エヘ狂猫の日誌集   作:エヘ狂信者の猫

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ソフィコト短編集1

【新しい知識と優しいお姉様】

 

「お姉様お姉様、聞いてください。ワタシ理解しました」

 

 自室の扉が開き、コトちゃんの明るい声が響く。

コトちゃんは本で新しいことを覚えると、いつも真っ先に私の元に来て嬉しそうに教えてくれる。

その時のコトちゃんはとてもとても楽しそうな声をしている。

 

「――が気になって調べてみたのですが、予想以上に興味深い内容でして……」

 

 コトちゃんのその楽しげな表情を見ていると、私まで楽しくなってくるのよねえ……。

無感情な娘に思われがちだけど、実はコトちゃんはとっても感情豊かな娘なのよ。

特にこうやって新しいことを覚えるという時が一番輝いた表情をしている。

 

「――そしてその手順は全て記録しました。これでまた一つデータを蓄えることが出来ました。

またお姉様たちの役に立てます……!」

 

 キラキラとした眼をしながらそう話すコトちゃんに、微笑みながらその髪をそっと撫でる。

さっすがコトちゃん! 本当に頼りになるわ……!

いつもたくさん勉強してて凄いわよね……私もよく頑張り屋だとシュトさんから言われてるけど、私から言わせてみればコトちゃんの方が何倍も頑張り屋さんだと思うわ。

本当にコトちゃんは良い子ねえ……。

 

「……お姉様……! ワタシ、お姉様に撫でられると、とてもポカポカします……お姉様は本当に優しいです……いつも、ありがとうございますお姉様……」

 

 コトちゃんはそう言って私の方にそっと倒れ込み身体を預けてくる。

そしてそのポカポカしたコトちゃんの身体を、私は優しく抱きしめたのだった。

 

 ……うん、本当に温かい。

 

――――――――――――

【おやすみ前の読み聞かせ】

 

 むかーしむかし、あるところに――

 

 ある日の深夜の自室。

普段私が使っているベッドに二つの影があった。

もちろん一つは私。そしてもう一つは……。

 

「……お姉様……? あるところに、ってどこなのでしょうか?」

 

 そう言って、当たり前のように唱えた定型文に対し疑問を投げ掛けるコトちゃん。考えたことは無かったけど、言われてみれば確かに気になるわね……。

うーん、多分雪国のお話だからこれはノイエルあたりのことを言ってるんじゃないかしらね……。

 

 ……そう、もう一つの影っていうのはコトちゃんのこと。

私はコトちゃんを自室に招き、ベッドで読み聞かせをしていた。

これもコトちゃんのお勉強の為のもの。

……そして、かわいいコトちゃんと添い寝をする為のものでもあったりする……!

かわいい……。

 

「理解しました。流石お姉様ですね。話の腰を折ってすみません、続きをお願いします」

 

 気にしなくて良いのよコトちゃん、そういう色んなことに気付く所がコトちゃんの良い所なんだから!

コトちゃんの身体をとんとんと優しく叩きながら読み聞かせを再開する。

ある雪の日……おじいさんとおばあさんが――

 

――――――

 

 ……暫くは興味深そうに聞いていて、時々問いかけていたコトちゃんだったけど、物語が終わりに差し掛かるにつれてだんだんとコトちゃんが静かになっていく。

コトちゃんのまばたきの感覚も長くなり、遂にその瞼は開かなくなった。

静寂に包まれた部屋に、私の声とコトちゃんの微かな寝息が響く。

 

「……………………」

 

 ――になったとさ。めでたしめでたし。

物語を読み終え定型文を唱えたが、コトちゃんからの疑問が再び投げ掛けられることはなかった。

……ふぅ、と一息ついて本を静かに閉じて、サイドテーブルに音を立てないよう慎重に本を置く。

そしてランプの光をカチリと消すと、コトちゃんのすーすーという静かな寝息に耳を傾けながら、そっと瞼を閉じるのだった。

 

――――――――――――

【ベッドを温めて出世します】

 

 ……わが家自慢の温泉を堪能して、ホカホカしながら自室の扉を開けると、私のベッドに山が出来ていた。

……誰か私のベッドに潜り込んでいるわね……もしかしてシュトさん……? えっ急にそんな……突然なんてまだ心の準備が……!

 

「……………………こんばんは、お姉様」

 

 ドキドキしながら毛布をめくると、そこにはほんのり顔を赤く染めたコトちゃんと目が合った……。

……えっ……? どういうこと……?

 

「……ワタシ、この前本で知りました。昔とある王様に仕えていた人が、王様の靴を懐で温めておいたことを褒められて出世した……と。

……いえ、ワタシは出世というものには興味はありませんが……そういう役立ち方もあると知って試してみたくなりまして」

 

 ……それで私のベッドに潜り込んでいた、と……?

 

「はい。そういう訳なのでお姉様、ベッド温めておきました……!」

 

 無邪気な顔でそう言うコトちゃんを見て、多分他意は無いんだろうなって思うことにした。

ほのかに紅潮した顔もきっと、ずっとベッドの中に潜り込んでいたからだろう。

温めてくれてありがとうね、コトちゃん。

 

「さあお姉様……! どうぞ中へ……!」

 

 ……それは良いんだけどコトちゃん、コトちゃんはいつまでベッドの中に居るつもりなの……?

 

「無論朝になるまでですよ?」

 

 当然のように添い寝要求……!

 

「……お姉様……もしかして、ダメ……ですか……?」

 

 うぅ……そんな顔で見つめられたら……そういうのお姉ちゃん弱いのよね……。

はあ……かわいい……。

もう、仕方ないわね……ホントは急にはダメだけど、今日だけ特別よ?

 

「ありがとうございますお姉様……!」

 

 ぱあーっと明るい表情になったコトちゃんに頭の中でノックアウトされながら、いそいそとコトちゃんの隣に潜り込む。

次からはちゃんと私に言ってからやること! いいわね!

 

「了解しましたお姉様」

 

 上機嫌な声色で、私に身体をすりつけるコトちゃん……なんだか仔犬か仔猫みたいでホントかわいいわね……。

さ、明日は早いからもう寝ましょコトちゃん。

 

「はい……おやすみなさい……お姉様……」

 

 ……そう言いながらコトちゃんはぎゅっと私の腕に抱きつくと、すやすやと静かな寝息を立て始めた……。

何だか最近、コトちゃんが甘えん坊さんになった気がするわね……。距離感が近いというかボディタッチが増えたというか……。

まあでも、甘えられるのは大好きだからとっても嬉しいんだけどね♪

そんな甘美な考えごとをしつつコトちゃんのかわいい寝顔を見ながら、私の意識も深く沈んでいくのだった……。

 

 ……そんな甘美な考えが、本当に甘い考えだったと知るのは……コトのお姉様好きが、甘えん坊ってレベルを越すと知るのは……まだ少し先の、未来のお話……。

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