を突破する者も現れつつあった。
ショウマとセレジュも、《ノーティラス》に続いて待ち構えていた量産型《クァバーゼ》の一団を抜け、わずかに遅れてはいるものの、着実にゴールポイントの《ジュピトリス9》へ近づいていた。
「なんとか、武装を温存したままゴールに着けそうだな」
「戦闘を最小限にしてジュピトリスに向かうショウマさんの作戦が良かったみたいですね。撃墜数はあまり稼げてないですけど……」
並んで宇宙を飛ぶ無傷の《クインス》と、携行武器をライフルからハイパー・メガ・ランチャーに変えた《ブラストZ》。ショウマの声に応えながら、セレジュはレーダーの後方に未だ残っている敵機反応の群れに目をやった。
「気にするな。俺たちの狙いはあくまで《ディビニダド》だ。ミッションには撃墜数目当てに来てるダイバーもいる。そいつらに譲ってやろう」
「そうですね……ん?」
レーダーに新たな反応を探知する音が鳴り、セレジュは振り向く。次の瞬間、《クインス》と《ブラストZ》のすぐ近くを何かが猛スピードで追い抜いて行った。
「い、今のは⁉」
セレジュは最大望遠にした《ブラストZ》のモニターでその機影をなんとか捉えることが出来た。
「《AGE-Ⅱ》……の色違い? でも、あのスピードは……」
とんでもない性能を見せつけられ、驚愕するセレジュ。しかしショウマには驚いた様子はなかった。
「ああ、あれはクジョウ・キョウヤだな」
「クジョウ・キョウヤ……って、たしか、最近スコアランキングをすごい勢いで塗り替えてる話題のダイバー! お知り合いなんですか?」
「彼がGBNを始めたばかりのころ、ヘルパーの依頼を引き受けたことがあるだけさ。一緒に塩を探した。その時に見せてもらったのがあの《AGE-Ⅱマグナム》だ」
「塩って、採集ミッションですか? なんだか意外だな……」
セレジュは《クインス》とあの《AGE-Ⅱマグナム》が塩を探しに向かう光景をイメージし、そのシュールさに苦笑した。
「ミッションの内容に関わらず、依頼は受けるさ。彼、最近じゃフォースも作ったらしい。確かAVALONとかいったか」
「そんな人も参加してるんですね。でも、一人みたいですよ?」
「大方、個人的な腕試しと、BC集めだな。あのガンプラ、まだ未完成なんだぜ」
「未完成⁉ あの出来栄えで……?」
「クリアパーツを仕込みたいらしい。っと、おしゃべりはここまでだ。見ろ、《ジュピトリス9》だ」
ショウマの言う通り、前方に巨大な宇宙船が見えた。
「ついに来たんですね……!」
「気を抜くなよ、セレジュ。ここからが本番だ」
二人が先頭集団に合流すると、ステージ中におどろおどろしい笑い声が鳴り響いた。
「こ、この笑い声はっ?」
『ショウマ、来るよ』
少女の声に、ショウマは乾いた唇を舐めた。
「ああ。総統閣下のお出ましだ……!」
《ジュピトリス9》の格納庫のハッチが開き、ついにその姿が露わになる。
遮るものが無い太陽光を反射する、白く巨大な身体。
身体の前で交差された、戦艦をも易々と破壊する両腕。
巨体に相応しい大きさに広がる、背中に生えた四枚の翼。
そしてもっとも恐ろしいのは、その身に宿す大量の核兵器―。
「こ、これが……《ディビニダド》……!」
「聞いてはいたが、10機も並ぶと壮観だな……」
その圧倒的な迫力に息を呑むセレジュ。ショウマもその威圧感に息苦しさを感じた。
ディビニダドたちのアイ・センサーが一斉に輝く。それが開戦の合図だった。
ダイバーたちの駆るガンプラが、ミサイルやビーム、弾丸、果ては《ファンネル》や《GNファング》まで、10機の《ディビニダド》に向けてけしかける。
動き出した《ディビニダド》たちも、《フェザーファンネル》を同時に放出した。
「行くぞセレジュ!」
「はいっ! 変形します!」
セレジュの操作のもと、《ブラストZ》が人型からウェイブライダーに姿を変えた。
「ショウマさん! 乗ってください!」
《クインス》が《ブラストZ》に乗り、しっかりと固定したことを確認したセレジュは、握りしめたレバーを思いきり前に倒した。
「やろう、《ブラストZ》!」
バーニアが青白い炎を噴き上げ、流星となった機体はビームと弾丸とファンネルの嵐を切り裂いて、一直線に《ディビニダド》へと駆ける。
集団から飛び出した形になった二機は、援護もない状態にもかからわず、他のダイバーたちよりも明らかに先行していた。当然、あらゆる攻撃の只中に晒されることになる。
だが、四方八方から飛来する攻撃を、《クインス》のシールドがアームを素早く伸ばしていなしていった。
「スピードを落とすな! 一気に突っ切れ! お前には弾丸一発かすらせやしない!」
「あ、ありがとうございます!」
セレジュはそのシールドさばきに内心で舌を巻いていた。が、当の《クインス》のコクピットには少女の声が響き渡っているのだった。
『右! 左! 今度は上! ひえぇ、多すぎるってぇ!』
「頼むぞ……。俺は攻撃、お前は防御。俺たち二人ならできないことはないんだ……!」
武装選択画面を開いたショウマは、一瞬のみ訪れるチャンスに全神経を集中させる。
そして、ついに《ブラストZ》は《ディビニダド》の一機の懐に飛び込んだ。
「よし、そのまま突っ込め!」
切っ先を真正面に向けた《クインス》のドリルランスが回転を始める。
二機の存在に気づいた《ディビニダド》のうちの一機が、左目に位置する中型のメガ粒子砲を撃ち放った。しかし、回転するドリルランスによってメガ粒子は四散。間合いは完全に《クインス》に有利なものとなった。
「おおおっ!」
《ブラストZ》から跳んだ《クインス》。ドリルランスが《ディビニダド》の長い頭部を穿つ。これで頭部内蔵の大型メガ粒子砲は潰された。
だが、それを補ってあまりある巨大な腕が《クインス》へと伸びていく。
『ショウマ!』
「ランスパージだ!」
その声と同時にランス本体と持ち手の接合部が煙を吹き、ランスを鞘としていた大剣が閃いた。
「腕、もらったぁ!」
振り向きざまに剣を振るい、迫る巨腕を左右とも切り落とした。
猛撃はこれだけでは終わらない。腰に携えた刀を抜き、《ディビニダド》の左目に突き刺した。これで中型メガ粒子砲も使えなくなる。
この《ディビニダド》に残された武装は、《フェザーファンネル》と核ミサイルのみ。
ただ、それは至近距離に迫るモビルスーツには無用の長物であった。
「セレジュッ!」
ショウマが叫ぶ。《クインス》の真後ろから、再び人型に戻った《ブラストZ》が、《ディビニダド》の眉間、コクピットに当たる位置に向かって突進する。
「やあああっ!」
リアアーマーから取り出したビームサーベルを発振させ、ほとんど無防備なモビルアーマーのコクピットを狙う。
回避は不可能。防御も困難。ショウマは依頼の達成を確信する。
しかし、その確信は、脆くも崩れ去った。
《ブラストZ》の攻撃が当たる直前、それよりも先に飛来したものが《ディビニダド》の頭を粉砕した。
「なっ、なんだ⁉」
予想外の出来事に、ショウマの声に焦りが滲む。
「どこからの攻撃⁉」
爆風の中から離脱した《ブラストZ》の中のセレジュも、何が起きたのかわかっていない。
「はははははっ! ひゃーはははははははっ!」
宇宙に響く笑い声。それは、先ほどのものとは全く異質な、軽薄で、されど凶悪な、神経を逆撫でる不快な笑い声だ。
その声と共に、煙の中から飛び出す、大きな翼。
《ディビニダド》のものではない。そもそも、
だが、ショウマにもセレジュにも、その翼に見覚えがあった。
その翼を持つ機体こそ、デビルガンダム四天王の一柱。
「天剣……絶刀……⁉」
「《ガンダムヘブンズソード》……!」
「ははははっ! 報酬はぜぇぇぇぇんぶぅ、俺のもんだぁっ!」
チャンピオンだって最初はビギナーですし、塩くらい探してたと思います。
響きがいいですよね。天剣絶刀。存分に暴れてもらいたいですね。
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