せっかくだから朝に投稿してみました。
《ディビニダド》を撃墜まであと一歩だったショウマとセレジュの前に現れた、デビルガンダム四天王の一柱、《ガンダムヘブンズソード》。
そのデュアルアイが、呆然とする《クインス》と《ブラストZ》を捉えた。
「そこのお前ら、倒しやすくしてくれてありがとうよ!」
オープン回線で入ってきた《ヘブンズソード》のダイバー声に、すぐさまショウマが咆えた。
「ふざけるな! 俺たちの獲物を横取りしやがって!」
「おいおい、これは賢い戦術だぜ? 他のダイバーどもが程よく弱らしてくれたエネミーを一気にかっさらう! 楽して大儲けだ! はははっ!」
「しょ、ショウマさん……」
不安に満ちたセレジュの声が耳朶を打つ。ショウマは胸の奥にふつふつと怒りの炎が燃え上がるのを感じた。
「こんなやつ放っておけ! 別のを狙うぞ!」
セレジュを伴って移動しようとしたが、《ヘブンズソード》に回り込まれた。
「させねぇよ。言ったろ? 報酬は全部俺のもんだってよぉ!」
《ヘブンズソード》が放った蹴りを受けた《クインス》は、すぐにバーニアを噴いて姿勢を制御する。
「こいつ!」
《ヘブンズソード》に立ち向かう意思を固めたショウマだったが、またコクピットに少女の声が響いた。
『ショウマ……』
「どうした?」
『蹴られた時に感じた。あのガンプラ……なんだか、嫌な感じがする……!』
「嫌な感じ……?」
少女の言葉の意味がわからず怪訝な顔つきになったショウマだったが、《ヘブンズソード》が動いた。
「見せてやるぜ……俺の力を!」
《ヘブンズソード》の全身から、禍々しい紫色のエフェクトが滲み出る。
言いようのない恐怖に、セレジュは《ブラストZ》をわずかに後退させた。
「な、なんだ、あれ……」
その異様な光景を見て、ショウマは病院での麻玖木との会話を思い出す。
「まさか、あれがブレイクデカール……⁉」
「ご名答! だからよ……こういうことができちゃうんだなぁ!」
《ヘブンズソード》の背中から無数のケーブルが飛び出し、一直線に飛んでいく。その先には、《ヘブンズソード》に撃墜された《ディビニダド》が浮いていた。
ケーブルが突き刺さった白い巨体が砂のように崩れ、ケーブルを通って《ヘブンズソード》へと流れ込んでいく。《ヘブンズソード》の翼が巨大化し、本来ならあるはずのない腕―、《ディビニダド》の腕が生えた。
「《ディビニダド》の残骸を取り込んだのか!」
「ひゃはははっ! 行けよフェザーファンネルゥッ!」
広げられた翼から、夥しい数の鋼鉄の羽根が発射される。
「セレジュ、離れろ!」
ショウマの叫びを聞いて《クインス》と距離を取った《ブラストZ》の足元をフェザーファンネルが飛び、後方、他のダイバーたちが戦っていた別の《ディビニダド》に突き刺さる。
直後にまるで太陽のような大きさの火球が生まれ、周囲にいたガンプラたちを飲み込んで消えた。
「わああああっ!」
その衝撃はすさまじく、かろうじて爆発に巻き込まれなかった《ブラストZ》を大きく吹き飛ばした。
「セ、セレジュ!」
「あーあ。力加減ミスっちまった。ちゃんと頭潰して倒さないと、中の核爆弾がドカーン! 特別報酬も消えちまうもんなぁ。くっくっく……!」
邪悪な笑い声に、ショウマは直感した。
「お前、わざと……!」
「今ので邪魔なやつらはそれなりの数が消せたな。そんじゃ、ゆっくり狩りを楽しむとするかね」
悠然と翼を伸ばして飛び去ろうとする凶鳥を、ショウマは追い越し、立ちはだかった。
「あん?」
「GBNを……あいつが笑っていられる場所を、踏みにじるような真似は許さない!」
大剣と刀を握り、《クインス》が突進。
「うぜぇんだよ! ヒーロー気取りがぁ!」
《ヘブンズソード》は、その巨大な腕で迎え撃つ。体格差は圧倒的だった。
「ショウマさん……。僕も、戦わないと!」
加勢しようと姿勢を戻した《ブラストZ》に、背後から近づく機体があった。
「ちょっと、大丈夫?」
「ゆ、ユーコさんっ?」
ユーコの駆る《インサイトフレーム》だ。アルミューレ・リュミエールは解除されている。ダミー隕石も捨ててきたらしい。
「もっと近くで撮ろうと思って来てみたらすごい爆発があったし、君は飛んでくるし。ていうかなに、あのキモいガンプラ。どうなってんの?」
ユーコは《クインス》と戦う《ヘブンズソード》を一瞥した。
「実は、ブレイクデカールを使ってるみたいで……」
「ブレイクデカール? あれが……」
《インサイト》の右腕が動き、変貌した《ヘブンズソード》にガンカメラを向ける。
「……ん? あれ?」
だが、不可解な現象が起こる。
「セレジュくん、あのガンプラ、見えてるわよね?」
「何言ってるんですか? あそこでショウマさんと戦ってるじゃないですか!」
「いや、そうなんだけど、写らないの。撮ってるはずなのに、あのガンプラだけ、写真に写らないのよ……!」
「写らないって、いったい―」
「セレジュ、ユーコ! 逃げろっ!」
言葉の途中。ショウマの声が弾け、視界の明度が一段階下がった。
「なにを、コソコソしてるんだぁ?」
《ヘブンズソード》が取り込んだ《ディビニダド》の腕が、《ブラストZ》と《インサイト》に伸びていたのだ。
「させるかぁっ!」
二機を握りつぶさんと広がった腕を、《クインス》の大剣が切り裂く。しかし、それすらも罠であった。
「よう、助けると思ったぜ? ヒーロー」
「な……!」
斬られる前に分離していた巨腕に意識が向いていたことにより、ショウマは失念していた。
《ヘブンズソード》は本来、接近戦を得意とするモビルファイターなのだ。そして、必殺技も持っている。
「ハイパァァァァァ! 銀色の脚ィィィ! スぺシャァァァァァルッ!」
「うあああっ!」
怒涛の連続攻撃が《クインス》を襲い、機体を吹き飛ばした。
「ショウマさん!」
「ショウマ!」
「てめぇらもだ! ウインドファイアァァァァッ!」
翼のはばたきから炎の渦が発生し、《ブラストZ》と《インサイト》を飲み込んだ。
炎に囚われた二機は、即刻の撃墜は免れたものの、ダメージが蓄積されていく。
「こ、このままじゃ、僕たちも……!」
「ちょっとショウマ! なんとかしてよ! ヘルパーなんでしょ!」
ユーコの叫び声は、ショウマには聞こえていなかった。
「くそっ、動け! 動いてくれ……! こんなことで、お前を……!」
暗くなったコクピット。ショウマがレバーを引くが、《クインス》は反応しない。
「俺たちはまだ戦える! そうだろ⁉ 頼むから動いてくれ! ……カリン!」
ショウマが必死に呼びかけるも、機体は沈黙を続ける。
「……ダメ、なのか……」
操縦桿からショウマの手が離れる。
『許さない……』
「え……?」
少女の声が、聞こえた。
『ショウマを、いじめるやつは……!』
コクピットに赤い光が灯る。ダメージアラートではない。ショウマが見たことのないほどの真紅に染まっていた。
『私が倒すッ!』
滑らかな挙動で傍に浮いていた刀を掴み、動き出した《クインス》。だが、それはショウマの操作によるものではなかった。
「コ、コントロールが……⁉」
《クインス》が勝手に動いている。言葉では説明できても、ショウマは理解できなかった。
「死に損ないが! 今度こそ沈めてやる!」
再起動した《クインス》に気づいた《ヘブンズソード》が炎を止め、再びフェザーファンネルの大群を放つ。
しかし、押し寄せる鋼鉄の羽根を《クインス》は稲妻のような動きで躱し続け、《ヘブンズソード》に近づいていった。
「当たらない⁉ だったらぁっ!」
炎の渦が《クインス》に襲いかかるが、それすらも物ともせず、一気に間合いを詰めた。
「てめぇ、いきなりなんだってんだ!」
蹴りを放つも、容易く回避され、その脚を叩き切られた。
「こいつ、動きが急に変わって―うおおっ!」
《クインス》の手が《ヘブンズソード》の首を掴み、締め上げる。
「どうなってる! どうして勝手に動くんだ!」
その間もショウマはコクピットで操縦桿を動かしていが、ショウマの意思は《クインス》の動きにまったく反映されていなかった。
「何だってんだよ、お前、大したことなかったくせに、急に強く……!」
モニターに映る《クインス》の顔に、恨み言をぶつける《ヘブンズソード》のダイバー。
「……あ?」
それは、ただの気のせいかと思ったが、違う。彼には見えた。《クインス》のツインアイの奥に、怒りに満ちた瞳が。
「気持ち悪い作り込みしやがっ―」
言い切る前に、《ヘブンズソード》のコクピットは、《クインス》の膝に内蔵されたドリルによって潰されたのだった。
このキマリス、やっぱり中になんかいますね。
そのうち機体紹介とか、挙げてみようかなと思ったりしてます。
そして次回は限定ミッションのクライマックスです。
不定期更新ですが、お楽しみに。